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製品責任とリコール対応:シリアル管理とトレーサビリティ設計

目次
はじめに:製品責任とリコールがもたらす現場の現実
製造業の現場で働く方々にとって、「製品責任」と「リコール対応」は決して他人事ではありません。
グローバル化が進み、品質に対する要求は年々高まっています。
万一リコールが発生した際には、企業ブランドの毀損だけでなく、巨額のコストや信頼損失が発生します。
この現実と正面から向き合うためには、シリアル管理やトレーサビリティの高度な設計が不可欠です。
本記事では、調達購買・生産管理・品質管理・工場自動化の立場から、実践的な設計のポイントや、現場目線の課題と解決策、昭和的なアナログ慣習との付き合い方も含めて、深く掘り下げていきます。
製品責任とは何か?リコールリスクを正しく理解する
製品責任の定義と社会的背景
製品責任(PL: Product Liability)とは、メーカーや販売業者が自ら出荷した製品によってユーザーや第三者に損害を与えた場合、その責任を負う法的義務のことです。
日本では1995年に「製造物責任法(PL法)」が施行されて以来、消費者保護の観点から責任が明確になりました。
製造業に携わる私は、PL法施行前後の「品質意識の劇的な変化」を現場で体感しています。
単なる技術問題にとどまらず、企業の社会的責任として全ての工程を見直す必要性が突き付けられたのです。
リコール発生時のインパクト
リコールは一度発生すると、計り知れないダメージをもたらします。
回収・連絡・修理・代替品手配・法的対応・顧客ケア――どれも膨大な工数が必要です。
また、取引先とサプライチェーン全体にも甚大な影響が及び、信頼の回復には長い年月がかかります。
昭和の時代は、「時間をかけて現場で対応する」「やむを得ない場合は手書き帳簿の突き合わせ」といった文化がまだ残っていました。
しかし、今やリアルタイムかつグローバルな対応体制が求められる時代です。
シリアル管理とトレーサビリティの重要性
シリアル管理とは?
シリアル管理は、製品や部品ごとに固有の番号(シリアルナンバー)を付与し、製造から納品までの履歴を追跡できる仕組みです。
特定ロットだけではなく、一つ一つの個体単位で管理することで、万一の不具合発生時に迅速かつ最小範囲で対応可能となります。
自動車や医療機器、精密機械の現場ではすでに当たり前のように導入されており、大量生産品でもIoTやRFIDによる一元管理が進んでいます。
トレーサビリティとは?
トレーサビリティとは、原材料から完成品・納品・使用後の廃棄まで、製品が辿った全ての道筋を明確に追跡できる仕組みです。
調達・生産・物流・販売の各段階で「トレース(追跡)」できること、それが現代製造業における新常識です。
万が一リコールに直面した際にも、影響範囲特定、原因解析、関係部署への対応指示などが正確かつ迅速に行えます。
トレーサビリティ設計のベストプラクティス
シリアル付与ルールの整理
まずは管理粒度をどこまで細かくするかを決めます。
最終製品単位で十分なのか?重要部品単位で必要なのか?場合によっては原材料に至るまで番号付与が必要です。
また、クラウド型やERPシステムといったITインフラとの親和性も考慮し、この先10年先を見据えた設計が欠かせません。
現場目線の運用設計
シリアル管理・トレーサビリティを机上の理論で導入しようとすると、現場はすぐ「オペレーション負荷が高い」「間違いが発生しやすい」「メンテナンスできない」という壁にぶつかります。
私が工場長時代に痛感したのは、「アナログからデジタルへの橋渡し」の難しさです。
例えば、バーコードや2次元コードの貼付位置・サイズが作業しやすいか、読み取り機器の導入コストとメンテ容易性、管理マニュアルの分かりやすさ――こういう地味な部分を徹底的に詰めておかないと現場に根付きません。
サプライヤー連携と購買・調達部門の取り組み
バイヤーや調達担当の方に意識して頂きたいのは、「川上の透明性」です。
サプライヤーが持つ部品・原材料の履歴情報を吸い上げ、自社のトレーサビリティシステム上で一元的に紐づける。
この仕組みが確立していない場合、リコール時の特定に多数の電話・FAX・メールが飛び交い、対応が混乱しがちです。
サプライヤー側も「今、バイヤーがどんな情報を欲しがっているのか?」を正しく理解し、データ連携・システム連携の提案を積極的に行う姿勢が求められます。
自動化とDXの推進
昭和の現場では手書き帳簿や独自仕様の「職人芸」が幅を利かせていました。
しかし今は、工場自動化(FA: Factory Automation)やデジタルトランスフォーメーション(DX)によって、現場データがリアルタイムで可視化され、シリアル・トレーサビリティ情報が自動で記録できる環境が整いつつあります。
センサーやIoT機器の活用で、どこでエラーが生じたか、何時何分どの作業者が作業したかまで追跡可能。
「デジタルで残す」「Excelや手書き帳簿から脱却する」――この意識改革が現場力の底上げにつながります。
現場で陥りがちな落とし穴とその克服法
アナログ文化との狭間で
現場には「昔からこのやり方でやっている」「シリアル管理を増やすと手間が増える」「新しいITシステムは苦手」といった壁があります。
ここで留意したいのは、IT化・自動化を「現場軽視」ではなく「現場負荷を減らす武器」として捉えてもらうことです。
私の経験上、現場リーダー層から導入意義や必要性を何度も説明し、お試し期間を設けながら小さく始め、現場の意見を吸い上げて徐々に拡張していく方法が有効でした。
「データを自分たちも有効に活用できるようにする」成功体験が浸透すると、自然と現場に定着していきます。
記録ミス・情報遅延の対策
手書きから電子化への移行では、入力ミスや読み取りエラー、記録忘れが必ず発生します。
作業標準書・チェックリストの整備、QC活動(品質管理サークル)との連携による現場改善、機械によるバックアップ記録など、多層的な防御策が重要です。
また、サプライヤーから得られるデータにばらつきが生じる場合も多いです。
EDI(電子データ交換)や統一されたデータフォーマットでのやりとり、定期的な監査や品質レビューを通じて、情報精度の底上げを目指しましょう。
未来志向:製造業の新しい地平線
AI×トレーサビリティによるリスク最小化
AIやビッグデータが進展する現在、シリアル情報やトレーサビリティ履歴の解析にAI技術を活用し、不具合発生パターンの早期検知や、リコール発生リスクの事前警告が可能になってきています。
また、消費者からのIoTを通じたフィードバックをリアルタイムで収集し、設計や生産現場に反映させる動きも加速しています。
バイヤーを目指す方へのアドバイス
購買・バイヤーを志す方にとって、単なる価格交渉力ではなく、「川上から川下まで、現物+情報の流れを把握できる力」が重視される時代です。
シリアル・トレーサビリティ設計力や、サプライヤーとの連携力、データ分析力は間違いなく武器になります。
不具合・リスクの可能性に備え、社内調整力・現場を巻き込む力を着実に磨いていくことが求められます。
サプライヤーが考えるべきこと
サプライヤーの立場としては、「いかにトレーサビリティを持つ情報付加価値でバイヤーに選ばれるか」が企業競争力に直結します。
自社が持つトレーサビリティ情報を「見える化」して提案資料や納入仕様書に明記する、システム連携のデモを行うなど、「川下目線・顧客目線」を常に意識しましょう。
まとめ:製造現場の地力と新しい挑戦
製品責任とリコール対応は、単なるリスク管理や法令遵守にとどまりません。
シリアル管理とトレーサビリティ設計は、現場・バイヤー・サプライヤーが一体となり、高品質で責任あるモノづくりの基盤を強くするものです。
昭和の伝統も大切にしながら、それを活かすデジタル・自動化の活用、そして現場の声に丁寧に耳を傾ける実践的な運用が欠かせません。
共に製造業の新しい地平線を切り開いていきましょう。
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