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SDSと危険品申告:輸出入書類の作成と保管の実務

目次
SDSと危険品申告:輸出入書類の作成と保管の実務
はじめに:なぜ今、SDSと危険品申告が注目されるのか
近年、グローバルサプライチェーンが加速度的に広がる中、日本の製造業でも輸出入業務が増加しています。
この中で、SDS(Safety Data Sheet、化学品安全データシート)や危険品申告が極めて重要な位置を占めるようになりました。
一昔前であれば、“これまでどおり”で済んでいた書類業務も、法規制強化やトレーサビリティ(追跡性)要件の高まりにより「ルール遵守の重み」が格段に増しています。
ルール違反や手続きのミスが、重大な事故や取引停止リスクに直結する時代です。
そのため、本記事では製造現場・調達購買・物流・品質管理といった部門で即実践できるSDSおよび危険品申告の実務ポイントと、昭和的なアナログ慣習に根差した現実も交えて、具体的な作成・保管のノウハウをお伝えします。
SDS(安全データシート)とは何か?
SDSの基本的な目的と内容
SDSは化学品の安全な取り扱いに必要な情報を記載した文書です。
GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)基準によるひな型に従い、化学品の物理的・化学的性質、健康・環境への有害性、取り扱いや保管方法、応急処置・火災時対応など、16の項目が定められています。
輸出入業務においては、SDSの提示(もしくは提出)が求められる場面も多く、特に危険品もしくはそれに準ずる商品についてのシッピングインストラクションや、インボイスへの添付が原則とされています。
SDSの出力・更新・翻訳・管理における課題
これまで日本の製造業現場ではSDSを紙で保管し、必要時に現物ファイルから抜き出して対応する運用が主流でした。
しかし、法定改正が頻繁化し、海外サプライヤー・顧客とのやりとりでは、和文・英文の切り替えや最新改訂版の共有が常に求められます。
SDSのバージョン管理や書類のアップデートも煩雑化しやすく、アナログ的な管理ではミスや対応遅延につながることも多いのが実情です。
危険品申告(Dangerous Goods Declaration:DGD)とは
危険品申告の役割と記載内容
危険品申告は、輸送される貨物が国連番号(UNナンバー)やクラス(分類)などにより明確に“危険品”であることを示し、取扱上の注意事項を運送事業者、空港・港湾管理者、法令当局、顧客と共有するための必須書類です。
IATA危険物規則書(航空輸送)やIMDGコード(海上輸送)等、各所で定められた内容に則って作成します。
たとえば、塗料類、鋳造用薬品、はんだ付け用剤、リチウムイオン電池など、製造業では日常的に“危険品該当”となる商材を調達・生産・出荷します。
こうしたケースで正確かつ円滑な危険品申告がなければ、そもそも輸送自体が拒否されることもあります。
昭和の名残~危険品書類管理の現場実態
今なお多くの現場では、危険品申告書を手書き⇒FAXで送信⇒控えを紙で保存、という“昭和的”運用が続いています。
一方で、輸送量の増大、出荷先多様化、国際規制の相互乗り入れで、「作業者個人の勘」や「昔からの伝承ノウハウ」で乗り切るのは極めて危険です。
適正な申告および書類管理の徹底は、MUST要件であり、法令違反時には会社としての損失だけでなく、個人責任が問われるケースも増えています。
書類作成の実務ポイント:バイヤー・サプライヤー両視点から
輸入バイヤーとしての注意点
バイヤーとして新規の海外サプライヤーから化学品・部材を輸入する際は、下記を必ず確認しましょう。
– 最新のSDSが提供できるか(和文または英文で)
– 国際輸送に必要な危険品申告の要件・有無(IATA/IMDG区分の確認)
– 輸送手段ごと(航空・船舶・陸送)に異なる規制適用範囲や書式
多くの場合、サプライヤー側から古いSDSが提出されたり、UN番号記載漏れ・分類誤りも散見されます。
この点、バイヤー自らが“受け取って終わり”ではなく、適切な内容か精査できる知識が不可欠です。
サプライヤーとしての実務ポイント
一方、サプライヤー側では、バイヤーからSDSや危険品申告の再提出要求、内容修正等を求められるケースが増えています。
特に日系自動車・電機メーカー系列のグローバル調達部門は、現地法規対応や英語版SDSのスピーディな提出を強く要請してきます。
書類作成の際は以下を大切にするべきです。
– 取り扱い製品ごとに最新版SDS・危険品申告を整備し、フォーマットを統一
– 改訂・新規作成時には社内関係部門(生産/品質/調達/物流)へ速やかに展開
– 書類データの一元管理、バージョン更新時の上書きミス防止
– 顧客から指示された書式や現地法基準への適合
サプライヤーとして、“自社でSDSや危険品申告が出せない=顧客との取引継続が不可能になる”時代であることを肝に銘じましょう。
書類保管とデータ管理:アナログからデジタルへの転換
法定保管期間とその根拠
多くのSDSや危険品申告書には「少なくとも発行日から3~5年間保存」という法令・業界ガイドラインがあります。
労働安全衛生法や化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)のほか、ISO14001などの審査でも原本保全が重視されています。
誤った廃棄や保管ミスは、万が一の事故発生時に「証拠なし」というリスクとなり、求償責任・ペナルティが発生しかねません。
現場でありがちな落とし穴とその回避策
– 書類の二重管理(紙・Excel混在)でどこが最新かわからない
– 書類の担当者引継ぎがうまくいかず、“迷子”になる
– 業務繁忙時にSDS更新漏れ・危険品申告の期限遅延
こうした問題に対しては、デジタル一元管理(共有サーバ、クラウドストレージ、専用管理システム)が効果的です。
またファイル名やフォルダ分けに「品番・管理番号・発行日」などを盛り込む工夫や、定期的な“管理台帳”チェックも必須です。
ただし、いまだ紙での原本提示を求められる現場・取引先も少なくありません。
現場の“アナログ文化”との共存も視野に入れつつ、段階的なデジタル移行が現実解です。
グローバルで求められる法規制と最新トレンド
各国・地域で異なるSDS・危険品申告規制
たとえば以下のように、同じ化学品であっても扱いが大きく異なります。
– 欧州:REACH規則による有害性分類やSDS記載義務が日本より厳格
– 米国:OSHA規則・HazCom基準やTSCA対応が必要
– 中国、ASEAN諸国、インド:年々強化される自主規制や禁制物質指定
このため、専門部署による最新法規収集や専門外部ベンダーの活用も視野に入れるべきタイミングです。
現場任せ、“何となく従来通り”の業務プロセスは、グローバル商売の障害になりかねません。
デジタル化の波とSDSデータベースの活用
SDSや危険品申告をオンラインプラットフォームやクラウド管理するSaaS型サービスも増えつつあります。
例えば、化学品データベースサービスやQRコード管理、AIによるSDS翻訳・内容整合性を確認するツールの活用例も拡大中です。
とはいえ、現場担当者の“納得感”“すり合わせ力”も欠かせません。
現実として、熟練オペレーターが現場で感じる「なんかおかしい」「書類の記述が危ない」などの勘所もデジタルでは完全に代替不可だからです。
機械化・自動化とアナログ現場感覚、それぞれの強みを生かしながら事故ゼロ・違反ゼロを実現しましょう。
まとめ:現場目線での成長・リスク管理の勧め
SDSや危険品申告は、製造業のサプライチェーンにおける最重要インフラ文書です。
法令順守、事故予防そしてサプライチェーン強靭化の観点から、いっそうの精度管理、スピーディな運用、現場と管理層の連携が求められています。
バイヤー/サプライヤーという立場の違いを意識しつつ、“現場感覚”で実践できる体制づくりと、時代のニーズに合わせたアナログ/デジタルハイブリッド運用を推進することこそが、製造業の発展・安全・信頼につながる道ではないでしょうか。
本記事で紹介したノウハウを自社の実務に持ち帰り、小さな改善から一歩ずつ、時代にふさわしい現場マネジメントに取り組んでいきましょう。
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