OEM商品化を検討すべき消耗品カテゴリと市場動向の分析

はじめに：加速する製造業と消耗品OEM化の可能性

製造業の現場において、消耗品の購買や管理は経営の根幹を支える重要業務です。
特に現場の効率化、コスト削減、品質維持のいずれもが消耗品調達に大きく影響されます。
その中でOEM（Original Equipment Manufacturer）というビジネスモデルが再び注目を集めています。

消耗品をOEM商品化することで得られる利点、順守すべきポイント、そして業界全体の市場動向や現場目線での課題について、20年以上の現場経験から詳しく掘り下げます。

消耗品カテゴリ別：OEM商品化の優先度と可能性の現実

1. 現場で消耗品が占める割合と課題の本質

工場において日々消費される部材や備品は膨大です。
切削工具、潤滑油、洗浄剤、作業手袋、梱包資材、計測機器の関連部品など、枚挙に暇がありません。

一方、現場管理者や購買担当が一番頭を悩ませるのは「本当にこのコストは適正か」「どこまで品質を落とさず管理できるか」という点です。
実際には、購買伝票の金額ベースで見るとコア部品や設備投資品に目が行きがちですが、現場全体の運用コストで見ると消耗品の果たす役割は絶大です。

2. OEM化でメリットが大きい消耗品カテゴリ

私の経験から、OEM化の効果が特に大きい消耗品は以下の通りです。

• 作業手袋・ウエス・クリーン用品：原材料や製法に大差はなく、要望を伝えやすい。
• 洗浄液・潤滑油：レシピがシンプルで相応の品質管理が行える。
• 各種梱包・包装資材：ロットコスト低減が図りやすい。
• 安全標識・ラベル類：デザインや数量調整で標準化が可能。

逆に、刃物・治具や計測機器のように、微細な精度・技術が問われるものはOEM化のハードルが高い部類です。

3. バイヤー視点で分析する：なぜ今OEM化か？

購買担当（バイヤー）が消耗品にOEM化を求める背景には、単なるコスト削減だけでなく、以下のような狙いがあります。

• 安定調達：独自仕様による差別化とリスク分散。
• 在庫最適化：希望ロットサイズ・包装形態の柔軟対応。
• サプライヤーコントロール：原材料高騰リスクを分散し交渉力を保つ。

昭和・平成と続いたアナログ的な「言われたものを買う」「伝票主義」を脱し、戦略的な購買管理へ脱皮する動きが強まっているのが現状です。

OEM商品化に挑む際の現場目線ポイント

1. コスト削減ばかりを追わない：品質維持の鉄則

OEM化による一番の落とし穴は、「コストメリットだけ」で判断してしまうことです。
消耗品に求められる品質をないがしろにしてしまうと、現場のトラブルや不良率増加という「見えないコスト」が跳ね返ってきます。

とりわけ溶剤系や潤滑油はライン停止や事故のリスクがあるため、十分な評価試験や現場現物のフィードバックが不可欠です。
実際、私自身、現場の声を集めて仕様を決め、品質基準書や受入検査を設けることで、安価なOEM品への切り替えをスムーズに進めることができた経験があります。

2. サプライヤー選定とパートナーシップ型交渉

OEM化では、仕様書発行型の「支配的ビジネス」になりやすいですが、現場の混乱やトラブル発生時は「サプライヤーも困る」という本音も多いです。

現場管理者としては、次のような観点でサプライヤーと関係構築をしていました。

• 仕様の詰めすぎでなく、現場の作業実態も汲んで提案を受ける。
• 品質トラブル発生時には、即原因調査の協力要請。
• 定期的なTQC（Total Quality Control：全社的品質管理）で相互の改善活動を進める。

これにより、単なるコストダウン交渉だけでなく「次に繋がる共創関係」を築けます。
これはアナログな時代から変わらないものづくり流儀でもあります。

3. 現場の運用まで踏み込んだマニュアル化とBOM管理

OEMの最大の課題は「思っていたものと違うものが届く」ことによる現場混乱です。
そこで重要なのは、量産前サンプルの現場検証、マニュアルへの正確な反映、BOM（部品表）や調達データベースのこまめな更新です。

昭和流の伝言ゲーム式発注から脱却して、現場と購買、サプライヤーの三方で透明性を高めることが、安定した量産運用のカギを握ります。

消耗品のOEM市場動向と今後の注目ポイント

1. サードパーティサプライヤーの台頭と選択肢の多様化

近年、ネット通販やB2Bマーケットプレイスの普及により、サードパーティサプライヤー（＝中堅・中小企業や専門商社）がOEM対応を積極的に始めています。

調達先が多様化することで見積競争力が高まり、条件面の交渉がしやすくなった一方、品質・納期トラブルも増えています。
このため、選定の際は「緊急時対応」「実証サンプル実績」「品質保証体制」をしっかり確認し、発注リスクを最小化する必要があります。

2. ESG/SDGs視点での取り組み

持続可能性が求められる中、リサイクル材料や環境負荷軽減型OEM消耗品への切り替えを進める企業が増えています。
例えば紙ウエス、エコパッケージ化、バイオマス系洗浄液などです。

これは単なる流行ではなく、海外顧客やグローバルサプライチェーンとの競争下で「環境対応力が企業価値を左右する」時代になったことの証明です。

3. デジタル化とアナログ現場の共存

購買管理システムの進化やIoT導入が進む一方、生産ラインの多くは未だ昭和のアナログ体質が残ります。
部門間連携や現場からのボトムアップ提案ができる風土づくりこそ、成功の最大要因となります。

私は過去に、購買部門と現場のワーキンググループを立ち上げ、消耗品を全分野でOEM化できるかどうか検証・見直しを実施しました。
その結果、オーダー伝票から生産ラインへの導入プロセス全体で年間数百万円規模のコスト削減を実現できました。

サプライヤーの立場でOEM化バイヤーの意図を理解する

サプライヤーがバイヤーのOEMニーズを理解し、提案力を高めるにはどうしたらよいでしょうか。

1. 「顧客の現場」を知り尽くす姿勢

OEMのニーズは、単なる「同等品納入」ではなく、顧客現場の業務内容やトラブル事例を加味した「現場最適化」にあります。
サプライヤー自身も顧客工場の現場視察やヒアリングを積極的に行うことが求められます。

2. コスト・品質両立の発想転換

安かろう悪かろうでは取引が続きません。
「既製品＋α」の付加価値提案、トレーサビリティ対応やESG要素付与による差別化など、単純な価格競争から抜け出す戦略が有効です。

3. ワンストップ対応力とアフターサービス

OEM化された消耗品は、仕様変更やトラブル時の迅速対応が求められます。
サプライヤーがワンストップで小回りよく対応できれば、バイヤーとの信頼関係は格段に深まります。

まとめ：製造業の発展を支える消耗品OEM化の今後

消耗品のOEM化は、コスト削減だけでなく、現場の持続的成長や企業価値向上にも直結する重要な経営戦略です。

アナログ文化の根強い業界においても、「現場目線×バイヤー戦略×サプライヤーパートナーシップ」という三位一体で進めることが、持続的な現場力強化につながります。

この取り組みを通じて、製造業の明日を切り拓く「現場目線の知恵」を、次世代へ伝えていくことが、私たち業界経験者の果たすべき使命と考えます。