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投稿日:2025年6月8日

トライボロジーの基礎と潤滑油・グリースの特性および最適な選定法・潤滑管理技術

はじめに:トライボロジーと潤滑の世界を解き明かす

製造業の現場で日々機械や部品のメンテナンスに追われる方々にとって、「潤滑」はおなじみのキーワードです。
そして、この潤滑を科学的に解き明かす学問が「トライボロジー」です。
トライボロジーとは摩擦・摩耗・潤滑を総合的に研究する分野であり、工場設備の稼働率向上、不良品の削減、コスト低減という経営課題に直結します。

令和の今もなお、昭和から続く“経験と勘”に頼るアナログな現場も多いのが製造業の実情です。
しかし、トライボロジーの知識が現場の常識となったとき、生産性や信頼性に飛躍的な変化が生まれます。
本記事では、トライボロジーの基礎から、潤滑油・グリースの特性、最適な選定法、そして最新の潤滑管理技術まで、工場長経験者としてのリアルな現場視点と業界動向を交じえてご紹介します。

トライボロジーとは何か?その現場的意義

摩擦・摩耗・潤滑の三位一体

トライボロジー(Tribology)は、ギリシャ語“tribos(摩擦する)”に由来する言葉で、その研究領域は「摩擦」「摩耗」「潤滑」と多岐にわたります。
機械・設備の部品は、運転時に必ず摩擦を生じ、その結果摩耗していきます。
この摩耗を最小限に抑え、機械寿命と効率を向上させるために必要なのが「潤滑」です。

交換部品や修理にかかるコスト、不意のライン停止による損失。
どれも現場のリアルな悩みです。
トライボロジーの観点を持つことで、「なぜ壊れるのか」「どうすれば長持ちするか」が見えるようになり、これが高付加価値製造やコスト競争力向上の一歩となります。

現場を変える“ラテラル思考”とトライボロジー

長年の慣習や“ウチのやり方”に固執しては、真の現場革新は起こりません。
部品の過剰交換、潤滑量・サイクルのムダ、理由なき油種の選定…。
こうした属人的な慣習を脱し、「どうすれば最適な摩擦状態を生み出せるのか?」「省エネにつながる潤滑管理とは?」をラテラル思考で問い直すことが、業績向上に必須です。
最新のトライボロジー知見は、従来の常識をひっくり返す“化学反応”を現場にもたらしてくれます。

潤滑油とグリースの基礎知識

潤滑油の構成と主な種類

潤滑油は、基油と添加剤から成ります。
基油は無色透明の鉱油・合成油などが使われます。
これに、酸化防止剤、摩耗防止剤、極圧(EP)添加剤、粘度調整剤などの添加剤が配合され、多様な機能性を発揮します。

主な潤滑油には、下記の種類があります。

– ミネラルオイル系:鉱物油ベース。安価で汎用用途中心。
– 合成油ベース:PAO(ポリアルファオレフィン)、エステル系など。耐熱性・低温特性に強み。
– 生分解性油:環境配慮が求められる場面で。

粘度はISO VG(粘度グレード)で示され、運転条件や機械の設計に合わせて選ばれます。

グリースの構成と種類

グリースは、基油に増ちょう剤(石鹸状や非石鹸状)を加え、半固体状態にした潤滑剤です。
一例を挙げると、リチウムグリースは耐熱性・耐水性・コストのバランスが良く、多くの機械で使われます。

増ちょう剤別では、
– リチウム系(最も一般的)
– カルシウム系(耐水性に強み)
– ウレア系(高温重負荷・長寿命)
– ポリアルファオレフィン(耐寒性)

などがあり、特徴や用途は多様です。

潤滑剤の“正しい評価軸”とは

単に「一番よく売れている」「一番安い」では本質的な選定にはなりません。
実際の粘度変化、添加剤の有無、相溶性、安定性、耐熱・耐寒・耐水性能、そして交換サイクル。
現場設備の運転環境や運用スタイル、保全体制まで考慮し、トータルで最適解を出すことが求められます。

潤滑油・グリースの最適な選定法

機械ごとの運転条件に“寄り添う”選び方

どの油種・グリースも「万能」ではありません。
“ライン停止が許されない”連続運転機、“重負荷”“多湿・高粉塵”“高低温”等々、個々の現場課題に即して選ぶべきです。
具体的なポイントを整理します。

– 荷重・回転速度
– 温度(常温・高温・低温運転)
– 環境(水・薬剤・粉塵への曝露)
– 機械構造(軸受けサイズ、密封性)

こうした情報を整理すると、自ずと適した潤滑剤が絞り込まれてきます。

サプライヤーとの協働による現場最適化

昭和的慣習だと“サプライヤー任せ”やカタログスペックだけでの選定となりがちです。
しかし、サプライヤーとの現場同行、定量的な効果測定、トライアル運用等の共創型アプローチこそ、真に最適な潤滑剤選びを可能にします。

たとえば、現場の摩耗異常が多発しているならグリースの分析・摩耗粉解析を行い、EP添加剤強化タイプへ切替検討。
あるいは省人化・自動管理が課題なら、合成油グリース+自動給脂器導入による“長期無交換”化を図る。
このような“現場起点”の開発提案力が重要です。

バイヤー目線の“コスト×パフォーマンス”マネジメント

コストダウン狙いで粗悪品や安価品に飛びつくと、隠れたトラブル多発・ライフサイクルコスト増大につながります。
バイヤーの真価は、単価だけでなく「交換サイクル短縮で総費用削減」「設備トラブル減少→生産性向上」といった視点で全体最適を考え抜くことです。

複数サプライヤー製品での総合比較や、定量的なTCO(Total Cost of Ownership)評価も、競争力構築に必須となります。

進化する潤滑管理技術:現場のDXとラテラルイノベーション

デジタル×センシングで変わる潤滑管理

従来の潤滑管理は“定期給油”や“感覚に頼る給脂”“異音出たら初めて対処”が一般的でした。
しかし近年ではIoTセンサーによる油温、粘度、摩耗粉のリアルタイムモニタリングが急速に進化しています。

– オイル分析(Fe, Cu, 粒子カウント)
– 自動給脂装置
– 温度・振動センサー連動の予知保全
– QRコード管理による潤滑履歴の一元化

こうした潤滑DX技術は、ムリ・ムダ・ムラ排除と属人化脱却による工場の省人化・効率化を加速します。

“まだまだアナログ”な業界現場でやるべきこと

一方で、いまだ「日報にハンコ」「ベテラン作業員の勘頼り」といった状況も珍しくありません。
だからこそ、デジタル一辺倒ではなく「現場の知見」と「新しいデジタル技術」の融合が価値を生み出します。

現場作業者への教育・標準作業書見直し、自動給脂装置の段階的導入、異常時の迅速対応手順確立――。
人の目とテクノロジー、両輪で回すことが“昭和的現場”の進化に直結します。

まとめ:今こそ、「トライボロジー思考」を現場競争力に変えよう

トライボロジーの知識を製造現場に根付かせ、潤滑油・グリースの最適な選定と最新管理技術で現場にイノベーションを起こす。
それは、「故障しにくい工場」を実現し、「コスト競争力」と「働きやすさ」を両立させる抜本改革です。

現場で一喜一憂しがちな日々の保全活動にトライボロジー視点を加えることで、ムリ・ムダ・ムラを見抜き、バイヤーとしても現場の真の課題を本質的に解決できます。
この“新たな地平”に、みなさんと一緒に一歩を踏み出しましょう。

製造業の未来は、現場最前線の「知恵」と「テクノロジー」の融合が切り開きます。
今こそ、トライボロジー思考を武器に、昭和の延長線ではない新しい現場スタンダードを一緒に創造していきましょう。

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