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高高度気球用フィルムの開発・製造の共同開発方法

目次
はじめに――高高度気球用フィルムが切り拓く未来
高高度気球は近年、通信インフラ、地球観測、気象調査、災害監視など多岐にわたる用途で注目を集めています。
そして、その根幹となるのが「高高度気球用フィルム」です。
このフィルムは極限環境での軽量性、強靱さ、気密性が要求され、大手化学メーカーから町工場まで、業界の垣根を越えた共同開発が活発です。
本記事では、20年以上製造現場に携わった経験と実績をもとに、「どのような共同開発方法が最適か」「現場視点で失敗しないポイントはなにか」「アナログから脱却するためのヒント」などを深掘りします。
バイヤーを目指す方、立場が異なるサプライヤー、現場で格闘されている皆様にお届けしたい内容です。
高高度気球用フィルムとは何か
極限環境で求められる性能と素材
高高度気球は成層圏、場合によっては高度40kmにも到達します。
ここに使われるフィルムには、著しい低温(-80℃以下)、高い紫外線、高圧~低圧の急激な環境変化に耐える性能が不可欠です。
代表的な素材例としては、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル、近年ではETFEやフッ素系フィルムなども登場しています。
厚みはわずか数μm、重量制約が非常に厳しいことも特徴です。
製造現場が直面する課題
・フィルムの均一性、異物混入の徹底管理
・わずかなピンホールによるガス漏れ防止
・原材料ロス削減と品質安定化
・現場作業員の高い技術力維持 など多岐にわたります。
さらに、世界的なサプライチェーン問題、既存設備の老朽化、昭和的な慣習からの脱却、といった現場起因の課題も混在します。
なぜ共同開発が求められるのか
単独開発の限界とコア技術の融合
高高度気球用フィルムの品質要求は特殊であり、単一企業の技術だけでは十分に対応できない事例が増えています。
例として:
・原材料メーカー×フィルム加工メーカー×装置設計メーカーの三位一体
・基礎研究を担う大学や研究機関との連携
・気球ユーザー(バイヤー)からのフィードバックを起点とした設計変更
こうした“異業種融和”が往々にして大きなブレークスルーを生んでいます。
業界構造と共同開発の現実
製造業には「下請け」「多重構造」「昭和型の常識」といった、縦割り社会が根強く残っています。
しかし高高度気球用フィルムの領域では、“机上の空論”では乗り越えられない障壁が多く、自然と「現場を巻き込む共同開発」が必須となっています。
想像してみてください。
試作ラインでのトライ&エラー、現場作業者とのダイレクトな意見交換、異なる企業文化の中で成果を上げるためのマネジメント…。
単なる契約関係を超えた“共創”が鍵です。
高高度気球用フィルム共同開発の進め方
1. プロジェクト初期――目的の明確化と役割分担
まず重要なのは「何のためのフィルムなのか」を最初に明文化することです。
・搭載する装置の重量とサイズ
・予定飛行高度と周辺環境
・想定用途(通信・観測・気象など)
これらを整理し、参画チーム全員のベクトルを合わせます。
また、「権限と責任の所在」「情報共有範囲」を明確にします。
ここでグレーゾーンを残すと、後工程で必ずトラブルが表面化します。
2. 素材選定フェーズ――現場目線のサンプル試験
スペックシート上のデータだけで素材を決めるのは危険です。
たとえば、あるフィルムは引裂き強度の公称値が高いが、実際のラボ試験ではシール部の剥離や端部破れが頻発する、という事例は日常茶飯事です。
ここは、“サンプルロットを何度も現場で試す”という泥臭さが成功への近道です。
テストの度に現場オペレータとディスカッションし、小さなフィードバックループを回すことが重要です。
3. 試作と量産性の壁を越える工夫
試作段階で上手くいったが、量産ラインに載せるとうまくいかない——。
これも非常に多い障害です。
・ライン速度が遅いと良品だが、所定速度では薄膜のシワや蛇行発生
・原材料ロット差による品質変動
・アナログ操作によるヒューマンエラー
こうした問題は、現場スタッフと開発担当が一体となって原因解析し、少しずつチューニングします。
ここでありがちな落とし穴は「本社・研究所主導で現場の声を無視する」こと。
最終的にフィルムを“使う”のは現場オペレータです。
トライ&エラーを“失敗”と捉えず、“改善点を引き上げるための必須ステップ”と全員で認識する雰囲気が功を奏します。
4. 品質保証――業界標準とのギャップにどう向き合うか
高高度気球ではJISやISOなどの既存規格が十分対応できないケースが多々あります。
例えば、従来のフィルム強度や気密性評価法では“実環境での安全率を担保できない”場合です。
そのため、共同開発グループで新たな評価基準を設ける場合もあります。
バイヤーとサプライヤーの信頼関係構築、現場検証の徹底、記録保持—。
昭和型の「検査員の目利き」に頼るだけでなく、IoTや自動化技術の導入も積極的に図りましょう。
共同開発を成功に導くためのポイント
現場と技術者の距離を縮める
現代のものづくりにおいて、「技術者」と「現場作業者」の間に溝ができると、開発プロジェクトは停滞しがちです。
例えば、
・現場の職長と技術開発者が週次で現地ミーティングを実施
・ラインの“つまずき”や作業者の素朴な質問に即応する体制を作る
こうした取り組みは、現場力と設計力の相互強化につながります。
工場長・現場管理職が“対話のハブ”役に回ることも有効です。
サプライヤー主導型か、バイヤー主導型か
共同開発をどちら主導で進めるかは、案件によって判断が分かれます。
・明確な仕様・設計値を求める場合=バイヤー主導
・未知の技術領域や差別化が必須の場合=サプライヤー主導
この基本方針をブレさせないことが重要です。
両者の強みを活かし、“対等なパートナーシップ”を意識しましょう。
昭和的アナログ工程からの脱却
まだまだ残る「手書き日報」「勘と経験頼みの現場判断」「KY(危険予知)活動だけで済ます」など、アナログ志向。
しかし、高高度気球用フィルムの分野は「IoT」「AI」「工程自動化」など、新たなデジタル変革が迫っています。
例えば検査工程のAI画像解析、製造記録のデジタル化、設備監視の自動化など、小規模改善から着手することが肝要です。
旧来の“ベテラン神話”に頼り続けるわけにはいきません。
共同開発を円滑にする実践的なコミュニケーション術
「現場用語」と「技術用語」を橋渡しする
長年の現場経験から言えることは、技術開発者やR&D部門が使う言葉と現場作業者の言葉は、しばしば食い違います。
たとえば
・技術:「シール強度の確保」
・現場:「この温度だと手ごたえが違う」
両者が微妙なニュアンスをすり合わせ、納得いくまで議論することがブレイクスルーのきっかけになります。
対面・オンラインを併用した柔軟な連携
昨今のリモート化推進も踏まえ、オンライン会議と実地ミーティングを適宜使い分けましょう。
現場の微細な問題や試作時の「肌感覚」は現地でしか伝わらない部分が多く、現場訪問や立ち会い試験は不可欠です。
バイヤー・サプライヤー双方の思考法を知る
高高度気球フィルムの共同開発では、バイヤー(ユーザー)とサプライヤーの期待値や視点が大きく異なります。
・バイヤー=「結果責任」「コスト」「納期」「将来的な安定供給」
・サプライヤー=「技術的限界」「設備能力」「現場負担」「採算性」
このギャップをどう埋めるかがプロジェクト成功の最大の分岐点です。
隠れた意図や本音を引き出す場(懇談、ラフなやり取り)を定期的に設けると、想像以上の発見が生まれることもよくあります。
まとめ――新たな時代の製造業像を共に描く
高高度気球用フィルムの開発・製造は、最先端の素材技術と、超アナログな現場力、そしてパートナー同士の強固な信頼のもとに成り立っています。
単なる技術力や効率化のみならず、現場発の知恵、ドラスティックな業界構造改革、デジタル変革が求められる時代です。
「バイヤーの視点」と「サプライヤーの視点」、双方が歩み寄り、ラテラルシンキングでものごとを深堀りし続ける。
その中から、日本のものづくりが新たな地平を拓くヒントがきっと見つかるはずです。
この記事が、読者の皆様が“次の一歩”を踏み出す後押しになれば幸いです。
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