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投稿日:2025年6月10日

潤滑技術の基礎と潤滑油の最適選定およびドライプレス加工技術

はじめに:製造業の基幹を支える潤滑の世界

ものづくりの現場は、今もなお“油の匂い”に包まれていると言っても過言ではありません。

これは昭和から令和に移ろう時代の中でも、現場の本質が大きく変わっていない証拠です。

あらゆる機械装置やプレス工程において、摩擦や摩耗を制御し、最大限の効率を引き出す潤滑は、その“基礎”であり“生命線”です。

その一方で、環境対応や自動化、省人化といった新たな課題もあり、選ぶべき潤滑油や加工技術もアップデートが求められています。

本記事では、潤滑技術の基本から、現場に直結する潤滑油選定ノウハウ、さらに最近注目されるドライプレス加工の最新技術まで、実体験を交えて詳細に解説します。

潤滑技術の基礎理解|なぜ潤滑は必要か?

機械が動く部分には必ず摩擦が発生します。

摩擦は熱を生み、金属同士の接触による磨耗やエネルギーロス、最悪の場合は焼き付きや損傷の原因となります。

こうした現象を防ぎ、機械本来の性能を発揮させるため、潤滑剤(オイルやグリースなど)が不可欠です。

潤滑の主な役割

潤滑の役割は意外と多岐にわたります。

摩耗や焼き付きを防止する
摩擦抵抗を減らし動力損失を抑える
熱の発散や冷却効果を持つ
部品の洗浄(異物除去)や保護
潤滑不足は設備の寿命を縮め、コスト増大やトラブル多発の要因にもなります。

現場をよく知る方ほど、潤滑の重要性を実感しているはずです。

潤滑油・潤滑剤の種類と特性

代表的な潤滑剤は以下です。

鉱油系潤滑油:最も一般的で自動車や多くの産業機械で使用
合成油:高温や過酷環境など特殊用途に強い
グリース:長期間潤滑が持続しやすい
固体潤滑剤:粉末状など、湿式潤滑が難しい場所で活躍

最近では生分解性油や低VOC対応の環境配慮型潤滑剤も増えています。

潤滑油の選定ノウハウ|“最適解”は現場と用途で変わる

潤滑油・潤滑剤は「とりあえず油をさしておく」という時代は終わりました。

設備や作業環境、工程の変化に合わせて、より専門的に“選定”しなければカイゼンの効果を最大化できません。

現場目線で考える潤滑油の選び方

以下のような観点から選定するのが基本です。

1. 用途・目的別
歯車や軸受け、チェーン、油圧回路、大型プレス機といった部品ごとに適した粘度や性能が異なります。

例)精密減速機=低粘度・高耐熱性、フォークリフト=湿式ブレーキ対応 など。

2. 使用環境・条件
温度範囲、湿度、粉塵や水分の混入リスク、可燃性の有無などを見極めます。

3. 求める性能
省エネや長寿命化、洗浄性、揮発性、耐熱・耐圧・耐腐食性といった要求に応える潤滑油が求められます。

4. メンテナンス性やコスト
交換頻度、省力化、安全性(臭いや手荒れなど現場負担も含む)まで意識しましょう。

バイヤーの視点:コストと品質のバランス

バイヤーや調達担当としては、下記の観点も欠かせません。

同じ規格・性能でも、国内大手と海外品、安価なノーブランド品では信頼性やトータルコストが違う
希少な特殊油への変更は在庫管理や調達リードタイムも長くなるため、運用面まで要管理
価格ダウンの交渉時は、数値で実績(設備寿命延長、ライン停止削減など)を評価・伝達することで見える化
現場主導型の選定プロセスとサプライヤーとの連携が強いほど、最終的な“全体最適”が得られます。

昭和レガシーの課題と未来志向のカイゼン

日本の製造業は、今なお「潤滑は現場任せ」「昔から変えていない油を使い続ける」という昭和的慣習を引きずっています。

設備ごとに別々の潤滑油が多種類ストックされている
選定理由が「前任者がやっていたから」という“伝説型”の属人化
油の管理・交換履歴が紙ベースで非効率になっている
近年では、こうしたアナログ手法を打破し、IoTやセンシング技術と連動した潤滑管理(自動給油、遠隔モニタリング、AIによる油種選定支援など)も急増しています。

今後は「標準化」と「データドリブンな改善活動」が業績の差を生むポイントとなります。

ドライプレス加工技術の登場とその意義

プレス加工、とりわけ金属の板材加工現場では、伝統的に大量のプレス油を使用してきました。

油による滑り性向上や焼き付き防止効果は大きいものの、手間や洗浄工程の増加、環境負荷、火災リスクも無視できません。

そこで次世代技術として注目されているのが「ドライ(無潤滑)プレス加工技術」です。

ドライプレス加工とは何か

従来のようにプレス油(潤滑油)や離型剤を使わず、特殊金型やコーティング、材料表面の物性制御などによって“油レス”で成形を行う技術です。

主なメリットは以下です。

油の塗布・管理が不要になり作業負担軽減
ワーク(部品)の脱脂洗浄工程が削減できる
工場内の環境美化、安全性が向上する
エコ対応やコストダウン(油・洗剤の削減、排水処理コスト削減)
一方で、金型設計や材料選定に高度なノウハウが必要となり、初期投資(新しい金型コーティングや設備投資など)はある程度発生します。

ドライプレス加工の最新トレンド

現状では、自動車・家電分野の量産現場を中心に下記のような技術革新が加速しています。

摩擦コントロール型のPVD・CVDコーティング金型
ハイテン材など難加工材にも対応した複合表面処理技術
成形時にシート材のミクロな表面テクスチャを制御して焼き付きや割れを防ぐ技術
AIシミュレーションを用いた金型・工程最適化
これらはすべて、“油に頼らずに品質・効率を両立する”という未来志向の答えです。

現場担当者・バイヤー視点での実践アプローチ

潤滑油・潤滑技術の見直しやドライ加工への転換は、現場の納得とサプライヤーとの連携が極めて重要です。

現場のQCD(品質・コスト・納期)を守るコツ

試行や切り替えの際は、

テストラインや小ロットでの比較検証を必ず行う
近い工程や類似機器での事例を収集して“失敗しない選択肢”を増やす
作業者の声(給油負担・清掃手間・安全性)を生かす
サプライヤー提案を鵜呑みにせず、現場で本当に有効か自ら評価する
また、バイヤーや管理職の立場では、

潤滑油・材料選定変更によるTCO(総コスト)試算を徹底
調達先/サプライヤーの信用性やBCP(リスク分散)も併せて評価
定期的に他社・競合の成功例や新技術をベンチマークする
これらを通じて、真の「全体最適」を追求すべきです。

まとめ:製造業現場に不可欠な“潤滑力”とイノベーション

潤滑技術や潤滑油の選定は、設備保全やコスト削減、環境への対応含め、製造現場のパフォーマンスを左右する重要課題です。

また、これからの時代、ドライプレス加工のような革新技術との合わせ技で、安全性や生産性、サステナビリティまでも高めていく必要があります。

選定や技術切り替えには現場と事務方、サプライヤーという“三位一体”のコミュニケーションと現場検証がカギとなります。

油に頼ってきた昭和の方法を、根底から見直すタイミングが、今訪れています。

皆さんの現場で、一歩踏み込んだ潤滑改革、そして新技術の積極活用を進めてみてはいかがでしょうか。

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