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投稿日:2025年6月10日

リチウムイオン電池の劣化診断手法とバッテリーマネジメント技術

はじめに

リチウムイオン電池は、今やスマートフォンやパソコン、自動車から産業用機器にいたるまで、私たちの生活や産業を支える基盤技術です。
その一方、リチウムイオン電池は“劣化するもの”という宿命から逃れることはできません。
劣化が進めば、蓄えられるエネルギーが減り、出力が下がり、最終的には安全性のリスクも高まります。

とくにバイヤーやサプライヤーとしてこの分野に携わる方にとって、「劣化をどう評価し、どう管理するか」は、品質保証や持続可能なビジネスの根幹を成すテーマです。
今回は、現場目線でみた実践的な劣化診断手法と、最新のバッテリーマネジメント技術について解説します。
合わせて、昭和的アナログ現場がどのようにデジタル化・省力化に取り組んでいるかの動向にも触れていきます。

リチウムイオン電池の基礎と劣化のメカニズム

リチウムイオン電池のしくみ

リチウムイオン電池は、正極・負極・電解液(または固体電解質)で構成されており、充放電時にはリチウムイオンが電極間を移動することで電気エネルギーの出し入れを可能にしています。
エネルギー密度が高く繰り返し充放電できる利点から、さまざまな分野に広く普及しています。

劣化の主な要因

リチウムイオン電池が劣化する主な要因は大きく分けて次の通りです。

– サイクル劣化:充放電の繰り返しによるもの
– カレンダー劣化:時間経過に伴う性能の低下
– 高温・低温環境、過充電・過放電などの使用条件

中でも、電極材料の物理的損傷や電解液の分解、内部抵抗の増加など、複数のメカニズムが絡み合いながら徐々にキャパシティ(容量)が減少します。

現場で使われる劣化診断手法

実際に行われる診断手法とは

設備投資や管理の観点からみても、バイヤー・工場現場はコストと実用性のはざまで常に揺れています。
ここでは実際の現場で導入されている主な劣化診断手法を紹介します。

1. 容量保持率(SoH:State of Health)評価

もっとも基本的な方法は、既定の充放電サイクルを繰り返した後、初期容量と比較してどれだけ減ったかを測定するものです。
昭和アナログ現場でも簡便な恒温槽、負荷装置、電圧・電流計を使って比較的容易に実施できるため、根強く使われています。
ただし、一台ずつ実測するため、手間と時間はかかります。

2. インピーダンス測定

電池の内部抵抗(ACインピーダンス)や直流内部抵抗(DCIR)を測定することで、劣化を非破壊的に推定する方法です。
最近はデジタルマルチメータ、EIS(電気化学インピーダンススペクトロスコピー)など新しい測定機器も普及しつつあります。
短時間で診断できるのが強みですが、専門知識が必要なためメーカーでも自動化しながらノウハウ化しています。

3. OCV(開放端電圧)法による推定

電池にしばらく負荷をかけず静置した後の開放端電圧(OCV)で劣化や残量を推定する手法です。
現場ではパレットごと、モジュールごとまとめてOCVを測定することも増えています。
ただし、バラつきを吸収するには経験値や補正システムの導入も必要です。

4. 急速診断技術の進化

近年はAIやIoTを活用し、短時間(数分程度)で劣化度合いを推定する技術も台頭しています。
たとえば、端子間の細かな電圧変動や温度推移から「隠れた劣化兆候」をキャッチし、その場でOK/NG判定を出す仕組みも現場に入り始めています。
アナログ的な「経験とデータ」をデジタルに集約する動きが加速しています。

バッテリーマネジメント技術(BMS)の進化

BMSの基本機能と実装状況

バッテリーマネジメントシステム(BMS)は、電池単体からパック、アレイまで複数のセルの状態をリアルタイム管理し、安全・効率・長寿命化を実現するための制御・監視装置です。
欧米や中国系の自動車産業ではすでにBMS搭載は常識となっていますが、日本の産業用現場では「後付けニーズ」や「予兆検知への活用」で進化し続けています。

BMSで管理できる主な指標

– 電池電圧の異常検知
– 各セルの温度管理
– 充放電電流の監視
– サイクル回数・充放電履歴の記録
– 劣化進行度(土台となるSoH、SOF推定)

こうした情報がすべてクラウドやデータベースに蓄積され、戦略的にメンテナンス計画や品質保証につながっています。

AI×BMS、データ駆動型マネジメントの業界動向

製造現場では膨大なデータをAIが解析し、「どの条件・環境でどれだけ劣化が早まるのか」「どのサプライヤーのセルで品質問題が発生しやすいか」など、より定量的かつ科学的なマネジメントができるようになりました。
さらに、遠隔監視による24時間体制の異常検知、トレーサビリティ対応、リコール対応の即時性アップなど、バイヤー・サプライヤー双方にとって不可欠なインフラとなっています。

昭和的アナログ現場の課題とデジタル化への地殻変動

根強いアナログ慣習と“属人化リスク”

日本の製造業では、「帳票管理」や「ベテラン作業員による五感チェック」といったアナログ文化が今も多く残ります。
確かに現場ノウハウと直感はときに絶大なパワーを発揮します。
しかし人の勘や職人技頼みでは、品質の安定化や再現性、トレーサビリティの確保が難しく、グローバル競争に飲み込まれる危険性も高まっています。

モデル現場で進むデジタル省力化

一方で、「劣化診断」「BMS」「IoTセンサー」「クラウド記録」などを組み合わせたデジタル化が少しずつ浸透しています。
昭和的帳票もタブレットやスマートウォッチで創業データに変換、経験値もAIアルゴリズムに落とし込むことで、誰でも一定のパフォーマンスが出せる素地が整いつつあります。

サプライヤー・バイヤーの新たな関係性

デジタル化によって、「劣化診断の正確な説明責任」「先手のメンテナンス提案」「故障予兆の事前共有」といった価値提供が可能になりました。
サプライヤー側は自社の品質をデータで見せて信頼獲得、バイヤー側は管理の生産性やトラブル時の責任追及に活用しています。
どちらも“言った・聞いていない”が通用しない、透明性の高いサプライチェーン環境に変わりつつあるのです。

今後に求められるバイヤー・サプライヤーの視点

バイヤーが知っておくべきこと

– 劣化診断・BMSがどこまで可視化・自動化されているかを確認する
– 劣化保証・安全保証に必要なデータや定量的根拠をサプライヤーに要求する
– 技術変化に敏感になり、“安さ重視”一辺倒から総合的なバリュー評価へと発想を転換する

サプライヤーに求められること

– 従来の“経験則”や“定型検査”にこだわらず、デジタル化・自動化へのシフトをはかる
– 劣化診断技術やBMS活用状況を積極的に可視化し、定量と定性の両面から説明できる体制を整備する
– 付加価値の高い予兆保全・故障未然防止まで含め提案型ビジネスモデルを磨く

まとめ

リチウムイオン電池の劣化診断、バッテリーマネジメント技術は、今やメーカー現場・バイヤー・サプライヤー全員にとって「知っていて当たり前」の知識です。
昭和から続くアナログ的手法も、経験値や現場感覚を大切にしつつ、新しいデジタル技術でさらに高次元に進化させる時代です。

変化の激しい製造業界で主導権を握るのは、現場目線と最先端技術の両方を理解し、フラットな関係性で共創できる人材です。
本記事が、製造業に従事するすべての方々にとって「新たな一歩」を踏み出すきっかけになれば幸いです。

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