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輸出ライセンス取得が必要な品目と申請の進め方

目次
輸出ライセンス取得が必要な品目と申請の進め方
はじめに:製造業における輸出ライセンスの重要性
製造業のグローバル化が進む中で、海外市場への販路拡大は企業成長の大きな糧になります。
しかし、単に良い製品を作っただけでは輸出はできません。
「輸出ライセンス」というハードルがあります。
このライセンスは、国によっては法令で厳しく管理されており、違反すれば重いペナルティの対象となります。
昭和の時代は「船積みさえできればいい」という風潮もありましたが、今やデジタル社会・厳格な国際規制の下で、正しい知識とプロセスがなければ“世界”でビジネスをすることはできません。
この記事では、現場目線とバイヤー視点の両方から輸出ライセンスの取得が必要な品目や、その申請プロセスについて分かりやすく解説します。
輸出ライセンスとは何か?
なぜ必要なのか
輸出ライセンス(輸出許可)は、特定の製品や技術が国外に出て行くことによって国家安全保障や国際的な秩序が脅かされる事態を防ぐために設けられている制度です。
特に最近では、世界的な安全保障環境の変化や経済制裁、SDGsを意識した輸出管理が厳格になっています。
輸出ライセンスが必要となる背景
・二重用途(デュアルユース)技術の流出による安全保障上のリスク
・大量破壊兵器(WMD)拡散防止の国際的な取組
・国際条約(ワッセナーアレンジメント等)への日本の参加
・経済制裁下の国やテロリストへの資材拡散防止
現場の実感として、調達・購買部門だけでなく、生産部門・品質部門にも申請の基礎知識が求められるようになりました。
輸出ライセンスが必要な主な品目
1. デュアルユース品目
工場で日常的に使われている工作機械や計測機器、化学薬品などでも「平和目的/軍事目的」の双方に利用できるものがあります。
例えばCNC工作機械、産業用のロボット、高精度測定器なども該当します。
また、最近ではAI搭載のセンサーや、特殊な半導体デバイスも該当するケースが増えています。
2. 武器・軍需関連品目
火薬類、銃器部品、防弾素材や軍用車両の一部部品などが代表的です。
一般産業部品を取り扱う場合でも「軍事転用」される可能性がゼロでない場合は、更に厳しい審査があります。
3. 特定国宛の一般品目(経済制裁・輸出規制国)
特定国(北朝鮮、イラン、ロシア等)への全ての品目は、たとえ日用品や食品であってもライセンスが求められます。
調達現場で「自社製品は大丈夫」と思いがちな部品でも、バイヤー目線では必ず疑って進めるべきポイントです。
4. 最先端技術・知的財産の移転
有形の商品だけでなく、設計図、ソフトウェアのプログラム、製造ノウハウなどの「技術情報」も規制の対象となる場合があります。
このような「無形資産」の移転がグローバル市場で問題となっており、細やかな注意が必要です。
昭和的アナログ体質と現代のギャップ
紙中心・属人化からの脱却
昭和・平成の工場管理は、紙ベースの記録や担当者に依存した「職人芸的な管理」が強く残っていました。
しかし、国際輸出管理では「記録のイミュータブル性(改竄不可性)」や「トレーサビリティ」が重視されます。
・誰が、いつ、どんな理由で、どこに、何を輸出したのか
・審査時に、その根拠資料をすぐに提出できるか
このような要求に応えるため、デジタル化や業務の標準化(SOP化)は避けて通れません。
部門間連携の難しさ
多くの現場では、「バイヤーと生産現場」「品質部門と調達部門」など組織の壁が根深いままになっています。
ライセンス申請時は、これら部門を横断する情報共有・コミュニケーションが不可欠です。
「うちは生産だから関係ない」
「調達の人がうまくやるでしょ」
と属人的に考えると、想定外のトラブルや申請遅延を招くことがあります。
現状の業務フローをラテラルに見直し、サプライヤー側もバイヤーの「本音」に触れてみることが高品質な輸出管理体制につながります。
輸出ライセンス申請の実務プロセス
1. 該非判定(がいひはんてい)の徹底
まず、自社製品や技術が「規制リスト」に該当しているかを確認します。
この作業を「該非判定」と呼びます。
判定手順は次のとおりです。
・経済産業省 輸出貿易管理令 等のリスト規制を確認
・製品スペック/性能との照合(分からなければ各種コンサル利用も)
・該非判定書の発行
最近ではサプライヤーが「どの技術項目に該当するか」を明示することが、バイヤーから強く求められています。
2. 顧客・用途確認(エンドユーザー確認)
誰に、何の目的で輸出するのかを明記し、「用途証明書」や「エンドユーザー声明書」の回収・保存が必要です。
このプロセスが疎かだと、最悪の場合「知らぬ間に違法行為」になるリスクを孕みます。
近年では、サプライチェーンの川上から川下までの情報確認が強化されています。
3. 必要書類等の用意
申請には多くの書類が求められます。
・輸出許可申請書(様式あり)
・該非判定書
・契約書・注文書(Purchase Order)
・貨物仕様書およびカタログ
・会社・組織情報
提出書類は「日本語・英語両方」で用意が必要な場合もあります。
ここで「何を提出すればいいのか分からない」という現場も多く、組織全体で“ナレッジ共有”が不可欠です。
4. 経済産業局等への申請・審査待ち
必要書類を準備し、輸出元を管轄する経済産業局(地方経済産業局)に電子申請します。
審査期間は1~3ヶ月程度ですが、内容によっては追加資料の要求や現地調査が入る場合もあります。
納期に間に合わせるためには、最初から「余裕を持った工程計画」が必須です。
5. 許可取得後の管理と記録保持
ライセンス取得後も、輸出した記録や証拠書類は“5年間”程度保管する必要があります。
また、輸出後に用途変更や第三者転売が無いことを、追跡管理する責任も持たなければなりません。
このあたりは従来の国内取引にはなかった運用であり、サプライヤーもバイヤーも一体となった新しい体制構築が求められます。
現場から見た「落とし穴」とその回避策
落とし穴1:名目上の該非判定だけで終わる
判定結果が「非該当」となれば安心、という空気が流れがちですが、「判定根拠」や「証拠資料」が不十分だと、後々大きな問題となります。
→ 根拠となる技術仕様や設計書などを明確に残し、社内・社外監査に即応できる体制を作りましょう。
落とし穴2:部品単体には該当しないが、組み合わせで規制対象になる
近年、「複数部品を組み合わせると規制該当」という事例が多発しています。
サプライヤーとして「部品単体だから」と油断せず、用途が一体運用となる製品は要注意です。
→ 取引先と積極的に用途や最終組立品の情報を共有することが不可欠です。
落とし穴3:アナログ書類管理による抜け漏れ
紙書類や個別担当者のPCに記録が散在し、いざという時に“誰も説明できない”事態もよく見受けられます。
→ クラウド型などデジタル管理システムを活用し、“誰もがわかる・いつでも追跡できる”ナレッジ資産を築きましょう。
未来の輸出管理―デジタルと人のハイブリッドへ
業界では「昭和の職人芸」から「共通言語・可視化・自動化」へと舵を切る動きが加速しています。
たとえばAIによる該非判定、ブロックチェーンによる記録の不可逆的トラッキング、申請書自動作成ツールなどが導入されつつあります。
しかし、最後に判断を下すのは人間です。
デジタルの力を使いこなしつつ、多様な現場視点やコミュニケーション力があってこそ、未来志向の輸出管理が実現します。
まとめ―バイヤー・サプライヤーの垣根を越えた共創体制を
輸出ライセンスは、もはや調達・購買担当者だけのテーマではありません。
生産現場も品質部門も、サプライヤー企業も、グローバル市場に関わる誰もが“自分ごと”として考える時代です。
普段のコミュニケーションの中で「こうしたら安心」「これを明確化すべきだ」という改善の種を出し合うことが、“日本製造業の競争力”をさらに押し上げます。
昭和的なアナログ体質から一歩踏み出し、部門を越えたラテラルな連携で、厳しい時代の中でも信頼されるものづくりを目指しましょう。
それが、現場の誰もが主役となる、未来の製造業のあるべき姿だと私は考えます。
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