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購買部門が実践する日本製品調達におけるKPI設定と管理方法

目次
日本の製造業における購買部門の役割とは
日本の製造業は、高品質な製品を安定して供給し続けることで世界から高い評価を受けています。
その競争力の根幹には、現場の生産力だけでなく、その生産を支える調達・購買部門の存在が欠かせません。
購買部門は、単に部品や原材料を「安く買う」だけの仕事ではありません。
品質、納期、コスト、安定供給、サステナビリティ──多様な視点でモノづくりを支える極めて重要なポジションです。
特に日本の製造現場では、交渉力やコスト削減だけでなく、きめ細かな品質管理やサプライヤーとの信頼構築まで求められており、その実践力が会社全体の収益やブランドにも直結します。
では、その購買部門は実際どのようにパフォーマンス向上を目指すのでしょうか。
今や購買も「勘と経験」だけでなく、「KPI(重要業績評価指標)」で業務を可視化・管理する時代です。
この記事では、日本製品調達における購買部門のKPI設定・管理手法について、現場目線で分かりやすく解説します。
購買部門で求められるKPI設定の本質
まずKPIとは何かを明確にしておきましょう。
KPI(Key Performance Indicator)は、目標(ゴール)に向かうために重要な進捗指標です。
単なる数字やスコアの羅列ではなく、「戦略的な視点から優先度の高い指標」を選び、日々管理していきます。
製造業の購買部門がKPIを設定する上で大切なのは、「何のために」「どこを改善したいのか」「どのくらいのスパンで観るのか」という点です。
KPIは、部門全体の方針や経営戦略とリンクさせて初めて効果を発揮します。
購買部門のKPIが重視される理由
特に日本の製造現場では、アナログ文化が根強いという業界の特徴があり、「これまでのやり方を変えたがらない」という空気があります。
ですがグローバル化・コスト競争の激化、生産変動への柔軟な対応、多様なサプライチェーンリスクなど、従来の「職人芸頼り」だけでは立ち行かない時代です。
KPI導入は、感覚的業務から論理的業務へのステップアップ。
属人化を防ぎ、若い世代や他部門への「見える化」にもつながります。
購買部門で使われる主なKPI指標一覧
購買部門における代表的なKPIをいくつか紹介します。
工場や業界によって重視する項目の順番は違ってきますが、現場視点で「これだけは外せない」指標をまとめました。
調達コスト削減率
購買部門の最大命題の一つがコスト削減。
前年度や年度初めの計画値に対して、どれだけ調達コストを削減できたかを%で管理します。
安易な値下げ交渉ではなく、工程改善や設計変更、サプライヤーとの共同開発など、持続的なコストダウンをKPIに反映させましょう。
品質不良率(不具合発生件数)
外部購買品の品質トラブルは、現場や顧客への大きな影響をもたらします。
瑕疵品、仕様違い、納入後クレームなど「単なるコスト指標」だけでないKPI設定が重要です。
取引先ごと、カテゴリごとに分けて可視化すると改善活動が効果的です。
納期遵守率(On-time Delivery)
調達部門への信頼の要ともなる納期管理。
予定納期に対して実際の納入状況をパーセンテージで管理します。
ここが乱れると工場の段取りがすべて崩れ、生産や営業にも悪影響を及ぼします。
在庫回転率・滞留在庫日数
適正在庫の維持は利益直結となる重要テーマです。
部品点数の多い業種ほど「死蔵在庫」や「緊急調達」がネックになりがち。
在庫回転日数や滞留在庫のKPIを細かく設定し、月次、四半期ごとに細やかにチェックしましょう。
新規サプライヤー開拓率
限られた取引先だけに依存するのは大きなリスクであり、経営リスク低減の観点からサプライヤーの多様化や新規開拓もKPIとして重要です。
案件ごとの開拓件数、候補先パイプライン、認定リードタイムなど現場感覚で数値化することに意義があります。
取引先とのパートナーシップ評価
単純なスポット取引だけでなく、サプライヤーとの信頼関係、提案力、協働改善の実績もKPIとして採用する企業が増えています。
“パートナーシップ・スコア”の導入は日本のものづくりならでは。
定性的指標も「点数化」し、第三者の目で評価する仕組みをつくるのが有効です。
具体的なKPI設定プロセスと実践方法
単にKPIを決めて表に落とし込んでも現場は動きません。
自動化・デジタル化が進む時代だからこそ、「現場の声」と「経営目線」をうまく連携させることがカギとなります。
KPI設定のステップ
1. 経営目標や製造戦略からブレークダウンする
2. 調達購買部門の担当業務・役割を細かく棚卸し
3. 各業務プロセスごとに「数字で管理できる項目」を洗い出す
4. 現場担当者、管理職、経営層で認識合わせ(トップダウン&ボトムアップ)
5. KPIの目標値と測定方法を明確化。進捗報告のサイクル設定
ポイントは「無理に多くの指標を追わない」こと。
2~4項目をまず集中的に回しPDCAを確立させてから、徐々に拡張・ブラッシュアップしていくのがコツです。
アナログ現場でのKPI定着のコツ
昭和的なアナログ現場では「数字管理への抵抗感」が根強いことも少なくありません。
現場担当の心を動かすためには、KPIが「トップの自己満」ではなく「現場を助ける」ためのものであることを伝えることが大切です。
例えば「不具合件数を減らせ」という大号令だけではモチベーションは下がります。
なぜそのKPIが重要なのか、生活や働きやすさ、生産効率改善へのつながりなど、現場目線の言葉で丁寧に説明することが必要です。
また、手書き日報やExcel管理が主流の会社こそ、最初の一歩は「紙+エクセル」で十分です。
一気にデジタルシステムへ移行せず、まずは「数値化・報告の習慣化」で風土を耕しましょう。
KPIを活用した調達戦略の強化事例
実際にKPIを効果的に活用し、組織や業績が向上した事例を紹介します。
コスト一辺倒から品質・納期重視体制へ転換
自動車部品メーカーA社では、長年「原材料費10%カット」というKPIだけに注力していました。
しかし、コストばかり重視したため不適合品の流出や納期遅延が多発、現場との摩擦も大きな課題となっていました。
そこでKPIを「品質不良率」「納期遵守率」を加えて再設計。
取引先ともKPIを共有し、「一緒に不良を減らす」「納期短縮案を考える」という意識に変化しました。
結果として、全体のコスト削減幅は小さくなったものの、歩留まりが向上し納期トラブルや緊急対応のコストがゆるやかに減少。
年間コスト全体ではプラスの成果を生みました。
属人業務からチーム管理体制への進化
電機関連メーカーB社では、購買担当がベテランの属人的スキルに頼った調達管理でした。
新人が育ちにくく事後対応・ブラックボックス化が慢性化していました。
そこで、月次の在庫回転日数・新規サプライヤー探索件数をKPIに設定し、全員で達成状況を“見える化”。
PDCA会議も刷新し「今日の課題」「明日の方針」を現場レベルで全員が話せる文化に変わりました。
人材育成スピードが格段にあがり、「他人の仕事も分かる」「KPI改善は自分ゴト」という風土が定着しました。
バイヤー志望の方・サプライヤーへ伝えたいKPIの考え方
バイヤーや購買を目指す方、またサプライヤーの立場で「発注側の内情」を知りたい方にもKPIの観点は有用です。
バイヤーに求められるのは、「KPIを自分の行動に落とし込む力」「数値で語れる力」「KPI越しに“現場の気持ちや問題”を読み取る力」です。
単なるルーチンワークで終わることなく、「なぜこの数字になったのか」「どんな改善が次につながるのか」。
一歩先を行く思考と発信が、キャリアの伸びしろになります。
また、サプライヤー(協力会社)としては「発注側がどんなKPIを見ているか」を理解することが取引拡大の鍵です。
納期遵守率や品質不良率など、バイヤーが困っているポイントを先回りして提案できれば、競争の中で頭ひとつ抜け出すことができます。
まとめ:KPIは“数字”ではなく“現場進化の武器”
購買部門のKPIは、単なる管理ツールでも上層部へのアピール材料でもありません。
現場の仕事を可視化し、組織を健全に成長させ、サプライチェーン全体をスムーズに動かす“現場進化の武器”です。
アナログな雰囲気が残る製造業でも、KPIの本質を押さえつつ地道に運用していくことで、ムダ取りや属人化解消、パートナーシップ強化など「見える景色」が確実に広がっていきます。
現場で働く方、これからバイヤーを目指す方、そしてサプライヤーの皆さんも「KPIというレンズ」で“日本ものづくり”の新しい可能性を見つけてみてはいかがでしょうか。
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