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効果測定を怠り投資対効果が見えない問題

目次
はじめに:なぜ効果測定が軽視されるのか
製造業において、新しい設備やITシステム、改善施策への投資は日常的に行われています。
しかし、その投資の成果や効果について「なんとなく目に見えていれば良い」とあいまいに済ませてしまう傾向が、未だに多くの現場で根強く残っています。
特に昭和から続くアナログ文化が色濃い工場では「長年の勘」「現場の肌感覚」が判断基準になりやすく、仕組みとしての効果測定や ROI(投資対効果)という考え方が浸透していないことがよくあります。
本記事では、なぜ効果測定を怠りやすいのか、効果測定がもたらす真の価値、そして投資対効果を現場目線で可視化し、本質的な競争力向上や利益創出につなげていく方法を、20年以上の現場経験から深く掘り下げます。
現場でよくある「なんとなく運用」とそのリスク
投資が目的化してしまう現場あるある
「最新鋭の設備を入れた」「DX推進で新しいシステムを導入した」といったニュースリリースや社内報告をよく目にします。
しかし、実際に現場で新設備やシステムを半年、一年運用してみて、「どれだけ効率化できたのか」「コスト削減につながったのか」を、明確な数値や根拠で即座に答えられる現場は意外に少ないのが実情です。
新しい取り組み自体が目的化し、「入れただけで満足」してしまい、成果を定量的に追跡・評価する仕組みを疎かにしてしまうのです。
現場の熱量や雰囲気に頼る会社のリスク
いまだに“とにかく現場の声を聴いて…”といった形骸化したミーティングでプロジェクトを運用している企業も存在します。
確かに現場の熱は重要ですが、逆に雰囲気が悪ければ設備や施策の評価そのものも必要以上に否定的になってしまうこともあります。
数値に基づいた客観的な判断軸を持たず、現場リーダーや部門長の主観で評価される習慣は、現場力を生かせないばかりか、投資の回収が見えないまま次の施策に移行してしまうという“負の連鎖”を生みます。
「アナログ文化」が投資対効果を曖昧にする構造
そもそも紙ベースのデータ記録や、属人的な業務分担が続く現場では、KPI設定やログ取得そのものが難しい場合も多いです。
「いつも通り」「前任者から聞いた通り」で済ませてしまい、設備投資や改善活動の成果を計測する“文化そのもの”が根付いていない会社も少なくありません。
結果、せっかくコンサルや現場支援で技術導入しても、効果検証がうやむやのままになり、現場から「どこがどう良くなったの?」という不信感すら出てきます。
なぜ「効果測定」が本当に必要なのか?
経営資源の最適配分が企業体質を強くする
投資対効果が“見える化”できない企業は、将来的なリソース配分も正しく判断できなくなります。
「前回、〇〇に〇〇万円かけたが、結局どれくらい利益改善につながったのか」が分からないと、次の予算や経営資源をどこに優先投下すべきか迷走します。
結果、無駄な投資の温床となり、“やった者勝ち” “現場担当者の声が大きい部門勝ち”となるのは非常に危険です。
そうなると、現場の生産性・効率化の本質が置き去りになり、業界全体が「利益の薄利多売競争」や「人手頼みから抜け出せない体質」へと悪循環します。
競争力の源泉は「データに基づく意思決定」
今やグローバル市場は、DX(デジタルトランスフォーメーション)やカーボンニュートラル、SDGs対応などが急速に進んでいます。
単純作業の自動化だけでなく、投資判断の正確性や、現場改革の科学的プロセス設計が競争力を左右します。
この流れに乗り遅れた “昭和的な現場文化”は、確実にサプライチェーン上で淘汰されていく時代です。
現場と経営の判断軸を「勘」から「データ」へシフトするには、日常的な効果測定こそが不可欠といえます。
投資対効果測定の「本当のハードル」とは?
どんな指標を追いかけるべきか悩む現場
「効果測定が重要」という認識があっても、どのような数値指標をKPIとして設定すれば良いのかで悩む企業は少なくありません。
例えば、自動化設備投資の場合、
・生産数量アップ率
・人件費削減額
・不良率低減
・リードタイム短縮
など様々なアプローチがあります。
現場や部門ごとに事情が大きく異なるため、「自社に本当に合った指標とは何か?」を定め、実際にデータを取得できる体制を作ることが大きなハードルです。
アナログ現場のデータ活用ギャップ
現場のデータ記録が手書き日報やエクセルファイルの寄せ集めだったりすると、正確な効果検証のためのデータ収集ですら膨大な負担です。
今現場で稼働している設備や人員配置にどんな“前後変化”が起きているのか、数値トレースする文化が根付いていないため、実行前と実行後の比較すらできないのが現状です。
「コスト意識」の低さが悪循環を招く
長年の日本製造業の現場には、
「とにかく良いものを真面目に作る」
「多少のコスト増は“現場力”で吸収すればいい」
という価値観が残っています。
この価値観が“投資対効果”を追求する構造改革のブレーキをかけていることにもっと注目すべきです。
投資対効果を「現場目線」でしっかり測る方法
1. 目指す成果を最初から“数値”で定義する
設備投資や新しい施策の検討段階から、「この投資でどれくらいの効果を狙いたいか」を数値で具体的に設定しましょう。
たとえば、
「生産性を月間15%向上させる」
「人員換算で3名分の作業負荷を削減する」
「歩留まり率を0.5ポイント改善する」
など、経営が判断でき、現場も実際に変化を体感できる指標を明確に打ち出すことが大切です。
2. “効果測定のタイミング”をスケジュールに組み込む
投資実行後、一定期間ごとに「効果の見直し」を行う仕組みを導入します。
たとえば、「導入半年後、1年後に定点観測」「運用現場の負荷や成果物に関するアンケート・ヒアリング」など、形骸化しない振り返りルールを、現場と経営が一緒になって作ります。
ポイントは「お飾りの報告書作成」ではなく、現場の声や肌感、そして数値変化をバランスよくフィードバックすることです。
3. データ収集の仕組みを簡素化、明文化する
手作業で記録する現場文化が残っている場合でも、できるだけシンプルなエクセルテンプレートや、現場スタッフ一人ひとりが記入しやすいフォーマットでデータ収集を設計します。
無理なく日常業務と並行してデータを蓄積できるようになれば、現場も「効果測定の負荷が高い」と敬遠しなくなります。
また、IoTやセンサー連携、QCサークル活動なども活用しやすい方法を柔軟に取り入れると効果的です。
4. 成果を“現場・経営・サプライヤー”で共有する
効果測定の結果は、狭い管理者層に留めず、関連する現場全体や関係サプライヤー・取引先にも積極的にフィードバックしていきましょう。
現場担当者のモチベーション向上や、次の改善活動アイデアの創出、バイヤーとのよりよいコミュニケーションにもつながります。
客観的な数値を使ってKGIやKPIを説明できれば、サプライヤーとしての信頼性も高まり、新規取引や協業の広がりも期待できます。
「効果測定できる現場」が生み出す本当の価値とは
現場の“納得感”が現実を大きく変える
役員や経営層の指示で動かされるだけではなく、「数値で証明できる成果」を目標に現場が一丸となることで、納得感ある“ものづくり風土”が生まれます。
これが習慣化されていくと、投資や改善活動には常に“真実の答え合わせ”がつきまとい、赤字プロジェクトや無駄な改善活動も減ります。
データドリブン経営への第一歩
さらに、データを蓄積していくことで、過去の投資パターンや成功事例・失敗事例が可視化されていきます。
経営や現場が常にファクトベースで議論することで、「どこを伸ばせば利益がどれだけ上がるのか」「どのサプライヤーや工程が本当に強みを持っているのか」といった戦略判断スピードが格段に上がります。
サプライチェーン全体の価値向上にも寄与
サプライヤー側の立場からしても、バイヤーの求めていることや評価している指標が“明確化”してくるため、「何を強みにアピールすればよいか」「どんな品質改善や提案が評価されやすいか」を予測しやすくなります。
結果、サプライチェーン全体で価値あるパートナーシップ構築がしやすくなるという波及効果まで生まれていくのです。
まとめ:まずは“小さな効果測定文化”から始めよう
現場目線でみた場合、投資対効果の効果測定は決して難解な分析や複雑なシステム投資が必須ではありません。
「どんな成果を期待して動くか」「その後どう数値で確かめるか」というシンプルなPDCA(計画・実行・評価・改善)のループを、小さなプロジェクトや設備投資からでも始めていくことが、会社全体の競争力を底上げする第一歩です。
現場・経営・サプライヤーそれぞれの立場で「納得感のある事実」を共通言語にし、これまで曖昧にされていた投資の意味や成果を次々と明らかにしていきましょう。
この地道な積み重ねが、昭和的アナログ体質から今求められる“データ経営型製造業”への本質的飛躍につながるのです。
今ある設備や仕組みを最大限活用しながら、「次の一手」を、データドリブンで見つけ出す——。
それこそが、現場目線での投資対効果“見える化”の本当の価値だと考えます。
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