投稿日:2025年10月11日

スナック菓子の油分を一定にする脱油ドラム回転と風量制御

スナック菓子製造における脱油工程の重要性

スナック菓子といえば、そのサクサク感とともに絶妙な油加減が、味や食感を決定します。
実際、製造現場では「油分のばらつき」が品質トラブルの大きな要因となりやすく、消費者離れやクレームにつながることも少なくありません。

油の含有量が多すぎれば、重たい食感やくどさが残り、逆に少なすぎれば生地本来の風味やパサつきにも直結します。
この繊細な仕上がりを支えるのが、脱油ドラムの役割です。

スナック菓子の大量生産において、油切り(脱油)工程で最適な油分を再現性高くコントロールすることは、昭和から続く伝統的な工場でも、最先端の自動化ラインでも普遍的な課題といえるでしょう。

脱油ドラムの基本原理と構造

ドラムの回転動作

脱油ドラムは、揚げ終わった菓子を適切に回転(または転がす)ことで、一度吸収した余分な油を外部に排出させます。
この工程なしでは、いくら丁寧に揚げても菓子表面の油がしっかり切れず、袋詰め時のベタつきや時間経過による風味劣化のリスクを残してしまうのです。

脱油ドラムは円筒状で、一定速度で回転し続ける構造が一般的です。
菓子原料が投入されると、内壁面で材料が持ち上げられ、ある位置で重力により落下します。
この繰り返し動作で、菓子表面の余分な油脂分が徐々に落下し、ドラム下部のトレイや配管を通じて回収されます。

回転速度のバランス

脱油ドラムの回転速度は、単純に速ければ油切れが良いというものではありません。
速すぎる回転は製品破損や生地の欠け、偏った油分除去を招き、遅すぎると必要な油分を十分に除去できません。

対象のスナックサイズや比重、表面積、吸油率、それぞれに異なる最適速度があります。
工場の現場では、昭和時代から受け継がれてきた「職人の感覚」も重要ですが、最近はセンシングや自動制御化による回転速度の最適化も進んでいます。

風量制御の役割と最新動向

エアブローによる油分コントロール

脱油ドラムには、風を吹き付けて油滴の飛散・除去を促進する仕組みが装備されることが一般的です。
このエアブロー(風量制御)は、油切り効率を大幅に向上させます。

最適な風量・風向を設定することで、均一に油分を除去しやすく、特に細かい打ち粉をまとった菓子や表面積の多い製品ほど、この風制御の巧拙が最終仕上がりにダイレクトに影響します。

逆に、強すぎる風は菓子の飛散や破損につながり、弱すぎれば油分が切れず品質ばらつきが拡大します。
まさに経験とデータの融合が必要な要素です。

自動化・IoTとの融合

最近の工場では、ドラム回転と風量の制御系にサーボモーターやインバーター制御、さらにはセンサー情報を連動させてリアルタイムで最適化を行う取り組みが進化しています。

例えば、ライン毎の温度・湿度・菓子投入量を常時モニタリングし、AI(人工知能)が「今日の最適脱油条件」を瞬時に算出する、そんなスマート化の実用例も広がり始めています。

従来の「習熟者による目視管理」だけではなく、ビッグデータや画像解析を活用して実操業者をサポートすることで、ヒューマンエラーの低減、省人化、複数工場での再現性向上といったメリットをもたらしています。

現場が抱える課題と、バイヤー・サプライヤー視点

油分量のバラつきがもたらす影響

スナック菓子の油分は、味や食感の他にも、賞味期限や輸送時の品質安定性、さらにはパッケージ内の油シミ発生リスクにも直結します。
もし油切り条件がラインや日ごとにばらつけば、出荷後のクレーム増加、返品コストの増大、果てはブランドイメージの毀損にもつながります。

特にバイヤーの立場では、スナック菓子を安定調達するため「油分規格」を厳しく求める傾向が強まっています。
一方で、仕様書通りの均一な品質を安価に納めることは、製造現場にとって大きな挑戦です。

アナログ業界の壁と変革の芽

伝統的なスナック工場は、職人の経験や肌感覚に強く頼っています。
「今日は湿気が多いから揚げ温度を少し高く…」
「この新ロットは油吸い込みが違うな」
こうした工夫の積み重ねが、時としてマニュアル化・再現性の壁となり、次世代技術導入の妨げになってきた歴史があります。

しかし近年、機械化・IoT導入のハードルが下がり、センサーやデータロガーを利用した「数値で現状把握する」意識も高まりつつあります。

バイヤー・サプライヤー双方にとっても、こうした客観データや自動機機能の進化は品質交渉の共通言語となりつつあり、アナログ業界における新たな信頼構築のカギとなるでしょう。

ラテラルシンキングで考える脱油ドラムの将来像

ここで一歩、従来の常識から横に発想を広げてみます。

・今まで「油を落とす」だけが目的だったドラムの内部設計を、「加熱・冷却・味付け・脱油」まで一体化した多機能ユニットに転換できないか?
・IoTで顧客フィードバックの声(「最近べたつくだよね…」)をリアルタイムでマシン学習し、製造現場の工程自体が「自ら最適化」していく工場AIは実用化できないか?
・未利用だった脱油油を新たなスナック加工やヘルシーオイル製造へ再利用する新たなサプライチェーンを設計できないか?
・脱油後の油分均一性をカメラ画像解析で可視化し、リアルタイムで製造バッチのトレーサビリティ保証につなげられないか?

こうした「脱油工程を起点にした新たな価値創出」は、現場視点・バイヤー視点・サプライヤー視点を横断して考えることで、付加価値の最大化や持続可能なものづくりスタイルへの転換点になります。

製造業バイヤー・サプライヤーに求められる視点

スナック菓子産業の未来において、バイヤー・サプライヤー双方には以下のような新たな視座が求められます。

・規格遵守やコストダウン交渉に加えて「工程管理の見える化」や「現場データの共有」に積極的に取り組む
・アナログ工程にデジタル技術を融合するため、現場と開発部門、購買部門、現場作業者との協働体制を築く
・消費者ニーズの変化(低油分志向、健康志向、環境志向)を柔軟にキャッチし、それを現場工程やサプライチェーン全体の設計に反映させる力

まとめ:スナック菓子の「おいしさ」を支える実践知の共有

スナック菓子における「絶妙な油分量のコントロール」は、決して一朝一夕で得られるものではありません。
脱油ドラムの回転条件、風量設定、そして現場とデータが融合した工程管理の積み重ねが、今日もおいしさとブランド価値を守っています。

製造サイドの職人技・知見だけでなく、デジタル技術やバイヤー視点、サプライヤー視点の多角化によって、今後も変化の激しい業界ニーズに柔軟に対応していくことが肝要です。

昭和から続くアナログの叡智と、現代の最新テクノロジー、その両輪がベストバランスとなる、その現場感覚の「リアル」を、これからも発信・共有し続けたいと思います。

You cannot copy content of this page