投稿日:2025年10月23日

英語が苦手でもできる中小企業の輸出営業メールと契約交渉のコツ

はじめに:中小企業の「輸出営業」は難しくない

製造業の現場で長年歩んできた私でも、初めて輸出営業に取り組んだ時は手探りでした。

日本のものづくりを世界に広めたいけれど、英語力や国際的な商習慣の壁に不安を抱える中小企業は少なくないでしょう。

ですが、本質は「相手に伝える誠意」と「地道な交渉力」にあります。

本記事では、実際の中小製造業でよくあるリアルな課題や現場目線も交え、「英語が苦手でもできる」輸出営業メールと契約交渉のコツを伝授します。

壮大な英語スキルより、実践的なノウハウや心構えの方が輸出業務には効くのです。

昭和から現代へ:なぜ今、輸出営業が必要なのか

国内市場の縮小と、その影響

日本の製造業、特に中小規模の企業にとって、国内市場の縮小は大きな脅威です。

家電や自動車のような巨大産業だけでなく、部品メーカーや金属加工など裾野の広い業種でも同じ悩みを抱えています。

少子高齢化による需要減、価格競争の激化、それに伴う利益率の低下。

この閉塞感の中で、海外市場に目を向け始める企業が増えています。

「アナログ」企業にでもチャンスがある理由

製造業は典型的な「昭和体質」を色濃く残す業界です。

FAXや電話が主流、図面も手書き・・・という会社もざらに存在します。

ですが、海外のバイヤーにとって、日本の「きめ細かな対応」「高品質」「誠実な納期遵守」は大きな価値です。

大手ではできない少量多品種やカスタマイズ生産、精密な品質管理、こういった特徴を活かせばアナログな企業にも活路はあります。

まずは「営業メール」から始める輸出営業

英語が苦手でも伝わるコツ

海外営業の一歩目は、バイヤーへのファーストコンタクトから。

英語に自信がなくても、ネット翻訳やテンプレートを賢く使えば、要点を押さえた内容は十分作成できます。

重要なのは「短く・分かりやすく・丁寧に」伝えること。

変に凝った表現や長文は必要ありません。

<例文>
Subject: Inquiry about [Product name/Your company’s business]

Dear [担当者名/Company Name],

My name is [YourName], working for [Company Name] in Japan.
We are a manufacturer of [あなたの製品説明、e.g. precision metal parts].
We are looking for reliable partners/distributors in your country.
If you are interested, please let us know.

Best regards,
[あなたの氏名]
[会社名・役職・連絡先]

このように、自己紹介、製品情報、希望(代理店・パートナー探し)、問い合わせの流れで十分です。

翻訳ツールの選び方と使い方

無料のGoogle翻訳も強力ですが、業界特有の専門用語や社内用語には注意が必要です。

DeepLなどの精度が高いツールや、見積書・図面等はプロの翻訳者に依頼するのも効果的です。

短い文章で、小分けにして翻訳すれば誤訳も減ります。

また、海外取引先からのメールも、翻訳ツールで日本語にして内容をしっかり把握するクセをつけましょう。

現場で役立つ「返信・提案」のテクニック

黙ってはいけない、スピード対応が信頼につながる

昭和的な商談では、どうしても社内根回しや上司決裁で時間がかかりがちです。

しかし、海外取引では、クイックレスポンスが信頼の第一歩です。

「回答には時間がかかる」と感じたら、そのこと自体も簡単な英語で先に返事しましょう。

<例文>
Thank you for your inquiry.
We will check the details and reply to you as soon as possible.

こうした「途中報告」があるだけで、海外バイヤーの印象は大きく変わります。

見積・資料を出すタイミングと注意点

金額や仕様など、見積の提示は早すぎても遅すぎてもよくありません。

条件が不明確な場合、「仮見積(Provisional Quotation)」として、あいまいな点は「To be discussed」と明記したうえで、いったん提示するのも実務上のテクニックです。

このとき、納期や梱包方法、最低ロット、品質保証条件などもなるべく明示しましょう。

英語での型番や寸法記載ミスが致命傷になる場合もあるため、ダブルチェックも必須です。

契約交渉を制すコツ:「言いなり」にならない勇気

バイヤーの本音を見抜く工場長的視点

海外バイヤーの交渉術は、日本と比べてずっと攻撃的です。

「もっと安く」「納期を短縮して」「リスクは取れない」と一方的な条件を迫ってくることも日常茶飯事です。

こうした交渉に耐えるには、「自社の強み」を工場長の目線で言語化して伝えること。

例:
We have been manufacturing [product] for over XX years in Japan. Our facility is equipped with [特長的な設備や管理体制] and skilled engineers.
We value quality and reliable delivery more than low price.

このように、安さではなく品質や信頼性、「ジャパン・クオリティ」で攻める戦法が効果的です。

安易な値引きに注意、条件交渉で主導権を握る

バイヤーに価格を下げてくれと頼まれた時、多くの現場では「どうしても断れず」値引きに応じてしまいがちです。

ですが、「まとめ注文なら割引」「納期を2週間猶予もらう代わりに価格据え置き」など、Win-Win条件を提案しましょう。

たとえ英語が完璧でなくても “If possible, for order volume 1,000 units, we can offer [X]% discount.” のようなシンプルな条件提示が大切です。

アフターサポートも「現場的な安心感」で差をつける

日本式の細やかさは海外に「感動」を生む

現場では「出荷したらおしまい」という意識が強いかもしれません。

しかし海外では、納品後の不良対応や情報提供が「リピート発注」の決め手になることが多いです。

不具合時には、すぐに現物写真を送ってもらい、どの工程で発生したかを説明する。

定期点検や次回生産のアドバイスなど、普段通りのきめ細かなコミュニケーションもメールで伝えましょう。

英語での定型文を自社マニュアルとして作っておけば、担当者が変わっても対応品質が維持できます。

実際の現場で使える「鉄板フレーズ集」

・Thank you for your inquiry.(お問い合わせありがとうございます。)
・We are pleased to offer the attached quotation.(お見積書を添付いたします。)
・We can manufacture according to your drawing/specification.(御社図面・仕様通りの製造が可能です。)
・The minimum order quantity is XX units.(最小注文数量はXX個です。)
・Should you have any questions, please feel free to contact us.(ご不明な点はご遠慮なくお問い合わせください。)

こうしたフレーズを自社なりにカスタマイズし、定型文帳を作っておくと、誰でも即応できる体制がつくれます。

まとめ:臆せず走りながら学ぶ、が最強の戦略

英語が流ちょうでなくても、立派な英文契約をくむ必要もありません。

要点さえ押さえれば、中小企業の皆さんでも海外バイヤーとの輸出営業は十分可能です。

現場目線で
・レスポンスの速さ
・情報の正確さ
・誠実な姿勢
を徹底すれば、ビジネス英語が苦手でも信頼を勝ち取れるのです。

まずは一通、勇気をもって海外にメールを出してみてください。

アナログな頑固親父の「現場魂」は、世界でも確実に求められています。

古くて新しい「MADE IN JAPAN」を輸出する中小企業の一歩に、この記事が役立つことを願っています。

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