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焼き物の技術を現代インテリア小物に展開するための耐久性設計と販売手法

目次
はじめに――焼き物の現代的価値再発見
製造業に従事し、調達購買や品質管理の現場を長年見てきた筆者ですが、焼き物――すなわち陶磁器――の持つ技術と伝統には、日本ならではの奥深さがあります。
長い歴史の中で培われた焼き物の知恵は、今や世界的ブームとなりつつある「モダンインテリア小物」にも新しい息吹を与えています。
かつては食器や置物など限られた使い道が主流でしたが、近年では、花瓶・ランプシェード・アクセサリートレイ・ウォールアートなど、より生活に密着したアイテムへの活用が目立ちます。
一方で、従来の伝統技術だけにとどまらず、“現代的な耐久性”や“顧客目線の販売戦略”が強く求められているのも事実です。
本記事では、現場の視点で、焼き物を現代インテリア小物へ展開するための耐久性設計と売れる販売手法を掘り下げます。
職人気質が色濃く残る昭和型アナログ業界において、いかにしてラテラルシンキングで新たな挑戦を成し得るか――。
製品開発やバイヤー、サプライヤーの方、そして現場のものづくりに関わる全ての方に、読み応えある実践知をお届けします。
焼き物の基礎――素材と技術革新の今
現代焼き物の基本素材と特長
焼き物は土(粘土)を原料とし、高温焼成によって硬化させた製品です。
大きく分けて、
・陶器(porcelain)……土の粒が大きく、吸水性あり、比較的低温で焼成
・磁器(ceramic)……粒子が細かく、硬質、吸水性ほぼなし、高温で焼成
に分類されます。
従来の焼き物業界では、伝統産地ごとの土や釉薬が使われてきました。
しかし、現代インテリア市場では「軽量化」「薄肉化」「高強度化」など、新しい素材価値や加工技術が重視されています。
真空成形・高圧鋳込み・サブミクロン粒子の調合といった手法が広がり、従来の重厚感溢れる焼き物とは一線を画す「薄くて丈夫な、扱いやすい焼き物」が台頭しています。
耐久性設計とその要諦
インテリア小物、特に人の手に頻繁に触れる雑貨において、最も懸念されるのは「割れやすさ」「欠け・ヒビの発生」「日常使いでの劣化」です。
このため、耐久性設計が最重要ポイントになります。
具体的には、
・素地の粒子径コントロール:高密度化し、ピンホール(微小空隙)や微細クラックを抑制
・焼成温度の最適化:高温での焼結により密着性を高め剛性を増す
・グレージング(釉掛け)の厚み調整:柔らかな印象を残しつつ、欠け・すり減りを防止
といった工夫が肝要です。
また、近年ではポリマー混合素材や、それらを焼き物表面にラミネートすることで、半永久的な耐水性・対摩耗性を実現した製品も登場しています。
現場目線では、これら新技術の導入コストと、最終製品価格とのバランスをどう調整するかが大きな課題となります。
現代インテリア小物としての焼き物――求められる要件とユーザー目線
「飾る」から「使う」へ:生活者目線の製品要求
現代インテリア市場では、純粋な観賞用から「日用品」としての位置づけが強くなっています。
焼き物はその質感や肌触り、自然な温もりが最大の魅力ですが、日常使いとなると、
・「落としても割れにくい」
・「洗いやすい」「汚れが染み込みにくい」
・「重すぎず、スタッキング(重ね置き)が可能」
・「マット、光沢、用途やインテリアシーンに合わせた多様な表情」
など、多岐にわたる要求が出てきます。
このため、商品設計段階から、誰が、いつ、どこで、どんな使い方をするかというペルソナ設計が必要不可欠です。
「昭和的こだわり」からの脱却と現代解釈
焼き物制作現場には、今なお伝統的な職人気質や手作業の美学が色濃く残っています。
これは重要な差別化要素となりますが、時に「時代遅れ」とも受け取られかねません。
たとえば、「一つ一つ手作り、だから同じものはふたつとない」ことの価値をどう伝えるか。
また、「傷や色のムラも味」とした従来の説明が、現代ユーザーの品質基準と合致しない場面も増えています。
ここでは「一点物の価値」と「品質の再定義」をうまく融合させることが求められます。
たとえば、敢えて部分焼成や限定色を採用し、「現代アート的な一点モノシリーズ」としてプレミア感を演出したり、“微細なムラがあるからこそあなたの日常が輝く”というストーリー設計で差別化を図るなどの手法が有効です。
販売戦略:バイヤー目線とサプライヤー戦略の両立
販路の多様化と提案力の磨き方
従来型焼き物メーカーでは、百貨店・専門店への卸中心でしたが、今や、
・セレクトショップやライフスタイル系雑貨店
・ECモール(Amazon、楽天、BASEなど)
・建築・インテリア施工会社への提案
・クラウドファンディングを活用したファンコミュニティ形成
など販路が多様化しています。
バイヤー視点では、「一過性の流行」より「物語性」「サステナビリティ」「独自性」に注目し、長期的なリピート性やアフターサービス体制も重要視します。
現場のサプライヤーは、ただ製品ラインナップを充実させるだけでなく、導入事例やユーザーの活用風景を具体的に訴求できる提案書や、プロトタイプ提供、現地納品サポートなどの“現場目線”が今後の競争力の分かれ目となります。
価格戦略とブランド設計――安売りにしないために
価格競争に巻き込まれやすい焼き物業界ですが、現代インテリア小物への展開では、単なる安売りは危険です。
むしろ「なぜこの価格なのか」を明確化し、
・原材料の出所や工程ごとのこだわり
・作り手の顔が見えるストーリー
・ユーザーボイスやSNSでの熱量
など、付加価値を前面に出すことが不可欠です。
一例として、“作家在廊イベント”や“あなたの食卓写真コンテスト”などでユーザーをブランドの一部とするしかけ。
あるいは「修理・交換保証」や「リペア対応」の安心感を加えることで、長く付き合えるインテリアブランドとしてのポジションを確立できます。
サプライヤーが知るべきバイヤーの本音――製造現場のリアルな関わり方
バイヤー側が求める信頼の3本柱
バイヤーと直接会話し、「どんな風に品定めし、どういう提案に価値を感じるか」を知ることで、サプライヤーの対応力は格段にアップします。
具体的に、バイヤーが重視するのは以下の3点です。
1. 安定した供給体制――納期遅延・生産中断リスクは最小に
2. 品質トレーサビリティ――ロットごとの原料、焼成、検品データの見える化
3. 柔軟なコラボ対応――卸先ごとの別注色、名入れ、サイズ調整などの即応性
これらを満たすことで、信頼関係が醸成され、末永いパートナーシップにつながります。
なぜ「人間関係」が未だに重要なのか?
いくらデジタル対応が進んでも、焼き物業界のようなBtoB取引では「人間関係」「顔の見えるやり取り」への信頼感が根強く残っています。
特に百貨店や大型インテリアショップのバイヤーは、伝統工場や作家を現地まで訪れることで「温度感」をチェックします。
この時、サプライヤーは現場の“失敗談”や“現場改善エピソード”などを真摯に説明することで、「一緒に成長するパートナー」としてバイヤーの心をつかむことができます。
ラテラルシンキング的提案――異業種連携と今後の展開
異業種コラボで広がる“焼き物の可能性”
焼き物技術は、陶器・磁器の枠を越え、ガラス・木工・金属・ファブリックなどとのコラボが盛んになっています。
たとえば、
・陶磁器+真鍮、ウッド:洗練された北欧テイストのインテリア
・焼き物+LED・スマート家電:IoT対応ランプシェードやセンサー内蔵花瓶
・焼き物+植物/苔玉:“育てる”アートインテリア
など斬新なアイディアが続々登場。
従来の伝統産地に新たな担い手を呼び込み、多様な異業種コラボ展示会やプロジェクト型商品開発に積極参加することで、完全新規顧客層へのアプローチも可能です。
DX化の波と工場現場の未来
工場現場レベルでも、IoTセンサーによる釉掛け厚みのリアルタイム計測や、AI画像認識によるキズ欠け検査など、DX/自動化が始まっています。
これにより品質安定とコスト低減が同時に実現し、バイヤー・ユーザー両者への信頼強化につながります。
アナログ業界ならではの“人手と機械のいいとこどり”を意識すれば、焼き物の現代的小物展開はさらに加速するでしょう。
まとめ:焼き物の伝統と現代の融合が切り拓く新市場
焼き物を現代インテリア小物に展開するとき、重要なのは「伝統の価値を再構築し、現代ユーザーの生活の中で永く愛される形に仕立てる」ことです。
現場発信の耐久性設計、実際の使い手目線、そして飽きられない提案力――。
時には異業種の知恵を借り、工場とバイヤー、ユーザーが三位一体で「新しい焼き物の物語」を紡ぐ時代です。
ものづくりに熱心な方、バイヤー志望の方、サプライヤーとして次の一歩を模索する方へ、ぜひ現場の知恵とラテラルシンキングで、焼き物の可能性を大きく広げてくださることを願っています。
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