投稿日:2025年10月28日

イベント業が自社ノベルティを企画するための素材調達と加工委託の進め方

はじめに

自社ノベルティの企画は、イベント業においてブランド価値を高め、顧客との長期的な関係を築く重要な施策です。
しかし、実際にどのように素材を調達し、加工委託を進め、理想的なノベルティを実現すればよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。

本記事では、大手製造業で20年以上管理職を務めてきた現場目線から、素材調達・加工委託の基本と、昭和時代から続くアナログな業界特性を踏まえた実践的な進め方を詳しく解説します。
これからバイヤーを目指す方や、サプライヤーとしてバイヤーのニーズを理解したい方も、ぜひ参考にしてください。

ノベルティ企画の基本プロセス

目的を明確化する

まず、ノベルティの目的を明確にすることが重要です。
単なる配布物ではなく、企業メッセージの伝達、リード獲得、ブランド定着など、具体的なゴールを設定しましょう。
この目的が、素材選定や加工方法の方向性を決めます。

予算と数量を確定する

イベントの規模や対象となる参加者の数から必要数量を算出し、それに見合った予算を設定します。
ここで注意したいのは、「安さ追求」だけに走ると企業価値を下げる恐れがあることです。
品質と予算の最適バランスを見極めましょう。

素材調達:現場目線で考えるポイント

サプライヤー選定が最重要

素材調達は、ノベルティ品質の基盤です。
使い捨ての印刷品か、再利用できる高級品かによって必要な素材やメーカーも大きく異なります。
このため、単純な価格比較だけでなく、次の点を重視してサプライヤーを選びましょう。

・品質管理体制(ISOなどの認証有無や実績)
・生産キャパシティ
・納期順守力
・情報開示やトレーサビリティ など

現場では、頼った取引先が納期を守れずイベントで配布できなかった、などのトラブルも多発します。
理想を追いすぎず、必ず複数社に見積もり・サンプル依頼をし、リスク分散を図りましょう。

サステナビリティ意識

近年は環境配慮が企業価値の一つとなっています。
エコ素材(バイオマスプラスチック、再生紙、FSC認証資材など)が選ばれる場面が増えています。
サプライヤー選定時にはこのポイントも加味すると導入提案時にアピールしやすくなります。

加工委託の実務ノウハウ

昭和的「顔の見える」取引から脱却するには

加工委託先との付き合い方は、今なおアナログ色が強い現場が多いのも事実です。
FAXや電話でのやりとり、現場での「なあなあ」契約がトラブルの火種になりがちです。

これを防ぐため、下記を徹底しましょう。

・図面や仕様書を明文化、発注前に合意形成
・加工サンプルを事前に取得し、現物評価
・進捗や工程管理はエクセル等で「見える化」
・主要条件は書面で契約として交わす

とはいえ、いきなり全てデジタル化は難しい現場も多いです。
「最低限守るべきポイント」「曖昧にしないこと」を意識し、アナログ現場との共存策も検討しましょう。

委託先とのWIN-WIN関係構築

イベント業は短納期&小ロットが基本となるため、委託先の負担が大きいのが実情です。
安くて良いものをすばやく、という要求は一見合理的ですが、下請け構造が強いアナログ業界では取引の継続性や信頼感が不可欠です。

発注ロットの調整や、閑散期の依頼優先、長期的な取引計画の提示など、委託先の立場も尊重し未来志向の関係を築くことが重要です。

品質保証:最前線の現場で起きること

検査とフィードバックを仕組み化

ノベルティはブランドイメージに直結します。
「不良品が混じっていた」「ロゴの色味が違う」などのトラブルは厳禁です。

納品前には、サンプル検査・ロット検査を必ず実施します。
チェックリストを作成し、「誰が・いつ・どこで・どの様に検査したか」履歴を残します。
また、不良品が見つかった場合は、委託先と改善策を協議し次回以降の再発を防止しましょう。

ゼロトラブルは幻想、再発防止文化を

現場目線で言えば、どれだけ気を付けてもトラブルゼロはありえません。
大事なのは「なぜ起きたか」「どう防止するか」を建設的に話し合い、仕組みに落とし込む風土を作ることです。

数回の小さな失敗を経て、最終的に理想的なノベルティが安定調達できる体制が育ちます。

アナログ業界にこそデジタル活用を

業界特有の「昭和体質」とその克服

製造委託や素材調達の現場は、未だに見積はFAXのみ、連絡は電話のみという取引先も少なくありません。
しかし、今だからこそ積極的にデジタルツールを組み合わせることで、品質・納期のリスクを大幅に下げられます。

例えば、下記の仕組みを取り入れましょう。

・進捗共有:Googleスプレッドシートやチャットワークの利用
・クラウドストレージで図面・仕様書・契約書を一元管理
・フォーマット統一による見積・発注工数削減

小さな一歩でも、業界全体の効率化と働き方改革の第一歩となります。

サプライヤー・バイヤー双方が知るべき「相手の視点」

バイヤーが重視する視点

バイヤー(発注側)は「この品質で、この納期、この価格で」と三拍子揃った取引を求めがちです。
ですが、現場リスクや委託先のキャパシティを考慮せず無理な要求をしてしまうと、サプライヤー側の不安や品質トラブルに繋がります。

発注する際は、「委託先の技量・許容範囲」「追加費用が発生する場合の線引き」を確認した上で、ベストな落としどころを探ってください。

サプライヤーが知るべきバイヤー心理

サプライヤー側も、単なる供給者としてではなく、バイヤーの「困りごとを解決できるパートナー」になることが今後の生き残り戦略です。

短納期や多頻度の仕様変更などバイヤーの苦労に寄り添い、「技術提案」「コストダウン提案」「代替品の即時紹介」などプラスアルファの対応が差別化につながります。

まとめ:新しい時代のノベルティ製作へ

イベント業が自社ノベルティを企画する際の素材調達・加工委託プロセスは、昭和時代からのアナログ慣習が根強く残る一方で、サステナブル素材の導入やテクノロジー活用など、変革の波が押し寄せています。
業界の古い枠組みを理解しつつ、現代の効率性と透明性を積極的に融合していくことが、今後のノベルティ製作には不可欠です。

発注者と委託先がお互いの視点を尊重し合い、継続的なコミュニケーションと小さな改善を積み重ねることで、唯一無二の「選ばれるノベルティ」を創り上げていきましょう。

これからバイヤーを目指す方も、サプライヤーとして活躍したい方も、ぜひ現場のリアルな知恵を取り入れ、新しい時代のものづくりにチャレンジしてください。

You cannot copy content of this page