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OEM工場のスキルを引き出す“コミュニケーション設計”

目次
OEM工場のスキルを引き出す“コミュニケーション設計”とは
日本の製造業は、長い歴史と高度な技術力を誇り、モノづくり大国として国内外から高い評価を受けてきました。
しかし、人口減少・高齢化・人材不足といった社会変化に加え、グローバル競争やデジタル化の波が一気に押し寄せ、現場は変革期を迎えています。
特に“昭和”の仕事のやり方に根ざしたアナログな現場が多いOEM工場では、ノウハウやスキルの継承が課題となっています。
製造業のバイヤーとして、あるいはサプライヤーとして、これらOEM工場とどのように向き合い、確実にスキルや知見を引き出すか。
そのカギとなるのが、「コミュニケーション設計」です。
本記事では、20年以上の現場経験から得た知見をもとに、“OEM工場のスキルを引き出す”実践的なコミュニケーション設計のポイントを徹底解説します。
なぜ今、「コミュニケーション設計」がカギとなるのか
製造業における隠れた資産「現場スキル」
製造現場には、図面や手順書から読み取れる以上に多くの“暗黙知”が存在しています。
機械の音や振動から違和感を感じ取る勘、原材料の微妙な違いを嗅ぎ分ける経験、工程の最適なタイミングを見極めるセンス――。
こうした現場力は、社員の入れ替わりや担当変更などで簡単に失われてしまう場合があります。
さらに、経営層やバイヤーと現場との間での意識ギャップや、伝達不足が品質トラブルや納期遅延を招くケースも少なくありません。
つまり、「対話」や「問いかけ」、「情報の共有設計」が、現場の実力を最大限に発揮するうえで不可欠になっています。
スキル継承と「コミュニケーション設計」の関係
特にOEM工場では、多様なクライアントの要望に応えつつ、短納期や低コスト化も求められます。
「いつものやり方」だけで通用しない現場では、ベテラン・若手を問わず、技術やノウハウを正しく伝える仕組みづくりが欠かせません。
その際、「何を、だれに、どのタイミングで、どのように伝えるか」という“コミュニケーション設計”の巧拙が、工場の生産性や品質、モチベーションに大きく影響します。
コミュニケーション設計のフレームワーク
1. 目線合わせ:目的とゴールの言語化
コミュニケーション設計のファーストステップは、「目的」の明確化です。
バイヤーとして製造現場に“伝えたいこと”や“期待している成果”を明文化し、相手の咀嚼度を確認します。
特にOEMの場合、「なぜこの仕様が必要なのか」「完成品でどんな価値を提供したいのか」を背景から情報提供することが、全体最適につながります。
サプライヤーの現場担当者が「何のために?」「どこまでやれば合格か?」といった“WHY”や“ゴール”を腹落ちできているかを、最初の段階で丹念に確認しましょう。
2. 言葉の定義合わせ:用語・尺度の共通認識
OEM工場との応対でよくあるのが、同じ言葉でも意味や温度感が異なる「すり合わせ不足」です。
「適正」「標準」「良品」という言葉は、曖昧な定義のまま現場に落とし込むと、作業者ごとに判断基準がぶれてしまいます。
品質基準書やワークフロー図を作り込むだけでなく、用語や尺度を現場で使われている“リアルな言葉”で翻訳し直し、相互に確認しましょう。
現場ミーティングや日報コメント欄などの活用も有効です。
3. フィードバックループ:双方向性・可視化
一方的な指示伝達は、受け手の理解度や納得感を置き去りにしてしまいます。
「不良が多かった」「納期が守れなかった」といった事後報告だけのやりとりでは、本質的な改善にはつながりません。
そこで有効なのが「フィードバックループ」の設計です。
作業前のすり合わせ(朝礼、作業指示書読み合わせ)と、作業後の振り返り(反省点・改善案のシェア)をPDCAサイクルの一部として制度化します。
情報共有ツール(チャット、オンライン議事録、看板など)を併用し、認識のズレを“見える化”してすぐに補正できる仕組みを整えましょう。
昭和的アナログ現場でも「生きる」コミュニケーション術
紙・対面文化を逆手に取るポイント
日本の中小製造業やOEM工場には、今も「紙」「電話」「口頭」中心の現場が少なくありません。
これを単なる“遅れ”と捉えるよりも、むしろ“肌感覚”“顔合わせ”の文化として活かすことが重要です。
たとえば、図面に書き込んだメモや、現場端末の紙ホワイトボード、手書きの連絡ノート――。
この“アナログツール”に、気づきや改善ヒント、疑問点などを随時書き溜めてもらい、それを定期的に「掘り起こす」ラウンドミーティングを組み込みます。
担当者のみならず他部門や経営層を巻き込む「見える化」は、あらゆるリスクの早期発見に力を発揮します。
「聞く力」「問う力」の磨き方
コミュニケーション設計に不可欠なのは、指示の“伝え方”だけでなく、“聞き出し方”や“問いかけ”の質です。
現場の声を引き出すためには、「困っていることはないか」「本音で言いにくいことはないか」を掘り下げるヒアリング力も必要となります。
具体的には、朝礼や現場巡回時に小グループで「最近感じた変化」や「気になること」を一人ひとりから聞き出す。
また、「なぜこのプロセスを守る必要があると感じるか」「もし自由に変えるなら、どこを改善するか」など、思考を刺激するオープンな問いを投げかけます。
こうした対話の積み重ねが、現場知の“棚卸し”につながります。
業界横断の知恵を“翻訳”して現場に落とす
デジタル化やスマートファクトリーのトレンドはいまや避けられませんが、すべての工場が一足飛びにDX化できるわけではありません。
ITツールが現場になじめず、逆に現場力が低下する事例も多いのが実情です。
大切なのは、業界の最新トレンドを現場目線にあわせて“翻訳”し、段階的に取り入れる工夫です。
例えば、「不良対策」のノウハウをエクセルのチェックシートやシンプルなチャートとして提供し、紙の現場記録とも連携させる。
「見える化」と「標準化」の小さな成功体験を積み重ねていくことで、現場の抵抗感が薄れ、新しいコミュニケーション手法が根付いていきます。
現場力を最大化する“バイヤー視点”のコミュニケーション
バイヤーが意識すべき「4つの視点」
OEM工場の潜在力を引き出すうえで、バイヤー(購買担当者)が持つべき視点は次の4つです。
1. パートナーシップ志向:
OEM工場を“下請け”と捉えず、“ニーズ共有・共創”のパートナーとして接する。
現場の想いや事情を理解するスタンスが、提案力や現場改善意欲を引き出します。
2. ボトムアップ型のヒアリング:
現場担当者レベルから提案や課題を吸い上げ、経営・開発サイドとスムーズにつなぐ調整役となる。
現場事情の吸い上げを怠ると、絵に描いた餅の品質・生産計画になりがちです。
3. インセンティブ設計:
現場改善や技術提案へ対する評価、継続発注や表彰など、「やりがい」としての仕組みを工場と協議します。
一時的なコストダウン要求だけでなく、長期的な信頼関係づくりが成果を左右します。
4. 変化対応力:
当初の計画どおりに進まない局面で、柔軟に対応策をともに考える力。
“決めつけ”や“責任転嫁”ではなく、建設的な対話による共創体制を意識しましょう。
「バイヤーが工場の現場にできること」チェックリスト
– 作業現場への定期的な足運びと、現場メンバーとの顔合わせ
– 製造現場が使いやすいフォーマット・伝達手法の提供(紙・チャット・現場掲示等)
– 工程変更、仕様変更時の根拠や目的の丁寧な説明
– 成果や提案への感謝・称賛を言葉で伝える
– 問題発生時の迅速な共有・対話・復旧支援
バイヤーが“率先して現場と対話する姿勢”を見せることで、現場のやる気や挑戦意欲も大きく向上します。
おわりに:製造業の未来は「コミュニケーション設計」から
AIやDXが進展しても、製造業の力の根源は「人」にあります。
昭和時代から受け継がれる現場の知恵を、現代ふうにアップデートする。
その起点になるのが、単なる発言・指示に留まらない「コミュニケーション設計」です。
OEM工場とバイヤーが本音で語り合い、現場スキルを可視化し、継承・発展させる仕組みをつくる。
この“土台づくり”こそが、製造業の現場に新しい地平線を切り拓く最大の原動力となります。
地道なコミュニケーション設計で、あなたの工場・サプライヤーの力を、次の時代へと確かに引き継いでいきましょう。
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