投稿日:2025年12月2日

材料ロット差が品質に直結し再検査が多発する現場の苦労

はじめに:材料ロット差の現実と、日本の製造業に残るアナログな壁

材料ロット差——この言葉に、現場経験のある製造業従事者であれば、誰もが「ああ……」と重い溜息を漏らすはずです。

現場は日々「ものづくり」の最前線に立ち続けています。
しかし、昭和から抜け出せないようなアナログな体制と、グローバルなデジタル競争の間に挟まれ、今もなお素材や部品の“ロット差”による品質の揺らぎに振り回されている現実があります。

本稿では、製造工程のなかで材料ロット差がいかに品質に直結し、なぜ再検査が急増して現場を苦しめているのか、その実態と苦悩、さらには現場改善やバイヤー視点のポイント、デジタル時代の突破口も交えて解説します。

バイヤー志望の方やサプライヤーとしてバイヤーの本音を知りたい方にも、きっと役立つ知見を提供します。

材料ロット差とは何か?現場の目線で考える基本原理

まず前提として、「材料ロット差」とは、生産材料や部品が同じ仕様・品質基準で納入されても、実際にはロットごとに微妙なばらつき(差異)が生じる現象を指します。

たとえば、同じ金属コイルでも、ロットAとロットBで強度や伸び、寸法安定性、表面粗さなどが微妙に異なることがあります。
これは金属材料に限らず、樹脂、電子部品、接着剤、塗料、さらには作業手順が複雑な組立品などでも起こります。

なぜロット差が発生するのか。
それは、原料調達のばらつき、設備ごとの癖、工程設定の微妙な違い、気候や温度などの環境要因、さらにはサプライヤーのノウハウ・マンパワーまでさまざまな要素が絡み合っているためです。

現場の本音を言えば、“スペック内”であってもギリギリの数値で大量に納品されるほど、工程にとっては扱いづらく、出来栄えの不安定さや再検査につながります。

現場で増える再検査、その苦しい舞台裏

現場管理者として何度も経験したことですが、材料ロット差が顕著に出ると、下記のような問題が発生します。

生産中の「異常品」頻発

新ロットへの切り替え直後に「寸法外れ発生」「組立時の勘合不良」「色ムラ」など、工程トラブルが噴出します。
大企業ほど多種多様な製品を小ロット多品種で回すことが多く、切替頻度が高まる分だけリスクも増します。

再検査工数の劇的増加

異常が発覚すれば「仕掛品」の再検査・再選別が発生します。
ライン停止や追加検査の工数増大による生産性低下が、現場全体に重くのしかかります。
お客様向けの抜き取り検査を「全数検査」に拡大せざるを得ず、時間や人手、コストが跳ね上がってしまうのも常です。

現場の士気低下と“納期遅延”リスク

「また再検査か」「なぜこんなにバラつくのか」。
作業員や検査担当者の心理的負担は大きなものです。
再検査や手直しが計画以上に増えれば、納期遅延や品質クレームという形で現場のストレスはさらに高まります。

なぜ今なお材料ロット差の“見逃し”が多いのか

正直に言えば、日本の多くの製造現場はいまだに“アナログ管理”から完全には抜け出せていません。

「経験と勘」頼みの現場管理

長年の職人技や、ベテランの「感覚」だけでロット切替を見極めている現場も多いのが実情です。
材料ロットごとの微妙な変化を、標準的な手順や検査項目に十分“落とし込めていない”ため、異常発見が後手後手に回りがちです。

「検査記録」の形式化と実用性のジレンマ

QC工程表や検査記録シートは確かに厳格になってきてはいますが、「毎日判子を押すのが仕事」「とりあえず規定数を測定」といった“形式主義”が根強く残っています。
だからこそ、「たまたま運良く逸脱が見逃される」現象が起こりやすく、数ヶ月後にクレームとなって噴出するのです。

サプライヤー側の事情と密接な現場連携不足

原材料メーカーやサブサプライヤーの側でも、「歩留まり向上」「人員の流動化」などの事情からロット内ばらつきが一時的に増えることがあります。
これに気づいても、「現場へうまく情報共有できていない」「突発的な材料切替を現場で咄嗟に対応せざるを得ない」といった、連携不足が背景に潜んでいます。

バイヤー・サプライヤー双方に求められる“ロット差への覚悟”

ここで視点を変えてみましょう。
現場の「困った!」は、バイヤーや調達担当、さらにはサプライヤー側にも直結する課題です。

バイヤーが「本当に知るべき」こと

バイヤーとして働くのであれば、単に「価格や納期」だけではなく、「過去実績で材料ロット差による不良率の変動」「納入時の検査項目」「サプライヤー現地の品質管理体制」について深く踏み込んでヒアリングする能力が求められます。

また、スペックだけでなく「受け入れ許容範囲」「何を“品質の基準”とするか」を現場や設計部門と連携して明確化することが大切です。

サプライヤーが「現場の困りごと」を知る重要性

逆に、サプライヤーの立場であれば、「なぜ顧客現場で急な検査強化や再選別要請が増えてきたのか」を表面的に受け止めるだけでなく、「どんな状況でどういう現象が起こったのか」「自社側で事前に予知できなかったか」まで突き詰めて確認する姿勢が不可欠です。

顧客現場の管理者や作業者と、日常的に双方向で情報交換する姿勢が信頼に繋がります。

ロット差対策の突破口:デジタル活用と現場主導型改善

この“材料ロット差”による品質揺らぎ、そして再検査工数の増大から抜けだす道はあるのでしょうか。
最新トレンドと昭和的な現場管理の現実を組み合わせて、実効性ある打ち手を考えてみましょう。

IoT・センシングの力を活かす

現在は、IoT技術やAI画像解析による「生産工程・検査工程の自動データ収集」が加速度的に普及しています。
材料ロットごとの生産条件や加工データ、検査データをリアルタイムで集積することで、「ロットごとの傾向」を早期に把握できるようになりました。

特に、誤差が許されない精密加工や電子部品分野では、材料吐出や加工圧などの“プロセスデータ”と“ロットID”を結びつけることで、再現性ある品質保証に大きく近づいています。

“現場主導”のカイゼン活動を継続する

一方で、「職人技を完全に排除」するのは非現実的です。
現場で発生した品質異常やロット切替時のトラブルを、その都度「なぜ?」「どうすれば予知できたか?」を現場チームで話し合い、対策・標準化・教育に落とし込む「泥臭い改善活動」が、昭和アナログの強みです。

本当に優れた会社は、IoTやAIを活かしつつも「ヒヤリハット申告」「現場発提案」などの文化を大切にしています。

サプライチェーン全体での情報透明化

「ロット管理は現場だけの仕事」という考え方は限界に来ています。
サプライヤー→バイヤー→工場→出荷先まで、ロット追跡や品質情報がシームレスにつながる仕組み作りが不可欠です。

例えば、生産計画変更や納期変更、材料の特性変動などをITシステムで連携し、「危なそうなロット」が流れてこない仕組みに進化させることが重要です。

まとめ:材料ロット差と向き合う覚悟と“次代”への発想転換

材料ロット差による品質問題は、日本の製造業がいまだに乗り越え切れない、根深い課題のひとつです。

材料・部品サイドの“見えない誤差”をゼロにすることは不可能ですが、「現場目線」「バイヤーの深い洞察」「サプライヤーの歩み寄り」「現場とデジタルの両立」により再検査や生産ロスを最小限に抑えることは可能です。

アナログの現場感覚と、最新のデジタル技術の相乗効果を最大化し、「ロット差を前提に、どう工程を守るか」という哲学的な視点こそが、製造業の持続的成長の鍵になります。

あなたがバイヤー志望でも、サプライヤーであっても、現場管理者であっても——このロット差と向きあう覚悟と、前向きなアクションが、次代の製造業を変える力になるはずです。

現場からの“本音”を、これからもみなさんと共有し続けたいと思います。

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