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投稿日:2025年12月12日

仕様追加のたびに図面が複雑化し新規メンバーが読み解けない負の連鎖

はじめに:製造業における図面の複雑化が招く現場の混乱

製造業において、設計図面は製品づくりの根幹ともいえる要素です。

部品や製品の仕様追加が繰り返されるたびに、図面は複雑化する傾向があります。

その結果として、「新規メンバーが図面を理解できない」「設計意図を現場で読み間違える」といった負の連鎖が起こりやすくなります。

俗に言う“昭和のやり方”が未だ色濃く残る製造業の現場では、アナログな情報伝達や属人的な知識継承の壁が根強く、図面の複雑化問題は解消されにくいのが実情です。

本記事では、20年以上の現場経験を持つ筆者の目線から、図面複雑化の実態、現場で生じている課題、バイヤーやサプライヤーが取るべき実践的な対策を深掘りします。

ラテラルシンキングで真の原因を掘り下げつつ、新たな解決のヒントを提案します。

図面の複雑化がなぜ起こるのか

1. 仕様追加と都度対応が常態化する現場

現場からの細かな改善要求、顧客ごとの要求仕様、グローバル規格への対応など、製品開発が進むほど図面は何度も改訂されます。

その際、もとの設計意図やストーリーが図面上で充分に反映されないまま、”追記”や”補足メモ”が加わっていきます。

これが積み重なることで、最初はシンプルだった図面が、情報と注記で埋め尽くされた“迷路”のような図面へと変貌していきます。

2. 属人的な設計・改訂プロセス

昭和から続く設計現場の多くには、未だエクセルと手書きメモを使った設計変更依頼書や、設計担当者ごとに異なる“図面の流儀”が存在します。

業務引き継ぎの際も、「あの赤ペンの追記は●●さん担当だったから…」といった空気が残りがちです。

そのため、新しいメンバーや外部サプライヤーが図面を手にしたとき、“意図”まで読み取るのは極めて困難です。

3. 情報の断片化と属人ノウハウのブラックボックス化

図面の最新版はシステム上にあるが、重要な設計変更点は社内イントラの掲示板や口頭伝達、メールや社内チャットツールに散在していることも珍しくありません。

また、業務プロセスの“見える化”が不十分な製造業現場では、「設計者本人に直接聞かないと分からない」ノウハウが蓄積していきます。

これが新規メンバーや取引先サプライヤーにとって、大きな障壁となります。

“読み解けない図面”がもたらす負の連鎖

1. 品質不良・手戻り・納期遅延の温床に

設計意図の理解ミスや最新仕様の見落としは、部品や製品の不良率を跳ね上げます。

「図面通りに作ったが、設計変更点が伝わっていなかった」「サプライヤーが古い図面で作業を進めてしまった」といったトラブルは後を絶ちません。

やり直し対応や手直しコスト、納期遅延などの業務ロスが雪だるま式に増えていきます。

2. 新規メンバー・若手人材の定着を妨げる

現場OJTによる人材教育も、「とりあえず図面を読みこなせ」という精神論に終始してしまいがちです。

「先輩について覚えろ」「質問すれば答えるから」という社風では、学ぶ側のストレスは大きく、離職や戦力化の遅れに直結します。

結果として同じ属人化のスパイラルを繰り返してしまいます。

3. サプライヤーとの協業機会の損失

図面が読みづらい、誤解を招きやすい場合、サプライヤー側はリスクや不安を感じます。

「ここは正確に指示されていない」「社内用語がわからない」など、曖昧な指示は誤認・トラブルの元凶です。

安心して協業できる強いサプライチェーンは築きづらく、優秀なパートナーほど離れていきやすいのです。

アナログからの脱却!現場目線で図面運用を変えるための実践対策

1. “一枚図面主義”から“多層設計ドキュメント”への転換

従来の「すべての情報は一枚の図面に盛り込む」やり方は、限界にきています。

図面はあくまで俯瞰的な“概要レイヤ”、細部仕様や意図説明は設計補足ドキュメントや3Dデータ、動画アノテーションなど複数レイヤで補完する手法を取り入れましょう。

GoogleドライブやBoxなどのクラウドストレージを使い、最新版の関連資料を一元管理する運用も効果的です。

2. 図面上に“なぜこの仕様が必要か”ストーリーを残す

注記事項や設計補足メモに“理由”を簡潔に追記するだけで、新規/外部者が意図を理解する大きなヒントになります。

例えば「この寸法公差は過去の品質トラブルを踏まえ追加」「この加工指示は輸出先の規制対応」など、背景情報を組み込んでいくことで、図面が単なるカタチではなく“伝えるツール”に生まれ変わります。

3. 設計変更管理と“通知文化”の徹底

設計変更(ECN: Engineering Change Notice)の運用ルールを明確にしましょう。

どのような変更を、だれが、いつ、だれに通知し、履歴はどこに残すのか。

ワークフローシステムやタスク管理ツール(Asana、Notionなど)の活用も有効ですが、最終受け手(現場担当・サプライヤー)が確実に内容を把握したかどうかの確認にこそ注力すべきです。

あくまで“伝えきる”を意識しましょう。

4. 新人教育を“読み方指導”から“WHY型設計思考”へ

図面の読み方そのものよりも、「なぜこの設計がなされたのか」「変更判断の根拠は何か」をキャッチアップする教育に重きを置きましょう。

教育担当者は意識的に背景説明を挟み、「今後は後輩やサプライヤーにも同じ視点で説明できる人材」へと育てていくことが重要です。

ロールプレイングや模擬注文シナリオでの実践演習も現場で好評です。

5. サプライヤー視点でバイヤーのニーズを見極める

納入側(サプライヤー)の立場なら、図面や仕様書の曖昧な記載、注釈の不足、改訂履歴の不明瞭さに対し、積極的に質問や確認を行うのが理想的です。

「この点はどのような意図ですか?」「最新仕様はここでよろしいですか?」というコミュニケーションが増えることで、図面をめぐるトラブルを未然に防げます。

バイヤーも、こういった視点で“伝わる図面”“参画しやすい図面運用”を自ら意識すると良いでしょう。

未来志向の“新しい図面管理文化”に向けて

DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用

CADデータや3D図面といった最新ツールを積極的に導入しつつ、それらを管理するPLM(プロダクト・ライフサイクル・マネジメント)システムや、バージョン管理ツールの運用を強化しましょう。

紙図面やアナログな共有を否定するのではなく、デジタルデータと併用し、誰が見ても最新・正しい情報にアクセスできる土壌づくりが重要です。

“人と人の補完”が不可欠

どんなにDXが進んでも、“図面の背景にあるストーリー”まで完全にはデータ化しきれません。

設計者が新メンバーやサプライヤーと直接対話し、「ここはなぜこうなっているか」を説明することも大切です。

オンラインミーティングや動画マニュアルで補足説明するのも効果的です。

まとめ:図面の複雑化にストップをかけ、強い現場を創る

図面が複雑化する過程には、長年の業務プロセスや産業文化が深く関わっています。

新しい技術や仕組みだけ闇雲に導入しても、根本の“人”や“組織の意識”が変わらなければ、負の連鎖は断ち切れません。

バイヤー、サプライヤー、現場メンバーの全員が「伝え方」と「意図の共有」を重視し、“目に見える図面”以上の情報を共有していく努力が、これからの製造業の現場には必要です。

図面管理の抜本改革は、一朝一夕には成し得ない難題ですが、必ずしも大規模なシステム導入が必須とは限りません。

今日できる工夫から、小さな一歩を現場で積み重ねていく。

それが「読み解けない図面」の負の連鎖に終止符を打ち、誰もが強い現場へと進化する確かな一歩となるのです。

製造業に関わる全ての方へ、現場発の知恵で共に新しいステージを築きましょう。

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