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投稿日:2026年1月22日

コネクティッド・カー化でIoTソリューション選定が迷走する背景

はじめに:コネクティッド・カー化が加速する時代背景

自動車業界は、かつてない転換期にあります。

コネクティッド・カー、すなわちインターネットや各種ネットワークで常時接続された自動車が普及しています。

車両本体や部品の電子化はもちろん、さまざまなセンサーや通信モジュールが装備され、車がデータを「発信」「受信」し続けるようになりました。

背景には、安全性向上、顧客体験の高度化、新たなビジネスモデルの創出、そして「CASE(コネクテッド、オートノマス、シェアリング、エレクトリック)」と呼ばれる潮流があります。

この流れを牽引するのが、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)ソリューションです。

ところが、ここ数年、多くのメーカーやサプライヤーが「どのIoTソリューションを選ぶべきか?」で迷走している現状が見受けられます。

なぜこれほど混乱が生じるのか、その背景を現場目線で深掘りします。

IoTソリューション選定が迷走する主な要因

技術の多様化・進化スピードについていけない現場

昭和以来、製造業の多くは「あるべき姿」を標準化し、長期スパンで設備投資やシステム導入を実行してきました。

ところが、IoT領域は“進化のサイクル”が極端に短く、標準規格も流動的です。

無線通信一つ取っても、4G、5G、LPWA(Low Power Wide Area)、Wi-Fiと用途・コストが異なるものが複数乱立しています。

どの技術が数年後に生き残るかが読みにくく、「今、決断できない」という現場の悩みにつながっています。

プラットフォーム選択による“囲い込み”への懸念

データ収集・解析、OTA(Over The Air:無線によるソフト更新)、セキュリティ管理など、IoTにはさまざまなクラウドプラットフォームがあります。

しかし、特定ベンダーやグローバルGAFA企業のプラットフォームを選ぶと、後々のデータ移行や連携で「ベンダーロックイン」に陥るリスクも伴います。

現場サイドでは、「短期的な利便性」よりも「長期的な柔軟性」「サプライチェーン全体の汎用性」を重視したいという思惑も根強く、これが判断の迷いにつながっています。

現場が本当に求める“ミニマム要件”が見えにくい

IoTベンダー各社は、AI解析やデジタルツインなど最先端機能を含んだソリューションを次々に提案します。

ところが、多くの現場担当者からは「まずは既存設備の稼働状態やエラー通知を取るのが目的」「いきなり高度な予知保全や自動化は求めていない」「余計な機能でランニングコスト・運用負荷だけが上がる」といった声が絶えません。

つまり、本来の目的・課題設定と提供されるソリューションの持つ機能・アピールポイントが噛み合わず、決断ができなくなる現象が起きているのです。

昭和的アナログ文化が与えるインパクト

日本の製造業では、いまだ現場主義、紙文化、属人的ノウハウの蓄積が色濃く残っています。

ハンコ・紙帳票・FAX・現場巡回といった習慣は、データの自動収集やIoT連携と「根本思想」が異なります。

システム投資・運用コストやIT人材不足、全社標準化の難しさといった課題もあり、IoTソリューションの導入そのものに「アレルギー」が生じがちです。

特に、現場スタッフや熟練作業者が主体の工場では、「設備のデータは俺たちの肌感覚で十分」「現場を知らず机上でシステム構築するなんて本末転倒」という保守的な意見や抵抗感も無視できません。

これはIoTソリューションのPoC(概念実証)段階では成功しても、量産・全社展開で失速する要因にもなっています。

ベンダー側の“現場理解不足”が招くかみ合わなさ

一方で、ITベンダーやIoTソリューションの提供側にも課題があります。

多くの提案が「グローバル最新事例」や「データドリブン経営」を前面に出しすぎるあまり、実際の現場課題や実装プロセスを的確に把握できていません。

実際には、既存設備の多くが20年以上前の“レガシー設備”です。

ラインが止まらないよう小手先の工夫を繰り返して延命している場合が多く、「新製品投入」「設備入れ替え」と「データ連携」が同期できていないこともしばしばです。

「なぜそのデータを取りたいのか?」「どこでアラートが必要なのか?」「現場スタッフが本当に使いこなせるUIはどうあるべきか?」といった実運用時のトラブルシュートこそが本質ですが、ベンダー側が“標準仕様”に固執し、個別現場との対話・すり合わせが不十分なことが、迷走の根本要因として横たわっています。

バイヤーやサプライヤーの視点からみるIoT選定の論点

バイヤーが考える“拡張性”と“柔軟性”

購買・調達部門としては、単一工場・設備に最適化したものではなく、将来的なライン拡張やサプライチェーン連携も想定したIoTアーキテクチャを求めます。

部品・素材サプライヤーとのシームレスなデータ連携や、工場間の横展開を見据える必要があるため、「最初からがっちり囲い込み」を避ける傾向が強いです。

実際には、「今すぐ全社統一基盤を用意するのは難しいが、将来的なM&Aや工場増設にも対応できること」が選定条件となります。

サプライヤーが知っておきたいバイヤーの本音

サプライヤー側は「バイヤーが提案したIoT仕様」をそのまま満たすだけではなく、プロアクティブに現場課題を“翻訳”し、実装に落とし込むスキル・視点が求められます。

同時に、バイヤー側も「自社独自仕様」にこだわりすぎ、サプライヤー側に過度の負担やコスト増を強いるのではなく、業界標準化・相互運用性(インターオペラビリティ)を念頭に置く必要があります。

近年は、購買コストだけでなく「協業によるバリューチェーン全体の最適化」まで考えるメーカーが増えつつあります。

この視点は、IoTソリューション選定においても極めて重要です。

現場目線からの「迷走しない」選定基準とは

結局、IoTソリューション選定で迷走しやすい理由は「目的不明確」「意思決定主体の混乱」「現場-IT-経営間のギャップ」に集約されます。

現場目線から、迷走を防ぐためには次のようなポイントが挙げられるでしょう。

1.PoC(概念実証)は“できるだけ小さく・早く”

現場でいきなり全面展開するのではなく、1ラインや1エリアで“ミニマムに実証”し、現場スタッフと共に「使い勝手」「情報の精度」「運用のしきい値」を確認すること。

そのうえで、成功要因・失敗要因を定量化してフィードバックする仕組みづくりが肝要です。

2.“コミュニケーション密度”を設計段階から確保

IT部門・現場運用担当・バイヤー・サプライヤーが定例会等で意見を交換し、「このデータは本当に必要か?」「更新頻度・通知方法は現場に適しているか?」を徹底議論。

誰が(Who)、何を(What)、どのタイミングで(When)、どの手段で(How)確認・活用するか、現場のオペレーションシナリオに即して定義しましょう。

3.現場の属人的ノウハウを“見える化”する工夫

「暗黙知」のまま属人化しがちな設備・工程管理ノウハウこそ、データと組み合わせて見える化する仕掛けが極めて重要です。

たとえば、現場作業者のメモやチェックリストをデジタル化し、IoTシステムと連携させることで、運用ノウハウの標準化が実現できます。

まとめ:IoT選定とコネクティッド・カー時代の本質

コネクティッド・カー化の波は不可逆的なものであり、IoTソリューション選定の迷走も“変革期特有の副産物”と言えます。

ですが、迷走を恐れるより、むしろPDCAを高速で回し、「現場主導」の小さな成功体験を継続的に積み重ねることが、最終的な競争力につながります。

なによりも重要なのは、「新しいソリューション導入の目的」が現場・バイヤー・経営・サプライヤーで共通認識できているかどうかです。

技術進化が著しい現代だからこそ、昭和的なアナログ文化=“現場の知恵”と最先端IoTソリューションを融合させてこそ、日本の製造業は真のコネクティッド時代を迎えることができるのです。

ぜひ、業界内外を問わず現場×購買×サプライヤーが一体となり、“日本のものづくり”の新たな地平線を切り開いていきましょう。

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