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流出不良の選別費は仕入先に請求できるか——契約・民法・取適法で分ける

この記事のポイント(結論先出し)
流出不良の後始末にかかった選別費や再検査費、ライン停止の損失を仕入先に持たせられるかは、一つの問いではない。取引基本契約や品質保証協定で何を決めていたか、決めていなかったときに民法でどこまで求められるか、取適法がかかる取引でその費用を代金から差し引いてよいか、の三つに分かれる。民法は債務不履行による損害の賠償を認めつつ、債務者の責めに帰することができない事由による場合を外し、賠償の範囲も通常生ずべき損害と、予見すべきであった特別の事情による損害に絞っている[1]。取適法の側では、代金を減らしてよいのは受領拒否か返品が認められる理由がある場合に限られ、減らせる額にも上限が付いている[2]。「請求してよいか」と「代金から引いてよいか」は別の問いで、後者は減額の規制に直結する。どちらも、原因と金額の根拠を記録で示せるかどうかで結論が動く。
目次
「請求できるか」は三つの問いに分かれる
受入検査をすり抜けた部品が組立工程で見つかる。在庫と仕掛品を全数選別し、選別済みの品を再検査し、そのあいだラインを止める。場合によっては出荷済みの製品について客先から連絡が来る。後始末が一段落したところで、購買には「この費用を仕入先に請求してほしい」という依頼が回ってくる。
ここで請求書の金額を積み上げる前に、問いを分けておく必要がある。第一に、取引基本契約や品質保証協定で、費用の負担について何を決めていたか。第二に、決めていなかった場合に、民法の原則でどこまで求められるか。第三に、その取引が中小受託取引適正化法(取適法)の対象で、しかも費用を支払う代金から差し引くつもりなら、減額の規制に触れないか。三つは根拠も結論の出方も違うので、まとめて「請求できる/できない」で考えると判断を誤る。
費目ごとに三つの問いを当てると、次のように整理できる。表の右端の列は「差し引いてよい」と読むものではなく、差し引く前に確かめる枠を示している。
| 費目 | 契約で決めていた場合 | 契約に定めがない場合(民法) | 取適法の対象で代金から差し引く場合 |
|---|---|---|---|
| 不良品そのものの代金 | 返品・代替品の条件に従う | 第 562 条の追完、第 563 条の代金減額 | 受領を拒んだ・引き取らせた給付の代金の額まで |
| 自社で行った手直しの費用 | 決めた単価・算定方法が出発点 | 第 415 条・第 416 条の損害賠償の範囲 | 理由をあらかじめ伝えたうえで受領等をした場合に、客観的に相当と認められる額まで |
| 選別費・再検査費 | 決めた単価・算定方法が出発点 | 損害賠償の範囲(通常生ずべき損害か) | テキストに個別の記載なし。減額の枠に収まるかを確かめる |
| ライン停止による損失 | 上限や対象外を決めておく項目 | 特別の事情による損害なら予見すべきであったかが問われる | 同上 |
| 客先への賠償・回収の費用 | 分担の割合と協議の手順 | 上記に加え、自社側の過失は第 418 条で考慮される | 振興基準は合理的な割合での負担と、一方的に負担させないことを求めている |
表の条番号は民法のもの[1]、右端の列は公正取引委員会と中小企業庁のテキストに基づく[2]。以下、列ごとに中身を見ていく。
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契約で決めた範囲が出発点になる——ただし合意は万能ではない
費用の負担を最初に左右するのは、当事者が何を約束していたかである。民法第 420 条は、当事者が債務不履行について損害賠償の額を予定することができるとし、違約金は賠償額の予定と推定すると定めている[1]。選別に要した人時を「1 人 1 時間あたり○円」で計算する、再検査は実費とする、ライン停止の損失は対象外とする、一件あたりの上限を置く。こうした取り決めがあれば、請求額の計算はそこから始まる。
協定にどの項目を入れておくかは、品質保証条項の曖昧さと、協定書に入れる項目で整理した。この記事では、決めた取り決めがどこまで通用するかを見る。
合意していても、取適法の減額には当たりうる
取適法の対象となる取引では、合意の存在が防御にならない場面がある。テキストは、仮に当事者のあいだで代金の減額等についてあらかじめ合意があったとしても、中小受託事業者の責めに帰すべき理由なく代金の額を減ずる場合は違反になると述べている[2]。協定に選別費の単価を書いていても、責任の所在が曖昧なまま代金から差し引けば、この一文に当たる。合意書や慣行が抗弁にならない点は減額に当たる行為と当たらない行為で詳しく扱っている。
一方的に決めた罰則は、取適法の外でも問題になりうる
取適法とは別に、独占禁止法には優越的地位の濫用の規制があり、公正取引委員会がその考え方を公表している。そこでは、優越しているというために市場支配的な地位までは要らず、取引の相手方との関係で相対的に優越していれば足りるとしている[3]。
そのうえで想定例として、相手方が納期までに納品できなかった場合や納入した商品に瑕疵があった場合に課すペナルティについて、その額や算出根拠を十分協議することなく一方的に定め、瑕疵がなければ得られた利益相当額を超える額を負担させることを挙げている[3]。選別費の単価や上限を協定に書くときは、仕入先と協議したうえで決めたこと、算出の根拠があることを記録に残しておく意味がここにある。
もう一つの想定例は、方向が逆の話である。自己が支給した部品や原材料の不具合、自己が行った設計の不備など、自己に責任があるにもかかわらず、最終ユーザーからのクレームについて自己は一切責任を負わず、損害賠償を含むクレーム対応を無償ですべて相手方に行わせることが挙げられている[3]。こちらが渡した材料や図面が原因の不適合を相手に転嫁できない点は、民法の請負の規定にも置かれている。その扱いは外注契約書に入れる条項で見ている。
契約に定めがないとき——民法で越える四つの関門
協定に費用の定めがない、あるいは「別途協議」としか書いていない場合は、民法の原則に戻る。請求が通るまでに、少なくとも四つの関門がある。
関門 1:責めに帰することができない事由なら、賠償は求められない
民法第 415 条第 1 項は、債務者が債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者はこれによって生じた損害の賠償を請求できるとする[1]。ただし、その不履行が契約その他の債務の発生原因と取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでないという但し書きが付く[1]。
実務に引き直すと、選別費を請求する前に、不良の原因が仕入先の側にあることを示せるかが問われる。原因が支給材の性状や自社の図面の指示にあるなら、結論は変わりうる。原因を仕入先に特定してもらう手順は仕入先への是正処置の求め方で扱っている。是正回答が出ないまま金額の話を始めると、原因の議論と費用の議論が混ざって決着が遠のく。
関門 2:賠償の範囲は、通常の損害と予見すべきだった損害まで
第 416 条第 1 項は、債務の不履行に対する損害賠償は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることを目的とするとし、第 2 項は、特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは賠償を請求できると定めている[1]。
選別費や再検査費のように、不良の混入が分かった時点でロットを使う前に発生する費用と、ライン停止によって失われた生産や客先への賠償のように、自社の生産計画や客先との契約があって初めて生じる損失とでは、この条文のどちら側で議論されるかが違ってくる。どちらに当たるか、予見すべきであったかは個別の事情で判断されるので、ここで線を引くことはできない。実務でできるのは、その部品がどの製品のどの工程に使われ、供給が止まるとどうなるかを、取引の開始時や量産の立上げ時に書面で仕入先に伝えておくことである。予見すべきであったかどうかをめぐる争点を減らす材料になる。
関門 3:自社側の過失は、責任と額に反映される
第 418 条は、債務の不履行またはこれによる損害の発生もしくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所はこれを考慮して損害賠償の責任とその額を定めるとしている[1]。条文が「発生」だけでなく「拡大」を挙げている点が、流出不良では効いてくる。
たとえば、自社の受入検査基準で見つけられるはずだった不適合を見逃していた場合や、疑わしいロットを識別・隔離しないまま工程に流し続けて選別の対象を広げた場合には、その部分が自社の過失として考慮されうる。選別費の全額を請求するつもりなら、発見から隔離までの経過を時刻つきで残しておく必要がある。発見時点で何を書き留めるかは不適合報告書(NCR)の書き方にまとめている。
関門 4:追完・代金減額・損害賠償は、別々の請求として組み立てる
売買の目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないとき、買主は修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しによる履行の追完を請求できる(第 562 条第 1 項)[1]。売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法で追完できる[1]。追完がされないときの代金減額は、原則として相当の期間を定めて追完を催告し、その期間内に追完がないときに、不適合の程度に応じて請求するものである(第 563 条第 1 項)[1]。そして第 564 条は、これらの規定が第 415 条による損害賠償の請求や解除権の行使を妨げないとしている[1]。
条文の組み立てからすると、代金減額は不良品そのものの価値に見合って代金を下げる仕組みであり、選別に費やした人件費のように代金の外側で発生した費用は、第 564 条が残している損害賠償の側で扱うことになる。請求書に「値引き」として一行で載せるのではなく、代替品の納入(追完)、不良品の代金、損害賠償としての選別費・再検査費を分けて書くほうが、相手が社内で処理しやすく、後の協議でも論点がぶれない。どの不良品を返し、どれを手直しや廃棄にするかの判断は不適合品の処置の決め方で扱う。
その前に:通知の期限を過ぎると請求自体ができない
四つの関門の手前に、期限の問題がある。商人間の売買では、商法第 526 条により、買主は受領後遅滞なく検査し、不適合を発見したら直ちに通知しなければ、追完・代金減額・損害賠償・解除を請求できない。直ちに発見できない種類・品質の不適合も、6 か月以内に発見したときは同じ扱いになる[4]。民法第 566 条は、種類・品質の不適合を知った時から 1 年以内の通知を求め、請負については第 637 条に同じく 1 年の定めがある[1]。取引が売買と請負のどちらに当たるかで当てはまる規定が変わり、その区別は前掲の外注契約書の記事で整理した。選別費の請求を検討している時点で、通知を済ませたかどうかを先に確かめる。
取適法がかかる取引で「代金から差し引く」とき
ここからは、仕入先が中小受託事業者に当たり、製造委託や修理委託として発注している場合の話である。対象かどうかの判定は自社の取引は取適法の対象かで先に確認してほしい。
取適法第 5 条第 1 項第 3 号が禁じているのは、責めに帰すべき理由が中小受託事業者の側にないのに代金の額を減ずることである[5]。テキストによれば、責めに帰すべき理由があるとして代金を減ずることが認められるのは、次の場合に限られる[2]。
| 場面 | 前提 | 減じてよい額の上限 |
|---|---|---|
| 受領を拒んだ | 受領拒否が認められる理由がある | その給付に係る代金の額 |
| 理由を伝えたうえで受領した | 委託内容に合致させるため自社が手直しをした、または委託内容と異なること等や納期遅れによる商品価値の低下が明らか | 客観的に相当と認められる額 |
| 受領後に引き取らせた | 返品が認められる理由がある | その給付に係る代金の額 |
| 理由を伝えたうえで引き取らせなかった | 自社が手直しをした、または商品価値の低下が明らか | 客観的に相当と認められる額 |
この表から読めることは三つある。一つは、差し引ける額に上限があることで、4 行のうち 2 行は給付に係る代金の額まで、残り 2 行は客観的に相当と認められる額までとされている[2]。もう一つは、テキストが相当額の場面として挙げているのが「手直し」と「商品価値の低下」であって、選別費、再検査費、ライン停止の損失をこの枠でどう扱うかは個別に書かれていないことである。書かれていない以上、この表を「選別費も差し引いてよい」根拠として読むことはできない。三つ目は、返品が認められる理由があることが前提になっている行で、返品そのものの可否と期間は受領拒否・返品・やり直しの線引きの結論に従う。
別に振り込ませれば減額にならない、とは言えない
代金は満額払い、選別費は別の請求書で払ってもらう。この形なら減額の問題を避けられると考えがちだが、テキストは、代金の額を「減ずること」には、代金から差し引く方法のほか、委託事業者の口座へ減ずる金額を振り込ませる方法等も含まれるとしている[2]。支払の経路を変えても、責めに帰すべき理由がなければ結論は変わらない。
一方でテキストは、中小受託事業者に販売した商品等の対価や、貸付金等の弁済期にある債権を代金から差し引くことは「減ずること」に当たらないとしている[2]。流出不良による損害賠償の請求権がこれと同じ扱いになるかは、テキストの記載からは読み取れない。社内で「相殺だから減額ではない」と整理して処理する前に、この点が書かれていないことを踏まえておきたい。
人を出させる、金銭を払わせる場合の規定もある
取適法第 5 条第 2 項第 2 号は、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることによって、中小受託事業者の利益を不当に害することを禁じている[5]。テキストは、この経済上の利益に、代金の支払とは独立して行われる金銭の提供や作業への労務の提供等が含まれるとし、負担額や算出根拠、使途、提供の条件等が明確になっていない場合は、利益を不当に害するものとして問題になると説明している[2]。
流出不良では、選別作業に仕入先の人員を呼ぶ場面が少なくない。不良の原因が仕入先にあるなら、代替品の引渡しは追完として求められる[1]。しかし選別への人員の協力は、条文が挙げる追完の方法そのものではない。原因が確定していない段階で人を出させる、あるいは負担の範囲を決めないまま作業を続けさせると、この規定との関係が問われうる。呼ぶ時点で、何のための作業か、費用をどう扱うかを書面で合意しておく。
検査を遅らせると、責めに帰すべき理由そのものが崩れる
テキストの想定問答には、物品を預けて加工だけを委託する取引について、受領後に遅滞なく検査を行わず、後日判明した不適合をすぐに通知しないまま自社で所有し続けたうえで代金から差し引く場合は、中小受託事業者の責めに帰すべき理由があるとは認められないという回答がある[2]。流出不良は、そもそも受入検査で見つからなかったから流出している。取引の形は限られた例だが、見つかったあとの隔離と通知を急ぐ理由は、民法や商法の通知期限だけでなく、この回答にもある。
受入検査で合格させた後に、客先から不良を指摘されたとき
いちばん揉めるのは、受入検査で合格とした品について、出荷後に客先から指摘を受け、回収や客先への補償が発生した場面である。この場面の手順を具体的に書いているのが、受託中小企業振興法第 3 条第 1 項に基づく振興基準で、主務大臣が指導や助言を行う際に用いられている[2]。
振興基準の第 4 の 4 は「納品の検査の方法の改善」を定め、その (3) で、委託事業者が自ら検査を行い、または委任して中小受託事業者に検査を行わせ、その検査を合格とした場合で、その後に納入先等からの指摘により引取り、やり直し、損害賠償を行うこととなったときの扱いを示している[2]。要点は次の順序である。
1. 不具合の有無と原因を明らかにする
本当に不具合なのか、どこで生じたのかを先に確定させる。
2. 仕入先にも負担を求める必要性と合理性を確認する
引取り、やり直し、損害賠償に必要となる人員の手当や金銭の支払について、委託事業者がすべてを負担せず中小受託事業者にも負担を求めることの必要性と合理性の有無を十分に確認する[2]。
3. 取引対価を勘案して協議し、合理的な割合で負担する
負担を求める場合は、双方がその物品等の納品により得た取引対価を勘案しつつ十分に協議し、双方が合理的な割合で負担するものとし、一方的に中小受託事業者に引取り、やり直し、損害賠償を負担させないものとされている[2]。
「取引対価を勘案」という言葉が入っている意味は重い。単価の数十円の部品で数百万円の回収費用が出たとき、全額を仕入先に回すことが合理的な割合かどうかは、この観点から問われる。優越的地位の濫用の考え方も、減額が認められる場合について、瑕疵の程度に応じて正当に評価される金額の範囲内で行う必要があり、これを超える減額は相当と認められる金額の範囲内とは認められないとしている[3]。
請求の前に揃える記録
ここまでの論点は、どれも「示せるかどうか」で結論が動く。原因が仕入先にあること、自社が遅滞なく検査し通知したこと、損害の拡大に自社の過失が関わっていないこと、金額の算出根拠があること、協議を経たこと。請求書を出す前に、次の記録が揃っているかを見ておく。
| 記録 | 中身 | 効く論点 |
|---|---|---|
| 発見と隔離の記録 | 発見日時・場所、ロット、数量、隔離した時刻と場所 | 損害の拡大に自社の過失がないか(第 418 条) |
| 通知の記録 | いつ、誰に、何を伝えたか | 通知期限(商法第 526 条・民法第 566 条)、取適法の想定問答 |
| 原因の特定 | 仕入先の是正回答、発生原因と流出原因 | 責めに帰することができない事由か(第 415 条) |
| 選別・再検査の記録 | 対象数量、良品数・不良数、人数、時間、単価の根拠 | 金額の算出根拠、相当と認められる額か |
| 処置の決定 | 返品・手直し・廃棄の別と、決めた人 | 追完・減額・損害賠償のどれで扱うか |
| 協議と合意 | 提示した金額、相手の意見、合意した割合と支払方法 | 一方的な負担でないこと(振興基準・優越的地位の考え方) |
選別の記録は、後から作ると必ず争いになる。対象を何個選別し、何個が不良だったか、何人が何時間かかったかは、作業の当日に作業者の記録として残す。時間単価も、社内で決めた根拠のある数字を使う。相手が社内で稟議にかけられる形に揃えておくことが、結果として早い決着につながる。
よくある質問
協定に選別費の単価を書いておけば、そのまま代金から差し引けますか
取適法の対象となる取引では、合意があっても責めに帰すべき理由がなければ減額として違反になる[2]。理由がある場合でも、減じてよい場面と上限が決まっており、選別費をその枠でどう扱うかはテキストに個別の記載がない[2]。単価の取り決めは請求額を計算する出発点として役に立つが、差し引きを正当化する根拠にはならないと考えておくほうが安全である。
仕入先が原因を認めないときは、どうすればよいですか
費用の話を先に進めないことである。民法は責めに帰することができない事由による不履行を賠償の対象から外しており[1]、振興基準も不具合の有無とその原因を明らかにすることを負担の協議より先に置いている[2]。現品、測定データ、ロットの履歴を揃え、是正処置の要求として原因の回答を求めるところから始める。
取適法の対象にならない大企業同士の取引なら、自由に決めてよいですか
取適法とは別に、独占禁止法の優越的地位の濫用の規制がある。公正取引委員会の考え方では、優越しているというのに市場支配的な地位までは要らず、相手方との関係で相対的に優越していれば足りるとされ[3]、瑕疵に対するペナルティを協議なく一方的に定めて利益相当額を超えて負担させることは想定例に挙がっている[3]。規模で線を引いて安心することはできない。
ライン停止の損失も請求書に入れてよいですか
請求すること自体は妨げられないが、民法の通常損害と特別損害の区別[1]、自社側の過失の考慮[1]、振興基準の合理的な割合[2]という三つの観点で必ず争点になる。選別費や再検査費と同じ請求書に混ぜると、議論の決着しやすい部分まで止まってしまう。費目を分けて、根拠の固い順に協議するほうがよい。
まとめ
流出不良の費用を仕入先に持たせる話は、契約、民法、取適法の三層で結論が違う。契約で決めた単価や上限は計算の出発点になるが、一方的に決めたものや、取適法の対象取引で理由なく差し引くものは通らない[2][3]。契約に定めがなければ、責めに帰することができない事由、損害の範囲、自社側の過失、追完と損害賠償の組み立てという関門を順に越えることになる[1]。
取適法の対象取引で代金から差し引く場合は、認められる場面と上限がテキストで決まっており、選別費やライン停止の損失をその枠で扱う根拠は書かれていない[2]。別に振り込ませても減額に含まれうる[2]。検査で合格させた後に客先から指摘された場合は、原因の解明、必要性と合理性の確認、取引対価を勘案した協議という振興基準の順序に沿って進める[2]。どの段でも、決め手になるのは発見から合意までの記録である。
出典・参考資料
- 民法(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
- 優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(公正取引委員会/平成 22 年 11 月 30 日・令和 8 年 6 月 17 日改正)
- 商法(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
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