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投稿日:2026年8月28日 | 更新日:2026年8月31日

自社の取引は取適法の対象か——資本金・従業員・取引内容で判定する

この記事のポイント(結論先出し)

取適法が適用されるかどうかは、当事者の規模取引の内容の両方が条件に当てはまるかで決まる。規模はまず資本金で見て、資本金で当たらなかった場合にだけ従業員数で見る。2 つの基準は並列ではない。判定の時点は発注をした日で、その後に相手の従業員数が増減しても、いったん決まった適用関係は動かない。発注側に相手の従業員数を調べる義務はないが、見積依頼の様式に確認欄を 1 つ足しておけば、判定の根拠が取引のたびに記録として残る。資本金だけで対象外と整理していた取引先が対象に入っていないか、まず一覧を作り直すところから始めたい。

判定は 2 つの条件の掛け算

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取適法は、対象になる取引の範囲を、当事者の規模と取引の内容という 2 つの面から定めている。どちらか一方だけでは対象にならず、両方を満たしたときにはじめて適用される[1]

取引の内容として挙がっているのは、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託の 5 つである[2]。ここに当てはまらない取引、たとえば完成品を仕様の指定なしに買うだけの売買は、相手が何人の会社であっても取適法の対象にならない。

逆に、取引の内容が当てはまっていても規模の条件を外れれば対象外になる。判定の順番としては、まず自社が相手に対して何を委託しているのかを確定させ、そのうえで規模を当てるのが手戻りが少ない。この記事が扱うのは後半の規模のほうである。先に確定させるべき前半、つまり自社の発注が 5 類型のどれに当たるのかは5 つの取引類型の線引きで扱っているので、そちらから読むと順番どおりに進められる。

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ステップ 1 資本金で見る

資本金(または出資の総額)による区分は、取引の種類で 2 系統に分かれている[1]。製造業の調達で扱う取引はほぼ上の系統に入る。

取引の種類 発注側(委託事業者) 受注側(中小受託事業者)
製造委託・修理委託・特定運送委託/プログラムの作成/運送・倉庫保管・情報処理 資本金 3 億円超 個人、または資本金 3 億円以下
資本金 1 千万円超 3 億円以下 個人、または資本金 1 千万円以下
上記以外の情報成果物作成委託・役務提供委託 資本金 5 千万円超 個人、または資本金 5 千万円以下
資本金 1 千万円超 5 千万円以下 個人、または資本金 1 千万円以下

表を読むときの注意が 2 つある。ひとつは、発注側は法人でなければならないという点である。条文は委託事業者を法人たる事業者に限っており、受注側は個人事業者を含む書き方になっている[2]。個人事業主として発注する立場にいる場合、取適法の委託事業者にはならない。

もうひとつは、資本金が 1 千万円以下の法人は、資本金基準ではどの区分の発注側にも入らない(後述の従業員基準で該当する場合はある)という点である。したがって、小規模な法人同士の取引は資本金基準では対象外になる。

ステップ 2 資本金で当たらなければ従業員数で見る

2026 年 1 月 1 日の改正で、常時使用する従業員の数による区分が加わった。製造委託等では 300 人、それ以外の情報成果物作成委託・役務提供委託では 100 人が境目になる[3]

取引の種類 発注側 受注側
製造委託・修理委託・特定運送委託ほか 常時使用する従業員 300 人超の法人 常時使用する従業員 300 人以下の法人または個人
上記以外の情報成果物作成委託・役務提供委託 常時使用する従業員 100 人超の法人 常時使用する従業員 100 人以下の法人または個人

⚠️ ここを取り違えると判定がずれる。従業員基準は、資本金基準が適用されない場合に適用される[1]。条文でも、従業員数の号には、資本金の号に該当する者が資本金の号に該当する相手に発注する場合を除く、という括弧書きが付いている[2]。2 つの基準を並べて「どちらかに当たればよい」と読むのではなく、資本金で判定して当たらなかったときの受け皿として従業員数がある、と読む。

この基準が加わったのは、資本金は意図的に操作できるためである。事業規模は大きいのに減資によって対象から外れる、受注側に増資を求めて対象から外す、といった例が課題として挙げられていた[5]。この区分がいつから効いているのか、ほかに何が同時に変わったのかは2026 年 1 月改正で変わったことに並べてある。

「常時使用する従業員」に誰を数えるか

定義は、その事業者が使用する労働基準法第 9 条の労働者のうち、日々雇い入れられる者(1 か月を超えて引き続き使用される者を除く)以外のものとされている。数え方は、その事業者の賃金台帳の調製対象となる労働者の数で算定する[1]

具体的に含まれるのは、正社員のほか契約社員・パートタイマー・アルバイト、そして 1 か月を超えて引き続き使用される日雇い労働者である[4]。船員も含まれ、この場合は報酬支払簿の記載対象となる船員の数で算定する[4]

含まれないものもはっきりしている。判断は事業者単位で行うため、別の事業者であるグループ会社の従業員は数に入らない[4]。連結の従業員数で見て「300 人を超えているから対象」と判断すると誤る。

いつの時点の人数で判定するか

基準に当たるかどうかは、製造委託等をした時点の従業員数で判断される[4]。発注時に基準に当たっていれば、その後に人数が変動しても、その発注に係る取引は取適法の対象であり続ける。逆に、発注時に当たっていなければ、後から人数が増えて基準を満たす状況になっても、その発注が遡って対象になることはない[4]

実務では、発注のたびに相手の最新の人数を把握できるとは限らない。この点について公正取引委員会は、前々月中に賃金が支払われた労働者について前月末日までに賃金台帳が調製されて数が把握できるときは、その数をもって当月中にする発注の「常時使用する従業員の数」として取り扱うことも可能だとしている[4]。2 か月前の数字で運用してよい、という現実的な整理である。

相手の人数を確認する義務はないが、聞き方は用意されている

発注する側に、相手の常時使用する従業員の数を確認すべき義務はない。賃金台帳の閲覧やその写しの取得は必須ではないと明記されている[4]。受注する側にも説明義務はない[4]

とはいえ、人数の変動が多い相手や、基準の付近にいる相手に発注するときは、確認のために積極的にやり取りをすることが望ましいとされている[4]。確認方法として示されているのは、書面や電子メールなど記録に残る方法である。具体例として、見積依頼書に「従業員数が 300 人を超える場合は以下のボックスにチェックを入れて返送してほしい」と記載しておき、見積書の返送時に該当性を確認する方法や、見積書の備考欄に「従業員数は 300 人を超えていない」と記入してもらう方法が挙げられている[4]

これは様式を 1 行足すだけで済む。見積依頼書の記載項目を見直すときに、確認欄を標準で入れておくと、判定の根拠が取引のたびに自動的に残る。見積依頼メールの定型文を使っている場合も同じ場所に置ける。

なお、確認したうえで相手が事実と異なる回答をし、その結果として適用がないものと誤認して違反することとなった場合については、違反行為そのものは是正する必要があるものの、必要に応じて指導及び助言を行うことがあるにとどまり、直ちに勧告を行うものではないとされている[4]。記録に残る形で聞いておくことには、この意味でも実益がある。

判定を誤らせる 5 つの場面

場面 判定の結論
商社を経由して外注に出している 商社の関与の度合いで、当事者が誰になるかが変わる
子会社を通して再委託させている みなし適用規定により、子会社と再委託先の取引に法が及ぶ場合がある
相手が一般社団法人・学校法人などで資本金がない 指定正味財産等の固定的な財産で判断する
親子会社・兄弟会社の間の取引 適用除外ではないが、実質的に同一会社内とみられる場合は運用上問題としない
派遣労働者を受け入れている 委託取引に当たらず、対象外

商社が間に入る場合

商社が発注者と外注取引先の間に入っていても、商社が製造委託等の内容(製品仕様、外注先の選定、代金の額の決定など)に全く関与せず、注文書の取次ぎや代金の請求・支払といった事務手続の代行を行っているにすぎない場合、その商社は委託事業者にも中小受託事業者にもならない。この場合は発注者が委託事業者、外注取引先が中小受託事業者になる[4]。発注者は商社と外注取引先の間の取引内容を確認し、問題が生じないよう商社を指導する必要があるとされている[4]

一方、商社が委託の内容に関与している場合は、発注者から商社への委託と、商社から外注取引先への委託の 2 段階に分けて、それぞれで規模の条件を当てることになる[4]。商社が両方の局面で当事者になり得る点に注意したい。

子会社を通した再委託

第 2 条第 10 項に、みなし委託事業者・中小受託事業者の規定がある。資本金 1 千万円超または従業員 100 人超の法人から、役員の任免・業務の執行・存立について支配を受けている法人が、その法人から受けた製造委託等の全部または相当部分を再委託する場合、一定の条件の下で、再委託をする事業者を委託事業者、再委託を受ける事業者を中小受託事業者とみなす[2]

これは、直接発注すれば対象になる取引を、子会社に発注させることで規制から外す脱法的な行為を防ぐための規定だと説明されている[1]。グループ内に受注窓口の会社を置いている場合は、その会社と外注先の間の取引も見る必要がある。

資本金勘定がない法人

取適法でいう資本金の額または出資の総額とは、事業に供される資本としてある程度固定的に把握できるものを指す。資本金勘定のない一般財団法人や一般社団法人であれば、貸借対照表上の指定正味財産等の固定的な財産がこれに該当する。公益財団法人・公益社団法人・社会福祉法人・学校法人なども同様に固定的な財産で判断する[4]。従業員数が基準に当たる場合も委託事業者になり得る[4]

グループ内の取引

親子会社間や兄弟会社の取引であっても、取適法の適用が除外されるわけではない。ただし、親会社と総株主の議決権の 50 パーセント超を所有する子会社との取引や、同一の親会社がいずれも議決権の 50 パーセント超を所有している子会社間の取引など、実質的に同一会社内での取引とみられる場合は、従前から運用上問題としないという扱いになっている[4]

対象外でも、独占禁止法は残っている

取適法は独占禁止法の補完法として作られている[1]。線引きから外れた取引が、何をしてもよい取引になるわけではない。規模の条件を満たさない相手との取引であっても、優越的地位の濫用として独占禁止法上の問題になる余地は残る。

実際、判断に迷う場面は多い。公正取引委員会が令和 8 年 6 月 10 日に公表した運用状況によると、令和 7 年度に対応した相談は取適法に関するものが 34,810 件、優越的地位の濫用に関するものが 4,043 件で、合計 38,853 件にのぼる[6]。対象かどうかを社内だけで抱え込まず、窓口に当たるという選択肢も現実的である。

よくある質問

資本金 5 千万円の当社が、資本金 1 億円の会社に部品加工を委託する場合はどうなりますか

発注側の資本金が 1 千万円超 3 億円以下の区分に入るため、相手が資本金 1 千万円以下であれば対象になる。相手が 1 億円であれば、資本金基準では対象にならない。次に従業員基準を見て、自社が 300 人超・相手が 300 人以下であれば対象になる[1]

従業員数を毎回聞くのは現実的ではありません

毎回聞く必要はない。確認義務そのものが課されていないうえ、前々月の賃金台帳で把握できる数を当月の発注に用いる取扱いも認められている[4]。負担が大きいのは、変動の多い相手や基準の付近にいる相手だけである。協力会社のマスタを維持する仕組みの中に、確認日と回答内容を持たせておけば足りる。

取引の途中で自社が増資したら、既存の発注はどうなりますか

適用の有無は個々の発注をした時点で判断される[4]。増資の前にした発注と後にした発注で、適用関係が変わることがある。発注日を基準に切り分けて管理するのが確実である。

新規の仕入先を登録するとき、何を確認しておけばよいですか

資本金と、必要に応じて常時使用する従業員の数である。どちらも登記や決算公告だけでは分からない場合があるため、取引開始時の書式に含めておくとよい。新規仕入先の審査の項目に組み込む形が扱いやすい。

対象と分かったら、まず何をすればよいですか

発注のたびに所定の事項を明示することである。明示義務違反には罰則があるため、優先順位はここが最初になる。項目は発注書の 12 項目に整理してある。そのあと何をどこまで守る必要があるのかは、4 つの義務と 11 の禁止事項の一覧で全体をつかんでおくと迷わない。

実務で起きやすい不備

取引先マスタに資本金しか持っていない。従業員基準が加わった以上、資本金だけでは判定できない項目が増えた。マスタの項目を足さないまま運用を始めると、判定の根拠が担当者の記憶に残るだけになる。

グループ全体の人数で判定している。数えるのは事業者単位である。持株会社の下に事業会社が並ぶ相手では、判定を誤りやすい。

商社経由の取引を「商社との取引」としてしか見ていない。商社が事務手続の代行にとどまる場合、法律上の相手は外注先になる。誰が当事者かを見ないまま発注書を商社にだけ出していると、明示義務の宛先を間違えることになる。

判定した日付が残っていない。適用の有無は発注時点で決まるため、いつの情報に基づいて判定したかが分からないと、後から説明できない。

まとめ

判定の順番は、取引の内容を確定し、資本金で当て、当たらなければ従業員数で当てる、である。従業員基準は資本金基準の代わりに働く受け皿であって、2 つを並べて選ぶものではない。時点は発注日で固定され、後の増減で動かない。

発注側に確認義務はないものの、確認した記録があれば、相手の誤った回答によって誤認した場合の扱いも変わってくる。見積依頼の様式に確認欄を 1 つ設け、その回答を取引先マスタに日付とともに残す。この 2 つを整えるだけで、判定の根拠はほぼ揃う。

出典・参考資料

  1. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  2. 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 第 2 条(e-Gov 法令検索/昭和 31 年法律第 120 号)
  3. 2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!(取適法リーフレット)(公正取引委員会)
  4. よくある質問コーナー(取適法)適用範囲についての Q&A(公正取引委員会)
  5. 取適法・振興法(公正取引委員会)
  6. 令和 7 年度における取適法の運用状況及び中小事業者等の取引適正化に向けた取組(公正取引委員会/令和 8 年 6 月 10 日)

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