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投稿日:2026年10月1日

アルミの価格変動と価格スライド条項の作り方——地金・為替・判定の幅

この記事のポイント(結論先出し)

日本のアルミ産業は原料の新地金を 100% 輸入している[1]。アルミ部材の単価は海外の地金価格と為替の両方で動き、2026 年 8 月の輸入物価指数でも、金属・同製品の前年同月比は円ベースで 34.4%、契約通貨ベースで 25.4% と、為替の分だけ差が開いている[2]。価格スライド条項を作るときに決めるのは、参照値・基準時点・反映する範囲・判定の幅・使う時点・下がったときの扱いの六つである。公共工事の単品スライド条項は、対象工事費の 1% を超える分だけを動かし、下がったときも同じように請求する仕組みで、民間の条項を作るときの手本になる[3][4]。取適法の対象取引では、発注書には具体的な金額を書くのが原則で、地金や為替が決まらず金額を示せないやむを得ない事情があるときに限り、金額を自動的に確定させる算定方法の明示で足りる[5](2026 年 10 月時点)。

アルミの単価は、地金と為替で動く

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日本アルミニウム協会によると、日本のアルミ産業は原料となる新地金を 100% 輸入し、これを加工する板・押出・はくなどの製造業で構成されている[1]。国内のアルミ製錬は 1977 年に生産量約 120 万トンのピークを迎えたが、二度のオイルショックによる電力コストの高騰で撤退し、現在は全ての地金を海外から輸入している[1]。主な輸入先はオーストラリア、アラブ首長国連邦、ロシア、ニュージーランド、サウジアラビアなどである[1]。

地金をすべて輸入しているということは、国内で買うアルミの板や押出材の価格にも、海外の地金価格と為替の動きが入ってくるということである。日本銀行の輸入物価指数は、円ベースと契約通貨ベースの二つを公表しており、その差が為替の影響を表す。2026 年 8 月速報を見ると次のとおりである[2]。

輸入物価指数(2026 年 8 月速報) 前月比(円ベース) 前月比(契約通貨ベース) 前年同月比(円ベース) 前年同月比(契約通貨ベース)
金属・同製品 -1.6% +0.5% +34.4% +25.4%
(参考)総平均 -3.0% -1.0% +24.8% +16.7%

8 月は前月比で円ベースが下がり、契約通貨ベースが上がった[2]。契約通貨建ての価格は上がったのに、為替が円高に動いた分だけ円での価格は下がった、という動きである。前年同月比では、円ベースが契約通貨ベースを 9 ポイント上回っている[2]。国内の指数でも、2026 年 8 月の非鉄金属の前月比の上昇に寄与した主な品目として、銅、金地金と並んでアルミニウム合金ダイカストが挙がっている[2]。

この二つの動きを一つの単価にまとめて交渉すると、どちらが原因で上がったのか、下がったのかが見えなくなる。スライド条項は、この二つを分けて扱えるように作る。

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スライド条項で決める六つの項目

価格スライド条項の考え方そのもの(全体・単品・インフレの三つの型と民間への当てはめ)は購買契約における価格スライド条項で、指数連動の価格式の一般的な形は指数連動の価格式で扱っている。ここでは、アルミの部材を例に、条項に書き込む項目を順に決める。

1. 参照値。地金の価格を何で見るか。海外市場の価格をドル建てで見て為替で円に換算するのか、国内で公表される価格や指数を使うのか。地金を 100% 輸入しているので、ドル建ての価格と為替を別々に持つと、何が動いたのかが記録に残る。どれを選ぶにしても、公表元の名前まで書き、双方が後から同じ値を確かめられるものにする。

2. 基準時点。今の単価は、いつの地金価格と為替を前提に決めたのか。見積を出した月なのか、契約を結んだ月なのか。ここが書かれていないと、後で「どこから何%動いたか」を計算できない。過去の見積の前提を記録しておく方法は過去の購入単価と比べるときの補正の仕方にまとめている。

3. 反映する範囲。動かすのは単価のうちアルミ地金にあたる部分だけにする。押出や切削、表面処理、検査などの加工費は、地金の相場とは別の理由で動くので、別の協議で見直す。単価 1 個あたりに使うアルミの重量(製品重量か投入重量か)も決める。

4. 判定の幅。少しの動きでいちいち単価を変えると、手間ばかりかかる。一定の幅を超えたときだけ動かす、と決めておく。

5. 使う時点。地金価格を、仕入先がアルミを買った時点で見るのか、発注の時点で見るのか、前月平均で見るのか。

6. 下がったときの扱い。上がったときと同じ式で下げるのか。

4〜6 の決め方は、公共工事の単品スライド条項が参考になる。

公共工事の単品スライド条項から借りられること

国土交通省の直轄工事では、工事請負契約書第 26 条第 5 項の単品スライド条項に基づき、特別な要因により工期内に主要な工事材料の日本国内における価格に著しい変動が生じ、請負代金額が不適当となったとき、請負代金の変更を請求できる[3]。工事材料の価格が増加した場合は、増加分のうち対象工事費の 1% を超える額を発注者が負担し、価格が減少した場合は、対象工事費の 1% を超える減額分を発注者が受注者に請求する[3]。同省の説明資料は、対象を部分払いを行った出来高部分を除く特定の資材(鋼材類、燃料油類等)とし、受注者の負担を対象工事費の 1.0% としている[4]。

価格の時点についても運用ルールがある。工事材料の価格増加分は、受注者が出す「実際の購入価格」と物価資料の単価を比べ、安い方の単価を用いて変更するのが従来のルールで、2022 年の改定では、購入価格が適当であることを示す証明書類を出せば、実際の購入価格の方が高くても変更後の単価に使えるようにした[3]。

民間の部材の取引に置き換えると、借りられる考え方は三つある。

  • 小さな動きは吸収し、一定の幅を超えた分だけを動かす。公共工事では対象工事費の 1% という幅である[3]。民間の条項で何%にするかは当事者で決めることで、公共工事の数字に合わせる必要はない
  • 上がったときも下がったときも、同じ式で動かす。単品スライドは増加と減少の両方を定めている[3]
  • 使う価格の根拠を、証明できる形で決める。実際の購入価格を使うなら、その証明を何で出すかを決めておく[3]

ただし、公共工事の条項は請負代金の「変更を請求できる」仕組みで、変更額は当事者の協議で定めるとされている部分もある[4]。民間の部材の取引でこれを真似るときは、次の取適法の線に注意がいる。

取適法では、条項の形で発注書の書き方が変わる

取適法の対象取引では、発注時に代金の額を明示する義務があり、原則は具体的な金額である。具体的な金額の明示が困難なやむを得ない事情がある場合に限り、金額が自動的に確定する算定方法の明示で足り、テキストはその例に為替相場や原材料の相場に応じて価格を決める方法を挙げている[5]。金属産業取引適正化ガイドラインも同じ要件を示している[6]。関連付けや確定後の通知など、算定方法で明示するときの条件は参考見積と正式見積の違いで扱っている。アルミでは、地金価格と為替の二つの値が確定して初めて金額が決まる点が、算定方法の書き方に効く。

ここから、スライド条項には二つの型があることが分かる。

自動算定型:参照値・時点・幅・反映範囲がすべて決まっていて、相場が決まれば金額が自動的に決まる。発注の時点で参照する地金価格や為替が確定しておらず金額を出せないときは、発注書にこの算定方法を示す(または算定方法を定めた基本契約との関連付けを示す)ことで足りる。発注の時点で参照値が出そろい、式に当てれば金額を出せるなら、式で計算した具体的な金額を発注書に書く。

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協議発動型:相場が一定以上動いたら「単価の見直しを協議する」とだけ決めている。これは算定方法ではないので、発注書には毎回、具体的な金額を書く必要がある。協議を経て新しい単価が決まったら、その単価を合意以降の発注に使う。

どちらの型でもよいが、自社の条項がどちらなのかを購買担当者が理解していないと、発注書の書き方を誤る。「協議のうえ決定する」と書いて金額欄を空けた発注書は、算定方法の明示にならない。

遡って当てない、後から引かない

協議発動型で新しい単価を決めたら、新単価は合意後の発注から使う。引下げの合意より前に発注した分へ新単価を遡って当てた例も、原材料の市場価格の下落を理由に発注後の代金から値引き分を差し引いた例も、テキストは減額の違反行為事例として挙げている[5]。アルミは為替でも動くが、円高で円換算の地金価格が下がったことを理由にする場合も、考え方は同じである。下がったときにも単価を動かしたいなら、発注の前に、上下の両方向に動く自動算定型の条項を合意しておくのが筋である。後から代金を下げる行為の全体像は減額に当たる行為と、当たらない行為で整理している。

条項を誰と結ぶか——商流のどこにいるか

アルミの部材は、地金から最終の部品になるまでに何段階かの業者を通ることが多い。金属産業取引適正化ガイドラインは、アルミ業界の商流として、圧延メーカーから、コイルセンター・問屋・塗装メーカーなどの中間加工業者、引抜加工メーカーなどの二次加工メーカー、三次加工メーカーを経て需要家に至る形を示し、商社は介在する場合としない場合があるとしている[6]。

発注側が直接取引している仕入先が商流のどこにいるかで、地金の値動きが単価に届く時期と量が変わる。中間加工業者や加工メーカーは、自分の仕入先の価格改定を受けてから自分の単価を見直すので、地金の相場から数か月遅れて動くことがある。スライド条項の参照値の時点は、この遅れを考えて決める。また、条項を直接の仕入先と結んでも、その先の取引先との価格が見直されなければ、仕入先が板挟みになる。仕入先が自分の仕入先とも同じ考え方で取り決めを結べるかを、条項を結ぶ前に聞いておくとよい。

運用で気をつけること

条項を結んだ後の運用でつまずきやすい点を挙げる(実務の提案である)。

  • 参照値が訂正される。企業物価指数のような統計を参照値にすると、速報値が後で訂正される。どの時点の値で代金を確定させ、訂正があっても確定した代金は動かさないのかを決めておく
  • 参照値が公表されなくなる。指数の基準改定や公表の中止に備えて、代わりの参照値への移り方を決めておく
  • 加工費が置き去りになる。地金の部分が自動で動くと安心して、加工費の見直しの協議を何年もしないことがある。加工費は労務費やエネルギーコストで動くので、定期の協議の対象として別に予定を立てる。電力の扱いは電気料金の変動の反映の仕方で扱っている
  • 計算の結果を通知しない。自動算定型でも、金額が確定したら速やかに相手に通知する必要がある[5]。毎月の確定額を一覧にして送る運用にしておく

銅を含む部品で同じ考え方をとる場合の項目は、銅の価格変動と、銅を含む部品の価格の決め方にまとめている。

よくある質問

判定の幅は何%にすればよいですか

法令で決まった数字はない。公共工事の単品スライドは対象工事費の 1% を受注者の負担としているが[4]、これは工事全体の代金に対する割合である。部材の単価の取り決めでは、単価のうちアルミが占める割合や、相場がふだんどの程度動くかを見て当事者で決める。幅を大きくすると手間は減るが、その分は仕入先か発注側のどちらかが持つことになる。

為替は条項に入れるべきですか

地金を輸入で賄っている以上、円での地金価格は為替で動く[1][2]。参照値を円建ての国内価格や円ベースの指数にするなら、為替は参照値の中に含まれている。ドル建ての市場価格を参照値にするなら、為替の換算方法と時点を別に決める必要がある。

仕入先がスライド条項を嫌がります

条項を結ぶかどうかは合意によるもので、強制はできない。条項がなくても、相場が大きく動いたときに協議に応じることには変わりない。条項を結ばない場合は、見積の前提(地金価格と為替の基準時点)を記録に残しておくだけでも、次の協議がずっと進めやすくなる。

まとめ

日本はアルミの新地金を 100% 輸入しているので、アルミ部材の単価は海外の地金価格と為替の両方で動く[1][2]。スライド条項では、参照値・基準時点・反映する範囲・判定の幅・使う時点・下がったときの扱いを決める。公共工事の単品スライド条項からは、一定の幅を超えた分だけを動かし、上下の両方向に同じ式を当て、価格の根拠を証明できる形で決めるという考え方を借りられる[3][4]。取適法の対象取引では、発注時に金額を出せるなら金額を書き、出せないやむを得ない事情があるときだけ金額が自動的に決まる式で足り、新単価を合意前の発注に遡って当てることや、相場の下落を理由に決めた代金を後から減らすことは減額に当たる[5][6]。

出典・参考資料

  1. 日本のアルミ産業(構造・原料輸入)(一般社団法人日本アルミニウム協会)
  2. 企業物価指数(2026年8月速報)(日本銀行調査統計局/2026 年 9 月 11 日)
  3. 工事請負契約書第26条第5項(単品スライド条項)の運用改定について(国土交通省)
  4. 単品スライド条項の運用に関する説明資料(国土交通省/令和 4 年 12 月)
  5. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  6. 金属産業取引適正化ガイドライン(金属産業における受託適正取引等のためのガイドライン)(経済産業省/平成 29 年 2 月策定・令和 8 年 1 月最終改訂)

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