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投稿日:2026年10月2日

防錆は「すること」では指定にならない——NP記号・包装方法・期間と、さびが出たときの扱い

この記事のポイント(結論先出し)

「防錆のこと」と発注書に一行書くだけでは、さびが出たときに誰の責任かを決められない。JIS Z 0303 はさび止め包装の方法を RP1〜RP5 の 5 区分・21 種類に分け、選ぶ基準を製品の特徴と仕上げ、輸送・保管の期間と環境、荷扱いとしている。発注する側は、防せい油の種類(JIS K 2246 の NP 記号)か包装方法の記号、守ってほしい期間、清浄の状態、受入時の見方を決めて書く。次工程で油を落とすなら除膜性も条件になる。さびを見つけたら遅滞なく検査し、すぐ通知する。防錆の条件を明示していなければ、取適法の適用を受ける取引では受領を拒めないこともある。

さびの争いは「指定がなかった」ことから始まる

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部品にさびが出たとき、原因は大きく三つに分かれる。仕入先の工程や梱包の不備、輸送中の環境、受け取った後の保管である。どれだったかを後から突き止めるのは難しく、発注書に防錆の条件が書かれていなければ、仕入先は「指示どおり普通に梱包した」と言える。逆に、条件を書いておけば、梱包を開けた時点の状態と照らして判断できる。

この記事は、国内外への出荷を含めて、部品の防錆を仕入先にどう指定し、さびが出たときにどう扱うかを書く。海上コンテナでの塩害対策と乾燥剤の使い方は輸出梱包の塩害対策の記事、輸出梱包の木材の規制は輸出梱包の木材の記事、塩水噴霧試験で耐食性を確かめる方法は塩水噴霧試験の記事で扱う。

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JIS Z 0303 で「どの包装方法か」を指定する

JIS Z 0303:2009(さび止め包装方法通則)は、鉄鋼を主とした金属材料と金属製品を輸送又は保管するときに、さびの発生を防ぐために施すさび止め包装方法と試験方法を定めた規格である[1]。包装方法は、内容物の特徴と表面仕上げの程度、輸送と保管の期間とその間の環境条件、輸送中に包装貨物が受ける荷扱いの程度を考慮して、RP1(防湿包装)、RP2(防水包装)、RP3(一般包装)、RP4(除湿包装)、RP5(脱酸素包装)に大別し、さび止め処理材料の種類と適用方法でさらに細分している[1]。附属書 B は、この方法が 21 種類規定されていると書いている[1]。

たとえば RP1-P1 は、さび止め油を被覆して防湿包装材料で包装する方法、RP1-V は気化性さび止め剤を適用して防湿包装する方法、RP3-P はさび止め油を被覆して防水性・防湿性のない包装材料で包装する方法である[1]。発注書に「さび止め包装は JIS Z 0303 の RP1-P1 による」と書けば、油を塗ることと、防湿包装材料で包むことの両方が指定になる。

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どの方法を選ぶかについて、附属書 B(参考)は素材・製品・保管環境ごとの選択の指針を表にしている。ただし、この指針はあくまでも目安で、記号が○の方法を選んだからといって完璧なさび止めができることを保証したものではない、とも明記している[1]。指針で候補を絞り、実際の期間と環境で試すのが筋である。

防せい油は NP 記号で指定する

部品にさび止め油を塗らせるなら、油の種類を指定する。JIS K 2246 は 2026 年 1 月に改正され、規格名が「防せい(錆)油」になった。旧版の JIS K 2246:2018 を置き換えたものである[2]。防せい油は、指紋除去形、溶剤希釈形、ペトロラタム形、潤滑油形、気化性の 5 種類に分け、膜の性質や粘度などでさらに細分している。記号の NP の N は日本、P は Preservative の略である[2]。細分は指紋除去形 1、溶剤希釈形 5、ペトロラタム形 1、潤滑油形 6、気化性 2 で、合わせて 15 になる[2]。

種類によって膜の硬さと厚さ、守れる期間が大きく違う。JIS K 2246:2026 の膜の性質と膜厚の規定に、JIS Z 0303 の附属書 C(参考)が示す「さび止め油適用後(包装なし)の保管期間の目安」を並べると次のようになる。附属書 C は JIS K 2246:2007 のさび止め油を対象にした目安なので、期間は参考として読む[1][2]。

記号 種類・膜の性質(JIS K 2246:2026) 膜厚 保管期間の目安(JIS Z 0303 附属書 C)
NP-0 指紋除去形・低粘度油膜 - 屋内 3 か月程度
NP-1 溶剤希釈形・硬質膜(屋内及び屋外) 100 μm 以下 屋内 2 年程度・屋外 1 年程度
NP-2 溶剤希釈形・軟質膜(主として屋内) 50 μm 以下 屋内 1 年程度
NP-3-1 溶剤希釈形・軟質膜(水置換形) 25 μm 以下 屋内 6 か月程度
NP-3-2 溶剤希釈形・中高粘度油膜(水置換形) 15 μm 以下 屋内 6 か月程度
NP-19 溶剤希釈形・透明,硬質膜 50 μm 以下 屋内 1 年程度・屋外 6 か月程度
NP-20-1 気化性・低粘度油膜(密閉空間内) - 屋内 3 か月程度

硬い膜ほど長く守れるが、落としにくい。部品を受け取った後に塗装、めっき、溶接、接着をするなら、その前に油を落とす工程が要る。JIS K 2246 は、品質と性能の項目に除膜性(被覆膜が石油系溶剤で除去される性質)を含め、種類ごとに試験で確かめることにしている[2]。守れる期間だけで油を選ばず、次の工程で落とせるかを条件に入れる。社内の洗浄設備で落ちることを、試作の段階で確かめておく。

JIS K 2246 の規定外の油を使う場合について、JIS Z 0303 は記号 OP を「JIS 規定外であるが,JIS K 2246:2007 の 5. に規定するすべてのさび止め性能の試験に合格するもの」としている[1]。仕入先が自社の推奨油を使いたいと言ってきたら、どの性能を満たすのかを確かめる材料になる。

油を塗る前の清浄と、作業の環境

さび止め油を塗っても、その下に汚れや指紋が残っていればさびる。JIS Z 0303 は、金属製品に腐食生成物、ごみ、グリース、残さなどの異物、指紋、汗、酸やアルカリなどが付着している場合は、輸送中又は保管中にさび発生の原因となるため、十分に清浄するとしている[1]。一般共通事項としては、さび止め包装の作業はできるだけ低い湿度(相対湿度 60 % 以下が望ましい)の環境で行うこと、研磨部分には素手で触れてはならず、触れた場合は指紋を除去することを挙げている[1]。

非鉄金属を含む製品では、さび止め材料が逆に悪さをすることがある。JIS Z 0303 は、さび止め処理材料を使うことで性能や取扱いに支障が起こるおそれがある製品(非鉄金属部品を含む金属製品)は、あらかじめ予備実験を行って影響の有無を確認してから使うとし、さび止め油、気化性さび止め剤、さび止め紙などの種類ごとに確認の試験方法を挙げている[1]。銅合金やめっき品、異種金属を組み合わせた部品で気化性の材料を使うなら、仕入先に適合の確認結果を出してもらう。

防湿包装は「閉じ方」で決まる

防湿包装の性能は、包装材料の透湿度だけでは決まらない。日本航海学会誌に載った斎藤らの研究は、防湿梱包したダミー貨物を日米間で輸送して計測し、確実にシールされている状態なら、使った 3 種類の防湿バリアの防湿性能に実用上大きな差はなかったと報告している[3]。そのうえで、ヒートシール部分を含むフィルムの透湿性能はシールのない状態より 1.5〜2 倍程度劣化し、加熱時間が十分でなく溶着温度が低い場合は、目視で溶着していると判断されてもシール強さが十分ではないと述べている[3]。ヒートシール作業は手作業によっており、その正確性が防湿梱包の成否を握っているとも書いている[3]。

発注する側にとっての意味は、包装材料の銘柄を指定するより、閉じ方の管理を指定するほうが効くということである。シーラーの設定条件、シール後の確認方法、乾燥剤を入れる時期と量を、仕入先の梱包作業標準に書いてもらい、初回出荷の前に確認する。JIS Z 0303 は乾燥剤の使用量を、防湿材の面積、水蒸気透過度、期間、外気の温度と湿度、緩衝材の種類と量から計算する式を示している[1]。

素材の段階の塗油も確かめる

板金部品なら、素材の鋼板がどの状態で届いているかも関係する。JIS G 3141(冷間圧延鋼板及び鋼帯)は、鋼板と鋼帯はさびを防止するため塗油してもよいとし、注文者が無塗油を指定する場合には,塗油しないために発生するさび,すりきずなどは,有害な欠点としないと定めている[4]。洗浄の手間を省くために無塗油の素材を使う仕入先なら、素材の段階からさびの管理が仕入先の工程に入る。鋼板の種類と塗油の既定は鋼板の材料指定の記事で扱っている。

さびを見つけたときの扱い

遅滞なく検査し、すぐ通知する

商人間の売買について、商法第 526 条は、買主は目的物を受領したときは遅滞なく検査しなければならず、検査で種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主に通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができないと定めている。直ちに発見できない不適合を 6 か月以内に発見したときも同様である[5]。条文は 2026 年 9 月 14 日に e-Gov 法令検索で取得したものによる。

さびは時間とともに進むので、受け取った後に倉庫で寝かせてから見つけると、輸送中に出たのか保管中に出たのかが分からなくなる。受入時に梱包を開けて見る範囲(全数か抜取りか、どの面を見るか)を決め、見つけたら写真と梱包の状態を記録してすぐ通知する。さびの限度を外観の基準としてどう決めるかは外観の合否基準の記事が参考になる。

防錆の条件を明示していなければ、受領を拒めないことがある

中小受託取引適正化法(取適法)の適用を受ける製造委託では、公正取引委員会のテキストが、受託側の責めに帰すべき理由で受領を拒めるのは、給付の内容が明示された委託内容と異なる場合と、明示された納期に給付が行われない場合に限られるとしている。そのうえで、委託内容が明示されておらず、又は検査基準が明確でない等のため、給付の内容が委託内容と異なることが明らかでない場合や、検査基準を恣意的に厳しくして委託内容と異なるとする場合には、受領を拒むことは認められないとしている[6]。

防錆の条件を発注時に書いていなければ、さびがあっても「委託内容と異なる」ことが明らかとは言いにくい。後から防錆の基準を厳しくして不合格にすることも、恣意的に厳しくしたと見られうる。受領拒否・返品・やり直しの範囲は受領拒否・返品・やり直しの記事で整理している。

発注書に書く防錆の条件

1. 守ってほしい期間と環境
出荷から使用までの期間、屋内か屋外か、海上輸送の有無。

2. 防錆の方法
JIS Z 0303 の包装方法の記号(RP1-P1 など)か、防せい油の種類(JIS K 2246 の NP 記号)と包装の仕方。

3. 防錆前の清浄
切削油や指紋の除去、乾燥。研磨面に素手で触れないこと。

4. 次工程との関係
受け取った後に塗装・めっき・溶接・接着をするなら、除膜できる油に限る。

5. 非鉄金属・異種金属がある場合の適合確認
気化性材料などを使うなら、影響がないことの確認結果。

6. 包装の閉じ方と乾燥剤
防湿包装ならシールの管理方法、乾燥剤の量の決め方。

7. 受入時の見方とさびの限度
開梱して見る範囲、許容するさびの程度、見つけたときの連絡方法。

この条件を仕入先の梱包仕様書や作業標準に落とし込んでもらい、初回出荷の前に現物で確認する。

よくある質問

Q. 「防錆処理のこと」とだけ書いて発注している。何から直せばよいか。
A. まず守ってほしい期間と保管・輸送の環境を書く。そのうえで、防せい油の種類か JIS Z 0303 の包装方法の記号を指定する。どれを選ぶか決められないときは、仕入先に方法と期間の根拠を提案させ、試作品で確かめてから仕様に固定する。

Q. 長く持つ油を指定したら、自社の洗浄で落ちなくなった。
A. 硬い膜の防せい油は守れる期間が長い分、落としにくい。JIS K 2246 は除膜性を試験項目に含めているので、次の工程で使う洗浄方法で落ちる種類を選び直す。期間が足りなくなるなら、油を薄い膜のものにして包装(防湿包装や気化性材料)で補う組合せを検討する。

Q. 倉庫で数か月置いてから開梱したらさびていた。仕入先に請求できるか。
A. 商法第 526 条は、受領後遅滞なく検査し、不適合を見つけたら直ちに通知することを求めている。直ちに発見できない不適合なら 6 か月以内の発見も対象になるが、梱包を開ければ分かるさびを長く放置した場合は、通知が遅れたと判断されうる。輸送中に出たのか保管中に出たのかも争いになるので、受入時の検査と記録が要る。

まとめ

防錆は「すること」と書くだけでは指定にならない。JIS Z 0303 の包装方法の記号か、JIS K 2246 の防せい油の種類で方法を指定し、守ってほしい期間と環境、清浄の状態、次工程で落とせるか、非鉄金属への影響、包装の閉じ方、受入時の見方を発注書に書く。防湿包装はシールの管理で性能が決まる。さびを見つけたら遅滞なく検査してすぐ通知し、写真と梱包の状態を残す。条件を明示していなければ、後から受領を拒めないことがある。

出典・参考資料

  1. JIS Z 0303:2009 さび止め包装方法通則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2009 年 3 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
  2. JIS K 2246:2026 防せい(錆)油(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2026 年 1 月 20 日改正)
  3. 防湿梱包の品質管理に関する基礎的研究(斎藤勝彦・山崎潔・山口広高/日本航海学会誌 NAVIGATION 156 号/2003 年)
  4. JIS G 3141:2021 冷間圧延鋼板及び鋼帯(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2021 年 4 月 20 日改正)
  5. 商法(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  6. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)

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