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VベルトとタイミングベルトのJIS(K 6323・K 6368・B 1856)——形番・長さの呼びと交換時の注意

この記事のポイント(結論先出し)
V ベルトの JIS は、一般用の M・A・B・C・D 形が JIS K 6323、細幅の 3V・5V・8V が JIS K 6368(2025 年改正)で、タイミングベルト(歯付ベルト)の台形歯形は JIS B 1856:2018 である。旧 JIS K 6372・K 6373 は 2018 年に廃止され、JIS B 1856 に置き換えられた。形番は規格ごとに読み方が違い、一般用 V ベルトは「A 80」(長さ 2 032 mm)、細幅は「3V 250」(有効ベルト長さ 635 mm)、タイミングベルトは「510 H 100」(呼び長さ・歯形・呼び幅の順)と書く。多本掛けの細幅 V ベルトには「一組内の長さの差」の上限が規格にあるが、一般用 V ベルトの規格にはその規定が無い。交換で買うときは、形番に加えて組でそろえるかを指定する。張りについては、規格の附属書(参考)が、張りの式の定数を「新しいベルト」と「張り調整」で分けて示している。
目次
V ベルトとタイミングベルトの JIS は 3 本ある
設備の保守でよく買う伝動ベルトは、摩擦で動力を伝える V ベルトと、歯でかみ合って伝えるタイミングベルト(JIS では歯付ベルト)に分かれ、JIS もそれぞれにある。
一般用 V ベルトは JIS K 6323:2008(一般用 V ベルト)で、一般に用いる動力伝達用の継目のない輪形の V ベルトを扱い、自動車用は除く。種類は M・A・B・C・D の 5 種類である[1]。細幅 V ベルトは JIS K 6368:2025(細幅 V ベルト)で、動力伝動に用いるエンドレス状の細幅 V ベルト(自動車用を除く)を扱い、種類は 3V・5V・8V の 3 種類である。2025 年 3 月 21 日に 1999 年版から改正された[2]。
タイミングベルトの台形歯形は JIS B 1856:2018(一般用台形歯形歯付ベルト伝動-ベルト及びプーリ)で、継ぎ目のない輪形の台形歯形歯付ベルトと、それとかみ合う切削加工のプーリを扱う。自動車用は除く[3]。まえがきには、JIS K 6372:1995 と JIS K 6373:1995 は廃止され、この規格に置き換えられたと書かれている[3]。古い図面や部品表に「JIS K 6372」とあれば、いまは JIS B 1856 で確かめる。
JIS B 1856 が扱うのは台形歯形だけで、対応国際規格は ISO 19347(インチピッチの台形歯形)である[3]。歯の形が台形でないタイミングベルトは、この規格の形番では指定できない。現品の歯形を確かめてから規格で呼べるかを判断する。
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形番の読み方は規格ごとに違う
三つの規格は、断面や歯形の記号と長さの表し方がそれぞれ違う。主な違いを並べると次のとおりである[1][2][3]。
| 項目 | 一般用 V ベルト(JIS K 6323) | 細幅 V ベルト(JIS K 6368) | 台形歯形歯付ベルト(JIS B 1856) |
|---|---|---|---|
| 種類の記号 | M・A・B・C・D | 3V・5V・8V | MXL・XXL・XL・L・H・XH・XXH(両面歯付は DMXL・DXL・DL・DH) |
| 代表の寸法 | A 形:上幅 12.5 mm・厚さ 9.0 mm・V 角度 40° | 3V:上幅 9.5 mm・厚さ 8.0 mm・40° | H:基準歯ピッチ 12.700 mm |
| 長さの表し方 | 呼び番号(A 80 は 2 032 mm) | 呼び番号と有効ベルト長さ(250 は 635 mm) | 呼び長さ(XL 以上は基準長さ÷2.54) |
| 長さの許容差の例 | 呼び番号 80:+13 mm/-26 mm | 呼び番号 250:±8 mm | 基準長さ 1 270 を超え 1 524 mm 以下:±0.81 mm(片面歯付) |
| 一組内の長さの差 | 規定なし | 呼び番号 250:3.0 mm 以下 | —(1 本で使う) |
| 呼び方の例 | 一般用 V ベルト A 80(または A 2032) | 名称・種類・呼び番号の順 | 510 H 100 |
一般用 V ベルトの長さの許容差は、呼び番号 80 で +13 mm/-26 mm と、プラスとマイナスで幅が違う[1]。規格の表で長さを確かめるときは、上下の値を両方見る。製品の呼び方は、名称・種類・呼び番号(または V ベルトの長さ)の組み合わせで、「一般用 V ベルト A 80」と「A 2032」はどちらも規格の例として挙がっている[1]。
タイミングベルトの呼び長さは、MXL・XXL・DMXL ではベルト歯数、XL・L・H・XH・XXH と両面歯付では基準長さ(mm)を 2.54 で割って小数点第 1 位を五捨六入した値である。呼び幅も、XL 以上はベルト基準幅(mm)を 0.254 で割った値で表す[3]。「510 H 100」は、呼び長さ 510、歯形 H、呼び幅 100(基準幅 25.4 mm)のベルトである[3]。表には呼び長さに対する歯数と基準長さが並ぶが、規格の注記は製造可能な寸法は製造業者に確認するとしている[3]。
プーリの規格もベルトと対になっている
V ベルトの形番が合っていても、プーリの溝が合っていなければ伝動はうまくいかない。一般用 V プーリは JIS B 1854(一般用 V プーリ)で、JIS K 6323 の V ベルトを用いるプーリを扱う[4]。溝の角度はプーリの呼び径で変わり、たとえば A 形では呼び径 71 mm 以上 100 mm 以下が 34°、100 mm を超え 125 mm 以下が 36°、125 mm を超えるものが 38°である。M 形は原則として 1 本掛けとするとの注もある[4]。JIS B 1854 の最新改正は 1987 年で、本文には JIS K 6323 の現行版に無い E 形の溝も載っている[4]。
細幅 V プーリは JIS B 1855(細幅 V プーリ)で、JIS K 6368 の細幅 V ベルトを用いるプーリを扱い、2025 年 10 月 20 日に 1991 年版から改正された[5]。JIS K 6368 も、ベルトの断面は JIS B 1855 の V 溝形状に適合しなければならないとしている[2]。一般用と細幅は別の規格の別の溝なので、ベルトだけを互いに替えない。
JIS B 1856 は、タイミングベルトのプーリの呼び方を「P 20 XL 037」(プーリの略号・歯数・種類・呼び幅)と決めている[3]。JIS B 1854 の V プーリは「JIS B 1854 250A1-2 形」のように、規格番号・呼び径・種類(溝の数を含む)・ボスの位置の区別で呼び、軸穴の加工を指定するときは穴の基準寸法・種類・等級も示すとされている[4]。
交換で買うとき:多本掛けは「組」で指定する
細幅 V ベルトの JIS K 6368 は、有効ベルト長さの許容差とあわせて、一組内の長さの差(多本掛けで使う一組内のベルトの有効ベルト長さの差)の上限を決めている。呼び番号 250 なら許容差 ±8 mm に対し、一組内の長さの差は最大 3.0 mm である[2]。ベルトには種類・呼び番号・製造業者名・製造年月を表示し、必要があれば一組内の長さの差を表す略号を表示するとされている[2]。1 本ずつの許容差に入っていても、別々に買ったベルトを並べると一組の差の上限を超えることがありうる。
一方、一般用 V ベルトの JIS K 6323 には、一組内の長さの差の規定が無い[1]。多本掛けの一般用 V ベルトを交換で買うときは、何本を一組として納めてほしいか、長さをそろえた組で納めるかを、発注書で仕入先と決めておく(これは当方の提案で、規格が求めている書き方ではない)。
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ベルトの張りについて、JIS K 6323 と JIS K 6368 の附属書(参考)は、必要な初張力を式で求め、スパンの中央を決まった力で押したときのたわみで調整する方法を示している。その式に使う定数は「新しいベルトの場合」1.5、「張り調整の場合」1.3 と分けて載っている[1][2]。附属書の式では新しいベルトの方が大きい値になり、交換の直後と張り直しで同じ値を使わない形になっている。タイミングベルトについて JIS B 1856 の附属書(参考)は、張りが過大だと寿命が下がり、過小だと起動トルクや衝撃負荷でプーリの溝から歯飛び(ジャンプ)することがあるので、適正な取付け張力にする必要があるとしている[3]。
附属書は規定ではなく参考だが、保守を外注するなら、張りの管理を数値で行うのか、どの値で掛けるのかを作業の仕様に書いておくと、作業者による違いが減る。プーリの軸受への負担も張りで変わるので、軸受の手配は軸受を型番で買うときの記事、モーターの仕様はモーターの仕様書の記事で扱っている。
ベルトを選び直すとき:規格の選定手順は設計の領分
JIS K 6323 の附属書(参考)は、V ベルトの種類を設計動力と小プーリの回転速度から選び、長さと軸間距離を決め、1 本当たりの伝動容量から本数を決める手順を示している[1]。設計動力は負荷動力に負荷補正係数とアイドラ補正係数を掛けて求め、負荷補正係数は機械の種類・原動機・運転時間で 1.0〜1.8 の範囲の表になっている。始動と停止の回数が多い、保守点検が容易にできない、粉じんが多い、熱のある所で使う、油や水が付く、といった場合は表の値に 0.2 を加えるとされている[1]。
形番を変える(A 形を B 形にする、本数を減らすなど)提案が仕入先から来たら、それはこの選定をやり直す話で、購買の側では判断しない。設備の設計者か保全の担当に、設計動力と使用条件を確かめてもらってから受ける。一般用 V ベルトの 1 本当たりの引張強さは A 形で 2.4 kN 以上、細幅の 3V で 2.3 kN 以上と決まっているが[1][2]、これは材料の強さの確認で、伝動できる動力の値ではない。
発注書と受入で確かめること
1. 規格番号と種類
一般用 V ベルト(JIS K 6323)か細幅(JIS K 6368)か、歯付ベルト(JIS B 1856)か。古い図面の JIS K 6372 は JIS B 1856 に読み替える。
2. 形番
V ベルトは種類と呼び番号(A 80 など)。タイミングベルトは呼び長さ・歯形・呼び幅(510 H 100 など)。両面歯付なら D の付いた記号。
3. 本数と組
多本掛けなら何本を一組とするか。細幅なら一組内の長さの差の規格への適合を求めるか。
4. プーリとの対応
プーリも替えるなら、JIS B 1854・B 1855・B 1856 の呼び方で書く。
5. 受入で見る表示
一般用 V ベルトは規格番号・種類・呼び番号(または長さ)・製造年月・製造業者名を表示することになっている。歯付ベルトはベルト本体か包装に呼び長さ・種類・呼び幅・製造業者名・製造年月を表示する[1][3]。
駆動部の部品の手配では、チェーンを使う箇所もある。ローラチェーンの呼び番号の読み方はローラチェーンの記事で扱う。設備の配管の部品はワンタッチ継手とエアチューブの記事、ねじ込み式管継手の記事、JIS フランジの記事にまとめた。
よくある質問
Q. 「A 80」と「A 2032」は同じベルトか。
A. JIS K 6323 の呼び方の例では、呼び番号 80 と長さ 2 032 mm は同じ A 形のベルトを指す。発注書ではどちらか一方に決めて書く。
Q. タイミングベルトの規格 JIS K 6372 が見つからない。
A. JIS K 6372:1995 と JIS K 6373:1995 は廃止され、JIS B 1856(一般用台形歯形歯付ベルト伝動-ベルト及びプーリ)に置き換えられている。
Q. 多本掛けの V ベルトを 1 本だけ交換してよいか。
A. 細幅 V ベルトの規格は、多本掛けで使う一組内のベルトの長さの差に上限を設けている。一般用 V ベルトの規格には組の規定が無い。どちらでも、何本をどの組で替えるかは保全の担当と決め、発注書に書く。
Q. 一般用 V ベルトを細幅 V ベルトに替えられるか。
A. 断面の形状と寸法が違い、プーリの溝も別の規格(JIS B 1854 と JIS B 1855)である。ベルトだけの置き換えはせず、プーリを含めて設計で選び直す。
まとめ
V ベルトは一般用が JIS K 6323、細幅が JIS K 6368、タイミングベルトの台形歯形は JIS B 1856 で、旧 JIS K 6372・K 6373 は JIS B 1856 に置き換えられている。形番の読み方は規格ごとに違い、一般用 V ベルトは種類と呼び番号、タイミングベルトは呼び長さ・歯形・呼び幅で書く。細幅 V ベルトには多本掛けの一組内の長さの差の上限があるが、一般用 V ベルトの規格には無いので、組で納めるかを発注で決める。プーリも別の規格と対になっているので、ベルトだけを置き換えない。張りは新しいベルトと張り直しで規格の参考の値が違い、タイミングベルトでは張り不足が歯飛びにつながる。
出典・参考資料
- JIS K 6323:2008 一般用 V ベルト(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2008 年 3 月 20 日改正・2022 年 10 月 20 日確認)
- JIS K 6368:2025 細幅 V ベルト(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2025 年 3 月 21 日改正)
- JIS B 1856:2018 一般用台形歯形歯付ベルト伝動-ベルト及びプーリ(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2018 年 3 月 20 日改正・2022 年 10 月 20 日確認)
- JIS B 1854:1987 一般用 V プーリ(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1987 年 7 月 1 日改正・2021 年 10 月 20 日確認)
- JIS B 1855:2025 細幅 V プーリ(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2025 年 10 月 20 日改正)
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