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モーターの仕様書に書くこと——使い方の提示・効率クラス・銘板で確かめる項目

この記事のポイント(結論先出し)
モーター(電動機)の仕様書で最初に書くべきなのは、出力ではなく使い方である。回転機の JIS は、負荷と使用の形式(連続・短時間・反復など)を示すのは購入者の責任とし、示さなければ製造業者は連続使用(S1)を想定するとしている[1]。効率は IE コード(IE1〜IE4 など)で表し、2026 年に新しくなった JIS は、電圧・周波数の組合せごとに効率が違う場合、少なくとも最も低い効率に対応するクラスを銘板に表示するとしている[2]。国内の低圧の三相かご形誘導電動機には省エネ法のトップランナー制度があり、対応する JIS はトップランナーモータの効率を IE3 としている[3]。EU に出す装置に組み込むなら、EU の規則で出力の範囲ごとに IE2〜IE4 の下限があり、銘板に効率クラスと製造年を表示することになっている[4][5]。
目次
モーターの仕様書で、買う側が書かなければならないこと
モーターは、出力(kW)と回転数と電圧を決めればカタログから選べる部品に見える。しかし、その出力でどう使うかを書かないと、同じ型でも寿命や温度上昇が変わる。回転機の基本の規格である JIS C 4034-1(2023 年改正)は、この点をはっきり書いている。
規格は「使用の提示は、購入者の責任である」とし、購入者は、負荷が一定または既知の方法で変動するなら数値で、あるいは負荷の時間変化で、あるいは予想される使用状態に近い使用の形式として S1〜S10 のいずれかを選んで示すとしている[1]。そして、購入者が使用を提示しない場合、製造業者は使用の形式 S1(連続使用)が適用されるものと想定する[1]。
使用の形式の代表的なものは次のとおりである[1]。
- S1(連続使用):一定の負荷で、熱的に平衡する時間以上に連続して運転する
- S2(短時間使用):一定の負荷で、熱的平衡に達しない時間だけ運転し、その後は冷めるまで止める。「S2 60 分」のように運転時間を付けて表す
- S3(断続的反復使用):一定の負荷の運転と停止を一周期として繰り返す。始動電流が温度上昇に大きく影響しない場合で、「S3 25 %」のように負荷時間率を付けて表す
搬送装置のように頻繁に起動と停止を繰り返す用途を、何も書かずに発注すると、製造業者は連続運転の前提で選ぶ。起動の頻度、ブレーキの有無、負荷の慣性が大きいかどうかは、仕様書に書く。なお同じ規格は、回転機の慣性モーメントや相対的な熱寿命の期待値は通常購入者が設定できないので、製造業者が設定するとしている[1]。買う側が書くのは「使い方」で、そこから機械の数値を決めるのは製造業者という分担である。
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効率クラス(IE コード)の読み方
三相かご形誘導電動機(最も一般的な産業用モーター)の効率クラスは、JIS C 4034-30-1 が定めている。この規格は 2026 年に制定され、それまでの JIS C 4034-30:2011 を置き換えた。対応国際規格は IEC 60034-30-1:2014 で、国内法規と整合させるために内容を一部変えている[2]。
適用範囲は、正弦波の電源で動かす単一速度の三相かご形誘導電動機のうち、定格電圧 50 V を超え 1,000 V 以下、定格出力 0.12 kW 以上 1,000 kW 以下、極数 2・4・6・8 極、周囲温度 −20 ℃〜60 ℃、標高 4,000 m 以下のものである[2]。効率クラスは周囲温度 25 ℃・標高 1,000 m 以下を基準にしている[2]。ギヤードモータは含まれるが、ポンプやファンなどの負荷機と完全に一体で切り離して試験できないもの、インバータと一体で切り離せないもの、水中モータなどは除外される[2]。
発注で注意したいのは、銘板の IE コードが一つでも、効率は電圧・周波数の組合せごとに違うことである。規格は、複数の定格電圧・定格周波数・定格出力の組合せをもつ電動機では、それぞれの組合せに対する定格効率と効率クラスを指定し、少なくとも最も低い定格効率に対応したクラスを銘板に表示するとしている。日本では一般に「200 V-50 Hz/200 V-60 Hz/220 V-60 Hz」の 3 定格が使われ、その場合三つの定格効率がありうると例示している[2]。定格効率と効率クラスは、カタログや製品仕様書などの附属書類から入手できなければならないとされる[2]。
つまり、50 Hz 地域と 60 Hz 地域の工場で同じモーターを使うなら、それぞれの周波数での効率を製品仕様書で確かめる。規格は、全負荷だけでなく 50 %・75 % 負荷の効率も附属書類に載せることを推奨している[2]。軽い負荷で長く回る用途なら、こちらの値で比べる。
効率の数値には裕度がある
製品仕様書の効率は「申告値」で、個々のモーターを測った値とはずれがある。JIS C 4034-1 は、申告値に対する効率の裕度を、出力 150 kW 以下で −0.15 ×(1 − η)、150 kW を超えるもので −0.10 ×(1 − η)としている(η は申告効率)[1]。たとえば申告効率 90 % なら損失の割合は 10 % で、その 15 % に当たる 1.5 ポイントまで低い測定値が裕度の範囲に入る。受入試験で効率を測る場合は、この裕度を前提に合否を決める。
国内のトップランナー制度と EU の規則
モーターの効率には法規制がある。国内では、JIS C 4034-30-1 の附属書が、我が国では 2015 年 4 月から省エネ法が施行され、関連規格として JIS C 4213 が発行されていると説明し、規格の対象もトップランナー制度(効率規制)に合わせて三相かご形に限定したとしている[2]。対応する規格として JIS C 4213(低圧三相かご形誘導電動機-低圧トップランナーモータ、2014 年制定)があり、トップランナーモータを「省エネ法で定めた特定機器のトップランナー基準の対象のうち、低圧三相かご形誘導電動機」と定義している[3]。
EU では、規則 (EU) 2019/1781 が電動機と可変速駆動装置のエコデザイン要件を定め、規則 (EU) 2021/341 で一部が改正されている[4][5]。両者の対象と水準を並べると次のようになる。
| 区分 | 対象の範囲 | 効率の水準 |
|---|---|---|
| 国内:JIS C 4213(トップランナーモータ) | 定格電圧 600 V 以下、0.75 kW 以上 375 kW 以下、2・4・6 極、S1 または負荷時間率 80 % 以上の S3、商用電源駆動 | IE3(プレミアム効率)[3] |
| EU:2021 年 7 月 1 日から | 三相、0.75 kW 以上 1,000 kW 以下、2・4・6・8 極(安全増防爆形を除く) | IE3 以上[4][5] |
| EU:2021 年 7 月 1 日から | 三相、0.12 kW 以上 0.75 kW 未満、2・4・6・8 極(同上) | IE2 以上[4][5] |
| EU:2023 年 7 月 1 日から | 三相、75 kW 以上 200 kW 以下、2・4・6 極(ブレーキモータ・防爆形を除く) | IE4 以上[4][5] |
| EU:2023 年 7 月 1 日から | 安全増防爆形(0.12 kW〜1,000 kW、2・4・6・8 極)、単相(0.12 kW 以上) | IE2 以上[4][5] |
EU の規則は、50 Hz と 60 Hz の両方で使えるモーターは、50 Hz で指定した定格出力において両方の周波数で要件を満たすこととしている(2021 年の改正)[5]。日本の 50 Hz・60 Hz 兼用のモーターを EU 向けの装置に使う場合に関係する。
EU の規則は、製品情報として、全負荷・75 %・50 % 負荷での定格効率、効率クラス、製造者名、型式、極数、定格出力、定格周波数、定格電圧、定格回転速度、単相か三相か、使用条件の範囲(標高、周囲温度など)などを技術資料やウェブサイトに示すことを求めている。さらに、定格効率と効率クラス、製造年を銘板またはその近くに耐久性のある方法で表示するとしている[4]。
既存の装置の交換用モーターには例外がある。2021 年の改正規則は、既に市場に出ている装置に組み込まれた同一のモーターの代替品として特に販売されるものは、2029 年 7 月 1 日より前に市場に出すものに限り対象外とする規定を置いた。対象外となるのは、2021 年 7 月 1 日の要件の対象のモーターでは同日より前に、2023 年 7 月 1 日の要件の対象のモーターでは同日より前に、市場に出た装置に組み込まれたものの代替品である[5]。保守部品として古い効率のモーターを確保している場合は、この期限を確かめる。EU のエコデザインの全体像はEU エコデザイン規則の記事で扱った。
インバータで動かすモーターは別に考える
効率クラスは、正弦波の電源で動かしたときの損失だけを扱う。JIS C 4034-30-1 は、インバータ(周波数を変えて回転数を制御する装置)で動かす場合は電源の高調波による損失が増え、実際の効率は定格効率より低くなるとし、その場合の試験方法として IEC 60034-2-3:2020 を参照するよう示している[2]。トップランナーモータの JIS C 4213 も、インバータ駆動専用に製作した電動機には適用しない[3]。
インバータで動かす用途では、仕様書に「インバータ駆動」「使う回転数の範囲」「インバータの種類」を書き、モーター単体の効率クラスだけで比べない。EU の規則も、製造者は可変速駆動装置と組み合わせて組立・設置・保守・使用するときの注意事項を技術資料や取扱説明書に記載するとしている[4]。
銘板で確かめる項目
受入では、銘板の表示が発注どおりかを確かめる。JIS C 4213 は、トップランナーモータの定格銘板の表示事項として、電動機の名称、製造業者名、製造番号、製造年、形式、保護方式の記号、定格出力、定格電圧、定格電流、定格回転速度、相数・極数・定格周波数、定格効率と効率クラス、使用の形式、絶縁の耐熱クラスまたは温度上昇限度、最高冷媒温度、標高、適用規格の番号などを挙げている[3]。同じ規格は、複数の定格のうち IE3 を満たさない定格がある場合には、定格ごとの効率クラスを銘板に表示するとし、「IE3-IE2-IE3」のような表記を例に挙げている[3]。
受入のときは、少なくとも次の 4 点を発注書と突き合わせる。
- 定格出力・電圧・周波数の組合せ(工場の電源に合っているか)
- 効率クラス(定格ごとに違う表記になっていないか)
- 使用の形式(S1 以外を指定したなら、その表示になっているか)
- 保護方式の記号(IP コード)
保護等級(IP)と取付け寸法
モーターの外被の保護等級は、JIS C 4034-5(2025 年改正。IEC 60034-5:2020 と一致)が分類している。この規格は、回転機を囲む外被による保護等級の分類に適用するもので、機械的損傷や、凝結による湿気・腐食性の粉じんや蒸気・菌類・害虫からの保護等級は規定しないとしている[6]。結露する場所や腐食性の雰囲気で使うなら、IP コードとは別に使用環境を仕様書に書く。IP 等級の指定の考え方はIP 等級の指定の記事で扱う。
取付け寸法は、枠番号(フレームの大きさを表す番号)で決まる。JIS C 4213 には、使用者の便宜のために標準的な枠番号と寸法・出力の関係を参考として示した附属書がある[3]。既存の装置のモーターを交換するときは、出力だけでなく枠番号と軸の寸法を合わせる。効率の高いモーターに替えたら取付けの寸法が合わなかった、ということを避けるため、交換の発注では現行品の銘板の写真と取付け図を添える。
モーターを含む装置を買うときの振動の条件は振動・衝撃試験の記事、軸受を別に手配するときの指定は軸受の調達の記事で扱う。
仕様書に書く項目の一覧
- 用途と負荷の性質(一定か変動か、慣性の大きさ、起動の頻度)、使用の形式(S1〜S10)
- 定格出力、極数(回転数)、電源の電圧・周波数(50 Hz・60 Hz の両方で使うか)
- 駆動方法(商用電源の直入れ、スターデルタ始動、インバータ駆動)
- 求める効率クラスと、効率を確かめる定格(全負荷・部分負荷)
- 設置環境(周囲温度、標高、湿気・粉じん、屋外かどうか)と保護等級
- 取付け方式(脚取付け・フランジ取付け)、枠番号、軸の寸法
- 輸出の有無(EU 向けなら規則の水準と銘板表示)
- 受入時に出してもらう書類(試験成績書、製品仕様書)
購買仕様書全体の書き方は購買仕様書の書き方の記事で扱った。
よくある質問
カタログに「IE3」とあれば、どの電源でも IE3 ですか
そうとは限らない。JIS C 4034-30-1 は、複数の定格をもつ場合に少なくとも最も低い効率に対応するクラスを銘板に表示するとしており[2]、JIS C 4213 は IE3 を満たさない定格があれば定格ごとのクラスを表示するとしている[3]。自社の工場の電源での効率を製品仕様書で確かめる。
装置メーカーにモーターの選定を任せています。何を確かめればよいですか
使い方の提示は購入者の責任なので[1]、装置メーカーに運転の条件(連続か、起動と停止を繰り返すか、負荷の変動)を伝えたうえで、選んだモーターの型式・効率クラス・使用の形式を書面で出してもらう。EU に輸出する装置なら、組み込むモーターが規則の水準を満たすことと、装置の技術資料にモーターの製品情報が載ることを確かめる[4]。
古い装置の交換用に、同じ型のモーターを買い置きしたいのですが
国内なら、交換するモーターがトップランナー制度の対象になるかを確かめる。EU 向けの装置の交換用なら、代替品の例外の期限(2029 年 7 月 1 日より前に市場に出すもの)と条件を確かめる[5]。新しい効率のモーターで置き換えられるなら、枠番号と軸の寸法が合うかを先に確認する。
まとめ
モーターの仕様書は使い方から書く。使用の提示は購入者の責任で、提示しなければ連続使用が前提になる[1]。効率は IE コードで指定し、電圧・周波数の組合せごとの効率を製品仕様書で確かめる[2]。効率の申告値には裕度がある[1]。国内のトップランナーモータは IE3[3]、EU は出力の範囲ごとに IE2〜IE4 で、銘板に効率と製造年を表示する[4][5]。インバータ駆動は効率クラスの前提の外にあり[2]、IP コードは湿気や腐食からの保護を表さない[6]。
出典・参考資料
- JIS C 4034-1:2023 回転電気機械-第1部:定格及び特性(日本産業標準調査会 JIS 検索で本文を閲覧)
- JIS C 4034-30-1:2026 回転電気機械-第30-1部:単一速度三相かご形誘導電動機の効率クラス(IEコード)(日本産業標準調査会 JIS 検索で本文を閲覧)
- JIS C 4213:2014 低圧三相かご形誘導電動機-低圧トップランナーモータ(日本産業標準調査会 JIS 検索で本文を閲覧)
- Commission Regulation (EU) 2019/1781 laying down ecodesign requirements for electric motors and variable speed drives(欧州委員会/2019 年 10 月 1 日。EU 官報 L 272 掲載)
- Commission Regulation (EU) 2021/341 amending Regulations (EU) 2019/424, (EU) 2019/1781 and others(欧州委員会/2021 年 2 月 23 日。EU 官報 L 68 掲載)
- JIS C 4034-5:2025 回転電気機械-第5部:外被による保護等級の分類(日本産業標準調査会 JIS 検索で本文を閲覧)
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