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純アルミ A1050・A1100 の選び方——JIS H 4000 の純度と質別、導電率を保証させたいときの指定

この記事のポイント(結論先出し)
純アルミの板でよく使う A1050 と A1100 は、どちらも JIS H 4000 の材料で、A1050 はアルミニウム 99.50% 以上、A1100 は 99.00% 以上で銅を 0.05〜0.20% 含む[1]。JIS H 4000 が導電率を規定しているのは、注文者が導体として使う A1060P・A1070P(61.0 IACS% 以上)と A6101P だけで、A1050P・A1100P には導電率の規定が無い[1]。ブスバーなど導電率を保証させたい部品なら、A1050 で注文して導電率を期待するのではなく、導体用の合金と導電率の試験を指定する。強さは質別で決まり、O は焼なまし、H14・H24 は 1/2 硬質で、A1050P・A1100P の耐力と曲げ試験は注文者が要求したときだけ適用される[1]。
目次
A1050 と A1100 は、純度と銅の量が違う
JIS H 4000(アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条)の表 1 は、純アルミ系の合金を次のように説明している(参考)[1]。1085・1080・1070 は「純アルミニウムのため強度は低いが,成形性,溶接性及び耐食性がよい」とされ、用途例は反射板、照明器具、装飾品、化学工業用タンク、導電材など。1050 は「1085,1080などと同じ」。1060 は「導体用純アルミニウムで電気伝導性が高い」とされ、用途例はブスバーである。1100 は「強度は比較的低いが,成形性,溶接性及び耐食性がよい」とされ、用途例は一般用器物、建築用材、電気器具、各種容器、印刷板などである。
化学成分で比べると、1050 はアルミニウム 99.50% 以上で、銅は 0.05% 以下に抑えられている。1100 はアルミニウム 99.00% 以上で、銅を 0.05〜0.20% の範囲で含み、けい素と鉄は合計で 0.95% 以下とされている[1]。つまり 1100 は 1050 より純度が低く、銅を意図して含む材料である。表 1 が 1050 を高純度の 1085・1080 と同じ扱いにし、1100 を別に書いているのはこのためである。
棒は JIS H 4040 で、押出棒が A1050BE・A1100BE、引抜棒が A1050BD・A1100BD である。JIS H 4040 の表 1 は 1050 を「強度は低いが,熱伝導度及び電気伝導度は高く,溶接性及び耐食性がよい」、1100 を「強度は比較的低いが,溶接性及び耐食性がよい」とし、1100 の用途例に熱交換器部品を挙げている[2]。
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導電率を保証させたいなら、導体用の合金を指定する
純アルミを選ぶ理由として多いのは、電気や熱をよく通すことである。ここで発注の落とし穴がある。JIS H 4000 の 5.4 は、合金番号 1060・1070・6101 を注文者が導体として使用する場合に、導電率を規定している。A1060P・A1070P は質別 H112・H14・H24 で 61.0 IACS% 以上、A6101P は T6 で 55.0 IACS% 以上である[1]。A1050P と A1100P はこの表に入っていない。さらに表 1 の注は、A1060P と A6101P は導体用として使用する場合に限る、としている[1]。
JIS H 4040 も同じ形で、導電率を定めているのは導体として使う A1060BE(H112 で 61.0 IACS% 以上)と A6101BE(T6 で 55.0、T7 で 57.0 IACS% 以上)である[2]。IACS% は、国際標準軟銅の導電率(20℃で 5.8×107 S/m)を 100 としたときの比を百分率で表したもので[1]、測り方は JIS H 0505(非鉄金属材料の体積抵抗率及び導電率測定方法)による。JIS H 0505 は、導電率を「材料の,電気の通りやすさを焼鈍標準軟銅と比較して表した指標」と定義している[3]。
なぜ導体用の合金が分かれているのか。参考になるのが電線の規格である。JIS C 3108(電気用硬アルミニウム線)は、材料の化学成分をアルミニウム 99.65% 以上とし、銅を 0.005% 以下、マンガンを 0.005% 以下、チタンとバナジウムの合計を 0.005% 以下に抑えたうえで、導電率 61% 以上を求めている[4]。1050 の成分の上限(銅 0.05% 以下、バナジウム 0.05% 以下など)[1]と比べると、導電を目的とする材料は、不純物を一桁厳しく抑えていることが分かる。
発注で押さえることは次のとおりである。これは規格の要求ではなく、発注側の確認の提案である。ブスバーや電極のように導電率が機能に直結する部品で、図面に「A1050」と書かれていたら、導電率を保証させたいのかどうかを設計に確かめる。保証させたいなら、導体用の合金(A1060 など)と導電率の試験を注文時に指定する。A1050 のままでよいなら、導電率は規格で保証された値ではないことを前提に、必要なら受入で測る。
規格値で比べる
次の表は、JIS H 4000 の表 3 から、A1050P と A1100P の主な質別の機械的性質と曲げ試験の内側半径を、厚さ 0.8 mm を超え 1.3 mm 以下の区分で抜き出し、導電率の規定の有無と並べたものである[1]。ほかの厚さの区分は規格の表 3 で確かめる。
| 製品記号・質別 | アルミニウム | 引張強さ N/mm² | 耐力 N/mm²(要求時) | 曲げの内側半径(要求時) | 導電率の規定 |
|---|---|---|---|---|---|
| A1050P-O | 99.50% 以上 | 60 以上 100 以下 | 20 以上 | 密着 | なし |
| A1050P-H14 | 99.50% 以上 | 95 以上 125 以下 | 75 以上 | 厚さの 1 倍 | なし |
| A1100P-O | 99.00% 以上 | 75 以上 105 以下 | 25 以上 | 密着 | なし |
| A1100P-H14 | 99.00% 以上 | 120 以上 145 以下 | 95 以上 | 厚さの 1 倍 | なし |
| A1060P-H14(導体用) | 99.60% 以上 | 85 以上 | 65 以上 | 厚さの 1 倍 | 導体として使う場合 61.0 IACS% 以上 |
表の「耐力」と「曲げ」に(要求時)と付けたのは、JIS H 4000 の 5.3.1 が、A1050P・A1100P などの耐力は注文者の要求がある場合だけに適用するとし、曲げ試験も注文者の要求がある場合だけに適用するとしているからである[1]。成績書に耐力の値が載っていても、要求していない注文では規格として保証された項目ではない。
同じ質別で比べると、1100 は 1050 より強い。O 材では引張強さの下限が 60 と 75、H14 では 95 と 120 N/mm² である。純度を取るなら 1050、少しでも強さを取るなら 1100、という選び方になる。
質別 O・H14・H24 の選び方
JIS H 0001(質別記号)は、O を「焼なまししたもの」で、展伸材については最も軟らかい状態を得るように焼なまししたもの、と定めている。H1 は加工硬化だけのもの、H2 は加工硬化後に適度に軟化熱処理したもので、2 けた目の 4 は引張強さが O と HX8 の中間(1/2 硬質)を表す[5]。
深い絞りや密着に近い曲げがある部品なら O、平らなままで少し剛性が欲しいカバーや銘板なら H14 や H24、というのが使い分けの基本になる。JIS H 4000 の表 3 は H14 と H24 を同じ欄で扱っているが、注記で H22・H24・H26 などには引張強さの上限と耐力を適用しないとしている[1]。H14 で設計したものを H24 で受けると、上限で強さを抑えたい場合(成形のばらつきを嫌う部品など)に前提が変わる。H14 と H24 の成形性の違いはアルミは合金番号と質別で指定するで扱った。
溶接・表面処理で純アルミを選ぶとき
溶接学会誌の概説(1984 年)は、1000 系(純アルミ系)の材料は強度が低いため、薬品タンク・食品容器など耐食性を主とする用途に限られ、溶接構造用の使用量は少ないとしている[6]。同じ概説は、溶加材の使用実績として 5000 系が全体の 4 分の 3 強を占め、次いで A4043 が約 14%、残りが A1100・A1200 などである、とも書いている[6]。純アルミの溶接構造は、強さを求める構造物ではなく、耐食性や純度を求める容器などで使われる、と考えておく。
陽極酸化について、実務表面技術の解説(1988 年)は、硬質アルマイトの被処理材料として展伸材では A1100 で代表される純アルミニウム系が初期から主流の一つだったと書いている[7]。処理業者に渡す情報は表面処理の種類と図面の記号にまとめた。
強さが要る部品なら、純アルミではなく合金を選ぶ。曲げ・溶接と強さを両立させるなら A5052、熱処理で強さを出すなら A6061 を候補にする。
受け入れるときに確かめること
1050 と 1100 は見た目では区別できない。頼りになるのは、包装や製品ごとに付けるよう JIS H 4000 が定めているラベルなどの表示で、そこには規格番号・製品記号(質別を含む)・寸法・製造番号が載る[1]。
JIS H 4000 の検査は JIS H 0321(非鉄金属材料の検査通則)を一般事項としており、その通則は、注文者が求めた場合に製造業者が試験成績・製造番号・製造年月・注文寸法などを記した明細書を出す、と定めている[8]。純アルミの板は安価なぶん成績書を省きがちだが、導電率や成分を確かめたいなら注文時に求める。届いたら、次の順で見る。
1. 製品記号と質別
A1050P か A1100P か、質別は O・H14・H24 のどれか。
2. 化学成分
アルミニウムの純度と銅の値。1050 なら銅 0.05% 以下、1100 なら 0.05〜0.20% に入っているか。
3. 引張強さ
質別と厚さの区分の上限と下限の間に入っているか。耐力と曲げは、要求していれば規格値を見る。
4. 導電率(導体用で注文した場合)
A1060P などを導体として注文していれば、導電率が規格値以上か。JIS H 4000 は、導電率試験を JIS H 0505 によって行い、規定の温度条件で渦電流式導電率計を用いてもよいとしている[1]。
注文書の書き方の例
様式は決まっていないので、発注する側の書き方として一例を示す。
「材質:A1100P-H14(JIS H 4000)、板厚 1.0 mm。試験成績書を添付し、質別・引張強さ・化学成分を記載すること。他合金(1050・1200 を含む)への置き換えと質別の変更(H24 を含む)は事前承認を要する。」
導体として使う場合は、「材質:A1060P-H14(JIS H 4000)、導体として使用。JIS H 4000 の 5.4 による導電率を保証し、試験成績書に導電率を記載すること。」のように、導体として使うことと導電率の記載を書く。
よくある質問
A1050 と A1100、熱を逃がす部品にはどちらがよいですか
JIS H 4040 は 1050 を熱伝導度及び電気伝導度が高い合金としている[2]。1100 は銅を意図して含み、純度が低い[1]。ただ、熱伝導の値を規格が保証しているわけではないので、放熱の性能が設計値に効く部品なら、どの値を前提にしているかを設計に確かめる。
A1050 の板で、導電率の成績書は出してもらえますか
JIS H 4000 で導電率が規定されているのは、導体として使う A1060P・A1070P・A6101P である[1]。A1050P で導電率を求めるなら、規格外の項目として試験方法と合否を別に取り決めることになる。保証させたいなら、導体用の合金で注文するほうが筋がよい。
H14 と H24 は同じものとして扱ってよいですか
JIS H 4000 は同じ欄で扱っているが、H24 には引張強さの上限と耐力が適用されない[1]。上限で強さを管理している部品なら、置き換えは設計の承認事項にする。
まとめ
純アルミの A1050 はアルミニウム 99.50% 以上、A1100 は 99.00% 以上で銅を 0.05〜0.20% 含み、強さは 1100 のほうが高い。JIS H 4000 が導電率を規定しているのは導体として使う A1060P・A1070P・A6101P だけで、A1050P・A1100P には規定が無いので、導電率を保証させたい部品では導体用の合金と導電率の試験を指定する。強さは質別で決まり、A1050P・A1100P の耐力と曲げ試験は要求したときだけ適用される。H24 には引張強さの上限と耐力が適用されない。成績書は注文時に求め、記号・成分・引張強さ・導電率の順に確かめる。
同じ束では、A2017(ジュラルミン)や、純アルミの板で作ることもあるパンチングメタルの発注も扱う。
出典・参考資料
- JIS H 4000:2022 アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2022 年 4 月 20 日改正)
- JIS H 4040:2023 アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 12 月 20 日改正)
- JIS H 0505:2024 非鉄金属材料の体積抵抗率及び導電率測定方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 4 月 22 日改正)
- JIS C 3108:2016 電気用硬アルミニウム線(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2016 年 2 月 22 日改正)
- JIS H 0001:1998 アルミニウム,マグネシウム及びそれらの合金-質別記号(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1998 年 11 月 20 日改正)
- 内田彰「アルミニウム合金溶接技術・概説」溶接学会誌 53 巻 3 号(溶接学会/1984 年 4 月)
- 秋本政弘「硬質アルマイト」実務表面技術 35 巻 6 号(表面技術協会/1988 年 6 月)
- JIS H 0321:1973 非鉄金属材料の検査通則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1973 年 3 月 1 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
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