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投稿日:2026年10月16日

SUJ2(JIS G 4805 軸受鋼)の発注——球状化焼なまし材の硬さと、焼入れ品で指定すること

この記事のポイント(結論先出し)

SUJ2 は JIS G 4805(高炭素クロム軸受鋼鋼材)の種類で、この規格は 2025 年 4 月 21 日に改正された[1]。規格が硬さを決めているのは球状化焼なましを行った切削用の熱間圧延鋼材と熱間鍛造鋼材だけで、値は 201 HBW 以下という上限である[1]。焼入れ後の硬さは材料の規格には書かれていないので、焼入れ品として買う部品は、硬さ・測る位置・熱処理の条件を図面か仕様書で指定する。注文者は種類の記号・寸法に加えて鋼材の用途(切削用か鍛造用か)を示さなければならず、検査文書は指定がなければ検査証明書 3.1 で提出される[1]。

SUJ2 で決まることと、規格の範囲

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SUJ2 は炭素を約 1%、クロムを約 1.5% 含む鋼で、軸受の鋼球やローラなどに使われている[6]。JIS G 4805 は、転がり軸受に使用する高炭素クロム軸受鋼鋼材について規定し、種類は SUJ2・SUJ3・SUJ4・SUJ5 の 4 つである[1]。2025 年の改正で JIS G 4805:2019 は置き換えられ、JIS マーク表示認証では 2026 年 4 月 20 日までの間は 2019 年版を適用してもよい、とされている[1]。

SUJ2 の化学成分は、炭素 0.95〜1.10%、けい素 0.15〜0.35%、マンガン 0.50% 以下、クロム 1.30〜1.60%、モリブデン 0.08% 以下、りん・硫黄は各 0.025% 以下である[1]。表に規定していない合金元素は、協定がない限り溶鋼を仕上げる目的以外に意図的に添加してはならない[1]。

規格の適用範囲が「転がり軸受に使用する」鋼材であることは、発注で意外に大事である。SUJ2 を軸受以外の部品に使うこともあるが、規格の要求事項(脱炭層の深さ、非金属介在物の清浄度など)は軸受の材料として決められている。軸受以外の用途で使うなら、どの要求を必要とし、どれを省いてよいかを設計と決め、規格の外の要求があれば別に書く。

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SUJ2・SUJ3・SUJ4 の違い

4 種類の差は、主にけい素・マンガン・クロム・モリブデンの範囲である。SUJ2 と並べると次のとおりになる。

項目 SUJ2 SUJ3 SUJ4
炭素 C(%) 0.95〜1.10 0.95〜1.10 0.95〜1.10
けい素 Si(%) 0.15〜0.35 0.40〜0.70 0.15〜0.35
マンガン Mn(%) 0.50 以下 0.90〜1.15 0.50 以下
クロム Cr(%) 1.30〜1.60 0.90〜1.20 1.30〜1.60
モリブデン Mo(%) 0.08 以下 0.08 以下 0.10〜0.25
球状化焼なまし材の硬さ(切削用熱間圧延鋼材など) 201 HBW 以下(94 HRBW 以下・218 HV 以下) 207 HBW 以下(95 HRBW 以下・223 HV 以下) 201 HBW 以下(94 HRBW 以下・218 HV 以下)

値は JIS G 4805 の表 2 と表 15 による[1]。SUJ5 はけい素・マンガン・クロムが SUJ3 と同じ範囲で、モリブデンが SUJ4 と同じ 0.10〜0.25% である[1]。ビッカース硬さ(HV)は径 17 mm 以下の場合だけに適用してもよい、とされている[1]。

どの種類を使うかは設計の判断で、購買としては図面の記号どおりに手配し、手に入りにくいからと別の種類に替えるときは設計の承認を取る。

球状化焼なまし材と、焼入れ品は別のもの

SUJ2 の発注でいちばん食い違いやすいのが、「硬さ」の話である。JIS G 4805 は、鋼材は通常、球状化焼なましを行う(注文者の指定によって省略してもよい)としている[1]。球状化焼なましは、JIS G 0201 の定義では、セメンタイト板のような炭化物粒子を安定な球状の形態へ発達させる操作で、一般に Ac1 温度の近辺で長く均熱するなどの焼なましである[2]。削りやすくするための、柔らかい状態の材料である。

規格の硬さの規定は、この状態の鋼材について書かれている。球状化焼なましを行った切削用熱間圧延鋼材と熱間鍛造鋼材は、SUJ2 なら 201 HBW 以下で、冷間引抜鋼材の硬さは受渡当事者間の協定、鍛造用鋼材の低温焼なまし硬さも協定による[1]。焼入れ・焼戻しをした後の硬さは、材料の規格のどこにも書かれていない。

つまり、材料として SUJ2 を買う場合と、SUJ2 で作った部品を焼入れ品として買う場合では、確かめるものが違う。

1. 材料(丸鋼など)として買う
規格の球状化焼なまし状態の硬さの上限、脱炭層深さ、非金属介在物などで受け入れる。ミルシートの硬さが 190 HBW 程度で「焼きが入っていない」と問い合わせる必要はない。

2. 焼入れ品として部品を買う
焼入れ後の硬さ、測る位置と方法、表面の脱炭の許容、熱処理の条件を、図面か仕様書で指定する。材料の規格は焼入れ品の硬さを保証しない。

焼入れ後の硬さは、熱処理の条件で動く。新潟県工業技術総合研究所は、SUJ2 の試験片を 760〜910 ℃ の各温度で焼入れし 180 ℃ で焼戻した試験で、焼入温度が 790 ℃ 以上で焼入焼戻後の硬さが HRC 60 以上となり、760 ℃ ではフェライトが残って硬さが低くなったと報告している[6]。同じ報告は、焼入温度が高くなるにしたがい残留オーステナイトが増えると考えられる、としている[6]。この値は一つの試験の結果で、規格の値ではない。図面に書く硬さは、設計がその部品の使い方から決める。硬さの指定と試験方法の書き方は図面の硬さと試験方法の指定、熱処理の指定は熱処理の図面・発注書での指定で扱った。

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残留オーステナイトと寸法の変化

焼入れした SUJ2 には、マルテンサイトに変わりきらなかったオーステナイト(残留オーステナイト)が残る。JIS G 0201 は、焼入れ後に残留オーステナイトをマルテンサイトに変態させるために、常温より低い温度へ冷却してその温度で均熱する熱処理を「サブゼロ処理」と定義している[2]。

残留オーステナイトの量は、軸受の部品の性能に関わる。高周波誘導加熱で SUJ2 を焼入れする条件を調べた NTN の研究者らは、論文の要旨で前報の結果を振り返り、炉で加熱する通常の熱処理より高い 900〜1000 ℃ でオーステナイト化した誘導加熱材では残留オーステナイトの量が比較的多くなりやすく、転がり軸受の部品には不利と思われる、と書いている[4]。そのうえで、経時による寸法変化、静的負荷容量、ねじり疲労寿命を評価して、炉加熱材と同等以上となる加熱条件を探している[4]。

購買の立場で読み取れるのは、同じ SUJ2 で同じ硬さでも、熱処理の方法と条件が違えば、組織と時間がたってからの寸法の安定性が違いうる、ということである。精密な寸法を保つ部品なら、熱処理の方法(炉か高周波か)、焼戻しの条件、サブゼロ処理の有無を、仕入先が勝手に変えられない事項として仕様書に書き、変えるときは事前に知らせてもらう約束をしておく。表面だけを硬くする高周波焼入れの硬化層の指定は有効硬化層深さの指定と測り方で扱った。

脱炭と非金属介在物

軸受鋼の規格らしい要求が、脱炭層と非金属介在物である。球状化焼なましを行った切削用熱間圧延丸鋼の全脱炭層深さの許容限度は、径 25 mm 以下で 0.40 mm 以下、25 mm を超え 35 mm 以下で 0.50 mm 以下というように、径ごとに決まっている[1]。冷間引抜丸鋼は径 15 mm 以下で 0.20 mm 以下など、より小さい[1]。規格の対比表によれば、対応国際規格(ISO 683-17)は最終製品で表面脱炭がないことを規定しており、JIS は鋼材の全脱炭層深さの許容限度を具体的に規定する形をとっている[1]。鋼材には脱炭層があり得る前提で、削り代の少ない部品では、加工後の表面にこの層が残らないかを仕入先と確かめる。

非金属介在物は、点算法で試験した場合の清浄度を、A 系 0.15% 以下、B 系+C 系 0.05% 以下、合計 0.18% 以下としている[1]。顕微鏡組織とマクロ組織は、注文者の指定がある場合に試験し、判定基準は受渡当事者間の協定による[1]。炭化物の球状化が十分か、有害なしま状偏析や巨大な炭化物がないかを確かめたいなら、指定しておく。

寸法の許容差と、注文時に示すこと

熱間圧延丸鋼の径の許容差は、径 15 mm 以下で ±0.20 mm、15 mm を超え 25 mm 以下で ±0.25 mm などで、熱処理の有無にかかわらず適用される[1]。冷間引抜丸鋼は径 15 mm 以下で ±0.05 mm、15 mm を超え 25 mm 以下で ±0.10 mm、35 mm を超えると協定である[1]。製造方法は、熱間圧延鋼材または熱間鍛造鋼材を使い、注文者の指定によって冷間圧延・冷間引抜き・切削・研削などで製造してもよい、とされている[1]。

JIS G 4805 は、注文者が注文時に少なくとも示さなければならない事項として、種類の記号、寸法、鋼材の用途の 3 つを挙げている[1]。用途は、鍛錬成形比(切削用は 6S 以上、鍛造用は 4S 以上)、寸法と曲がり、きずの許容、脱炭層、硬さ、試験の各箇条にかかわる[1]。切削用か鍛造用かを伝えないと、どの要求で作るかが決まらない。

検査文書について、JIS G 4805 は、製造業者は検査文書を提出しなければならないとし、注文時に特に指定がない場合は JIS G 0415 の 5.1(検査証明書 3.1)によるとしている[1]。JIS G 0415 の定義では、3.1 は出荷品そのものかそれを含む試験単位についての受渡検査の結果を載せた文書で、妥当性の確認は製造部門から独立した検査代表者が行う[3]。商社やシャーリング業者などの中間業者から買う場合、中間業者は注文者の要求があるとき製造業者の検査文書の原本か複製を修正・追加なしに提出しなければならない[3]。切断などで寸法を変えたなら、追加の文書が要る[3]。機械試験で合格にならなかった鋼材の再試験は、JIS G 0404 の 9.8 によるとされ[1]、そこでは試験結果が規定値から異常に大きく外れている場合は異材混入が懸念されるため注意を要する、と注記されている[5]。

発注書に書くこと

1. 規格と種類の記号
「JIS G 4805 SUJ2」と書く。SUJ3〜5 への置き換えは設計の承認を取る[1]。

2. 寸法と製造方法
熱間圧延か冷間引抜か研削か。寸法の許容差を規格の表で足りるか確かめる[1]。

3. 用途
切削用か鍛造用か。注文時に示さなければならない事項である[1]。

4. 焼なましの状態
球状化焼なましを省略するかどうか。省略は注文者の指定による[1]。

5. 焼入れ品として買うなら
焼入れ後の硬さ・測る位置と方法・熱処理の方法と条件・サブゼロ処理の有無・脱炭の許容。材料の規格には書かれていない[1][2]。

6. 組織の試験と検査文書
顕微鏡組織・マクロ組織を求めるか。検査文書の種類(指定がなければ 3.1)と、中間業者から買う場合の複製の扱い[1][3]。

よくある質問

SUJ2 の丸棒のミルシートに「硬さ 192 HBW」とあります。焼きが入っていないのでは

材料は通常、球状化焼なましをした柔らかい状態で供給され、規格は SUJ2 の切削用熱間圧延鋼材などの硬さを 201 HBW 以下と上限で決めている[1]。192 HBW はその範囲の値で、焼入れ品の硬さとは別のものである。

SUJ2 の焼入れ品の硬さを規格で指定できますか

JIS G 4805 は焼入れ後の硬さを規定していない[1]。図面に「焼入焼戻し HRC ○○〜○○」のように、値と測る位置・方法を書く。値は設計が用途から決める。

軸受ではない治具の部品に SUJ2 を使います。何を気にすればよいですか

規格は転がり軸受用の鋼材として要求を決めている[1]。材料としての受入はそのまま使えるが、焼入れ品の硬さや寸法の安定性など、部品として必要なことは図面と仕様書で別に決める。工具や金型の用途なら、工具鋼と比べる検討もSKD11・SKD61・SK85 の選び方が参考になる。

まとめ

SUJ2 は 2025 年に改正された JIS G 4805 の転がり軸受用の鋼材で、規格の硬さは球状化焼なまし状態の上限(201 HBW 以下)である。焼入れ後の硬さは材料の規格に書かれていないので、焼入れ品として買う部品は、硬さ・測る位置・熱処理の方法と条件を図面か仕様書で決める。熱処理の条件で残留オーステナイトと寸法の安定性が変わりうるので、条件を変えるときは事前に知らせてもらう。注文時には種類の記号・寸法・用途を示し、検査文書は指定がなければ 3.1 で出る。

同じ束では、鉄鋼の材料をフラットバー(平鋼)の規格で、鋳物の材料をFC250 の発注で扱う。軸受そのものを型番で買う場合は軸受を型番で買うとき・指定するときを参照してほしい。

出典・参考資料

  1. JIS G 4805:2025 高炭素クロム軸受鋼鋼材(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2025 年 4 月 21 日改正)
  2. JIS G 0201:2023 鉄鋼用語(熱処理)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 5 月 22 日改正)
  3. JIS G 0415:2024 鋼及び鋼製品―検査文書(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 6 月 20 日改正)
  4. SUJ2 材の機械的特性に及ぼす高周波誘導加熱条件の影響(Hiroshi Yuki・Miyu Sato・Chikara Ohki/鉄と鋼 104 巻 2 号/2018 年)
  5. JIS G 0404:2023 鋼材の一般受渡し条件(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 12 月 20 日改正)
  6. 技術トピックス(種々の温度で焼入れした SUJ2 の硬さと金属組織)(斎藤雄治/新潟県工業技術総合研究所 県央技術支援センター/2015 年 5 月 18 日)

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