硬鋼線材 SWRH(JIS G 3506)・軟鋼線材 SWRM(G 3505)の指定——線との違いと成績書 | newji
品質・加工の困りごとの相談

その不具合、
どこに頼むかから一緒に。

課題の整理と進行は newji、測定・解析・試作は専門の会社。見積のご提示までは無料です。

相談できることを見る技術課題の解決のページへ

投稿日:2026年10月17日

硬鋼線材 SWRH(JIS G 3506)・軟鋼線材 SWRM(G 3505)の指定——線との違いと成績書

この記事のポイント(結論先出し)

SWRH は JIS G 3506 の硬鋼線材、SWRM は JIS G 3505 の軟鋼線材で、どちらも 2024 年に改正された「線を作るための線材」の規格である[1][2]。硬鋼線材は硬鋼線・オイルテンパー線・PC 硬鋼線・ワイヤロープなどの材料で、ピアノ線材は含まない[1]。軟鋼線材は鉄線・亜鉛めっき鉄線などの材料である[2]。どちらも機械的性質は原則として規定しておらず(硬鋼線材はインラインパテンチング処理で引張強さを協定した場合だけ許容差が付く)、保証するのは成分・寸法・外観などである[1][2]。硬鋼線材には平均全脱炭層深さ 0.20 mm 以下の規定があり、軟鋼線材には脱炭の規定が無い[1][2]。部品を買う側が実際に指定するのは多くの場合「線」(硬鋼線 SW・鉄線 SWM など)なので、線の規格と、その材料の線材がどれかを分けて書く。

SWRH・SWRM は線材の記号で、線の記号ではない

🛠 この記事のような品質・検査・規格の課題は、ご相談ください。規格の調べ物、仕入先への品質要求づくり、検査・試験先の手配まで一緒に進めます(相談は無料)。相談の例を見る →
相談する →

鋼の線の世界は、製鋼所が熱間圧延で作る線材と、それを伸線・熱処理して作る線に分かれていて、JIS も別々にある。硬鋼線材の JIS G 3506 は「硬鋼線,オイルテンパー線,PC 硬鋼線,亜鉛めっき鋼より線,ワイヤーロープなどの製造に用いられる」線材の規格で、ピアノ線材と橋りょう用線材は除く[1]。軟鋼線材の JIS G 3505 は「鉄線,亜鉛めっき鉄線などの製造に用いられる」線材の規格で、溶接棒心線用線材は除く[2]。

線の側を見ると、硬鋼線の JIS G 3521 は線の製造に用いる材料を JIS G 3506 に適合した線材とし[3]、鉄線の JIS G 3532 は JIS G 3505 に適合した線材としている[4]。つまり SWRH は硬鋼線 SW の、SWRM は鉄線 SWM の材料である。検索で「硬鋼線 SWRH」とひとまとめに出てくることがあるが、図面や発注書では、線の規格(SW・SWM)と線材の規格(SWRH・SWRM)を混ぜて書かない。

なお、ピアノ線の材料は別の JIS G 3502(ピアノ線材・記号 SWRS)である[5]。硬鋼線材の規格がピアノ線材を除いているのは、この別の規格があるからだ。ピアノ線と硬鋼線の使い分けはピアノ線 SWP とばね鋼 SUP の選び方で扱った。

📄 実務で使うなら — 原価のつかみ方(全 5 章・無料サンプルあり)

三つの線材規格を並べる

次の表は、硬鋼線材・軟鋼線材・ピアノ線材の三つの規格の主な規定を並べたものである[1][2][5]。

項目 硬鋼線材 SWRH(JIS G 3506) 軟鋼線材 SWRM(JIS G 3505) ピアノ線材 SWRS(JIS G 3502)
種類の数 21(SWRH27〜SWRH82B) 10(SWRM2〜SWRM22。うち 2 種は附属書) 18(SWRS62A〜SWRS92B)
炭素の例 SWRH62A:0.59〜0.66% SWRM10:0.08〜0.13% SWRS62A:0.60〜0.65%
りん・硫黄の上限 各 0.030% 各 0.040% 各 0.025%
脱酸 キルド鋼 キルド鋼又はリムド相当鋼(キルド鋼指定は記号に K) キルド鋼
脱炭層 平均全脱炭層深さ 0.20 mm 以下(協定で 0.15 mm) 規定なし 全脱炭層深さ 0.07 mm 以下
表面きずの深さ 数値の規定なし(使用上有害な欠点があってはならない) 数値の規定なし(使用上有害な欠点があってはならない) 0.10 mm 以上のきずがあってはならない
径 15 mm 以下の許容差 ±0.40 mm(偏径差 0.64 mm 以下) ±0.40 mm(偏径差 0.64 mm 以下) JIS G 3195 の表 2(許容差 B)による(径 14 mm を超えるものは受渡当事者間の協定)
機械的性質 規定しない(インラインパテンチングで協定した場合は許容差あり) 規定しない 規定しない(インラインパテンチングで引張強さを協定した場合は許容差あり)

表のとおり、同じ「線材」でも管理の深さがかなり違う。りん・硫黄の上限はピアノ線材がいちばん厳しく、軟鋼線材がいちばん緩い[1][2][5]。軟鋼線材には脱炭の規定が無く、外観も「使用上有害な欠点があってはならない」と定めるだけである[2]。用途に合わない線材規格の線を使うと、成分の数字だけでは分からない管理の差が残る。

硬鋼線材 SWRH:数字は炭素、A・B はマンガン

SWRH の数字は炭素量の目安で、SWRH27 の炭素は 0.24〜0.31%、SWRH82A・B は 0.79〜0.86% である[1]。SWRH42 から上は A と B に分かれ、同じ数字なら炭素の範囲は同じで、マンガンが A は 0.30〜0.60%、B は 0.60〜0.90% と違う[1]。附属書 JA の特別品質規定では、協定によって炭素の範囲を上下それぞれ 0.01% ずつ狭めて指定でき、SWRH27 なら 0.25〜0.30% になる[1]。

硬鋼線材は熱間圧延のままが原則だが、協定によって、熱間圧延後の冷却工程で行うパテンチング処理(インラインパテンチング処理)をしてもよい[1]。規格の注記は、インラインパテンチング処理材は通常、二次加工業者で直接冷間加工し、その後はパテンチング処理しない、と書いている[1]。機械的性質は規定しないのが原則で、引張強さの指定値を協定してインラインパテンチング処理をした場合だけ、引張強さの許容差が付く。許容差は SWRH27〜SWRH67B で ±100 N/mm²、SWRH72A〜SWRH82B で ±120 N/mm² である[1]。

脱炭層深さは、平均全脱炭層深さが 0.20 mm 以下でなければならず、協定によって 0.15 mm 以下と指定できる[1]。ただし規格は、脱炭層深さの測定試験について、特に注文者の指定がない場合は形式試験を適用してもよい、としている[1]。ロットごとの測定値がほしいなら、注文時にそう求める。オーステナイト結晶粒度と非金属介在物は、注文者が指定した場合に試験し、規定値は協定による[1]。

軟鋼線材 SWRM:K・M の付記と、ボロンを入れる場合

軟鋼線材はキルド鋼かリムド相当鋼で作り、キルド鋼を指定する場合は記号の末尾に K を付ける(例 SWRM10K)[2]。規格の注記は、K を付けるのは、めっき線の線材の場合、鋼中に脱酸剤として添加されるけい素がめっき被膜の形成に影響することが背景だ、と説明している[2]。だから報告の箇条は、キルド鋼指定の場合、成績表にけい素の含有率を付記しなければならない、としている[2]。亜鉛めっき鉄線のように後でめっきをする線では、キルド鋼かどうかとけい素の値が、めっきの仕上がりに関係する確認項目になる。

SWRM17 と SWRM20 は、協定によってマンガンを 0.60〜0.90% にでき、この場合は記号の末尾に M を付ける。規格は、マンガンを高めた鋼材はコンクリートの型枠固定ジグに使われている、と注記している[2]。

協定によってボロンを添加することもでき、その場合はボロンの含有率と、ボロンと窒素の含有率の比(B/N)を報告しなければならない[2]。規格の注記は、ボロンは時効硬化の改善のために窒素の含有率に応じて添加する場合があるが、一般に焼入性などの鋼材特性に大きく影響するので、用途を考えて添加し、特に炭素が 0.15% を超える場合は注意が必要だ、としている[2]。後で熱処理をする部品の材料にボロン添加の線材が混ざると、焼入れの効き方が変わりうる。ボロンの有無は成績書で確かめる項目である。

使ってはいけない置き換え

線材の規格は、それぞれの適用範囲を持っている。置き換えの提案が来たときに確かめたいのは次の三つである。

1. 硬鋼線材でピアノ線を作る、と読める指定
硬鋼線材の規格はピアノ線材を除いている[1]。ピアノ線の材料は JIS G 3502 のピアノ線材で[5]、りん・硫黄の上限も違う。図面がピアノ線(SWP)を求めているのに、材料の記号が SWRH 系になっていたら、設計に確かめる。なお、硬鋼線 SW-B・SW-C を主として静的な力を受けるばねに使うのは規格どおりで[3]、その材料が SWRH なのは正しい。

2. 鉄線を、強度の要る部品に使う
鉄線の JIS G 3532 には普通鉄線 SWM-B・SWM-F、くぎ用鉄線 SWM-N、なまし鉄線 SWM-A などがあり、なまし鉄線は冷間加工のあとに軟化のため焼なました線である[4]。用途例も一般用・金網用・くぎ用などとされている[4]。ばねや高い荷重を受ける部品の材料を想定した規格ではない。

3. 軟鋼線材を、冷間圧造や溶接棒の材料に流用する
軟鋼線材の規格は溶接棒心線用線材を除いている[2]。冷間圧造には JIS G 3507-1 の冷間圧造用炭素鋼線材があり、表面きずの深さに数値の上限を持つ[6]。成分が近くても規格の管理項目が違う。冷間圧造用の材料の指定は冷間圧造用炭素鋼 SWRCH・SWCH の指定で扱う。

部品を買う側は、線の規格と線材の両方を書く

ばね・ワイヤロープ・金網・線加工品などを買う会社が、線材を自分で買うことはあまりない。指定するのは多くの場合、線の規格と種類(硬鋼線 SW-B、鉄線 SWM-B など)である。それでも線材を知っておく意味は二つある。

第一に、線の表示から材料をたどれる。硬鋼線の規格は、検査に合格した線に、線の製造に用いた線材の種類の記号、種類の記号、線径、製造業者名を表示するよう定めている[3]。受入で現品の表示を見れば、どの硬鋼線材から作った線かが分かる。

第二に、検査文書の扱いが段ごとに違う。硬鋼線材・軟鋼線材の規格は、製造業者は注文者から要求された場合に検査文書を提出しなければならず、注文時に特に指定がなければ JIS G 0415 の検査証明書 3.1 による、としている[1][2]。一方、硬鋼線の規格は、製造業者は検査文書を注文者に提出しなければならない、と要求を条件にしていない[3]。どちらの場合も、規格がいう「注文者」は線材や線を買う加工業者で、部品を買う会社ではない。部品の発注書に「使用した線(必要なら線材)の検査文書の写しを提出すること」と書いておかなければ、手元に裏付けは残らない。これは規格の要求ではなく、発注側の書き方の提案である。検査文書の区分はEN 10204 のミルシート区分で整理した。

🛠 発注の管理なら — 発注書の作成から送付、進捗の確認までをひとつの画面で行える Newji one(製造業の見積・発注クラウド/サービス資料は無料)

注文時に示すことと、成績書で確かめること

硬鋼線材・軟鋼線材の規格は、注文者が注文時に少なくとも提示しなければならない情報を、種類の記号と径としている[1][2]。標準径は、硬鋼線材が 5.5〜15 mm、軟鋼線材が 5.5〜19 mm の範囲で表に並び[1][2]、径 15 mm を超える硬鋼線材の許容差は協定による[1]。線材を直接買う場合の注文書には、規格と種類の記号、径に加えて、協定した特別品質規定(炭素の範囲・脱炭層・インラインパテンチング処理と引張強さ・径の許容差)を書く。

成績書が届いたら、次の順で見る。

1. 種類の記号
SWRH62A と SWRH62B のようにマンガンだけが違う記号を取り違えていないか[1]。軟鋼線材なら K・M の付記が注文どおりか[2]。

2. 炭素とマンガン
記号の範囲に入っているか。協定で炭素を狭めたならその範囲か[1]。

3. けい素とボロン
軟鋼線材でキルド鋼を指定したならけい素の付記があるか。ボロンを添加したなら含有率と B/N の報告があるか[2]。

4. 脱炭と引張強さ
硬鋼線材なら脱炭層深さが形式試験の値かロットの値か。インラインパテンチング処理材なら協定した引張強さの許容差に入っているか[1]。

よくある質問

SWRH62B の線材に引張強さが書いていないのは、不足ですか

不足ではない。硬鋼線材の規格は機械的性質を規定せず、引張強さの許容差が付くのはインラインパテンチング処理で引張強さを協定した場合だけである[1]。強さは、その線材から作った硬鋼線の規格(線径ごとの引張強さ)で確かめる[3]。

亜鉛めっき鉄線の材料に、キルド鋼を指定したほうがよいですか

規格は、K を付ける背景を、脱酸剤のけい素がめっき被膜の形成に影響することだと説明している[2]。キルド鋼にするかどうかは、めっきの方法と仕上がりの要求を知るめっき線の製造者と決める項目で、指定するならけい素の値を成績書で確かめる。

針金や結束線も、この規格で指定するのですか

工業用途で鉄線を買うなら、線の規格の JIS G 3532 で種類(普通鉄線・なまし鉄線など)と線径を指定する[4]。線材の規格は、その鉄線の材料の規格である[4]。

まとめ

SWRH(JIS G 3506 硬鋼線材)と SWRM(JIS G 3505 軟鋼線材)は線を作るための線材の規格で、硬鋼線材は硬鋼線やワイヤロープの、軟鋼線材は鉄線の材料である。ピアノ線材は別の JIS G 3502 で、りん・硫黄の上限が厳しい。どちらの線材規格も機械的性質を原則として規定せず、硬鋼線材は平均全脱炭層深さ 0.20 mm 以下を定め、軟鋼線材には脱炭の規定が無い。SWRH の A と B はマンガンの違い、SWRM の K はキルド鋼の指定で、けい素の付記が報告に入る。ボロンを添加した軟鋼線材は焼入性が変わりうる。部品を買う側は線の規格を指定し、線の表示と検査文書の写しで材料の線材までたどれるようにしておく。

同じ束では、冷間圧造用炭素鋼の SWRCH・SWCH、みがき棒鋼 SGD、SNCM439、ステンレスのもらい錆も扱う。線材から作る製品ではワイヤロープ JIS G 3525の指定も参照してほしい。

出典・参考資料

  1. JIS G 3506:2024 硬鋼線材(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 4 月 22 日改正)
  2. JIS G 3505:2024 軟鋼線材(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 4 月 22 日改正)
  3. JIS G 3521:2018 硬鋼線(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2018 年 2 月 20 日改正)
  4. JIS G 3532:2011 鉄線(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2011 年 2 月 21 日改正・2025 年 10 月 20 日確認)
  5. JIS G 3502:2024 ピアノ線材(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 11 月 20 日改正)
  6. JIS G 3507-1:2021 冷間圧造用炭素鋼-第 1 部:線材(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2021 年 4 月 20 日改正)

線を使う部品・製品の生産先を探すとき

newji の OEM/ODM 生産では、国内外のサプライヤーネットワークから、品質要求・数量・納期・コストに合わせて案件ごとに生産先を選定します。必要に応じて複数社の比較検討も行います。設計段階での材料選定や加工方法についての技術的な助言も可能です。

OEM/ODM 生産について見る

WHITE PAPER

この記事の理解を深める
無料ホワイトペーパーをプレゼント

製造業の現場で使える実務資料(PDF)を無料でお届けします。"こんな資料が届きます" ↓ 下のボタンからどうぞ。

AI 一次診断(無料・お名前の入力なし)

この症状の原因を、AIが分析します

材料・加工方法・条件と、起きている症状を書いてください。考えられる原因、まず確かめること、切り分け方、専門の会社に聞くことを AI が整理します。

1 日 3 回まで0 / 1,500 字

社外秘・機密情報・個人情報・図番など、公開できない情報は書かないでください。

AI の回答は可能性の整理で、原因を断定するものではありません。入力内容は AI 診断と改善のため 30 日間保存し、その後削除します(プライバシーポリシー)。

AI を使わずに直接相談する →

📄 取引先から受け取った仕様書の要求を、1 件ずつ一覧にします — 仕様書の要求事項一覧(無料・社数限定)

𝕏NEWJI総研は、調達・品質・設計の知識を X でも発信しています — @newji_souken をフォロー

NEWJI総研

購買・調達や設計・品質の実務を、
研修テキストと実務書式にまとめています。
無料サンプルで中身を確かめられます。

NEWJI総研の資料を見る

OEM/ODM 生産委託

アイデアはある。作れる工場が見つからない。
試作1個から量産まで、加工条件に合わせて最適提案します。
短納期・高精度案件もご相談ください。

加工可否を相談する

AI/DX支援

見積・発注、紙・FAX、品質記録など、
人に頼って回っている業務を、AIと仕組みで回る形に。
まずは無料でご相談ください。

AI/DX支援を見る

見積・発注クラウド Newji one

受発注が増えるほど、入力・確認・催促が重くなる。
受発注管理を“仕組み化“して、ミスと工数を削減しませんか。
見積・発注・納期まで一元管理できます。

機能を確認する

You cannot copy content of this page