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投稿日:2026年10月17日

鋼材の定尺と切断の指定——JISの標準長さ・長さの許容差と、切断品で決めること

この記事のポイント(結論先出し)

鋼材の「定尺」は、JIS G 0203 で標準寸法と同義だが標準寸法よりさらに集約化された寸法とされ、鋼管・棒鋼・形鋼などでは長さに対してだけ使う用語である[1]。標準の長さは製品ごとの寸法規格に決まっていて、棒鋼は 3.5〜10.0 m[2]、形鋼は 6.0〜13.0 m[3]、平鋼は 5.5〜12.0 m[4]、鋼板には 1 829 mm や 2 438 mm などの標準長さがある[5]。規格の長さの許容差はどれもマイナス側 0・プラス側だけで、7 m 以下の棒鋼・形鋼・平鋼なら +40 mm である[2][3][4]。部品に合わせて切った「切断品」の長さの公差は、材料の規格の外になる。板のせん断なら JIS B 0410、ガス切断なら JIS B 0417 の普通公差を図面で指定でき[6][7]、のこ切断の棒や管には JIS の普通公差が無いので数値で書く。切断品のミルシートは、製造業者の文書の写しと、切断品との対応を示す追加文書で受け取る[8]。

「定尺」は、標準寸法をさらに絞った寸法

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JIS G 0203(鉄鋼用語(製品及び品質))は、標準寸法を「使用実績、標準数列などを考慮してある程度集約化した鋼材の寸法」と定義し、製品規格に標準寸法が示された場合は、通常その寸法で取引することを推奨していることを意味する、と注釈している。定尺(ていじゃく)は「標準寸法と同義語であるが、通常、標準寸法よりも更に集約化された寸法」で、鋼管・棒鋼・形鋼などは長さに対してだけ用いる、とされている[1]。

つまり定尺は、規格の標準寸法の中から、実際によく流通して在庫されている長さを指す言葉である。どの長さが「定尺」として在庫されているかは問屋や地域で違い、JIS には定尺の一覧は無い。発注で使える根拠は、各製品の寸法規格に書かれた標準長さと、長さの許容差である。この記事は、標準の長さで買うか、切断して買うかを決め、注文書に何を書くかを扱う。重量の計算や、切り無駄を数量に含める考え方は鋼材の重量計算で扱った。

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製品ごとの標準長さと、長さの許容差

主な鋼材の寸法規格に書かれた標準の長さと長さの許容差を並べると、次のとおりである[2][3][4][5][9]。

製品(規格) 標準の長さ 長さの許容差
熱間圧延棒鋼(JIS G 3191) 3.5・4.0・4.5・5.0・5.5・6.0・6.5・7.0・8.0・9.0・10.0 m 7 m 以下 +40/0 mm。7 m を超えると 1 m またはその端数ごとにプラス側に 5 mm を加える
熱間圧延形鋼(JIS G 3192) 6.0・7.0・8.0・9.0・10.0・11.0・12.0・13.0 m 山形鋼・H 形鋼などは 7 m 以下 +40/0 mm、7 m 超は同じ足し方
熱間圧延平鋼(JIS G 3194) 5.5・6.0・6.5・7.0・8.0・9.0・10.0・11.0・12.0 m 7 m 以下 +40/0 mm(協定で+100 mm まで)
熱間圧延鋼板(JIS G 3193) 1 829・2 438・3 048・6 000・6 096・7 000・8 000・9 000・9 144・10 000・12 000・12 192 mm 許容差 A:600 mm 以上 4 000 mm 未満 +20/0 mm など。再切断・精密切断の許容差 B もある
圧力配管用炭素鋼鋼管 STPG(JIS G 3454) 4 000 mm 以上の指定長さ マイナス側 0、プラス側は規定しない

表から言えることは二つある。一つは、規格の長さの許容差がどれもマイナス側 0 で、注文した長さより短い材料は届かない代わりに、プラス側はそれなりに長く届くことである。棒鋼で 10.0 m を注文すれば、7 m を 3 m 超えるので許容差は +55 mm/0 mm になる[2]。圧力配管用の STPG に至っては、プラス側を規定していない[9]。もう一つは、標準寸法はあくまで代表寸法だということで、たとえば JIS G 3192 は、受渡当事者間の協定によって表に記載されていない断面寸法や長さを用いてもよいとしている[3]。標準長さ以外の長さで製鋼所から取り寄せることはできるが、数量と納期の条件は仕入先と相談になる。

鋼板の幅と長さ:914×1 829、1 219×2 438 の出どころ

JIS G 3193 の標準幅には 914 mm、1 219 mm、1 524 mm、1 829 mm などがあり、鋼板(鋼帯からの切板を除く)は幅 914 mm、1 219 mm と 1 400 mm 以上を適用する[5]。標準長さの 1 829 mm、2 438 mm、3 048 mm と組み合わせた 914×1 829 mm(いわゆる 3×6 判)や 1 219×2 438 mm(4×8 判)が、板の流通でよく使われる大きさである。部品を板から取る場合は、部品の展開寸法をこの大きさの板に並べて、端材が少なくなる取り方を仕入先と相談すると材料費が読みやすい(当方の提案)。

鋼板の長さの許容差は、特に指定がない場合は表 8 の許容差 A で、600 mm 以上 4 000 mm 未満なら +20/0 mm、4 000 mm 以上 6 000 mm 未満なら +30/0 mm である。再切断または精密切断の場合の表 9 の許容差 B は、長さ 6 300 mm 未満・厚さ 6.00 mm 未満で +5/0 mm、厚さ 6.00 mm 以上で +10/0 mm とずっと小さく、厚さ 20 mm 以上には適用しない[5]。精度の要る切板を材料の段階で買うなら、注文書に「長さの許容差は JIS G 3193 の表 9(許容差 B)」と書く。鋼板の厚さの許容差は鋼板の板厚公差 JIS G 3193で扱う。

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標準の長さで買うか、切断品で買うか

自社や加工先で切断するなら標準の長さで、切断の手間や端材の管理を外に出したいなら切断品で買う、というのが基本の分かれ目になる。切断品で買うと、次の三つの決め事が増える。

1. 切断後の長さ・幅の公差
材料の規格の長さの許容差(+40/0 mm など)は、圧延の段階で切った材料に対するもので、部品に合わせて切った寸法の公差ではない。

2. 端面の状態
切断方法で、端面の直角度、ばり、切断面の粗さ、熱の影響が変わる。

3. 検査文書の対応
切断した業者を通して、製造業者のミルシートとの対応をどう示してもらうか。

材料の規格の側でも、端面の扱いが決まっていることがある。たとえば JIS G 3192 は、H 形鋼と CT 形鋼の切断面の直角度の許容差を、注文者から要求があった場合に適用するとしている[3]。要求しなければ、規格の直角度は当たらない。

切断の公差は、切断方法ごとに規格がある場合と無い場合がある

板の切断には、切断方法ごとの普通公差の JIS がある。どちらも、図面や関連文書に規格番号と等級を指示して使う[6][7]。

規格 対象 値の例 指示の例
JIS B 0410(金属板せん断加工品の普通公差) ギャップシャー・スケヤシャーなどの直刃せん断機で切断した厚さ 12 mm 以下の金属板 切断幅 120 mm を超え 400 mm 以下、板厚 1.6 mm 以下で A 級 ±0.3 mm、B 級 ±0.8 mm 「JIS B 0410-A」
JIS B 0417(ガス切断加工鋼板普通許容差) 厚さ 6 mm 以上 100 mm 以下の熱間圧延鋼板をガス切断機で直線切断した加工鋼板 切断長さ・幅 1 000 mm 以下、板厚 6 mm 以上 27 mm 以下で A 級 ±1 mm、B 級 ±2 mm 「JIS B 0417,B級」

JIS B 0410 は切断幅の寸法公差のほかに真直度と直角度の普通公差も A 級・B 級で定め、異なる等級で指示する場合はそのことを明記するとしている[6]。JIS B 0417 は長さ・幅に加えて、切断縁の真直度・直角度と切断面の倒れ・粗さの普通許容値を定めている[7]。注意したいのは適用の範囲で、JIS B 0417 は、切断面が垂直な矩形の加工鋼板以外、焼入れ焼もどしをした鋼板、コイル鋼板、プラズマ切断機で切断したものには適用しないと明記している[7]。プラズマ切断やレーザー切断で取った板に「JIS B 0417」と書いても、規格の上では当てはまらない。レーザー切断品の指定はレーザー切断品の指定、板金部品の公差全般は板金・プレス部品の公差の指定で扱った。

棒・管・形鋼ののこ切断には、JIS の普通公差が無い

バンドソーなどののこ盤で棒鋼・鋼管・形鋼を切る場合の長さの普通公差は、板の B 0410・B 0417 のような JIS が無い。このため、切断品の注文では「長さ 200 ±0.5 mm」「端面の直角度 0.3 mm 以内」のように数値で書くか、図面の普通公差(JIS B 0405 など)がどこまで当たるかを仕入先と確かめる。書かなければ、長さの公差は加工先の社内基準で決まることになる。

のこ切断では、刃の厚さの分が切りくずになる。たとえば 4 000 mm の棒から長さ 200 mm を何本取れるかは、切断代と、端の不揃いを落とす捨て代で変わる。仕入先が「定尺から何本取り」で見積もっているのか、「1 本あたり何 mm の素材」で見積もっているのかを確かめると、数量の違う見積どうしを比べやすい(当方の提案)。

切断品のミルシート:写しと「対応を示す追加文書」

JIS G 0415(鋼及び鋼製品-検査文書)は、製造業者から製品の供給を受け、加工を全く加えないか、注文書と製品仕様の特性に影響を与えない範囲で切断加工などを行う組織を「中間業者」と定義し、例としてコイルセンタ、シヤリング業、問屋を挙げている[8]。中間業者や加工業者は、製品を供給する場合、注文者の要求があるときに製造業者の検査文書の原本か複製を提出しなければならず、検査文書の修正や追加を一切行ってはならない[8]。

そのうえで、中間業者が製品の識別・寸法・数量に何らかの変更を加えた場合は、新しい条件に適合する旨の追加文書を提出しなければならず、これには製品と文書のトレーサビリティを確保するための製品識別も含まれる[8]。中間業者による鋼材の種類の記号の変更は、新しく試験を実施した場合でも行ってはならない[8]。加工業者は、加工によって変化する特性について自ら検査して追加文書に記載するが、リコイリングなどの軽度な加工や、切断時の局部的な加熱・塑性変形は含まない、とされている[8]。

切断品でミルシートが要る場合は、注文時に「製造業者の検査文書の写し」と「切断品がその文書のどの製品から切られたかを示す追加文書」の両方を求める。何も書かずに切断品を買うと、写しが付いてこない、あるいはどの現品の文書か分からない、ということが起きる。フラットバーを例にした書き方はフラットバー(平鋼)JIS G 3194 の寸法許容差でも触れた。ミルシートの区分そのものはミルシートの区分を参照してほしい。

ガス切断の熱影響と、削り代

ガス切断した縁は熱の影響を受けている。ミルシートに載るのは材料の受渡検査の結果で、切断した後の縁の状態は記載の対象にならない。切断した縁をそのまま使う部品と、縁を削り落として使う部品では、指定が変わる。縁を機械加工する部品なら、図面で削り代を見込むか、ガス切断ではなくせん断やのこ切断を指定するかを、設計と決めておく。JIS B 0417 の粗さの普通許容値も、切断面の凹凸の大きさの区分を決めているだけで、切断面の硬さは扱っていない[7]。

使ってはいけない組合せは、焼入れ焼もどしをした鋼板をガス切断し、縁の性質を確かめないまま切断したままで使うことである。JIS B 0417 も、焼入れ焼もどしをした鋼板を適用範囲から外している[7]。こうした材料の切断方法と切断後の処理は、材料の製造業者の推奨と設計の判断で決める。

注文書に書く項目

1. 材料の規格と種類、形状と断面寸法
「JIS G 3101 SS400 平鋼 9×50」など。

2. 長さ
標準の長さで買うなら長さ(例:6.0 m)。製鋼所の長さの許容差(+40/0 mm など)で足りるか。

3. 切断品なら切断寸法と公差
板なら JIS B 0410・B 0417 の等級、棒・管・形鋼なら数値の公差。

4. 切断方法と端面
シャー・のこ・ガス・レーザーなどを指定するか、仕入先に任せるか。端面の直角度、ばり取りの要否。

5. 検査文書
製造業者の検査文書の写しと、切断品との対応を示す追加文書。

6. 数量の数え方
本数で買うか、重量で買うか。切断代・端材の扱い。

例:「材質:JIS G 3101 SS400 鋼板 t12。切板 300×500 mm、20 枚。切断はガス切断、寸法は JIS B 0417 B 級による。検査文書:製造業者の検査証明書 3.1 の写しと、切板と原板の対応を示す追加文書を添付すること。」

よくある質問

「定尺」は JIS で何 m と決まっていますか

JIS G 0203 は定尺を、標準寸法と同義だがさらに集約化された寸法と定義しているだけで、長さの一覧は無い[1]。製品ごとの標準長さは各寸法規格にあり、棒鋼は 3.5〜10.0 m、形鋼は 6.0〜13.0 m、平鋼は 5.5〜12.0 m である[2][3][4]。実際に在庫されている長さは仕入先に確かめる。

6.0 m で注文した棒鋼が 6.03 m で届きました。不良ですか

JIS G 3191 の長さの許容差は、7 m 以下で +40 mm/0 mm である[2]。6.03 m は許容差の範囲に入る。長さを詰めたいなら、プラス側の許容差を協定するか、切断品で買う。

レーザーで切った板に JIS B 0417 を当ててよいですか

JIS B 0417 はガス切断機で直線切断した厚さ 6〜100 mm の鋼板が対象で、プラズマ切断したものには適用しないと書かれている[7]。レーザー切断品の公差は、図面で数値を書くか、別の取り決めにする。

まとめ

定尺は標準寸法をさらに集約した寸法で、鋼管・棒鋼・形鋼では長さに使う言葉である。標準の長さは製品ごとの寸法規格にあり、長さの許容差はどれもマイナス側 0・プラス側だけで、鋼管の STPG はプラス側を規定していない。切断品の公差は材料の規格の外で、板は JIS B 0410(せん断)と B 0417(ガス切断)の等級で指示でき、のこ切断の棒・管・形鋼やレーザー・プラズマ切断は数値で書く。切断品のミルシートは、製造業者の文書の写しと、切断品との対応を示す追加文書で受け取る。ガス切断の縁の性質はミルシートでは保証されないので、縁を使うか削るかを設計と決める。

同じ束では、丸鋼の寸法許容差 JIS G 3191、圧力配管用炭素鋼鋼管 STPG370、ボイラ・熱交換器用鋼管 STB、銅管 JIS H 3300の発注も扱う。鋼材の価格改定と余材の扱いは鋼材価格の改定と購入契約にまとめた。

出典・参考資料

  1. JIS G 0203:2023 鉄鋼用語(製品及び品質)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 5 月 22 日改正)
  2. JIS G 3191:2022 熱間圧延棒鋼及びバーインコイルの形状,寸法,質量及びその許容差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2022 年 3 月 22 日改正・2026 年 6 月 22 日確認)
  3. JIS G 3192:2024 熱間圧延形鋼の形状,寸法,質量及びその許容差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 11 月 20 日改正)
  4. JIS G 3194:2024 熱間圧延平鋼の形状,寸法,質量及びその許容差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 11 月 20 日改正)
  5. JIS G 3193:2025 熱間圧延鋼板及び鋼帯の形状,寸法,質量及びその許容差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2025 年 4 月 21 日改正)
  6. JIS B 0410:1991 金属板せん断加工品の普通公差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1991 年 2 月 1 日改正・2025 年 6 月 20 日確認)
  7. JIS B 0417:1979 ガス切断加工鋼板普通許容差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1979 年 3 月 1 日制定・2024 年 6 月 20 日確認)
  8. JIS G 0415:2024 鋼及び鋼製品-検査文書(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 6 月 20 日改正)
  9. JIS G 3454:2026 圧力配管用炭素鋼鋼管(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2026 年 5 月 20 日改正)

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