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投稿日:2026年10月17日

鋼板の板厚公差 JIS G 3193——SS400 と SPHC・SAPH で違う表、測る位置とクラス A・B・C

この記事のポイント(結論先出し)

JIS G 3193:2025 は熱間圧延の鋼板と鋼帯の寸法・形状・質量とその許容差を決める規格だが、適用は製品規格の書き方による[1]。SS400(JIS G 3101)や SM490(JIS G 3106)は厚さの許容差を G 3193 によるが[2][3]、SPHC(JIS G 3131)や SAPH(JIS G 3113)は自分の規格に別の表を持っている[4][5]。同じ 2.3 mm・幅 1 219 mm でも、SS400 は ±0.20 mm、SPHC と SAPH は ±0.19 mm である。厚さ 4 mm 以上は、協定で表 6 のクラス A・B・C を選べ、クラス C はマイナス側を 0 にする代わりにプラス側が広がる[1]。厚さを測る位置(縁から 15 mm など)も規格で決まっている[1]。

JIS G 3193 は「どの鋼板に」効くのか

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JIS G 3193:2025(熱間圧延鋼板及び鋼帯の形状,寸法,質量及びその許容差)は、熱間圧延で製造された鋼板(鋼帯からの切板を含む)と鋼帯の外観、形状とその許容限度、寸法、質量とその許容差を規定する。ただし規格の適用範囲には「この規格の適用については,それぞれの製品規格に規定する」と書かれている[1]。つまり、G 3193 は単独で使う規格ではなく、SS400 や SM490 のような材料の規格が「寸法は G 3193 による」と引いたときに効く規格である。2019 年版から 2025 年 4 月 21 日に改正されている[1]。

発注で困るのは、材料の規格によって G 3193 の引き方が違うことである。JIS G 3101(一般構造用圧延鋼材・SS400 など)と JIS G 3106(溶接構造用圧延鋼材・SM490 など)は、鋼材の形状・寸法・質量とその許容差を G 3193 などによるとしたうえで、特に指定がない場合のカットエッジの幅の許容差を G 3193 の表 7 の許容差 A、鋼板の長さの許容差を表 8 の許容差 A と決めている[2][3]。一方、JIS G 3131(熱間圧延軟鋼板・SPHC など)と JIS G 3113(自動車構造用熱間圧延鋼板・SAPH)は、形状・寸法は G 3193 によるとしつつ、厚さの許容差は自分の規格の表によるとしている[4][5]。

なお、冷間圧延の SPCC は JIS G 3141 に自分の厚さの許容差を持っており、G 3193 の対象ではない。冷延・熱延の材料記号の指定は SPCC・SPHC・SECC の指定で扱った。

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同じ厚さでも、材料の規格で許容差が変わる

次の表は、標準厚さ 2.3 mm(2.00 mm 以上 2.50 mm 未満の区分)、幅 1 219 mm の鋼板について、各規格の厚さの許容差と、許容差を適用する位置を並べたものである。

材料(規格) 厚さの許容差を決める表 2.3 mm・幅 1 219 mm の許容差 許容差を適用する位置
SS400(JIS G 3101) JIS G 3193 表 4 ±0.20 mm(幅 1 600 mm 未満の欄) 鋼帯・鋼帯からの切板:ミルエッジ 25 mm、カットエッジ 15 mm 以上内側。それ以外の鋼板:ミルエッジは幅切断予定線より内側、カットエッジは 15 mm 以上内側
SPHC(JIS G 3131) JIS G 3131 表 5 ±0.19 mm(幅 1 200 mm 以上 1 500 mm 未満) 縁から 20 mm 以上内側
SAPH(JIS G 3113) JIS G 3113 表 4 ±0.19 mm(同上) カットエッジ 15 mm、ミルエッジ 25 mm 以上内側(耳付鋼板は幅切断予定線の内側)
SPFH(JIS G 3134) JIS G 3134 表 3 ±0.22 mm(同上) SAPH と同じ

表の値は JIS G 3193 の表 4、JIS G 3131 の表 5、JIS G 3113 の表 4、JIS G 3134 の表 3 による[1][4][5][6]。適用する位置は G 3193 の 6.1、G 3131・G 3113・G 3134 の箇条 8 による。

許容差の幅そのものは 0.01〜0.03 mm の違いだが、受入の検査表に「板厚 ±0.20」と一律に書いていると、SPHC の板を SS400 の許容差で判定することになる。逆に SS400 を SPHC の許容差で判定すると、規格に適合している板を不合格にする。受入検査の基準表は、材料の規格ごとに許容差の出典を分けて作る。これは規格の要求ではなく、発注側の運用の提案である。

許容差を適用する位置が規格で違うことにも注意する。SS400 のように G 3193 による材料は、カットエッジなら縁から 15 mm 以上内側で、SPHC は 20 mm 以上内側である[1][4]。板の端から切り出した小さな部品で受入時に板厚を測ると、規格が保証していない位置の厚さを測っていることがある。

厚さ 4 mm 以上はクラス A・B・C を選べる

JIS G 3193 は、厚さ 4 mm 未満を表 4、4 mm 以上を表 5 で、どちらもプラス・マイナス同じ幅の許容差(例えば厚さ 10.0 mm 以上 16.0 mm 未満・幅 1 600 mm 未満で ±0.55 mm)として定めている[1]。そのうえで、受渡当事者間の協定によって表 5 に代えて表 6 を適用してもよい、としている[1]。表 6 は下限と上限を別々に持つクラス A・B・C の表で、同じ厚さ 10.0〜16.0 mm・幅 1 600 mm 未満では次のようになる。

表とクラス 下限 上限 全許容差の幅
表 5(既定) -0.55 mm +0.55 mm 1.10 mm
表 6 クラス A -0.35 mm +0.75 mm 1.10 mm
表 6 クラス B -0.30 mm +0.80 mm 1.10 mm
表 6 クラス C 0 +1.10 mm 1.10 mm

値は JIS G 3193 の表 5・表 6 による[1]。全許容差の幅はどれも同じで、マイナス側を詰めた分だけプラス側が広がる。表 6 には、クラス B を製品規格で規定する場合は下限を -0.30 mm に代えて -0.25 mm としてもよく、その場合の上限はそれぞれの数値に 0.05 mm を加える、という注もある[1]。

表 4・表 5 にも、協定によってプラス側かマイナス側を制限してもよいが、その場合の全許容差範囲は表の全許容差範囲と同じ幅とする、という規定がある[1]。どの方法でも、許容差の全体の幅は狭くならない。強度計算で最小板厚を使う構造物や、削り代を見込む部品で「呼び厚さを下回ってほしくない」なら、クラス C を協定する方法がある。その代わり、板が厚い側に寄り、質量も増える。

質量の扱いもこれに連動している。JIS G 3193 は、鋼板の質量を通常は計算質量とし、呼称寸法を用いて計算するとしたうえで、表 6 の厚さの許容差を適用した場合は、協定によって許容差の上限値と下限値の平均値を厚さに加えて計算してもよい、としている[1]。クラス C の板を重量で買うなら、計算質量の厚さをどうするかも一緒に決める。重量の計算方法は鋼材の重量の計算で扱った。

幅・長さ・平たん度の許容差

幅の許容差は表 7 で、ミルエッジ、カットエッジ A(通常の切断方法)、B(再切断または精密切断)、C(スリット)に分かれ、カットエッジの場合は特に指定がない場合 A とする[1]。長さの許容差は、表 8 の許容差 A(例えば 600 mm 以上 4 000 mm 未満で +20 mm/0)と、表 9 の許容差 B(再切断または精密切断・長さ 6 300 mm 未満で厚さ 6 mm 未満なら +5 mm/0)があり、特に指定がない場合は表 8 とする[1]。どちらもマイナス側は 0 で、長さが足りない板は来ない作りになっている。切板を寸法どおりに使いたいなら、許容差 B か、切断の仕様を指定する。

平たん度は表 11 で、鋼板の上面側に適用する。注には、特に指定がない場合、降伏点または耐力の規定値が 460 N/mm² 以上の鋼板(これに相当する化学成分・硬さの鋼板を含む)と、焼入焼戻しを行った鋼板は、表の数値の 1.5 倍とする、とある[1]。高強度の板や調質した板で平らさを求める部品なら、この 1.5 倍の扱いを前提に、矯正の要否を決める。

表面の手入れと溶接補修

JIS G 3193 は、製造業者が表面の欠点をグラインダ手入れまたは溶接補修によって除去・補修してもよいとし、手入れ後または補修後の厚さはその許容差範囲内でなければならない、としている[1]。溶接補修には、欠点を除去した部分の深さを呼称厚さの 20% 以下とすること、片側面の補修面積の合計を片側面積の 2% 以下とすること、熱処理を行った鋼板は補修後に補修部を含む鋼板本体を改めて熱処理することなどの条件がある[1]。

一方で、SPHC・SAPH・SPFH の規格は外観を G 3193 によるとしながら、鋼板の溶接補修は行ってはならない、と上書きしている[4][5][6]。SS400 では溶接補修された板が規格上ありうるが、SPHC では来ない。板の表面をそのまま見せる部品や、後で表面処理する部品では、手入れ跡と補修の扱いを注文で決めておく。縞鋼板のように G 3193 の本文に扱いが無い製品は縞鋼板の発注で扱った。

鋼帯(コイル)で買うときの先端・尾端

JIS G 3193 は、鋼帯の圧延時の先端部と尾端部には寸法と形状の許容差を適用しないとし、商習慣上この不安定部を切除せずに出荷する場合がある、と注記している[1]。コイルで買って自社やコイルセンターで切板にする場合、先端と尾端から取った板は規格の許容差の対象外になる。切板の仕入先には、どの部分を使うかを決めてもらう。

危ない書き方:図面の板厚公差を材料の許容差より狭くする

図面に「t12±0.1」と書いた鋼板の部品を、SS400 の黒皮の板から作らせると、規格の許容差(例えば 10.0〜16.0 mm・幅 1 600 mm 未満で ±0.55 mm)[1]より狭い範囲を求めることになる。黒皮のまま使う面の板厚は材料の段階で決まるので、この公差は「板を選別する」か「両面を削る」ことでしか満たせない。削る前提なら削り代を見込んだ厚さの板を注文し、削らない前提なら図面の板厚公差を材料の規格の許容差に合わせる。板厚を厳しくしたいなら、加工品の図面ではなく、材料の注文条件(表 6 のクラスの協定など)として何を求めるかを決める。この考え方は、薄板のプレス・板金品でも同じである。プレス・板金品の公差の指定を参照してほしい。

注文書の書き方の例

「材質:JIS G 3101 SS400、鋼板(切板)、カットエッジ、12 × 1 219 × 2 438 mm。寸法の許容差は JIS G 3193 による。厚さの許容差は表 6 クラス C(マイナス側 0)を適用し、計算質量は許容差の上限値と下限値の平均値を厚さに加えて計算する。幅・長さの許容差は表 7 B・表 9 B(再切断)とする。溶接補修した板は事前承認を要する。」

SS400 の場合、JIS G 3106 の SM 材も同じだが、厚さの許容差の選択は「協定」なので、仕入先が対応できるかを見積の段階で確かめる。SM490 の指定はSM490 の発注での指定で扱った。

よくある質問

SS400 の板厚の許容差はどこに書いてありますか

JIS G 3101 は、鋼材の形状・寸法・質量とその許容差を JIS G 3193 などによるとしている[2]。鋼板の厚さの許容差は G 3193 の表 4(厚さ 4 mm 未満)と表 5(4 mm 以上)である[1]。

SPHC の板厚の許容差も G 3193 ですか

JIS G 3131 は、形状・寸法は G 3193 によるとしつつ、厚さの許容差は自分の表 5 によるとし、縁から 20 mm 以上内側に適用するとしている[4]。SS400 と同じ表で判定しない。

マイナス側の許容差を無くすことはできますか

厚さ 4 mm 以上なら、協定で表 6 のクラス C(下限 0)を適用できる。全許容差の幅は表 5 と同じなので、プラス側が広がる[1]。

まとめ

JIS G 3193 は熱延の鋼板と鋼帯の寸法・形状・質量の許容差の規格だが、どの表を使うかは材料の規格が決める。SS400・SM490 は厚さの許容差を G 3193 の表によるが、SPHC・SAPH・SPFH は自分の規格の表を持っていて、値も測る位置も違う。厚さ 4 mm 以上は協定でクラス A・B・C を選べ、クラス C はマイナス側を 0 にする代わりにプラス側が広がる。全許容差の幅はどの方法でも変わらない。長さはマイナス側 0 で、平たん度は高強度の板で 1.5 倍になる。図面の板厚公差を材料の許容差より狭く書かず、厳しくするなら材料の注文条件として決める。

同じ束では、自動車用の高張力鋼板 SPFC・SAPH、溶融亜鉛めっき鋼板 SGCC、電磁鋼板、電磁軟鉄 SUYの発注も扱う。

出典・参考資料

  1. JIS G 3193:2025 熱間圧延鋼板及び鋼帯の形状,寸法,質量及びその許容差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2025 年 4 月 21 日改正)
  2. JIS G 3101:2024 一般構造用圧延鋼材(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 2 月 20 日改正)
  3. JIS G 3106:2024 溶接構造用圧延鋼材(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 2 月 20 日改正)
  4. JIS G 3131:2024 熱間圧延軟鋼板及び鋼帯(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 11 月 20 日改正)
  5. JIS G 3113:2025 自動車構造用熱間圧延鋼板及び鋼帯(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2025 年 4 月 21 日改正)
  6. JIS G 3134:2025 自動車用加工性熱間圧延高張力鋼板及び鋼帯(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2025 年 4 月 21 日改正)

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