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電磁軟鉄 SUY(JIS C 2504)の発注——SUY-0〜3 の保磁力、磁気特性は熱処理後の値

この記事のポイント(結論先出し)
電磁軟鉄 SUY は JIS C 2504(電磁軟鉄)の記号で、SUY-0〜SUY-3 と A-12〜A-240 の種類を保磁力の最大値で分けている(SUY-0 は 60 A/m 以下、SUY-3 は 240 A/m 以下)[1]。いちばん大事なのは、規格の直流磁気特性が熱処理した後の値で、熱処理の条件は受渡当事者間の協定によることができる、という点である[1]。届いた素材の状態や、削った部品のままでその値が出るわけではない。硬さと曲げは焼なましをしない試験片で測る[1]。規格に成績書(報告)の箇条は無いので、磁気特性の試験結果が要るなら注文時に求める。磁気焼鈍をいつ・誰が・どの条件で行うかを、材料の注文とは別に決めておく。
目次
SUY はどんな部品に使う材料か
JIS C 2504:2000(電磁軟鉄)は、リレー、電磁石、磁気クラッチ、ブレーキ、発電機、モーターなどの鉄心、継鉄、接極子、その他磁気シールドに用いる電磁軟鉄の棒・ロッド・線・板・条を規定する[1]。1990 年の電磁軟鉄棒(旧 C 2503)と電磁軟鉄板(旧 C 2504)を統合した規格で、2024 年 10 月に確認されている[1]。
電磁軟鉄は、ほぼ純粋な鉄で磁気特性を整えた材料である。材料試験誌の解説(1957 年)は、純鉄を軟質磁性材料のうちで最も古くから使われ現在でも使用量が最も多いものとし、電気抵抗が低いために主として直流で使用され、高飽和磁気をもち安価であるため継鉄や磁極などの磁気回路部品に加工使用される、と書いている[3]。そのため、機械的特性(表面、硬度、絞り加工など)も磁性とともに重要である、とも述べている[3]。
交流で使い、渦電流による損失が問題になる鉄心は、電磁鋼板(ケイ素鋼板)の守備範囲になることが多い。無方向性電磁鋼帯の JIS C 2552 は、50 Hz の鉄損で種類を分けている[4]。直流で磁束を通す継鉄・ヨーク・ソレノイドのプランジャなどを削り出すときに SUY、交流の積層鉄心には電磁鋼板、という分け方で考えると整理しやすい。電磁鋼板の指定は電磁鋼板の発注で扱った。永久磁石と組み合わせる磁気回路なら永久磁石の指定も参照してほしい。
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種類と記号:保磁力で分けている
JIS C 2504 の種類は、直流磁気特性の保磁力(磁束密度を 0 にする磁界の強さ)の最大値で区分した 10 種類で、記号は SUY-0、SUY-1、SUY-2、SUY-3、A-12、A-20、A-60、A-80、A-120、A-240 である[1]。保磁力が小さいほど、磁界を切ったときに磁気が残りにくい。リレーやソレノイドで「電流を切ったのに離れない」を避けたい部品ほど、保磁力の小さい種類を選ぶことになる。
| 種類 | 保磁力の最大値 | 磁界 300 A/m での磁束密度の最小値 | 磁界 1 000 A/m での磁束密度の最小値 | 磁界 4 000 A/m での磁束密度の最小値 |
|---|---|---|---|---|
| SUY-0 | 60 A/m | 1.25 T | 1.45 T | 1.60 T |
| SUY-1 | 80 A/m | 1.20 T | 1.45 T | 1.60 T |
| SUY-2 | 120 A/m | 1.15 T | 1.45 T | 1.60 T |
| SUY-3 | 240 A/m | 1.15 T | 1.45 T | 1.60 T |
| A-12 | 12 A/m | 1.30 T | 1.45 T | 1.60 T |
値は JIS C 2504 の表 3 による。どれも熱処理した後の値である[1]。磁界 100 A/m・200 A/m の欄や、A-20〜A-240 の値は規格の表で確かめる(SUY-2・SUY-3 などは低い磁界の欄を規定していない)。
化学成分は表 2 で、SUY-0〜SUY-3 は炭素 0.030% 以下、ケイ素 0.20% 以下、マンガン 0.50% 以下、りん 0.030% 以下、硫黄 0.030% 以下である[1]。注記で、快削性を要求する場合はりんと硫黄の値が規格の上限値を超えてもよい、とされている[1]。削り出しの部品で快削性のある材料を受けるときは、りん・硫黄が上限を超えているのが規格上認められた例外かどうかを、注文時の要求と照らして確かめる。
磁気特性は「熱処理した後」の値
JIS C 2504 の 6.2 は、板・条・棒・線の直流磁気特性を表 3 によるとしたうえで、「この磁気特性は,熱処理した後の値である。熱処理条件については,受渡当事者間の協定によることができる」と書いている[1]。試験は IEC 60404-4 によって、同一ロットごとに 1 個のリング試験片で行い、試験片は素材から成形加工または切削加工してバリを除去したリング(外径 30〜50 mm)で、作製後に必要な磁気特性をもたせるために適切な熱処理を行い、その後は取扱いによって試験片に応力を生じないよう十分注意する、としている[1]。
一方で、硬さと曲げの試験片は焼なましを行わない[1]。硬さは板・条で HV 85〜140(HRB 45〜75)、棒・線で HV 110〜195(HRB 60〜90)と定められている[1]。つまり、届いた素材は硬さの規定を満たす状態で、磁気特性の規定値は、それを熱処理したリングで測った値である。
なぜ熱処理が要るのかについて、先の 1957 年の解説は、軟質磁性材料が透磁率が高く保磁力が小さいためには当然内部ひずみが小さいことが必要である、とし、純鉄の磁性を改善させるために磁気焼鈍を行う、と説明している[3]。精密機械の解説(1980 年)も、磁性材料の熱処理は、機械加工とともに磁性材料の機能を十分に発揮させることを目的に施されるのが通常である、と書いている[2]。
ここから、発注で決めておくことがはっきりする。SUY の部品を外注するとき、図面に「材質 SUY-1」とだけ書くと、仕入先は SUY-1 の素材を買って削るだけで、磁気焼鈍はしない可能性がある。規格の保磁力 80 A/m 以下は熱処理後の値なので、削ったままの部品にその値は期待できない。部品の図面か注文書には、①磁気焼鈍を行うか、②行うなら加工のどの段階の後か(最終加工の後か)、③温度・時間・雰囲気の条件を誰が決めるか(材料メーカーの推奨条件によるのか、自社が指定するのか)、④焼鈍後に磁気特性を確かめるか、を書く。これは規格の要求ではなく、規格の書き方から導いた発注側の提案である。熱処理の指定一般は熱処理を図面でどう指定するかで扱った。
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焼鈍の後にしてはいけないこと
規格自体が、熱処理したリング試験片を「取扱いによって試験片に応力を生じないように十分注意して取り扱わなければならない」とし、保護容器の使用を奨めている[1]。内部ひずみが磁気特性を悪くする材料なので[3]、部品でも同じことが言える。磁気焼鈍を済ませた部品に、圧入・かしめ・曲げ・矯正などの塑性変形を与える工程を後から入れることは避ける。どうしても必要なら、その工程の後に焼鈍を回すか、その工程を入れた状態で磁気特性を確かめてから量産に入る。これも発注側の進め方の提案である。
表面処理(めっき)も、焼鈍の前か後かで工程の順番が変わる。めっきの指定はめっきの発注で指定することで扱ったが、SUY の部品では、めっきの前処理や後の熱処理が焼鈍の効果を損なわないか、工程の順番を仕入先と決めておく。
経時変化(エージング)
JIS C 2504 は経時変化を、100±5 ℃で 100 時間後の保磁力の変化率と定義し、注文の際に要求された場合、10% を超えてはならない、としている[1]。要求しなければ適用されない項目である。1957 年の解説も、炭素・酸素・窒素などの不純物によって経時変化を起こすため、アルミニウムやモリブデンなどを微量添加して磁性の向上を図ったものもある、と書いている[3]。温度が上がる環境で長く使うリレーやブレーキなら、注文時に経時変化の規定の適用を求める。
寸法の許容差:冷間加工品だけが規定されている
JIS C 2504 は、冷間圧延の板・条の厚さと幅、冷間加工の棒・ロッド・線の径の許容差を表で定め、熱間圧延の板・条と熱間加工の棒・線の寸法許容差は受渡当事者間の協定によるとしている[1]。板・条の横曲がりと平たん度も協定による[1]。
例えば、冷間圧延の板・条で厚さ 1.00 mm 以上 1.25 mm 未満なら、幅 150 mm 以下で ±0.040 mm、幅 600 mm を超えるもので ±0.065 mm である。冷間加工の棒で外径 10 mm 以上 25 mm 未満なら ±0.05 mm、4.5 mm 以上 10 mm 未満なら 0/-0.08 mm である[1]。厚さ 2.50 mm 以上の板・条の厚さの許容差は協定による[1]。太い棒を削り出す部品や熱延の板では規格に許容差が無いので、注文書に寸法の許容差を書く。厚さは、幅が 25 mm を超える平らな製品では縁から 10 mm 以上離れた位置で測る、とされている[1]。
成績書は求めないと出ない
JIS C 2504 には、一般の鋼材の規格にある「報告」の箇条が無い。検査は化学成分・品質・形状と寸法許容差に適合しなければならない、と定め、表示は種類と記号、寸法、質量、ロット番号、製造年月日、製造業者名である[1]。電磁鋼板の JIS C 2552 が、製造業者は納品に当たり磁束密度と鉄損の試験成績表を提出すると定めているのとは違う[4]。
SUY の磁気特性の試験結果(リング試験片の保磁力・磁束密度)と化学成分の分析値が要るなら、注文時に求める。ロットはこの規格で「同一溶解単位,同一形状で同時に製造された材料」と定義されているので[1]、現品のロット番号と成績書の対応も確かめる。
注文書の書き方の例
「材質:JIS C 2504 SUY-1、冷間加工の棒、外径 20 mm × 長さ 2 000 mm。ロットごとの直流磁気特性(保磁力・各磁界での磁束密度)と化学成分の試験結果を添付すること。経時変化の規定の適用を求める。熱処理の条件は ○○ による。」
部品を外注する場合は、さらに「最終加工後に磁気焼鈍を行うこと(条件:○○)。焼鈍後の圧入・かしめ・矯正は不可。焼鈍後の部品または同時に処理したリング試験片で保磁力を確認し、結果を提出すること。」のように、加工と熱処理の順番と確認の方法まで書く。○○ の部分は設計と材料メーカーの推奨で決める。
よくある質問
SUY と冷延鋼板 SPCC では何が違いますか
SUY は JIS C 2504 で、保磁力と磁束密度という直流磁気特性を規定した材料で、炭素 0.030% 以下などの成分も決まっている[1]。SPCC の JIS G 3141 は成分と機械的性質を定めているが、磁気特性は規定していない。磁気回路の性能を保証したい部品なら、磁気特性を規定した材料で注文する。
届いた SUY の棒で保磁力を測ったら規格値に入りませんでした
規格の磁気特性は熱処理した後の値で、硬さと曲げは焼なましをしない試験片で測る、と定められている[1]。焼鈍前の素材を測っていないか、熱処理の条件がどう協定されていたかを確かめる。
交流で使うソレノイドにも SUY でよいですか
純鉄は電気抵抗が低いため主として直流で使われる、と解説されている[3]。交流で使う鉄心は、渦電流の点で電磁鋼板も比較の対象にし、設計と決める。
まとめ
電磁軟鉄 SUY は JIS C 2504 の材料で、種類を保磁力の最大値で分けている。規格の直流磁気特性は熱処理した後の値で、熱処理の条件は協定によることができ、硬さと曲げは焼なましをしない試験片で測る。だから、部品の注文では磁気焼鈍をいつ・誰が・どの条件で行うかを材料の指定とは別に書き、焼鈍の後に塑性変形を与える工程を入れない。経時変化の規定は要求したときだけ適用される。熱延品と太物の寸法許容差は協定で、成績書の箇条も無いので、試験結果と寸法許容差は注文書に書いて求める。
同じ束では、交流の鉄心に使う電磁鋼板、高張力鋼板 SPFC・SAPH、溶融亜鉛めっき鋼板 SGCC、鋼板の板厚公差 JIS G 3193の発注も扱う。
出典・参考資料
- JIS C 2504:2000 電磁軟鉄(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2000 年 2 月 20 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
- 佐々木堂「磁性材料の熱処理」精密機械 46 巻 10 号(精密工学会/1980 年 10 月)
- 池内駿・田中満「磁性金属材料」材料試験 6 巻 41 号(1957 年)
- JIS C 2552:2014 無方向性電磁鋼帯(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2014 年 2 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
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