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投稿日:2026年10月17日

電磁鋼板(JIS C 2552・C 2553)の発注——35A250 の記号、打抜きの影響と絶縁皮膜

この記事のポイント(結論先出し)

電磁鋼板の JIS は、モーターなど回転機の鉄心に使う無方向性の JIS C 2552 と、変圧器に使う方向性の JIS C 2553 に分かれる[1][2][4]。記号は厚さと鉄損の上限で、35A250 なら呼称厚さ 0.35 mm、50 Hz・1.5 T での鉄損が 2.50 W/kg 以下を表す[1]。規格の磁気特性は納品された状態の鋼板から切った試験片での値で、打ち抜いた鉄心の値ではない[1]。せん断(切断・打抜き)は鉄損を増やし、増えた分の約 2/3 は、切り口近くの板厚の約 2 倍の幅の領域(磁区の模様が影響を受けた範囲)で生じていると報告されている[3]。成分と製造方法は製造業者に委ねられ[1]、絶縁皮膜の種類は発注時に協定する[1]。打抜き後にひずみ取り焼鈍をするなら、その温度に耐える皮膜を指定する。

無方向性(JIS C 2552)と方向性(JIS C 2553)

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電磁鋼板は、磁気特性を整えた薄い鋼板で、モーター・発電機・変圧器などの鉄心の材料である。多くはケイ素を加えたケイ素鋼板だが、ケイ素を含まないものもある。精密機械の解説(1980 年)は、電気鉄板(電磁鋼板の総称)を、主に変圧器に用いる方向性けい素鋼板、回転機に用いる無方向性けい素鋼板、小形モーターなどに用いる Si を含まない電磁鋼板に分けて説明している[4]。

JIS では、無方向性が JIS C 2552(無方向性電磁鋼帯・2014 年改正)、方向性が JIS C 2553(方向性電磁鋼帯・2019 年改正)である[1][2]。どちらも両面に絶縁皮膜をもつ鋼帯(コイル)と切板を対象とし、C 2552 は「十分に焼なました状態(フルプロセス)」で供給される鋼帯に、C 2553 は最終焼なましを施した状態で供給される方向性電磁鋼帯に適用する[1][2]。打抜き後に需要家が焼鈍して磁性を出すことを前提にした材料(セミプロセス材)は、C 2552 の対象外である。

この記事は、これらの鋼板をモーターや変圧器の鉄心の材料として、あるいは鉄心を外注するときに、何を記号で決め、何を別に決めるかを扱う。モーターそのものを調達するときの仕様書はモーターの仕様書に書くことで扱った。

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記号の読み方

JIS C 2552 の記号は、呼称厚さ(mm)の 100 倍、フルプロセスの無方向性を示す文字 A、周波数 50 Hz・最大磁束密度 1.5 T での鉄損の最大値(W/kg)の 100 倍を並べたものである。呼称厚さは 0.35・0.47・0.50・0.65・1.00 mm で、0.47 mm だけは 60 Hz の鉄損で分類し「/60」を付ける[1]。規格の例は「35A250」で、50 Hz・1.5 T での鉄損の最大値が 2.50 W/kg 以下の、呼称厚さ 0.35 mm の鋼帯を表す[1]。

JIS C 2553 の記号は、呼称厚さ(0.23・0.27・0.30・0.35 mm)の 100 倍、材質の文字、50 Hz・1.7 T での鉄損の最大値の 100 倍で、材質の文字は普通材が G、高磁束密度材が P、磁区制御材が R である。規格の例は「23P090」で、50 Hz・1.7 T での鉄損の最大値が 0.90 W/kg 以下の、呼称厚さ 0.23 mm の高磁束密度材を表す[2]。

項目 無方向性 JIS C 2552 方向性 JIS C 2553
記号の例 35A250(0.35 mm・W15/50 が 2.50 W/kg 以下) 23P090(0.23 mm・W17/50 が 0.90 W/kg 以下)
呼称厚さ 0.35・0.47・0.50・0.65・1.00 mm 0.23・0.27・0.30・0.35 mm
分類に使う鉄損 50 Hz・1.5 T(0.47 mm は 60 Hz) 50 Hz・1.7 T
磁気特性を測る試験片 エプスタイン試験片。測定前に応力除去焼なましを行わない エプスタイン試験片を切断後、製造業者の指定する条件で応力除去熱処理してから測る
厚さの許容差 0.35・0.47・0.50 mm は呼称厚さの ±8%、0.65・1.00 mm は ±6% ±0.030 mm(0.23 mm は ±0.025 mm)
成分・製造方法 製造業者の裁量 規格では規定しない
試験成績表 納品時に試験番号ごとの磁束密度と鉄損を提出 製品に添付(試験番号ごとの磁気分極と鉄損)

表の内容は JIS C 2552 の箇条 4〜8・12、JIS C 2553 の箇条 1・5〜7・12 による[1][2]。

国際規格の記号で注文するときの注意

JIS C 2552 の附属書は、35A250 を IEC 60404-8-4 の M250-35A5 に対応させている[1]。海外の仕入先では IEC や欧州の記号で話が進むことが多いが、方向性では一つ落とし穴がある。JIS C 2553 の附属書 JA は、磁区制御材の 23R085 と高磁束密度材の 23P085 を、どちらも IEC の M85-23P5 に対応させている[2]。IEC の記号だけで注文すると、JIS では別の材質として区別している二つを区別できない。磁区制御材かどうかが設計に効くなら、JIS の記号で指定するか、材質を言葉で書き添える。

規格の磁気特性は「どの状態の値」か

JIS C 2552 は、磁束密度と鉄損などの特性を、納品状態の製品に適用するとし、製品の質量には絶縁皮膜を含めるとしている[1]。測定はエプスタイン試験器で、長さ 280〜320 mm・幅 30 mm の試験片を少なくとも 16 枚、半数を圧延方向に平行、半数を直角に採る。試験片は刃先の良好な工具で切断または打ち抜き、測定前に応力除去焼なましを行わない[1]。

方向性の JIS C 2553 は扱いが違い、磁気特性の測定には、試験片の切断後に製造業者の指定する条件で応力除去熱処理を行ったエプスタイン試験片を用いる、としている(単板測定の試験片は熱処理を行わない)[2]。つまり方向性の規格値は、切断のひずみを熱処理で取り除いた状態の値である。

どちらの場合も、規格値は鋼板の素材としての値で、部品メーカーが打ち抜いて積み重ね、かしめや溶接で固めた鉄心の値ではない。モーターや変圧器の性能を鋼板のカタログ値から見積もるときは、加工でどれだけ変わるかを設計の側で見込む。

せん断・打抜きで鉄損は増える

電気学会論文誌の研究(2005 年)は、無方向性電磁鋼板(JIS 50A400)を対象にせん断加工の鉄損と磁区構造への影響を調べ、切り口近くの硬さの分布から推定したせん断による塑性ひずみの寄与は実際の鉄損の劣化の約 1/3 で、残り 2/3 は、磁区の模様がせん断の影響を受けていた幅が板厚の約 2 倍の領域で生じていると考えられる、と報告している[3]。

この結果から、鉄心の歯のように細い部分が多い形ほど、切り口の影響を受ける部分の割合が大きくなることが分かる。どの程度の劣化を見込むかは形と加工の条件によるので、試作の鉄心で特性を確かめる。これは研究結果からの発注側の提案である。

打抜き後のひずみ取り焼鈍と、絶縁皮膜の選び方

先の精密機械の解説(1980 年)は、セミプロセス材以外のけい素鋼板はすべて鋼板メーカーで仕上焼なましと平坦化焼なましを施して供給されるが、使用上、加工ひずみの除去のための熱処理は行う必要がある、と書いている[4]。例として、無方向性材に対しては 700〜800 ℃、N₂ または Ar ガス中 2 時間の熱処理を挙げ、すでに再結晶を仕上焼なましで完了しているフルプロセス材ではひずみの緩和しか起こらない、としている[4]。同じ解説は、高級な方向性けい素鋼板では加工後のひずみ取り熱処理による特性の向上が鉄損で 1〜2% にすぎず、この焼なましを廃止しようとする動きがあること、廃止すると切断面での絶縁性の破壊とそこからのさびの進行が懸念されることも書いている[4]。1980 年の解説なので、具体的な温度や効果は今の材料と鋼板メーカーの推奨で確かめる。

焼鈍をするかどうかは、絶縁皮膜の選び方に直結する。JIS C 2552 は、鋼帯は通常両面に絶縁皮膜を施して供給され、皮膜の種類とその特性、占積率、それらの検査方法は発注時に受渡当事者間で協定する、としている[1]。皮膜は切断加工のときにはがれないよう強固に密着していなければならず、繰返し曲げ試験の 1 回目の 90° 曲げで皮膜がはく離してはならない[1]。方向性の JIS C 2553 は、一般的な皮膜を、マグネシウムのけい酸塩のガラス質一次皮膜の上にりん酸塩などの無機質二次皮膜を施したものとし、製造業者の推奨指定する応力除去焼なましに耐えることが望ましい、と注記している[2]。

先の解説は、従来の無機質の絶縁皮膜は硬く打抜き型を傷める(打抜性が悪い)ため、水溶性樹脂とクロム酸などを組み合わせた半有機皮膜が開発され、打抜性に優れ熱処理を施してもはく離しない、と紹介している[4]。ここで避けたい組合せは、打抜性だけを見て皮膜を選び、その皮膜が耐えられない温度でひずみ取り焼鈍をかけることである。皮膜がはがれれば積層した板の間の絶縁が崩れる。焼鈍をする工程なら、焼鈍の温度と雰囲気を鋼板の仕入先に伝え、それに耐える皮膜の種類を協定する。焼鈍を外注する場合も同じ情報を渡す。熱処理の指定一般は熱処理を図面でどう指定するかで扱った。

寸法・形状で決めること

JIS C 2552 の厚さの許容差は、呼称厚さ 0.35・0.47・0.50 mm で ±8%、0.65・1.00 mm で ±6% である。厚さはエッジから 30 mm 以上離れた位置で、精度 0.001 mm のマイクロメータで測る[1]。幅方向の厚さの偏差(エッジから 30 mm までを除く最大と最小の差)にも上限があり、幅 150 mm を超え 1 000 mm 以下の鋼帯で、0.35〜0.50 mm は 0.020 mm、0.65・1.00 mm は 0.030 mm を超えてはならない[1]。積み重ねる鉄心では、この偏差が積厚と占積率に効く。

ミルエッジを除去して供給される鋼帯の幅の許容差は、呼称幅 150 mm 以下で +0.3 mm/0、600 mm を超え 1 000 mm 以下で +1.0 mm/0 などで、ミルエッジのまま供給される鋼帯は協定による[1]。横曲がりは幅 30 mm 以下の鋼帯とミルエッジのままの鋼帯には適用しない[1]。スリットコイルで買って打ち抜く場合は、スリット幅と横曲がりの要求をスリット業者まで伝える。

発注時に購入者が明示する事項と、成績表

JIS C 2552 の箇条 11 は、購入者が引合い書または発注書に明示しなければならない事項として、数量、供給形態(コイルか切板束か)、規格番号、鋼帯の名称または種類の記号、コイルや切板束の寸法(コイル外径の制限を含む)、質量の制限、溶接部・巻込み部のマーキングの要求、絶縁皮膜とその種類の要求、狭い幅の鋼帯の厚さの測定に関する要求を挙げている[1]。発注時の受渡当事者間の協定があれば、不良部分を除去したコイルを溶接や巻込みでつなぎ合わせてもよいとされているので[1]、自動の打抜きラインに流すコイルなら、つなぎ目の有無とマーキングを決めておく。

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成績表は、一般の鋼材の検査文書と扱いが違う。JIS C 2552 は、製造業者は製品を納品するに当たり、試験番号ごとに磁束密度と鉄損の試験成績表を提出する、とし、あらかじめ要求したそれ以外の試験の成績の提出は受渡当事者間の協定による、としている[1]。JIS C 2553 も、製品には試験成績表を添付しなければならず、磁気分極と鉄損を試験番号ごとに記載する、としている[2]。受入では、成績表の試験番号と現品の表示(コイル番号など)の対応を確かめる。マーキングとこん包は発注時の協定による[1]ので、どの番号を表示してもらうかも一緒に決める。

注文書の書き方の例

「材質:JIS C 2552 35A250、コイル、0.35 × 幅 200 mm(スリット)、コイル内径 508 mm・外径 ○○ mm 以下、1 コイル質量 ○○ kg 以下。絶縁皮膜:打抜き後に ○○ ℃・N₂ 中でひずみ取り焼鈍を行うため、この条件に耐える皮膜とする(種類は別途協定)。溶接部・巻込み部は不可。試験成績表(試験番号ごとの磁束密度・鉄損)を添付し、試験番号を各コイルに表示すること。」

○○ の部分は設計と工程で決める。焼鈍の条件は鋼板メーカーの推奨を聞いてから決めるとよい。

よくある質問

電磁鋼板とケイ素鋼板は同じものですか

同じではない。ケイ素鋼板は電磁鋼板の一部である。精密機械の解説は、方向性けい素鋼板・無方向性けい素鋼板に加えて、小形モーターなどに用いる Si を含まない電磁鋼板があるとし、これらをまとめて「電気鉄板」と呼んでいる[4]。JIS の規格名は「無方向性電磁鋼帯」「方向性電磁鋼帯」である[1][2]。注文では JIS の規格番号と記号で書く。

カタログの鉄損の値で鉄心の損失を見積もってよいですか

規格値は試験片での値で、無方向性では測定前に応力除去焼なましを行わない試験片の値である[1]。せん断で鉄損が増えることが報告されているので[3]、試作した鉄心で確かめる。

打ち抜いた後の焼鈍は必要ですか

1980 年の解説は、仕上焼なまし済みの鋼板でも使用上、加工ひずみの除去のための熱処理は行う必要がある、と書く一方、高級な方向性材では効果が鉄損で 1〜2% にすぎず廃止の動きがある、とも書いている[4]。する・しないは設計と鋼板メーカーの推奨で決め、するなら皮膜をそれに合わせる。

まとめ

電磁鋼板は、回転機向けの無方向性(JIS C 2552)と変圧器向けの方向性(JIS C 2553)に分かれ、記号は厚さと鉄損の上限を表す。成分と製造方法は製造業者に委ねられているので、記号と特性で注文する。規格の磁気特性は試験片での値で、無方向性は応力除去焼なましをしない試験片、方向性は応力除去熱処理をした試験片の値である。せん断による鉄損の増加の多くは、切り口近くの板厚の約 2 倍の幅の領域で生じていると報告されているので、鉄心の形で確かめる。絶縁皮膜の種類は発注時に協定し、ひずみ取り焼鈍をするならその条件に耐える皮膜を選ぶ。成績表は納品時に試験番号ごとに付くので、現品の番号との対応を確かめる。

同じ束では、直流の磁気回路に使う電磁軟鉄 SUY、溶融亜鉛めっき鋼板 SGCC、高張力鋼板 SPFC・SAPH、鋼板の板厚公差の発注も扱う。永久磁石の指定は永久磁石の指定で扱った。

出典・参考資料

  1. JIS C 2552:2014 無方向性電磁鋼帯(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2014 年 2 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
  2. JIS C 2553:2019 方向性電磁鋼帯(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2019 年 3 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
  3. K. Senda ほか「剪断加工による無方向性電磁鋼板の鉄損および磁区構造の変化」電気学会論文誌 A 125 巻 3 号(電気学会/2005 年)
  4. 佐々木堂「磁性材料の熱処理」精密機械 46 巻 10 号(精密工学会/1980 年 10 月)

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