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投稿日:2026年10月16日

SM490(JIS G 3106)の発注での指定——SS400との違い、A・B・C・YA・YBの選び方とミルシート

この記事のポイント(結論先出し)

SM490 は JIS G 3106(溶接構造用圧延鋼材)の鋼材で、SS400 などの JIS G 3101 と違い、炭素・けい素・マンガンの上限が決まっている。末尾の A・B・C は主にシャルピー吸収エネルギーの規定の有無と大きさの違いで、A は規定なし、B は 0 ℃で 27 J 以上、C は 0 ℃で 47 J 以上。YA・YB は降伏点が高い区分で、YB だけに 0 ℃・27 J の規定がある。ただし衝撃試験の規定がかかるのは厚さ 12 mm を超える鋼材で、薄い鋼材のミルシートにシャルピーの値が無いのは不備ではない。炭素当量の上限は、熱加工制御(TMC)をした鋼板などにしか規格で決まっていないので、溶接条件のために必要なら注文で決める。建築構造物向けには降伏点の上限と降伏比を定めた JIS G 3136(SN 材)が別にある。ミルシートは指定がなければ検査証明書 3.1 で届く。

SM490(JIS G 3106)と SS400(JIS G 3101)は、規格の目的が違う

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JIS G 3106 は、橋梁・船舶・車両・石油貯槽・容器その他の溶接構造物に用いる熱間圧延鋼材と熱間押出形鋼のうち、特に溶接性の優れたものについて規定する規格である[1]。現行版は JIS G 3106:2024 で、JIS マーク表示認証で旧版(2022 年版)を使ってよい期間は令和 7 年 2 月 19 日までとされていた[1]。いま流通する認証品は 2024 年版で作られていると考えてよいが、成績書に記載された規格の版は一度見ておく。

一方、SS400 を含む JIS G 3101 は、橋梁・船舶・車両その他の構造物に用いる一般構造用の熱間圧延鋼材の規格である[2]。いちばん大きな違いは化学成分の決め方にある。JIS G 3101 の SS330・SS400・SS490 は、化学成分としてりんと硫黄(各 0.050 % 以下)しか規定しておらず、炭素とマンガンの欄は「-」になっている[2]。これに対して JIS G 3106 は、SM490A でも厚さ 50 mm 以下で炭素 0.20 % 以下、けい素 0.55 % 以下、マンガン 1.65 % 以下、りん・硫黄 各 0.035 % 以下と、溶接性に効く元素の上限を決めている[1]。

強さの水準で選ぶなら、SS400 と SM400 の引張強さはどちらも 400〜510 N/mm²、SS490 と SM490 はどちらも 490〜610 N/mm² で同じである[1][2]。ただし降伏点は違い、厚さ 16 mm 以下では SS490 が 285 N/mm² 以上、SM490A・B・C が 325 N/mm² 以上である[1][2]。「SS490 を SM490 に替えれば溶接にも使える」と単純に考えず、強度の数字も成分の規定も別物として図面の材質を決める。

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A・B・C は衝撃特性の区分、YA・YB は降伏点の高い区分

JIS G 3106 の種類は 11 で、SM400 と SM490 にそれぞれ A・B・C、SM490 の高降伏点版として YA・YB、さらに SM520B・SM520C・SM570 がある[1]。SM490 系の 5 種類で発注のときに効く違いを、規格の値から抜き出すと次のようになる。比較のため SS400 と、建築構造用の SN490B(JIS G 3136)も並べた[1][2][3]。

種類の記号 降伏点(厚さ 16 mm 超え 40 mm 以下)N/mm² 引張強さ N/mm² シャルピー吸収エネルギー(厚さ 12 mm 超え) 炭素の上限(厚さ 50 mm 以下) 降伏比
SS400(G 3101) 235 以上 400〜510 規定なし 規定なし 規定なし
SM490A 315 以上 490〜610 規定なし 0.20 % 規定なし
SM490B 315 以上 490〜610 0 ℃で 27 J 以上 0.18 % 規定なし
SM490C 315 以上 490〜610 0 ℃で 47 J 以上 0.18 % 規定なし
SM490YA 355 以上 490〜610 規定なし 0.20 %(厚さ 100 mm 以下) 規定なし
SM490YB 355 以上 490〜610 0 ℃で 27 J 以上 0.20 %(厚さ 100 mm 以下) 規定なし
SN490B(G 3136) 325〜445 490〜610 0 ℃で 27 J 以上 0.18 % 80 % 以下

A・B・C の違いの中心はシャルピー吸収エネルギーの規定で、A には規定が無く、B は 0 ℃で 27 J 以上、C は 0 ℃で 47 J 以上である[1]。YA には規定が無く、YB は B と同じ 0 ℃で 27 J 以上である[1]。

適用できる厚さも種類で違う。鋼板・鋼帯・形鋼で、SM490A と SM490B は 200 mm 以下、SM490C は 100 mm 以下、SM490YA・YB は 100 mm 以下である。平鋼は SM490A・B が 100 mm 以下、SM490C が 50 mm 以下となっている[1]。鋼板は受渡当事者間の協定でさらに厚い範囲まで使えるが、その場合の成分と引張特性は附属書 JA の別の表による[1]。厚板を使う設計では、図面の記号だけでなく、その厚さが規格の本文の範囲に入っているかを見る。

シャルピーの規定は「厚さ 12 mm 超え」にしかかからない

JIS G 3106 は、シャルピー吸収エネルギーの規定を「表 8 に示す種類の記号で、厚さ 12 mm 超えの鋼材」に適用している[1]。厚さ 12 mm 以下の B・C・YB では、規格としては衝撃試験の結果が保証の対象にならない。合否は 3 個の試験片の平均値を JIS G 0404 の組試験の評価(9.6)で判定し、追加の試験片で判定する道(9.6 b))と再試験(9.8)の扱いも同規格による[1][4]。試験温度・試験片・合否の決め方と、ミルシートでの確かめ方はシャルピー衝撃試験の指定の記事で扱う。

炭素当量の上限は、規格で決まっていないことが多い

JIS G 3106 は溶接性の評価指標を炭素当量(Ceq)とし、計算式(C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14)を定めている。受渡当事者間の協定によって、炭素当量に代えて溶接割れ感受性組成(PCM)を使ってもよい[1]。ただし規格が上限値を決めているのは、焼入焼戻しをした SM570 と、協定によって熱加工制御(TMC)を行った鋼板だけである。たとえば TMC を行った SM490 の鋼板は、厚さ 50 mm 以下で炭素当量 0.38 % 以下とされている[1]。

裏返すと、熱加工制御をしていない通常の SM490 には、炭素当量の上限が規格として決まっていない。成分の個々の上限は決まっているが、予熱温度や溶接材料を炭素当量で決めている溶接施工要領なら、その値を前提にできるかは注文で決めるしかない。必要なら発注書に「炭素当量 ○○ % 以下」「ミルシートに炭素当量を記載」と書く。報告の箇条は、炭素当量または溶接割れ感受性組成が適用された場合、その計算式に含まれる合金元素の分析値を報告しなければならないとしている[1]。溶接側の指定(施工要領・技能者の資格・検査)は溶接要求の指定の記事にまとめた。

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熱処理の記号は、種類の記号の末尾に付く

JIS G 3106 の鋼材には、必要に応じて焼ならし・焼戻し・焼入焼戻しを行ってよく、協定によって熱加工制御などを行ってもよい。熱処理を行った場合は、種類の記号の末尾に、焼ならし N、焼戻し T、焼入焼戻し Q、熱加工制御 TMC の記号を付ける(例:SM490CN、SM570TMC)[1]。発注書と図面で「SM490C」とだけ書いた場合、どの製造条件の鋼材が来るかは製造業者に任されている。TMC の鋼板で炭素当量の上限を使いたい、焼ならし材を指定したい、といった理由があるなら、記号まで書いて注文する。

建築構造物なら、JIS G 3136(SN 材)を確かめる

建築構造物に用いる熱間圧延鋼材には、JIS G 3136(建築構造用圧延鋼材)が別に定められている[3]。SN490B と SN490C は、厚さ 12 mm 以上で降伏点に上限(16 mm 超え 40 mm 以下で 325〜445 N/mm²)があり、降伏比 80 % 以下が規定されている[3]。SM490 には降伏点の上限も降伏比の規定も無い[1]。さらに SN490C は、りん 0.020 % 以下・硫黄 0.008 % 以下と不純物の上限が低く、厚さ 16 mm 以上で板厚方向の絞り(3 個の平均 25 % 以上)と超音波探傷の規定がある[3]。

「強さが同じだから SM490 でよい」という置き換えは、建築の設計図書が SN 材を指定している場合には成り立たない。逆に、機械のフレームや架台など建築物でない溶接構造物なら、SN 材にこだわる必要は通常ない。どちらにするかを決めるのは図面と設計図書で、購買側は指定と異なる材料を仕入先の提案だけで受け入れないことが大事である。規格をまたぐ置き換えの承認の進め方は同等材の指定と承認の記事で扱っている。

注文時に提示しなければならない事項

JIS G 3106 は、注文者が注文時に少なくとも次の事項を製造業者・加工業者・中間業者に提示しなければならないとしている[1]。

1. 種類の記号と鋼材の形状
SM490B、鋼板か形鋼か平鋼か。

2. 鋼材の寸法
厚さ・幅・長さ。形状・寸法の許容差は JIS G 3192〜3194 による。特に指定がない場合、鋼板・鋼帯のカットエッジの場合の幅の許容差と、鋼板の長さの許容差は、JIS G 3193 の許容差 A による[1]。

3. 形鋼の種類
JIS G 3192 の表 1 の種類(山形鋼・H 形鋼など)。

4. H 形鋼・CT 形鋼のシリーズ
JIS G 3192 の標準断面寸法の表のどのシリーズか。

規格が求めるのはここまでで、実務ではさらに、シャルピーの試験温度を下げるか、炭素当量の上限を付けるか、超音波探傷などの非破壊試験を行うかを決める。JIS G 3106 の注記には、規格に規定する以外の試験として、協定によって JIS G 0801 や JIS G 0901 などの非破壊試験が行われることがあり、その場合は事前に試験方法・合否判定基準を協定すると書かれている[1]。非破壊試験の指定の仕方は非破壊検査の指定の記事を参照してほしい。

ミルシート(検査文書)で確かめること

JIS G 3106 の報告の箇条は、製造業者は特に指定がない場合に検査文書を注文者に提出しなければならず、注文時に特に指定がない場合は JIS G 0415 の検査証明書 3.1 によるとしている[1]。3.1 と 3.2 の違いや、商社・切断業者を通したときの写しの扱いは、JIS G 0415 に沿ってミルシート区分の記事とシャルピー衝撃試験の指定の記事で扱っている[5]。

受入のときは、次の順で突き合わせる。

1. 種類の記号と熱処理の記号
注文した記号(SM490B、SM490YB、TMC など)と一致しているか。

2. 溶鋼番号(または検査番号)と寸法
鋼材の表示に、種類の記号・熱処理の記号・溶鋼番号または検査番号・寸法・製造業者名が表示される[1]。現品の表示とミルシートの番号が一致するか。

3. 化学成分
炭素・けい素・マンガン・りん・硫黄が上限内か。意図的に添加した合金元素があれば、その分析値も報告される[1]。

4. 引張試験
降伏点・引張強さ・伸びと、試験片の種類(1A 号、4 号など)。

5. シャルピー吸収エネルギー
厚さ 12 mm を超える B・C・YB なら、試験温度と値。試験片は同一溶鋼ごと(熱処理を行った鋼材は同一熱処理条件ごと)に最大厚さの鋼材から採るので、注文した鋼板そのものの値とは限らない[1]。

6. 炭素当量
注文で上限を付けた場合、または TMC 材の場合。

発注書・図面に書く項目

1. 規格番号と種類の記号
JIS G 3106 SM490B など。熱処理を指定するなら記号まで(SM490BN、SM490BTMC など)。

2. 形状・寸法
鋼板・形鋼・平鋼の別と寸法。形鋼なら種類とシリーズ。

3. 衝撃特性
規格の温度(0 ℃)でよいか、より低い温度にするか。厚さ 12 mm 以下で靱性の確認が要るなら、その旨と試験条件。

4. 溶接性の指標
炭素当量または溶接割れ感受性組成の上限と、ミルシートへの記載。

5. 追加の試験
超音波探傷などを行う場合の方法と判定基準。

6. 検査文書
3.1 でよいか 3.2 か。中間業者経由なら写しの添付と対応関係。

購買仕様書全体の組み立て方は購買仕様書の書き方の記事にある。配管に使う鋼管の指定はSGP の指定の記事、材料の重量から見積を確かめる方法は鋼材の重量計算の記事で扱う。

よくある質問

Q. SM490A と SM490B、どちらを選べばよいか。
A. 降伏点と引張強さの規定は同じで、違いはシャルピーの規定の有無と炭素の上限(厚さ 50 mm 以下で A は 0.20 %、B は 0.18 %)である。衝撃荷重や低温での靱性を設計で見込むなら B か C、見込まないなら A で足りるかを、設計者が図面で決める。購買側で勝手に格上げ・格下げしない。

Q. 仕入先から「SM490A の代わりに SS400 で作りたい」と言われた。
A. SS400 は炭素とマンガンの上限が無く、降伏点も SM490A より低い。溶接構造物に使う鋼材として図面が SM490A を指定しているなら、強度と溶接性の両方の前提が変わるので、設計の承認なしに受け入れない。

Q. ミルシートの炭素当量の欄が空欄だった。
A. 通常の SM490 には炭素当量の上限が規格に無いので、記載が無いこともある。値が要るなら注文で記載を求めるか、報告された成分から規格の式で計算する。計算に使う元素の分析値がそろっているかを確かめる。

まとめ

SM490 は溶接構造用の JIS G 3106 の鋼材で、SS400 などの JIS G 3101 と違って炭素・けい素・マンガンに上限がある。A・B・C はシャルピーの規定の違いで、規定がかかるのは厚さ 12 mm を超える鋼材だけ。YA・YB は降伏点が高い区分である。炭素当量の上限は TMC 材などにしか決まっていないので、溶接施工の前提として要るなら注文で決める。建築構造物なら JIS G 3136 の SN 材の指定を確かめる。注文時には種類の記号・形状・寸法などを提示し、ミルシートは 3.1 が既定で、記号・溶鋼番号・成分・引張・衝撃の値を現品の表示と突き合わせる。

出典・参考資料

  1. JIS G 3106:2024 溶接構造用圧延鋼材(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 2 月 20 日改正)
  2. JIS G 3101:2024 一般構造用圧延鋼材(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 2 月 20 日改正)
  3. JIS G 3136:2022 建築構造用圧延鋼材(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2022 年 3 月 22 日改正)
  4. JIS G 0404:2023 鋼材の一般受渡し条件(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 12 月 20 日改正)
  5. JIS G 0415:2024 鋼及び鋼製品-検査文書(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 6 月 20 日改正)

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