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投稿日:2026年10月17日

包装貨物の輸送試験 JIS Z 0200 の指定——ハザードから試験とレベル、順序と判定を決める

この記事のポイント(結論先出し)

包装した製品の輸送試験の組み立て方は JIS Z 0200:2023(包装貨物-性能試験方法一般通則)にある。この規格は、物流の過程で予想されるハザード(損傷の原因)から試験項目を選び、受渡当事者間で確認したハザードの試験を加え、試験ごとのレベルを選ぶ形になっている[1]。振動はランダム振動を優先し、輸送距離 4,000 km・2,000 km・1,000 km の目安でレベル 1〜3 を選ぶ。積み重ねの圧縮は、荷重を F = 9.8 × K × M × n(K は保管条件の負荷係数、n は一番下の箱の上に積む段数)で求める[1]。試験の順序は物流の流れを考えて協定で決めるのが望ましく、合格・不合格の基準はこの規格には無い[1]。発注する側は、輸送経路と保管の条件を渡し、試験とレベルと順序、そして何が起きたら不合格かを書く。

JIS Z 0200 は「試験の選び方」の規格

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JIS Z 0200 は、包装貨物が流通の過程で受ける振動・衝撃・圧縮に対して、包装の保護が適正かを評価する試験方法を定める規格で、2019 年の ISO 4180 を基に日本の実情に合わせて変更し、2023 年 1 月に改正された[1]。個々の試験のやり方は別の規格(落下は JIS Z 0202、振動は JIS Z 0232、圧縮は JIS Z 0212、前処置は JIS Z 0203 など)にあり、JIS Z 0200 はそれらを組み合わせて試験計画を作るための規格である[1]。

適用範囲には大事な除外がある。消防法その他の関係法令の適用を受ける包装貨物は除く、とされている[1]。危険物の容器や、輸送の試験が別の規則で決まっているもの(リチウム電池を含む製品など)は、この規格の試験だけでは足りない。リチウム電池の輸送の試験はリチウム電池を含む部品の調達と輸送の記事で扱った。

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ハザードから試験を選ぶ

規格の表 1 と表 2 は、物流の基本要素ごとのハザードと、それに対応する試験を示している[1]。主なものをまとめると次のとおりである。

物流の要素 ハザード 試験(規格) レベルの決め方(JIS Z 0200)
輸送 輸送中の振動、飛び跳ねによる繰返し衝撃 ランダム振動試験・正弦波振動試験(JIS Z 0232) 一般輸送はレベル 1〜3(目安 4,000・2,000・1,000 km)、悪路輸送もレベル 1〜3
輸送・荷役 急停止・急発進・荷役中の水平衝撃 水平衝撃試験(JIS Z 0205) 衝突速度 2・1.5・1 m/s
荷役 人的荷役・機械荷役による落下衝撃 自由落下・等価落下・片支持落下(JIS Z 0202) レベル 1〜4 と質量で落下高さ
保管 倉庫内の積み重ねの圧縮荷重 圧縮試験・積重ね荷重試験(JIS Z 0212) 負荷係数 K をレベル 1〜4 で選ぶ
気象 高温・高温高湿・低温 温湿度環境試験(JIS Z 0203 の装置と手順) レベル 1〜3、48 時間
輸送(航空など) 高い高度での低圧 低圧試験(ISO 2873) 55・65・80 kPa、60 分

規格は、試験項目を予想される又は既知のハザードに応じて表 2 から選び、受渡当事者間の協定で確認されたハザードに対する試験を追加しなければならない、とし、選ぶときには包装貨物の特性(特定のハザードへの弱さ)、試験機器、試験結果、過去の損傷の経験を考えるのが望ましい、としている[1]。発注する側が持っている「前にこう壊れた」という情報は、試験を選ぶ材料そのものである。

振動:ランダムを優先し、距離でレベルを選ぶ

振動試験はランダム振動試験で行い、ランダム振動試験が利用できない場合だけ正弦波振動試験で行う[1]。一般輸送のレベルは、レベル 1 が非常に長距離(目安 4,000 km 程度)又は輸送環境が劣悪な条件、レベル 2 が長距離(目安 2,000 km 程度)で特定のハザードがない場合、レベル 3 が短距離(目安 1,000 km 程度)で特定のハザードがない場合である[1]。船舶と航空機の輸送距離は、振動レベルが非常に低いと考えられるため、距離に含めない[1]。海外工場からの輸入品なら、工場から港までと、港から自社までのトラックの距離で考える。

積付け方向が分かっている場合、ランダム振動は二つの PSD(加速度パワースペクトル密度)のプロファイルを順に加え、試験時間はレベル 1 でプロファイル A が 100 分・B が 20 分、レベル 2 で 50 分・10 分、レベル 3 で 25 分・5 分である[1]。プロファイル A は舗装された路面状態が非常に良い道路を走行したときの荷台の振動で加速度実効値 2.97 m/s²、プロファイル B は路面状態が悪い部分を含む道路で 5.926 m/s² とされている[1]。振動方向は垂直とし、協定で必要と判断した場合は水平方向も行ってよい[1]。積付け方向が予測できない場合は、通常の輸送状態・縦置き・横置きの三つの状態で試験する[1]。

振動試験の方法そのものを定める JIS Z 0232:2020 は、ランダム振動を輸送の振動環境を最も的確に再現する方法としたうえで、加速度パワースペクトル密度は路面の状況や使う車両の種類など輸送条件に大きく依存するため、測定したデータに基づく加速度パワースペクトル密度と試験時間が使える場合はそのデータで試験するのがよい、としている[4]。供試品は輸送中の拘束方法と積載方法を模擬して載せる[4]。自社の便で荷台の振動を測ったデータがあるなら、表の値より優先できる。

舗装されていない道路を通る輸送が想定される場合は、一般輸送の試験に加えて悪路輸送のランダム振動試験(供試品を固定せずに載せ、レベル 1〜3 で 15・10・5 分)を行うことが望ましい[1]。正弦波で行う場合の一般輸送の条件は、3〜100 Hz・加速度 7.0 m/s²・掃引速度 0.5 オクターブ毎分で、レベルで掃引サイクルの数が変わる[1]。製品単体の振動試験との違いは振動・衝撃試験を仕様に入れるときの記事で扱った。製品で合格していても、箱の中で部品どうしがこすれる問題は包装の試験でないと分からない。

圧縮:荷重は式で求め、保管の条件を渡す

段ボール箱などの紙箱の圧縮試験は、圧縮試験機で、式で求めた荷重を毎分 10±3 mm の速さで加えてすぐに解放する[1]。荷重は F = 9.8 × K × M × n で、F は荷重(N)、K は負荷係数、M は供試品の総質量(kg)、n は保管中の一番下の包装の上に積む最大の段数(最下段を含まない)である[1]。負荷係数は保管条件に応じた区分で、レベル 1(保管劣化が大きく 12 か月・90%RH)が 8.0、レベル 2(大きく 6 か月・90%RH)が 7.2、レベル 3(小さく 3 か月・80%RH)が 3.8、レベル 4(非常に小さく 1 か月・50%RH)が 2.4 である[1]。規格は、保管劣化・保管期間・湿度のそれぞれの荷重係数を掛け合わせて K を出す詳しい表も示している[1]。

規格の附属書の例では、総質量 12 kg の段ボール箱を 5 段積みでパレットに載せ、倉庫で 2 段積みにして 90 日・80%RH で保管する流れから、K = 1.5 × 1.8 × 1.4 = 3.8、n = 9 として、F = 9.8 × 3.8 × 12 × 9 ≒ 4,022 N を求めている[1]。何段積むか、何か月置くか、倉庫の湿度はどれくらいかは、物流を知っている発注する側の情報である。仕入先に「強い箱で」とだけ頼むのではなく、この三つを渡せば荷重が決まる。

荷重を 24 時間かけ続ける積重ね荷重試験もあり、その場合の負荷係数はレベル 1〜4 で 5.7・5.3・2.7・1.7 である[1]。圧縮試験機の条件や、内容品の損傷を見る方法 A と空箱の強さを見る方法 B の違いは JIS Z 0212 にある[3]。箱の材質の記号と、箱の規格が圧縮強さを協定に任せている点は段ボール箱の規格と強度の指定の記事で扱った。パレットに載せたときの積み方はパレットのサイズと規格の記事も参照してほしい。

落下・水平衝撃・温湿度・低圧

落下・衝撃試験は、人的荷役の多さと機械荷役の割合でレベル 1〜4 を選び、人的荷役には自由落下試験か等価落下試験を、機械荷役には片支持落下試験を当てる[1]。たとえば 10 kg 以下の自由落下の高さはレベル 1 が 1,000 mm、レベル 4 が 400 mm である[1]。落下試験の方法を定める JIS Z 0202 は、落下高さ・落下部位・落下回数を試験の目的によって定めるとしており[5]、その数値を与えるのがこの JIS Z 0200 のレベルである。落下の高さ・姿勢・回数の決め方と、等価落下試験の条件、製品単体の落下との分け方は落下試験 JIS Z 0202 の指定の記事で詳しく扱う。

水平衝撃試験は JIS Z 0205 の装置と方法で、供試品のそれぞれの側面に 1 回ずつ、レベル 1 で 2 m/s、レベル 2 で 1.5 m/s、レベル 3・4 で 1 m/s の衝突速度の衝撃を加える[1]。温湿度環境試験は、過酷な気象での包装の反応を評価するための単独の試験で、高温はレベル 1〜3 で 60℃・55℃・40℃、高温高湿は 60℃85%RH・40℃90%RH・30℃90%RH、低温は −55℃・−35℃・−20℃、試験時間は 48 時間である[1]。低圧試験は密閉包装を評価する単独の試験で、高度 5,000 m・3,500 m・2,000 m に当たる 55・65・80 kPa を 60 分加え、圧力の変化は 150 hPa/min を超えてはならない[1]。

前処置と順序で、結果は変わる

振動試験と落下試験の供試品は、表 5 の三つの方法から試験の目的と輸送環境で前処置を選ぶ。方法 A は試験所と違う温湿度にあった供試品を 24 時間以上又は試験所の環境と平衡になるまで置き、方法 B は温湿度の影響を受けやすい供試品を 24 時間以上又は 23℃・50%RH と平衡になるまで置き、方法 C は指定の条件で置く[1]。圧縮試験は、輸送環境の温湿度を荷重で調整するため方法 B を選ぶ[1]。前処置の大気条件の一覧と許容範囲は JIS Z 0203:2026 にあり、温度の平均値は設定値の ±2℃、相対湿度の平均値は ±2%RH とされる[2]。

試験の順序は、最終目的地までの物流の流れを考えて受渡当事者間の協定で決めることが望ましく、物流の過程が分からない場合は、圧縮・振動・落下衝撃の試験から一つを行うか、二つ以上を任意の順序で組み合わせてよい[1]。規格の試験計画の例には、一つの供試品で前処置・圧縮・ランダム振動・自由落下を続けて行う連続試験と、複数の供試品で試験を分けて行う並行試験の両方が載っている[1]。湿気で弱った箱が振動で角がつぶれ、最後に落ちて割れる、という実際の壊れ方を見たいなら連続試験になる。どちらで行うかを仕様書で決める。

試験計画の作り方:附属書の例に沿って書く

規格の附属書 JA は、物流の要素(工場でのユニット化、トレーラ輸送、港での保管、船舶輸送、荷降し、倉庫保管、地域配送、最終の荷降しなど)を順に書き出し、それぞれの作業の方法・距離・保管期間、関連するハザード、試験条件の基本数値を記入し、支配的な条件からレベルを決める試験計画書の例を示している[1]。例では、輸送距離が最も長い 3,000 km の区間を支配的な要因として振動をレベル 1 に、想定される落下高さが最も高い最終の荷降し(45 cm)を支配的な要因として落下をレベル 3 に、倉庫保管を支配的な要因として圧縮をレベル 3 にしている[1]。

この表の左半分(物流の流れ・距離・積み方・保管期間・湿度)は発注する側が書き、右半分(試験とレベル)は試験を行う側と一緒に決める、という分担にすると話が早い(当方の提案)。物流が変わったとき、たとえば海上輸送をやめて国内の別の倉庫を経由するようになったときに、どの試験を見直すべきかもこの表から分かる。

合否の基準と、報告書で確かめること

JIS Z 0200 の試験報告の項目は、適用規格、試験所と顧客、報告書の識別、受領日と試験日、責任者、結果が試験した供試品だけに適用される旨、反復した供試品の数、供試品と緩衝材・補強などの寸法・質量・構造・材料、内容品(代替品ならその詳細)、総質量、前処置の条件と期間、各試験方法と条件、規格から逸脱した項目、試験結果と考察、試験した方向、試験機器と校正データなどで、受渡当事者間の協定で選んでもよいとされている[1]。合格・不合格の基準はこの規格には書かれていない[1]。

仕様書には、内容品の外観と機能の基準、包装の許容できる損傷(角のつぶれ・封かんの開き・パレットからのはみ出しなど)、内容品が動いた跡の扱いを書く(当方の提案)。基準を試験の後から厳しくして不合格にすると、受領の拒否ややり直しの問題になりうるので、発注の時点で示す。報告書を受け取ったら、次の順で見る。

1. 試験の選択とレベル
どのハザードに対し、どの試験をどのレベルで行ったか。協定で加えた試験は入っているか。

2. 前処置と順序
方法 A・B・C のどれか、連続試験か並行試験か。

3. 供試品と内容品
量産と同じ梱包か。内容品が代替品なら、質量と形が実物に近いか。

4. 逸脱と考察
規格からの逸脱が書かれていないか。試験した方向が分かるか。

よくある質問

海外の工場から船で運ぶ場合、振動のレベルは何で決めますか

船舶と航空機の輸送距離は振動レベルが非常に低いとして含めないので[1]、トラックで走る区間の距離と路面の状態で決める。悪路を通るなら悪路輸送の振動試験も加える。

何個試験すればよいですか

規格は、結果の信頼性を高めるために複数の供試品を準備することが望ましく、個数は協定で決めてよいとしている[1]。附属書の例では、振動・落下に 3 個、圧縮に 3 個としている[1]。

温湿度環境試験は、ほかの試験の前処置の代わりになりますか

温湿度環境試験は、過酷な気象下での包装の物理的反応を評価するための単独の試験とされており[1]、振動・落下の前処置(表 5)とは目的が違う。前処置は別に決める。

まとめ

JIS Z 0200:2023 は、物流のハザードから試験を選び、試験ごとにレベルを選んで試験計画を作るための規格である。振動はランダム振動を優先して輸送距離でレベルを選び、船と航空機の距離は含めない。圧縮の荷重は F = 9.8 × K × M × n で、積む段数・保管期間・湿度という発注する側の情報で決まる。順序は物流の流れに沿って協定で決め、前処置もそろえる。関係法令の適用を受ける包装貨物は対象外で、合否の基準は規格に無いので仕様書に書く。

同じ束では、温度サイクル試験・熱衝撃試験、耐候性試験、EMC 試験の指定も扱う。

出典・参考資料

  1. JIS Z 0200:2023 包装貨物-性能試験方法一般通則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 1 月 20 日改正)
  2. JIS Z 0203:2026 包装-包装貨物及びユニットロード-試験の前処置(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2026 年 2 月 20 日改正)
  3. JIS Z 0212:1998 包装貨物及び容器-圧縮試験方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1998 年 3 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
  4. JIS Z 0232:2020 包装貨物-振動試験方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2020 年 2 月 20 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
  5. JIS Z 0202:2017 包装貨物-落下試験方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2017 年 9 月 20 日改正・2022 年 10 月 20 日確認)

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