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落下試験 JIS Z 0202 の指定——落下高さは JIS Z 0200 から選び、製品単体の落下と分ける

この記事のポイント(結論先出し)
包装した製品の落下試験の方法は JIS Z 0202(包装貨物-落下試験方法)にあるが、この規格は落下高さ・落下部位・落下回数を「試験の目的によって定める」としており、数値を決めていない[1]。数値は、包装貨物の性能試験の通則 JIS Z 0200:2023 の落下・衝撃試験のレベル(質量とレベル 1〜4 ごとの落下高さ、直方体なら 1 角・3 りょう・6 面の順序)から選ぶか、受渡当事者間で決める[2]。合否の基準も Z 0202 には無く、報告書には変形・損傷の有無と状況を記録するだけなので[1]、発注する側が内容品と包装の何を見て合格とするかを書く。包装しない製品単体の落下は別の規格 JIS C 60068-2-31 で、落下の高さの決め方が違う[4]。
目次
JIS Z 0202 は「やり方」の規格で、高さは決めていない
JIS Z 0202:2017 は、輸送の過程で落下の衝撃を受ける包装貨物の落下試験方法を定めた規格で、垂直に自由落下させる試験のほかに、片支持りょう落下試験と、衝撃試験装置による等価落下試験を含めている。クラフト紙袋の落下試験は別の JIS Z 0217 による[1]。この規格の試験方法の箇条は、それぞれの試験で、落下高さ(等価自由落下高さ)、落下部位及び落下回数は試験の目的によって定める、としている[1]。
つまり「JIS Z 0202 による落下試験に合格すること」とだけ書いた仕様書では、何 cm から、どの角とりょうと面を、何回落とすのかが決まっていない。極端に言えば 10 cm から 1 回落としても「JIS Z 0202 で試験した」と言える。高さと部位と回数を決める根拠として使えるのが、次に述べる JIS Z 0200 である。
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高さは JIS Z 0200 のレベルから選ぶ
JIS Z 0200:2023(包装貨物-性能試験方法一般通則)は、落下・衝撃試験をレベルに分けている。レベル 1 は人の手による荷役の回数が非常に多く大きな力がかかる可能性がある場合、レベル 2 は人的荷役の回数が多く最終目的地までに大きな外力がかかる可能性がある場合、レベル 3 は機械荷役と人的荷役で外力のレベルが一般的と想定される場合、レベル 4 は人的荷役がほとんどなく大半が機械荷役で大きな外力がかかる可能性がない場合である[2]。人の手で扱う荷役には自由落下試験か等価落下試験を、フォークリフトなどの機械荷役には片支持落下試験を当てる[2]。
自由落下試験の落下高さは、供試品の質量とレベルで決まる。30 kg 以下の表を抜き出すと次のとおりである[2]。
| 供試品の質量 m | レベル 1 | レベル 2 | レベル 3 | レベル 4 |
|---|---|---|---|---|
| 0 kg を超え 10 kg 以下 | 1,000 mm | 800 mm | 600 mm | 400 mm |
| 10 kg を超え 20 kg 以下 | 800 mm | 600 mm | 450 mm | 350 mm |
| 20 kg を超え 30 kg 以下 | 600 mm | 450 mm | 300 mm | 200 mm |
30 kg を超える場合は別の表になり、たとえば 50 kg を超え 100 kg 以下ではレベル 1 が 250 mm、レベル 4 が 100 mm で、直方体の容器は面 1(天面)を除く 5 面を落とす[2]。表の値が自社の荷扱いと合わないと感じたら、実際の荷扱いの高さが分かっているなら、その値を根拠に協定で変えてよい。
落とす順番と回数
30 kg 以下の直方体の容器は、1 角・3 りょう・6 面を落とす。JIS Z 0200 の表 19 は順序を、①底面に接する角、②底面と幅面に接するりょう、③底面と長さ面に接するりょう、④長さ面と幅面に接するりょう、⑤〜⑩ 6 面すべて、の計 10 回としている[2]。試験する角とりょうは、内容品の最も弱いとみられる角とそれに接するりょうを選ぶ[2]。包装の種類や取扱い方法に応じて、りょうや面の一部を省いたり順序を変えたりすることは、受渡当事者間の協定でできる[2]。円筒形の容器は上下の角を 8 回落とす[2]。
試験の前の状態をそろえることも決めておく。JIS Z 0200 は、振動試験と落下試験の供試品の前処置を三つの方法から試験の目的と輸送環境で選ぶとし、段ボールのように温湿度の影響を受けやすい供試品には、24 時間以上又は内容品が 23℃・50%RH と平衡に達するまで置く方法 B を挙げている[2]。前処置の大気条件の一覧は JIS Z 0203:2026 にあり、−55℃から +55℃までの条件に加え、東南アジアとの取引に関係して +27℃・65%RH の熱帯の条件を、対応する国際規格には無い条件として東南アジアとの取引の関係で加えている[3]。
自由落下の精度と、等価落下試験
JIS Z 0202 の垂直自由落下試験は、面落下なら供試品の水平度を ±2°、りょう落下と角落下なら重心からの鉛直線が衝撃を与えるりょう又は角を通るようにし、その角度の許容量を ±5°とする。落下高さの誤差の許容量は ±2% 又は ±10 mm の大きい方である[1]。落下面は、表面のどの 2 点の水平差も 2 mm 以下で、コンクリート・石・鋼板などの堅固な材料で作り、部材の質量は供試品の 50 倍以上が望ましいとされる[1]。仕入先の倉庫の床に落としただけの試験は、この条件を満たしているか分からない。
等価落下試験は、衝撃試験装置で自由落下と等価な衝撃を加える試験で、緩衝包装を施した包装貨物に適用し、自由落下より安定した落下姿勢を保てる[1]。台の速度変化は、等価自由落下高さ h と重力加速度 g から Δv = √(2gh) で求める[1]。たとえば 800 mm なら √(2 × 9.8 × 0.8) ≒ 3.96 m/s で、JIS Z 0200 の等価落下試験の表でも 10 kg 以下・レベル 2 の速度変化は 3.96 m/s になっている[1][2]。ただし衝撃パルスの作用時間は 3 ms 以下が望ましく、3 ms の正弦波パルスで等価落下試験ができる包装貨物の固有振動数はおおむね 83 Hz 以下で、それより高い固有振動数の包装貨物には適応しない、と規格は書いている[1]。緩衝材がほとんど無い硬い梱包を等価落下で済ませるのは、条件に合っているか確かめる。
機械荷役の片支持落下
フォークリフトなどで扱う重い荷物には、一つのりょうを台で支え、反対のりょうを持ち上げて落とす片支持落下試験を当てる。JIS Z 0200 は、底面と幅面に接するりょうで 2 回、その対角のりょうで 2 回の計 4 回落とすとし、落下高さを 200 kg 以下でレベル 1 が 400 mm、レベル 2 が 300 mm、レベル 3・4 が 200 mm としている[2]。総質量 70 kg 未満のものは、底面 4 りょうと底面 4 角にそれぞれ 1 回落とす[2]。
供試品は「出荷と同じ状態」で作る
JIS Z 0202 は、供試品は実際の内容品か類似の内容品を入れたものとし、包装はすべて出荷と同じ状態で行い、必要に応じて密封・封かん・結束などを施す、としている[1]。試験用に丁寧にテープを貼った箱で合格しても、量産の出荷で封かんの仕方が違えば意味が薄れる。仕入先の梱包仕様書の版と、試験に使った梱包が同じものかを確かめる。緩衝材の厚さと面積の決め方はポリエチレンフォーム緩衝材の指定の記事で、箱の材質と強さの指定は段ボール箱の規格と強度の指定の記事で扱った。緩衝材の設計で前提にした落下高さと、ここで選ぶ落下高さはそろえておく。
合否の基準は、規格ではなく仕様書で決める
JIS Z 0202 の試験報告の項目は、内容品の明細、供試品の質量・寸法・材料・構造・包装方法、個数、試験装置、採用した試験方法と条件(落下部位・落下高さ・速度変化・回数など)、試験前の条件、試験結果の記録(変形・損傷などの有無と状況)、試験年月日と温湿度、規定からの逸脱とその理由、総合所見、試験者の署名などである[1]。合格・不合格の基準はこの規格には書かれていない。JIS Z 0200 も同じで、試験の選び方と条件は定めているが、何が起きたら不合格かは定めていない[2]。
発注する側は、たとえば次のように書く(当方の提案)。内容品は外観にきず・割れが無く、指定の機能検査に合格すること。包装は内容品が露出せず、角のつぶれは ○ mm 以内で、再出荷できること。部品が箱の中で動いて当たった跡があれば記録すること。基準を試験の後に厳しくして不合格にすると、受領の拒否ややり直しの問題になりうるので、基準は発注の時点で示す。
包装しない製品は JIS C 60068-2-31 で考える
製品単体の落下は、電気・電子機器の環境試験の JIS C 60068-2-31(落下試験及び転倒試験方法・試験記号 Ec)で扱う。この規格は、使用中や修理作業中の粗雑な取扱いで起きる打撃・動揺・落下の影響を再現する試験で、荷台に拘束しない貨物が輸送中に受ける衝撃や、設置した機器が受ける衝撃の評価には適用しない[4]。持ち運んで現場で使う機器には当てはまり、恒久的に据え付ける機器にはこの試験を行う必要はない、とされている[4]。
自然落下試験(方法 1)の落下の高さは、運搬中・使用中の実環境が分からない場合などに、質量で選ぶ。1 kg 未満なら 750・1,000・1,500 mm、1 kg 以上 10 kg 未満なら 50・100・250・500 mm、10 kg 以上 50 kg 未満なら 25 mm で、回数の規定がなければ規定の姿勢で 2 回落とす[4]。この表には注があり、輸送用のケースに入った供試品や包装した供試品は、JIS Z 0200 に規定する落下の高さを使う、としている[4]。作業台の上で傾けて落とす面落下と角落下(25・50・100 mm から選ぶか、30°の小さい方)や、部品の繰返し落下(500 mm 又は 1,000 mm から 50〜1,000 回)もこの規格にある[4]。製品規格には、初期測定、落下の高さ、姿勢、回数、試験中に動作させるか、最終測定を規定することになっている[4]。
包装の落下と製品単体の落下は、守るものが違う。包装の落下試験は箱と緩衝材が製品を守れるかを見るもので、製品単体の落下試験は手で持つ製品そのものの丈夫さを見る。どちらを求めているかを仕様書の最初に書く。据え付けた機器が受ける衝撃は振動・衝撃試験を仕様に入れるときの記事で扱った。
仕様書の書き方の例
決まった様式はない。発注する側として書いておきたい内容を一つの例にまとめる。
「包装貨物の落下試験:JIS Z 0202:2017 の垂直自由落下試験。前処置は JIS Z 0200:2023 表 5 の方法 B。落下高さと順序は JIS Z 0200 表 17・表 19 のレベル 2(供試品質量 12 kg のため 600 mm、1 角・3 りょう・6 面の 10 回)。試験する角は、内容品の最も弱いとみられる角(図に示す)とその角に接するりょうとする。供試品は量産と同じ梱包仕様書(版を指定)で作り、個数は 3 個。合否:内容品の外観・機能検査に合格し、包装は内容品が露出しないこと。報告書は JIS Z 0202 の箇条 8 の項目と、各落下後の写真を含むこと。」
よくある質問
何個試験すればよいですか
JIS Z 0200 は、結果の信頼性を高めるために複数の供試品を準備することが望ましく、個数は受渡当事者間の協定で決めてよい、としている[2]。1 個の合格から言えることには限りがあるので、何台で何が言えるかを試作 N 台で不具合 0 件の記事で確かめてから決める。
製品単体の落下試験に合格していれば、包装の落下試験は要りませんか
守るものが違う。製品単体の規格自体が、包装した供試品には JIS Z 0200 の落下の高さを使うとしており[4]、箱の中での当たり方や緩衝材の効き方は包装の試験でないと分からない。
落下高さを規格より高くしてもよいですか
実際の荷扱いの高さが分かっていれば、それを根拠に協定で決めてよい。JIS Z 0202 自体は高さを試験の目的で定めるとしている[1]。高くするなら、緩衝材の設計の前提もそろえる。
まとめ
JIS Z 0202 は落下試験のやり方を定めるが、落下高さ・部位・回数は試験の目的で定めるとしており、数値は JIS Z 0200 のレベル(質量ごとの落下高さ、1 角・3 りょう・6 面の順序)から選ぶか協定で決める。等価落下試験は緩衝包装に適用し、固有振動数の高い包装には向かない。合否の基準はどちらの規格にも無いので仕様書に書く。包装しない製品単体の落下は JIS C 60068-2-31 で、包装した供試品には JIS Z 0200 の高さを使う。
輸送の振動や積み重ねの圧縮まで含めた試験の組み立て方は包装貨物の輸送試験の記事で扱う。同じ束では、温度サイクル試験・熱衝撃試験、耐候性試験、EMC 試験の指定も扱う。
出典・参考資料
- JIS Z 0202:2017 包装貨物-落下試験方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2017 年 9 月 20 日改正・2022 年 10 月 20 日確認)
- JIS Z 0200:2023 包装貨物-性能試験方法一般通則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 1 月 20 日改正)
- JIS Z 0203:2026 包装-包装貨物及びユニットロード-試験の前処置(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2026 年 2 月 20 日改正)
- JIS C 60068-2-31:2013 環境試験方法-電気・電子-第 2-31 部:落下試験及び転倒試験方法(試験記号:Ec)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2013 年 3 月 21 日改正)
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