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投稿日:2026年10月17日

簡易金型(試作型)の発注で決めること——ショット数・確かめられること・型の後始末

この記事のポイント(結論先出し)

簡易金型(試作型)は、量産の金型より早く安く作る代わりに、持つショット数・寸法の精度・成形サイクルが量産型と違う型である。報告されている持ちは、光造形で直接作った型で ABS を 100〜200 個程度、金属粉入りのエポキシ樹脂の型で 200〜5,000 ショットで、型材の熱の伝わり方が金属より悪く、成形のサイクルが長くなる[1]。発注では、何を確かめるための試作か、何個要るか、量産と同じ樹脂グレード・ゲート位置で成形するか、使い終わった型をどうするかを先に決める。シリコーンゴム型の真空注型品は、量産の樹脂とは違う材料なので、最終の機能試験の判定には使えない[1]。樹脂製の型も、取適法の「製造委託」の対象になる型に含まれる[3]。

簡易金型は「早く安く」の代わりに、何かをあきらめた型である

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この記事は、樹脂部品の開発で、量産の金型を作る前に試作用の型(簡易金型・試作型)で部品を成形して確かめるときの話である。プラスチック成形加工学会の学会誌「成形加工」に載った解説(2001 年)は、プロトタイピング(試作)からマニュファクチャリング(生産)へは型の製作を避けて通れず、強度や耐久性、感触などを検討するにはできるだけ実際の材料で確かめることが重要で、そのために試作金型を作り、評価項目の数だけ成形品を得ることが重要だ、と書いている[1]。

同じ解説は、射出成形用の本格的な金型には、機械的強度 500 MPa 以上、寸法精度 0.01 mm などの厳しい条件を同時に満たすことが求められるが、光造形を経由する型ではこれらの条件を必ずしもすべて満たせないのが実情で、適用に限界があることを意識して使うことが大切だ、と書いている[1]。簡易金型を頼むときに決めるべきことは、まさにこの「何をあきらめてよいか」である。

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簡易金型の種類と、報告されている持ち

試作用の型には、いくつかの作り方がある。先の解説と、自動車の内装部品の試作型を扱った本田技術研究所の技術論文(2009 年)に出てくるものを並べると、次のようになる。

型の作り方 成形の方法と材料 出典に書かれている持ち・特性
シリコーンゴム型 真空注型。ウレタン樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を流し込む 一つの型から 10〜20 個。レプリカ 1 個に 1〜2 時間程度[1]
金属粉入りエポキシ樹脂型 射出成形。アルミ粉末を多量(75 wt% 程度)に含むエポキシ樹脂で型を作る 荷重たわみ温度 250℃以上・曲げ強度 98 MPa がある程度保証され、200〜5,000 ショットの成形が可能[1]
光造形で直接作る樹脂型 射出成形。フィラー強化の光硬化性樹脂で型を造形する 1995 年に ABS などの汎用プラスチックを 100〜200 個程度成形できることが示された[1]
亜鉛合金(ZAS)型 射出成形。自動車の試作で従来使われてきた型 引張強さ 244.0 MPa(同じ論文の比較で、炭素繊維入りエポキシは 63.5 MPa、アルミ入りエポキシは 52.0 MPa)[2]

表の値は、いずれも出典の時点の材料と条件での記述で、一般値ではない。先の解説の筆者は光造形の装置・材料を扱う会社に所属しており、ショット数はその立場からの紹介である[1]。どの型で何ショット持つかは、成形する樹脂、成形品の形、ガラス繊維の有無などで変わる。仕入先に、自社の型で同じ樹脂を何ショット成形した実績があるかを確かめるのが確実である。

シリコーンゴム型の注型品は、量産の材料ではない

先の解説は、光造形のモデルを原型にしたシリコーンゴム型の真空注型を、十数個程度を早く手に入れたいときに極めて簡便で有効な方法とする一方で、得られるレプリカは ABS 樹脂などの熱可塑性樹脂を使う製品とは異なる材料なので、最終的な機能試験などには直接利用できない、と書いている[1]。

ここが簡易金型の発注でいちばん危ない取り違えである。形や組み付けを確かめる試作と、強度・耐熱・耐薬品などの機能を確かめる試作を、同じ注型品で済ませない。機能の判定に使う試作品は、量産と同じ樹脂グレードを射出成形した品で作り、ゲートの位置と肉厚も量産型に合わせる。樹脂グレードの指定と代替グレードの扱いは樹脂材料をグレードで指定するにまとめた。

簡易金型で確かめられること、確かめられないこと

射出成形の簡易金型なら、量産と同じ樹脂で成形できる。本田技術研究所の論文は、量産部品と同じポリプロピレンの射出成形で試作のインストルメントパネルを作る試作型の工法を開発し、その試作品を衝突試験に使った、と報告している[2]。この工法では、従来の ZAS 型と同等の費用で、製作の期間を 20% 短くできた、としている[2]。材料が同じで、ゲートの位置・ウェルドラインの位置・肉厚が量産型と同じなら、強度や衝撃の評価の目安に試作品を使える。最終の判定は量産型の初品で確かめ直す。ウェルドラインや肉厚が違えば、壊れ方も変わりうる。

一方、型の材料が違えば、成形の条件は量産と同じにはならない。先の解説は、光造形で作る型の課題として、熱伝導率が金属より大幅に悪いため、型温をコントロールするために射出成形のサイクルが長くなることを挙げている[1]。大きな型や深いものはあまり得意でない、とも書いている[1]。金属エポキシ樹脂型については、原型を転写して作るので精度が若干劣る傾向があり、最終ユーザーに嫌われたと推定されている[1]。

ここから、簡易金型で確かめられることと、確かめにくいことを分けておく(規格の要求ではなく、発注する側の実務の整理)。

確かめられること
量産と同じ樹脂で成形した品の、形・組み付けの評価。強度・衝撃の評価は、ゲートの位置・ウェルドラインの位置・肉厚が量産型と同じ場合に限る。試作の台数を決めるときの考え方は試作 N 台で不具合 0 件なら不良率は何% 以下かで扱った。

確かめにくいこと
量産での成形サイクルと単価、量産型での寸法のばらつき、そり、冷え方の違いによる強度の差。型の材料と冷え方が違うので、これらは量産型を作ってから決め直す前提で見る。ゲートの位置や型の分割面が量産型と違えば、ウェルドラインやゲート跡の位置も変わる。

発注のときに決めること

簡易金型の見積は「型代〇万円・成形〇個」の形で来ることが多い。そのまま発注すると、何が約束されているのかがあいまいになる。次の項目を、成形品の注文とは別に書面で決めておく(発注する側の実務の提案)。

1. 試作の目的
形の確認か、組み付けの確認か、機能の評価か。目的によって、型の作り方と、量産と同じにすべき条件が変わる。

2. 必要な個数と余裕
評価に要る個数に、成形条件を出すための捨てショットと、追加の試験に備えた余裕を足す。型が何ショットで寿命とみなすかの定義も書く(バリが出始めたら、寸法が外れたら、など)。寿命の約束の書き方は射出成形の金型を発注するとき決めることで扱った。

3. 樹脂のグレード
機能の評価に使うなら、量産で使う予定の樹脂グレードを指定する。代替のグレードで成形するなら、その評価が量産に当てはまるかを誰が判断するかも決める。

4. 量産型と同じにする条件
ゲートの位置、分割面、突出しピンの位置を量産型の計画に合わせるのか、合わせないのか。合わせないなら、外観・寸法に加えて、強度・衝撃の評価も参考扱いにする。

5. 寸法の約束
どの寸法を測って報告してもらうか、その寸法の公差。簡易金型の品に量産品と同じ公差を一律に求めると、型の作り方を選べなくなる。樹脂成形品の寸法公差の決め方は樹脂成形品の寸法公差の決め方にある。

6. 型の所有と、使い終わった後
試作が終わった型を廃棄するのか、仕入先で保管するのか、返却させるのか。保管させるなら、その費用と期限。図面と 3D データの扱いも同じときに決める。

7. 量産型への引き継ぎ
試作で決まった形状の修正を量産型の図面に反映する手順。量産型の鋼材の選び方は、同じ束の樹脂金型の鋼材(NAK80・HPM)の選び方で扱う。

見積は「型代」と「成形費」を分けて比べる

簡易金型の見積は、仕入先によって型の作り方が違うので、総額だけで比べると中身の違う物を比べることになる。型代、1 ショットあたりの成形費、成形品の測定と報告の費用、型の保管費用を分けて出してもらい、同じ個数・同じ樹脂・同じ評価項目の条件でそろえてから比べる。数が少ないうちは型代の差が効き、追加の試作が増えるほど成形費の差が効いてくる。追加の成形を頼む可能性があるなら、最初の注文の時点で、型が何ショットまで使える前提の見積なのかを確かめておく。

樹脂製の型も、取適法の「型」に入る

取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)の対象になる取引なら、試作型の製作の委託にも法律がかかる。公正取引委員会と中小企業庁のテキストは、製造委託の定義にある「専らこれらの製造に用いる金型,木型その他の物品の成形用の型」を、目的物の外形をかたどった物品で、その性質上ほかの製品のために用いることができず、その製造に専ら用いられるものと説明し、「その他の物品の成形用の型」として砂型や樹脂製の型が該当する、としている[3]。

つまり、樹脂で作った簡易金型も、量産の金型と同じく型として扱われる。金型の製造委託にかかる明示と支払期日の考え方、金型が仕入先の手元に残るときの受領日の扱いは、射出成形の金型を発注するとき決めることにまとめたので、ここでは繰り返さない。

使い終わった型の扱いにも注意が要る。同じテキストは、旧下請法の時代の事例として、自社が所有する金型を貸与して製品の製造を委託していた事業者が、量産終了後の製品の製造に用いる金型の保管費用を支払わず、無償で金型を保管させていた事例や、次回以降の具体的な発注時期を示せないのに保管費用の取決めをせずに無償で保管させていた事例を、不当な経済上の利益の提供要請として挙げている[3]。試作型は試作が終われば使わなくなる型なので、試作の終わりに「廃棄か、返却か、有償で保管か」を決めておく。決めないまま仕入先の倉庫に置かせ続ける状態を作らない。

プレスの部品にも簡易型がある

ここまで樹脂の射出成形を中心に書いたが、板金のプレス部品にも、量産の順送型の前に、工程を分けた単純な型や、型を使わない加工で試作する方法がある。考え方は同じで、試作の目的、確かめられることと確かめにくいこと、型の扱いを先に決める。とくにプレス品は、試作と量産で工程が変わると寸法のばらつき方も変わる。プレスの各工法の発注の注意は、同じ束の深絞り品の発注、ファインブランキングの発注、型がオス側だけで済むへら絞り(スピニング加工)の発注、パイプ曲げの発注で扱う。

よくある質問

簡易金型で何ショット取れるかを約束してもらえますか

型の作り方と成形する樹脂で大きく変わる。出典では、金属粉入りエポキシ樹脂の型で 200〜5,000 ショット、光造形の型で ABS を 100〜200 個程度という幅のある報告がある[1]。必要な個数を先に伝え、その個数を同じ樹脂で取った実績があるかを仕入先に確かめる。寿命とみなす状態の定義も書面にする。

試作品を真空注型で作り、強度試験もそれで済ませてよいですか

真空注型品はウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂で作られ、量産の熱可塑性樹脂とは材料が違うので、最終的な機能試験には直接使えない[1]。形や組み付けの確認に使い、強度の判定は、量産と同じ樹脂で、ゲートの位置・ウェルドラインの位置・肉厚を量産型に合わせた射出成形品で行う。

試作型で決めた成形サイクルで量産の単価を見積もってよいですか

樹脂の型は熱伝導率が金属より大幅に悪く、成形のサイクルが長くなる[1]。試作型のサイクルは量産の目安にならない。量産の単価は、量産型の仕様(取り数・型の材料・冷却)を決めてから見積もってもらう。

まとめ

簡易金型は、早く安く作る代わりに、持つショット数・寸法の精度・成形サイクルが量産型と違う型である。発注では、試作の目的、必要な個数と寿命の定義、樹脂のグレード、量産型と同じにする条件、寸法の約束、使い終わった型の扱い、量産型への引き継ぎを先に決める。シリコーンゴム型の真空注型品は量産の材料ではないので、機能の判定に使わない。樹脂製の型も取適法の型に含まれ、使い終わった型を無償で保管させ続けない。

出典・参考資料

  1. 萩原恒夫「光造形法による試作用金型の開発動向」成形加工 第 13 巻 第 12 号(プラスチック成形加工学会/2001 年)
  2. 「インストルメントパネル本体成形型の短期試作工法」Honda R&D Technical Review 第 21 巻 第 2 号(本田技術研究所/2009 年 10 月)
  3. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)

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