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投稿日:2026年10月17日

ファインブランキング品の発注で決めること——せん断面・だれ・かえりの指定と材料の状態

この記事のポイント(結論先出し)

ファインブランキング(精密打抜き)は、板押えの V 字形の突起と逆押えで材料を圧縮しながら、ほぼすきまゼロで打ち抜き、切り口の全面をせん断面にする加工である[1][2]。ただしだれ・かえり(ばり)・分離面のテーパはなくならない[1][2]。だれはすきまが大きいほど増え、押え力を上げると減る[2]。歯形のような凸の角はだれが大きく割れやすい[1]。図面には「せん断面〇% 以上」だけでなく、だれの許容値、かえりの向きと高さ、どの部位で測るかを書く。この加工だけを対象にした JIS の公差規格は無く、プレスで打ち抜いた品の普通寸法公差は JIS B 0408 の打抜きの表で読む[3]。切り口は加工硬化しているので、あとで穴広げ(バーリング)をかける穴は、普通の打抜きの穴と同じ程度しか広がらず、切削で開けた穴ほどは広がらない[1]。穴をどの方法で開けるかは、広げる量から仕入先と決める。

普通の打抜きとファインブランキングは、切り口がまったく違う

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板金部品を外注していて、図面の切り口に「全面せん断面」「破断面なきこと」と書かれた部品を受けたら、普通のプレスの打抜きでは作れない。日本機械学会誌の解説(1981 年)は、普通のせん断(慣用せん断)を、板厚の約 10% のすきまを設けて配置した上下の刃で材料にせん断応力をかけて分離する加工とし、分離の際に破断き裂が生じることは避けられないという考えが加工法の初期から定着していると説明している[1]。破断面を伴う製品は 0.1 mm 程度の寸法精度がなかなか実現しにくく、さらに精度が要る場合には、いったん抜いた製品の輪郭を小さな取りしろで削るシェービング加工が使われ、0.01〜0.02 mm 程度まで精度が上がる、とも書いている[1]。

塑性と加工の論文(2010 年)は、一般的なせん断加工の切り口は、板厚の約 15% がだれ、約 20% がせん断面、約 65% が破断面になると書いている[2]。これに対してファインブランキングは、ブランク材に圧縮力をかけて材料の延性を上げる静水圧の効果を使い、破断の発生を防いで精度の高いせん断加工を行う方法である、と同じ論文は説明している[2]。

JIS B 0111(プレス機械-用語)は、ファインブランキングプレスを「一行程で精密打抜き加工を行う機械プレス」と定義している[4]。専用のプレスを使う加工で、普通のプレスに型を載せ替えればできる、というものではない。

三つの加工の比べ方

加工 刃のすきま 切り口 寸法精度の目安(出典の記述)
慣用せん断(普通の打抜き) 板厚の約 10% 一般にだれ約 15%・せん断面約 20%・破断面約 65% 0.1 mm 程度がなかなか実現しにくい
打抜き+シェービング 抜いた後に小さな取りしろで削る 削った面が仕上げ面になる 0.01〜0.02 mm 程度
ファインブランキング 0 に近い(論文の実験では 0.005〜0.02 mm) 全面せん断面。だれ・かえり・テーパは残る 一行程で仕上げ面が得られる

表の値は、慣用せん断とシェービングが日本機械学会誌の解説[1]、切り口の割合とファインブランキングのすきまが塑性と加工の論文[2]による。論文のすきまは、自動車用加工性熱間圧延高張力鋼板 SPFH590(厚さ 4 mm)を打ち抜いた実験での値で、どの材料・板厚でも同じになるわけではない。

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全面せん断面でも、だれ・かえり・テーパは残る

ファインブランキングの品で揉めやすいのは、「全面せん断面」と書いてあるのに角が丸くなっている、裏にばりがある、切り口がわずかに傾いている、という指摘である。どれも加工法に付いてくる性質で、図面にどこまで許すかを書いていないと、判定のよりどころが無い。

だれは、すきまと押え力で変わる

先の論文は、高張力鋼板のファインブランキングで、製品のだれはダイとパンチのすきまが大きくなるほど大きくなり、板押えにかける圧力(V 圧)とカウンターパンチにかける圧力(C 圧)を大きくするほど小さくなったと報告している[2]。解析では、板押えやダイに設ける V 字突起が高いほど、だれが小さくなった[2]。この論文は、ファインブランキングでもせん断面の近くにばり・だれ・バルジ(膨らみ)が生じ、製品の精度に影響する、と書いている[2]。

だれは、そのぶん板厚方向の有効な幅を減らす。歯車や爪のように、切り口が相手部品と当たる部品では、「有効な歯幅(板厚からだれを引いた幅)が何 mm 以上」という形で書いたほうが、機能と判定が結びつく。

凸の角と歯形は、だれと割れが出やすい

日本機械学会誌の解説は、ファインブランキングが発展する過程で解決すべき問題として、適用する材質と板厚の拡張、工具寿命、凸輪郭部品の大きなだれ込み、分離面のテーパ、かえりの五つを挙げている[1]。歯車のような凸の輪郭の角部は大きなだれ込みと割れが出やすく、角部に面取りを施して割れを抑えるとだれはいっそう大きくなる、つまりだれと割れの兼ね合いで製品を得ている、と説明している[1]。分離面のテーパは、加工中の製品のわん曲とその後のはねもどりが主な原因だ、とも書いている[1]。かえりについては、当時、ファインブランキングには抑える積極的な手段がないことが問題点として挙げられている[1]。

発注側としては、鋭い凸の角や細い歯の先端に「全面せん断面」を一律に求めない。角の丸み(R)や先端の角度を少し緩められないか、設計部門と仕入先の三者で量産前に確かめる。論文の実験でも、突起の先端の角度(30°〜120°)と先端の R(0.3〜1.0 mm)を変えた歯形を同じ型に並べて確かめている[2]。

図面と購買仕様書に書くこと

ここからは規格の要求ではなく、発注する側の実務の提案である。ファインブランキングの品だけを対象にした JIS の公差規格は無い。プレスで打ち抜いた品の普通寸法公差としては、JIS B 0408(金属プレス加工品の普通寸法公差)の打抜きの表を等級付きで呼び出せる[3]。JIS B 0408 の打抜きの A 級は、JIS B 0405 の公差等級 f に相当すると規格の備考にある[3]。ファインブランキングで作る部品は、精度の要る寸法を普通公差に任せず個別に書くのが普通である。シャーで切っただけの板に使う JIS B 0410(金属板せん断加工品の普通公差)は、この加工には当てない。普通公差の規格の選び方はプレス・板金品の公差の指定で扱った。

1. 切り口の要求を部位ごとに書く
せん断面の割合(板厚に対して何% 以上)、許す破断面(ちぎれ)の範囲、だれの深さと幅の上限。全周で同じでなくてよい。機能に効く部位だけ厳しくする。

2. かえりの向きと高さ
かえりがどちらの面に出るか、高さの上限、除去が要るなら方法(バレル研磨など)。かえりの向きは型の作り方で決まるので、図面に明示しないと量産で逆になることがある。エッジとばりの書き方はエッジ・バリ・面取りの指示にまとめた。

3. 平面度と切り口のテーパ
ファインブランキングの品は打抜き後のわん曲が残ることがある[1]。平面度と、切り口の直角度(テーパ)の許容値を書く。

4. 測る位置と方法
だれやせん断面の割合は、切断して断面を見るか、切り口を拡大して見るか。論文でも、切断した断面をマイクロスコープで撮影してだれを観察している[2]。初回品で何個切るか、量産で何個に 1 個切るかまで決める。

5. 材料と材料の状態
規格番号と種類の記号に加えて、焼なましの状態など仕入先と合意した材料の状態を書く(下の節)。

6. 型とプレス
専用プレスと専用の型を使うので、型の費用・所有・保管の取り決めが要る。量産前の試作をどの型で行うかは、同じ束の簡易金型(試作型)の発注も参考にしてほしい。

材料は「記号」だけでなく「状態」まで合わせる

ファインブランキングは、どの材料でも同じように抜けるわけではない。日本機械学会誌の解説は、加工条件の最適化が十分に進んだ段階で、なお加工できない材料は本質的にこの加工法に適さないとみるべきだ、とし、適用できる材料の範囲が引張強さや炭素当量を尺度に整理されていることを紹介している[1]。板厚が増えるほど与えるべきせん断変形が大きくなって加工が難しくなり、延性の乏しい材料や厚い板では板押え側だけでなくダイ側にも突起を設ける必要が出てきた、とも書いている[1]。

同じ解説は、精密打抜きに適した材料の開発にも触れていて、国内でも良好な球状炭化物の組織をもち、異方性を改善した精密打抜き用の厚物の特殊鋼が開発されている、と書いている[1]。つまり、同じ鋼種の記号でも、炭化物を球状化した組織かどうかで抜けやすさが変わりうる。発注側は、仕入先が試作で確かめた材料の購入先と状態(焼なましの指定など)を記録に残し、変えるときは事前に連絡してもらう取り決めにする。材料の種類記号と検査文書の扱いは、鋼材なら機械構造用鋼の材料指定、薄板ならSPCC・SPHC・SECC の指定を見てほしい。

切り口は加工硬化している。あとの工程に効く

ファインブランキングの切り口の内部は、大きなせん断変形で加工硬化している。日本機械学会誌の解説は、この硬化を製品の強化に積極的に使う考え方を紹介する一方で、ファインブランキングで抜いた穴は加工硬化しているため、穴広げの限界が慣用せん断面の穴と同じ程度にとどまり、切削で開けた穴に近い穴広がりを示す方法とは違う、と書いている[1]。

ここから出てくる注意は一つである。切り口がきれいでも、あとの穴広げに強いとは限らない。抜いた穴をあとでバーリング(穴の縁を立てる加工)や穴広げにかける設計で、広げる量が大きいなら、その穴をファインブランキングで抜くのか、別の方法で開けるのかを、広げる量から仕入先と決める。穴にあとの成形がかかるかどうかを図面で示し、工程の順番を仕入先と決める。切り口に熱処理やめっきをかける場合も、硬化層の影響を仕入先に確かめる。熱処理の指定の仕方は熱処理を図面で指定するで扱った。

ファインブランキングにするか、ほかの工法にするか

ファインブランキングは、一行程で仕上げ面が得られる代わりに、専用のプレスと、高い静水圧に耐える型が要る。日本機械学会誌の解説は、破断き裂を抑える工夫は常に材料内の静水圧力を高めることになり、それが工具寿命に厳しい条件を与えるので、寿命の面から適用に制限が加わる点にも注意が要る、と書いている[1]。

比べる相手は、普通の打抜きのあとにシェービングや機械加工で仕上げる方法である。切り口全周に精度が要るのか、一部の機能面だけでよいのか、数量はどれくらいか、で選び方が変わる。一部の面だけなら、普通の打抜きのあとにその面だけ削るほうが型も安く済むことがある。どちらにするかは、図面の要求を部位ごとに分けたうえで、仕入先から工法と費用の案を出してもらって決める。絞りと組み合わせる部品は深絞り品の発注、回転させて成形する部品はへら絞り(スピニング加工)の発注、管材から作る部品はパイプ曲げの発注で扱う。

よくある質問

図面に「全面せん断面」とだけ書かれていますが、だれは不良ですか

ファインブランキングでもだれは生じる[1][2]。「全面せん断面」は破断面が無いことを言っているだけで、だれの量は決めていない。機能に効く部位のだれの上限を設計部門に決めてもらい、図面か購買仕様書に書き足す。

普通公差は JIS B 0408 の何級で読めばよいですか

JIS B 0408 は打抜きの普通寸法公差を A・B・C の 3 等級としていて、図面か関連文書に規格番号と等級を指示することにしている[3]。どの等級で読むかは発注側が決めて書く事柄である。ファインブランキングを選ぶ部品は精度が要るはずなので、機能に効く寸法は普通公差に任せず個別の公差を書く。

試作は普通の打抜きで作り、量産だけファインブランキングにしてもよいですか

切り口の性質が違うので、試作品で確かめた切り口の評価(当たり方、摩耗、穴のあとの成形)は量産品にそのまま当てはまらない。少なくとも量産の初回品で、切り口と穴まわりの評価をやり直す取り決めにする。

まとめ

ファインブランキングは、V 字突起と逆押えで材料を圧縮し、ほぼすきまゼロで打ち抜いて切り口の全面をせん断面にする加工だが、だれ・かえり・テーパは残る。だれはすきまが大きいほど増え、押え力を上げると減り、凸の角や歯形の先端で大きくなる。図面には、せん断面の割合だけでなく、だれの上限、かえりの向きと高さ、平面度とテーパ、測る位置と方法を書く。この加工だけを対象にした JIS の公差規格は無く、普通寸法公差は JIS B 0408 の打抜きの表で等級を書いて読む。材料は記号だけでなく状態まで合わせ、あとで穴広げをかける穴は、切り口が加工硬化していることを前提に、広げる量から穴の加工方法と工程の順番を仕入先と決める。

出典・参考資料

  1. 近藤一義「精密せん断加工法の成り立ち―現状および将来」日本機械学会誌 第 84 巻 第 748 号(日本機械学会/1981 年)
  2. 田中徹ほか「高張力鋼板のファインブランキングにおけるダレ量に関する考察」塑性と加工 第 51 巻 第 588 号(日本塑性加工学会/2010 年 1 月)
  3. JIS B 0408:1991 金属プレス加工品の普通寸法公差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/1991 年 2 月 1 日改正・2025 年 6 月 20 日確認)
  4. JIS B 0111:2017 プレス機械-用語(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2017 年 7 月 20 日改正)

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