調質(焼入焼戻し)を発注で指示するとき——JIS B 6913 の記号・硬さの範囲・測る位置の書き方 | newji
製造業の見積・発注クラウド

その単価は妥当か。
AI が根拠付きで分析。

相見積の比較も発注も進捗管理も、ひとつの画面に。

サービス資料をダウンロードPDF・無料/1分で受け取れます

投稿日:2026年10月26日

調質(焼入焼戻し)を発注で指示するとき——JIS B 6913 の記号・硬さの範囲・測る位置の書き方

この記事のポイント(結論先出し)

図面や注文書の「調質」は、焼入れのあと約 400 ℃以上で焼き戻す操作を指すが、同じ語はステンレスの線や帯の別の処理にも使われる[1]。発注では、焼入焼戻しの記号(油焼入焼戻しなら HQO-HT)、硬さの範囲とスケール、硬さを測る位置、調質する段階(材料で買うか、部品で処理するか)の 4 つを書く[2]。機械構造用鋼の JIS は、熱処理をした鋼材の機械的性質を注文者との協定に委ねている[3]。太い品物ほど内部まで硬くなりにくい(質量効果)ので[1]、表面と内部のどちらの硬さを保証するかを決め、そろえたいなら焼入性を保証した H 鋼を使う[4]。じん性や疲労が効く部品では焼戻し温度も指定し[1]、調質の表面に残りうる脱炭の扱いも決めておく[5]。

この記事は、機械構造用鋼のシャフト・ピン・ブラケットなどを「調質品」として発注する側の目線で書く。焼入れ・焼戻し・焼なましといった熱処理の種類の選び方や、浸炭・高周波焼入れの硬化層深さの書き方ではなく、調質(焼入焼戻し)を頼むときに何を書き、何を確かめるかに絞る。

「調質」と書いただけでは、処理の中身は決まらない

💡 こうした調達・受発注の属人化、Newji one なら「ひとつの画面」で解決。見積依頼から発注・進捗・承認までAIが下支えします。
サービス資料を見る(無料)→

JIS G 0201 は、調質を、焼入れのあと約 400 ℃以上の比較的高い温度で焼き戻す操作と定めている。ただし同じ用語は、ステンレスの線や帯の別の処理にも使われる[1]。発注書では言葉ではなく、JIS B 6913(鉄鋼の焼入焼戻し加工)の記号で書く。油焼入焼戻しなら HQO-HT、品質の区分 2 号なら HQO-HT-2 のように、記号と区分を組で呼ぶのが規格の呼び方である[2]。用語の定義と、焼入焼戻しの記号の一覧、目的からの選び方は熱処理の種類を目的から選ぶにまとめたので、この記事では、調質品を頼むときに決めること(調質する段階、品質の区分と硬さの範囲、測る位置、焼戻しの温度、脱炭)に進む。

📄 実務で使うなら — 原価のつかみ方(全 5 章・無料サンプルあり)

材料で買うか、部品で処理するか

調質品の発注で最初に決めるのは、どの段階で調質するかである。大きく分けて、調質を済ませた棒鋼を材料として買って削る方法と、材料を粗く削ってから調質し、仕上げ加工をする方法がある。

調質済みの材料を買う場合

JIS G 4051(機械構造用炭素鋼鋼材)は、鋼材を熱間圧延のまま又は熱間鍛造のままとし、注文者の指定によって熱処理を実施してもよいとしている。熱処理をするなら機械的性質の値は受渡当事者間で協定することがある、というのが注の内容である[3]。さらに、熱処理を実施した熱間圧延棒鋼の寸法の許容差と形状の許容差も、受渡当事者間の協定によるとされている[3]。

つまり、規格の記号「S45C」を書いただけでは、調質後の硬さも、調質後の曲がりや径の許容差も決まらない。調質済みの材料で買うなら、硬さ(または引張強さなどの機械的性質)の範囲と、寸法・曲がりの許容差を注文書で決めておく必要がある。機械構造用鋼の材料としての指定(化学成分・用途・ミルシート)はS45C・SCM435 の材料指定で扱っている。

🛠 発注の管理なら — 発注書の作成から送付、進捗の確認までをひとつの画面で行える Newji one(製造業の見積・発注クラウド/サービス資料は無料)

部品で処理する場合

部品の段階で調質する場合、焼入れでの変形とスケール・脱炭に備えて、削り代を残して熱処理に出すのが一般的である。JIS B 6913 は、熱処理業者が受け入れる加工材料について明らかにすべき項目として、寸法と精度のなかに「焼入焼戻し部の加工代」と「全体の加工代」を挙げている[2]。加工材料の履歴(材料の種類、化学成分、溶解番号、前熱処理の有無、前加工や矯正の有無など)も明らかにされたものでなければならないとされ、受入れのときに必要な項目を受渡当事者間で確認する[2]。

部品メーカーが熱処理を二次外注している場合、熱処理業者に削り代と材料の履歴が伝わっていないことがある。発注側は、図面に「調質後に仕上げ」の工程を書くか、仕上げ寸法のどこに削り代を残すかを仕入先と決め、熱処理業者まで情報が届いているかを工程表で確かめる。

硬さは、範囲・スケール・測る位置を組で書く

調質品の図面でよく見るのが「調質 HB 230 以上」のような下限だけの指示である。調質は硬さとねばさの釣り合いを取る処理なので、下限だけを書くと、硬すぎてねばさが足りない品物も合格になる。範囲で書く。

JIS B 6913 は、焼入焼戻し品の表面硬さのばらつきの許容値を、品質の区分(1 号〜5 号)と硬さの水準ごとに、ビッカース・ロックウェル C・ブリネル・ショアのそれぞれで表にしている。品質の区分の選定は受渡当事者間の協定による[2]。ブリネル硬さの表のうち、330 HB 以下の欄を抜き出すと次のとおりである。

品質の区分 単体内のばらつき(HB) 同一ロット内のばらつき(HB)
1 号 15 25
2 号 20 35
3 号 30 50
4 号 40 65
5 号 50 70

(JIS B 6913 の表 9 のうち、表面硬さ 330 HB 以下の欄[2]。330 HB を超え 450 HB 以下の欄は、どの区分でも許容値がこれより大きい。)

表から分かるのは、図面に「HB 240〜260」のような幅 20 の範囲を書くと、規格の最も厳しい 1 号でも同一ロット内に許されているばらつき(25)より狭い範囲を求めることになる、ということである。範囲の幅は、選んだ品質の区分の許容値を見て決める。区分を厳しくするほど、設備と管理への要求が上がり、値段にも響く。

同じ規格の備考には、HV・HRC・HB・HS の数値はそれぞれの硬さ試験機で実測して求めるもので、硬さの間には直接の関連性はない、と書かれている[2]。図面を HB で書いたのに、成績書には HRC で測って換算した HB が載っている、という運用はこの備考と合わない。図面のスケールで実測した値を出させる。換算表の扱いはHRC・HV・HB の換算、試験方法と試験力の書き方は硬さの試験方法と測定条件の指定で扱っている。

太い品物は、内部まで硬くならない

JIS G 0201 は、質量及び断面寸法の大小が焼入硬化層深さに及ぼす度合いを「質量効果」と呼び、わずかな寸法の違いで焼入硬化層深さが大きく変わることを「質量効果が大きい」という、と定めている[1]。同じ S45C でも、細いピンと太いシャフトでは焼入れの入り方が違い、調質後の内部の硬さも違ってくる。

表面で測った硬さが範囲に入っていても、内部が狙いより軟らかいことがある。強さが効くのが表面近くか断面全体かは部品の使われ方で決まるので、内部の硬さが要る部品では、「表面から〇 mm の位置で HB 〇〜〇」のように測る位置まで書き、切断した試験片で確かめる方法を取り決める。測る位置を書かなければ、熱処理業者は測りやすい表面で測る。

品物ごとの焼入れの入り方のばらつきを小さくしたい場合は、焼入性を保証した構造用鋼(H 鋼、JIS G 4052)を使う方法がある。H 鋼は、一端焼入試験で焼入端からの距離ごとの硬さが規格の帯に入ることを保証した鋼材である。ただし JIS G 4052 も、熱処理を行う場合の機械的性質は受渡当事者間で協定するとしており、部品の硬さそのものを保証する規格ではない[4]。

焼戻しの温度と、もろくなる温度域

JIS G 0201 は、特定の温度で焼き戻したとき、またはその温度から徐冷したときに起きる焼戻ぜい性を定義し、300 ℃前後の焼戻しで見られる低温焼戻ぜい性と、500 ℃前後の焼戻しやさらに高い温度からの徐冷で生じる高温焼戻ぜい性を挙げている。このぜい性はシャルピー吸収エネルギーの遷移曲線を高温側へ移す[1]。硬さだけで発注すると、硬さは範囲に入っていても、焼戻しの温度や冷やし方によってはねばさが落ちている、ということが起こりうる。

このため、じん性や疲労が効く部品(衝撃を受ける軸、歯車、高い荷重を受ける締結部品など)では、硬さに加えて焼戻し温度(または避ける温度域)も図面か熱処理の指示で指定する。焼戻し温度を仕入先任せにしない理由はSNCM439 の発注での指定で詳しく扱った。受入でねばさを確かめるならシャルピー衝撃試験を条件に入れる。試験の指定はシャルピー衝撃試験の指定で扱っている。

焼入れの後は時間を空けないことも規格の要求である。JIS B 6913 は、焼入れ後速やかに焼戻しを行うか、適切な温度に加熱して置割れを防ぐことを求めている。調質後に曲がりを矯正する長物では、矯正による残留応力が以後の加工や使用に支障を生じないようにし、必要なときは応力除去焼なましを行う[2]。指定は応力除去焼なましの発注で扱っている。

脱炭とスケールの扱い

大気中で加熱する調質では、表面の炭素が抜けて軟らかくなる脱炭が起こりうる。JIS G 0558(鋼の脱炭層深さ測定方法)は、脱炭層の深さを、全脱炭層深さ、フェライト脱炭層深さなどに分けて定義し、表面から実用上差し支えない硬さが得られる位置までの距離を実用脱炭層深さとしている。実用上差し支えない硬さとは、材料規格などに規定された最低硬さなどとされている[5]。測定方法には、顕微鏡による方法、硬さ試験による方法、炭素含有率による方法がある[5]。

調質後に全面を削り落とすなら脱炭は削り代で吸収できるが、黒皮のまま使う面や、仕上げ代の少ない面があるなら、脱炭層の許容深さと測り方を決めておく。JIS B 6913 も、加熱前と加熱中に雰囲気を調整して有害な脱炭や浸炭が起こらないようにすることを熱処理業者に求めている[2]。

発注書と図面に書くこと

ここまでをまとめると、調質品の発注で決めることは次のとおりである。規格が「協定による」としている項目は、書かなければ仕入先が決めることになる。

項目 書き方の例 書かなかった場合
処理の種類 油焼入焼戻し(JIS B 6913 HQO-HT) 冷却方法は熱処理業者が選ぶ
品質の区分 JIS B 6913 の 2 号 許容値が決まらない(選定は協定による[2])
硬さ HB 〇〜〇(ブリネル硬さで実測) 下限だけ・換算値で報告されやすい
焼戻し温度 じん性・疲労が効く部品は 〇 ℃以上(または 〇〜〇 ℃を避ける) 硬さに合わせて仕入先が決める
測る位置 端面から 〇 mm・表面から 〇 mm など 測りやすい表面で測られる
調質の段階 粗加工後に調質し、仕上げ加工 材料で買うか部品で処理するかが割れる
変形 曲がり 〇 mm 以下(全長) 許容値は協定による[2]
脱炭 仕上げで除去/黒皮面は実用脱炭層深さ 〇 mm 以下 軟らかい表面が残ることがある
記録 硬さの実測値・ロット・処理日を成績書で 不具合時にさかのぼれない

品質の区分の選び方、熱処理業者に求める記録、納品時の表示(加工の種類、品質の区分、数量、加工業者名、加工年月日)は熱処理を図面で指定するに詳しく書いた。調質品でも同じ考え方が当てはまる。

注文書の書き方の例

「材質 S45C(JIS G 4051)。粗加工後、油焼入焼戻し(JIS B 6913 HQO-HT、品質の区分 2 号)。硬さ HB 〇〜〇(ブリネル硬さで実測、端面から 10 mm の位置)。焼戻し温度 〇 ℃以上。調質後に仕上げ加工し、脱炭層は仕上げで除去すること。曲がりは全長で 〇 mm 以下。成績書に硬さの実測値・測定位置・処理ロット・処理日を記載すること。」

数値の欄は、部品の機能と、選んだ品質の区分の許容幅から発注側が決める。ここに書いた数値以外の部分は、どの部品にも当てはまる骨組みとして使える。

よくある質問

HRC で書くべきか、HB で書くべきか

どちらでも書けるが、実測するスケールで書く。JIS B 6913 は表面硬さのばらつきの許容値をスケールごとに別の表で定め、HV・HRC・HB・HS の間には直接の関連性はないとしている[2]。熱処理業者が普段使っている試験機と、図面のスケールが合っているかを見積の段階で確かめる。

調質済みの材料を買えば、部品の硬さは保証されますか

規格の記号だけでは保証されない。JIS G 4051 は熱処理をした鋼材の機械的性質を受渡当事者間の協定としている[3]。材料メーカーや商社と硬さの範囲を取り決め、ミルシートか検査成績書で実測値を確かめる。さらに、削ったあとの部品の硬さは、材料の外周で測った値と同じとは限らない(質量効果[1])。

調質後に溶接してもよいですか

溶接の熱で、溶接部の近くの硬さが変わる。溶接後に熱処理をする場合について、溶接後熱処理の方法を定めた JIS Z 3700 は、焼入れ焼戻し鋼の保持温度は通常、素材製造時の焼戻し温度を超えてはならないとしている。ただし、素材の焼戻し温度を低く設定し、溶接後熱処理で焼戻しを行う場合はこの限りではない[6]。調質品に溶接が入る部品は、溶接と熱処理の順番を設計部門と決めてから発注する。

まとめ

調質は焼入れの後に約 400 ℃以上で焼き戻す処理で[1]、言葉ではなく記号で呼ぶ。JIS B 6913 の記号と品質の区分、硬さの範囲とスケール、測る位置を組で書く[2]。調質済みの材料を買うなら、機械的性質と寸法の許容差を協定する[3]。太い品物は内部まで硬くなりにくく、そろえたいなら H 鋼を検討する[1][4]。じん性や疲労が効く部品は、焼戻し温度(または避ける温度域)も指定する[1]。脱炭の扱いと削り代も決めておく[5]。

同じ束では、タレットパンチプレス加工品、ウォータージェット切断品、溶接ひずみの許容と矯正、ステンレスの溶接焼けの除去の発注も扱う。浸炭や高周波焼入れの硬化層深さは有効硬化層深さの指定で扱った。

出典・参考資料

  1. JIS G 0201:2023 鉄鋼用語(熱処理)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 5 月 22 日改正)
  2. JIS B 6913:1999 鉄鋼の焼入焼戻し加工(追補 1:2010)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2010 年 8 月 20 日改正・2025 年 10 月 20 日確認)
  3. JIS G 4051:2026 機械構造用炭素鋼鋼材(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2026 年 5 月 20 日改正)
  4. JIS G 4052:2026 焼入性を保証した構造用鋼鋼材(H 鋼)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2026 年 5 月 20 日改正)
  5. JIS G 0558:2020 鋼の脱炭層深さ測定方法(追補 1:2023)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 12 月 20 日改正)
  6. JIS Z 3700:2022 溶接後熱処理方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2022 年 3 月 22 日改正)

調質を含む部品の生産先を、案件ごとに探す

newji の OEM/ODM 生産は、国内外のパートナー企業と連携し、品質要求・数量・納期・コストに合わせて案件ごとに生産先を選ぶ製造委託のサービスです。金属加工では切削・研削・旋削・溶接・熱処理・表面処理などに対応し、試作 1 個から量産までご相談いただけます。設計段階での材料選定や加工方法についての技術的な助言も可能です。

OEM/ODM 生産について見る

WHITE PAPER

この記事の理解を深める
無料ホワイトペーパーをプレゼント

製造業の現場で使える実務資料(PDF)を無料でお届けします。"こんな資料が届きます" ↓ 下のボタンからどうぞ。

FREE DOCUMENT — サービス資料(PDF・無料)

見積依頼から比較まで、
ひとつの画面にまとめる方法

Newji one は、製造業の調達・受発注に特化したクラウド/AIエージェント。見積依頼・発注書作成・進捗管理・承認をひとつの画面に集約し、AIが比較と異常検知を担当。最後の「GO」だけ人が押す仕組みです。

  • 見積〜発注〜納期を一元管理。催促・転記のムダをゼロに
  • AIが相見積もり比較と異常検知。あなたは判断だけに集中
  • 取引先は「招待」で完全無料。自社コストだけで取引先ごとデジタル化

※ 取引先から招待された企業様は完全無料でご利用いただけます

𝕏NEWJI総研は、調達・品質・設計の知識を X でも発信しています — @newji_souken をフォロー

NEWJI総研

購買・調達や設計・品質の実務を、
研修テキストと実務書式にまとめています。
無料サンプルで中身を確かめられます。

NEWJI総研の資料を見る

OEM/ODM 生産委託

アイデアはある。作れる工場が見つからない。
試作1個から量産まで、加工条件に合わせて最適提案します。
短納期・高精度案件もご相談ください。

加工可否を相談する

AI/DX支援

見積・発注、紙・FAX、品質記録など、
人に頼って回っている業務を、AIと仕組みで回る形に。
まずは無料でご相談ください。

AI/DX支援を見る

見積・発注クラウド Newji one

受発注が増えるほど、入力・確認・催促が重くなる。
受発注管理を“仕組み化“して、ミスと工数を削減しませんか。
見積・発注・納期まで一元管理できます。

機能を確認する

You cannot copy content of this page