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投稿日:2026年10月26日

S20C・S25C(JIS G 4051)の指定——SS400・S20CKとの違いと棒・板・管の規格

この記事のポイント(結論先出し)

S20C と S25C は JIS G 4051(機械構造用炭素鋼鋼材、2026 年 5 月改正)の種類で、炭素は S20C が 0.18〜0.23%、S25C が 0.22〜0.28%、マンガンはどちらも 0.30〜0.60% である[1]。規格が保証するのは化学成分・寸法・外観で、強さの規定は無い。強さで買うなら一般構造用圧延鋼材の SS400(JIS G 3101)だが、SS400 には炭素の規定が無い[2]。成分で選ぶか、強さで選ぶかを先に決める。肌焼きに使うなら、りん・硫黄・銅の上限が低い S20CK(肌焼鋼)も同じ規格にある[1]。管は JIS G 4051 の対象外で、JIS G 3478 の S20CTK・S25CTK になる[3]。冷間引抜きの丸棒は JIS G 3123 のみがき棒鋼として、材料・加工・公差等級を組み合わせた記号で注文する[4]。

S20C・S25C はどんな材料として選ばれるか

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機械部品の図面で、S45C ほど硬くする必要はないが、SS400 では成分が分からない、という場面で S20C や S25C が指定されることがある。JIS G 4051 は、主として熱間圧延・熱間鍛造・熱間押出によって製造する機械構造用炭素鋼鋼材について規定し、通常はさらに鍛造・切削などの加工と熱処理を施して使用されるもの、としている[1]。

JIS G 4051:2026 の種類は 27 で、炭素鋼の S10C〜S75C と、肌焼鋼の S09CK・S15CK・S20CK である[1]。S45C を含む機械構造用鋼の指定の全体(熱処理後の機械的性質を規格が規定していないこと、溶鋼分析と製品分析の違い、棒鋼の用途ときずの深さ)は機械構造用鋼(S45C・SCM435)の材料指定で扱った。この記事は、炭素の低い S20C・S25C を選ぶときに、隣の記号や SS400 とどこが違うか、棒・板・管でどの規格を使うかに絞る。

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隣の記号との違いは炭素とマンガン

JIS G 4051 の化学成分(溶鋼分析値)から、S20C・S25C の前後を並べると次のようになる[1]。

種類の記号 C % Mn % P % 以下 S % 以下 Cu % 以下 Ni+Cr % 以下
S17C 0.15〜0.20 0.30〜0.60 0.030 0.035 0.30 0.35
S20C 0.18〜0.23 0.30〜0.60 0.030 0.035 0.30 0.35
S22C 0.20〜0.25 0.30〜0.60 0.030 0.035 0.30 0.35
S25C 0.22〜0.28 0.30〜0.60 0.030 0.035 0.30 0.35
S28C 0.25〜0.31 0.60〜0.90 0.030 0.035 0.30 0.35
S20CK(肌焼鋼) 0.18〜0.23 0.30〜0.60 0.025 0.025 0.25 0.30

JIS G 4051 の表 2 による[1]。ケイ素はいずれも 0.15〜0.35% で、ニッケルとクロムは各 0.20% 以下である。クロムの上限は受渡当事者間の協定で 0.30% 以下、ニッケル+クロムの上限は協定で S20CK などの肌焼鋼が 0.40% 以下、その他の種類が 0.45% 以下にしてもよい、とされている[1]。表に記載していない合金元素は、溶鋼を仕上げる目的以外に意図的に添加してはならない[1]。

表から分かることが二つある。一つは、炭素の範囲が隣の記号と重なっていることである。S20C の上限 0.23% と S25C の下限 0.22% は重なっており、炭素の分析値が 0.22〜0.23% の材料はどちらの記号の範囲にも入る。成績書の分析値だけで材料を見分けることはできないので、記号は現品の表示と成績書の記号で確かめる。もう一つは、マンガンの範囲が S28C から 0.60〜0.90% に上がることである。S25C を S28C に置き換えるような提案は、炭素だけでなくマンガンも変わる変更になる。

SS400 との違い:強さで買うか、成分で買うか

S20C の代わりに SS400 でよいか、と聞かれることがある。JIS G 3101(一般構造用圧延鋼材、2024 年改正)の化学成分の表では、SS400 は炭素とマンガンが「-」(規定なし)で、規定があるのはりんと硫黄の 0.050% 以下だけである[2]。一方、SS400 には機械的性質の規定があり、棒鋼なら引張強さ 400〜510 N/mm²、径 16 mm 以下の降伏点又は耐力 245 N/mm² 以上などが決まっている[2]。

JIS G 4051 は逆で、化学成分は細かく決まっているが、機械的性質は規定していない。注文者の指定で熱処理を行う場合、受渡当事者間で機械的性質の値を協定することがある、という扱いである[1]。

つまり、強さを規格で保証してほしい溶接構造物の部材なら SS400、炭素の範囲を決めて熱処理や浸炭・窒化をかける機械部品なら S20C・S25C、と選ぶ理由が違う。設計者が「S20C 相当」と書いた理由が成分なのか強さなのかを確かめずに SS400 へ置き換えると、浸炭や焼入れの結果がロットによって変わる材料を受け入れることになる。

肌焼きに使うなら S20CK も候補になる

JIS G 4051 は、S09CK・S15CK・S20CK を「肌焼鋼」として炭素鋼と分けて分類している[1]。上の表のとおり、S20CK の炭素とマンガンの範囲は S20C と同じだが、りん・硫黄が 0.025% 以下、銅が 0.25% 以下、ニッケル+クロムが 0.30% 以下と、不純物の上限が低い[1]。

浸炭焼入れする部品の図面に S20C と S20CK のどちらが書かれているかで、受け入れる成分の範囲が変わる。S20CK の図面に対して S20C の材料が提案されたら、不純物の上限が緩くなる変更なので設計の承認を取る。浸炭の有効硬化層深さの指定と測り方は有効硬化層深さの指定と測り方で扱った。

なお、窒化・軟窒化加工の規格 JIS B 6915 の加工材料の表には、S20C・S25C を含む JIS G 4051 の種類が載っている[5]。軟窒化で表面だけ硬くしたい部品に、窒化専用の鋼でなく低炭素の炭素鋼を使う設計もありうる。窒化専用の合金鋼との違いは同じ束のSACM645 の指定で扱う。

棒・板・管で使う規格が変わる

同じ S20C でも、形によって使う規格と記号が変わる。

1. 熱間圧延の棒鋼・線材・平鋼・鋼板
JIS G 4051 の対象である。熱間圧延鋼板と鋼帯の寸法・平たん度は JIS G 3193 を、平鋼は JIS G 3194 を引用している[1]。厚さによって熱間圧延で製造できない鋼板と鋼帯は、受渡当事者間の協定によって冷間圧延で製造してもよく、その場合は焼なましを行い、表示では種類の記号の後に-C を付ける(協定で省略してもよい)[1]。

2. 鋼管
JIS G 4051 は鋼管には適用しないとし、鋼管は JIS G 3478(一般機械構造用炭素鋼鋼管)に規定している、と注記している[1]。JIS G 3478 の種類の記号は S20CTK・S25CTK のように TK が付き、炭素・ケイ素・マンガン・りん・硫黄の範囲は G 4051 と同じ値になっている[3]。管の製管方法(継目無し S・電気抵抗溶接 E)と仕上方法(熱間仕上げ H・冷間仕上げ C・電気抵抗溶接まま G)も記号で表す[3]。構造用の鋼管との違いはSTK と STKM の違いで扱った。

3. 冷間引抜きなどで仕上げた丸棒(みがき棒鋼)
JIS G 3123(みがき棒鋼)は、炭素鋼みがき棒鋼の材料として JIS G 4051 の鋼材を使うとし、記号は材料・加工方法・熱処理方法・公差等級を組み合わせる[4]。規格の例では、S45C を冷間引抜きして焼入焼戻し後に IT7 に研削仕上げしたものが「S45C-DQG7」である[4]。炭素鋼みがき棒鋼の機械的性質は受渡当事者間の協定による[4]。記号の組み立ての詳細は磨き棒鋼(SGD)の指定にある。

注文時に提示すること

JIS G 4051 は、注文者が注文時に少なくとも次の事項を製造業者、加工業者又は中間業者に提示しなければならないとしている[1]。

1. 鋼材の形状
棒鋼、線材、鋼板、鋼帯、平鋼、形鋼又はその他の鋼材の別と、形鋼の種類。

2. 種類の記号
S20C、S25C、S20CK など。

3. 寸法
熱間圧延棒鋼の長さは受渡当事者間の協定による。

4. 熱間圧延棒鋼の用途
一般鍛造用、直接切削用、冷間引抜用、その他。用途によってきず取りときずの深さの規定が変わる[1]。

検査文書は、注文者から要求された場合に提出され、注文時に特に指定がない場合は検査証明書 3.1 になる[1]。例えば「材質:JIS G 4051 S25C、熱間圧延丸鋼 φ50、長さ 4 000 mm、直接切削用。検査証明書 3.1 を添付し、化学成分(溶鋼分析値)を記載すること。SS400・S28C などへの置き換えは事前承認を要する。」のように書く。

受け入れるときに確かめること

成績書では、記号と、炭素・マンガン・りん・硫黄の溶鋼分析値が表 2 の範囲に入っているかを見る。S20CK で注文したなら、りん・硫黄 0.025% 以下、銅 0.25% 以下、ニッケル+クロム 0.30% 以下まで見る[1]。JIS G 4051 では、検査に合格した鋼材に種類の記号、溶鋼番号又はその他の製造(検査)番号、製造業者名、寸法などを表示する(径 30 mm 未満の棒鋼や鋼板などは結束ごとでもよい)[1]。現品の表示と成績書の番号を突き合わせ、ロットのつながりを確かめる。検査文書の区分の違いはEN 10204 のミルシート区分にまとめた。

よくある質問

S20C の丸棒のミルシートに引張強さが載っていません

JIS G 4051 は機械的性質を規定していないので[1]、載っていないのが通常である。強さが必要なら、熱処理と機械的性質の値を協定して注文するか、部品の熱処理と硬さを図面で指定する。

S20C と S25C は、どちらでもよいと言われました

炭素の範囲は 0.18〜0.23% と 0.22〜0.28% で、一部が重なる[1]。焼入れ・浸炭の条件や溶接の条件を炭素で決めている部品なら、どちらでもよいかは設計が決める。条件が決まっていない部品なら、図面の記号に揃える。

S20C の鋼管はありますか

JIS G 4051 は鋼管を対象にしておらず、鋼管は JIS G 3478 の S20CTK などになる[1][3]。図面に「S20C パイプ」と書かれていたら、規格番号と記号を JIS G 3478 で書き直す。

S25C の薄い板を、冷間圧延で買えますか

JIS G 4051 は、厚さによって熱間圧延で製造できない鋼板と鋼帯は、受渡当事者間の協定によって冷間圧延で製造してもよいとしている[1]。その場合の標準厚さは 0.4〜3.2 mm で、厚さの許容差は附属書 JC の表による。例えば厚さ 1.00 以上 1.25 mm 未満・幅 630 mm 未満なら ±0.07 mm である[1]。冷間圧延の板は焼なましを行うのが原則で、協定で省略してもよいとされているので[1]、焼なましの有無も注文書に書く。

まとめ

S20C と S25C は JIS G 4051 の炭素鋼で、炭素の範囲が隣の記号と一部重なり、マンガンは S28C から上がる。規格は成分・寸法・外観を決め、強さは決めていない。強さで買うなら SS400 だが、SS400 には炭素の規定が無い。肌焼きには不純物の上限が低い S20CK もある。鋼管は JIS G 3478 の S20CTK、みがき棒鋼は JIS G 3123 の組み合わせ記号で注文する。注文時には形状・記号・寸法・棒鋼の用途を提示し、成績書の分析値と現品の表示を突き合わせる。

同じ束では、よく削る部品向けの 快削鋼 SUM と、板材の SPCD・SPCE も扱う。

出典・参考資料

  1. JIS G 4051:2026 機械構造用炭素鋼鋼材(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2026 年 5 月 20 日改正)
  2. JIS G 3101:2024 一般構造用圧延鋼材(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2024 年 2 月 20 日改正)
  3. JIS G 3478:2021 一般機械構造用炭素鋼鋼管(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2021 年 5 月 20 日改正)
  4. JIS G 3123:2004 みがき棒鋼(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2004 年 9 月 20 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
  5. JIS B 6915:1999 鉄鋼の窒化及び軟窒化加工(追補 1:2010)(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2010 年 8 月 20 日改正・2025 年 10 月 20 日確認)

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