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投稿日:2026年10月26日

快削鋼SUM(JIS G 4804)の指定——SUM24Lの鉛とRoHS、非鉛材へ替えるときの確認

この記事のポイント(結論先出し)

快削鋼の SUM は JIS G 4804(硫黄及び硫黄複合快削鋼鋼材)の鋼材で、被削性を上げるために炭素鋼に硫黄を、又は硫黄に加えてりん・鉛を添加した鋼である。種類は 13 で、記号の末尾に L が付く SUM22L・SUM23L・SUM24L・SUM31L の 4 種類は鉛を 0.10〜0.35% 含む[1]。規格が決めているのは化学成分・寸法・外観で、機械的性質の規定は無い[1]。鉛入りの L 材は、EU の RoHS 指令が均質材料あたり 0.1% までとする鉛の上限を超えうるので[3]、EU 向けの電気・電子機器に使う部品なら、適用除外の番号と現行の期限を確かめる。L 材から鉛を含まない材料への切替えは材料の変更で、試し削りで表面粗さを確かめてから承認する[4]。

SUM は「よく削る部品」のための鋼

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ねじ部品、ブッシュ、継手、油圧部品、事務機器の軸など、自動旋盤で大量に削る部品の図面には、材質欄に SUM24L や SUM22 と書かれていることがある。JIS G 4804(2021 年改正)は、特に被削性を向上させるために炭素鋼に硫黄を添加、又は硫黄に複合してりん及び/若しくは鉛を添加して作られた快削鋼鋼材について規定し、形状は棒鋼・線材・平鋼としている[1]。

鉄鋼メーカーの技術論文(新日鉄住金技報 406 号、2016 年)は、JIS の SUM に分類される低炭素快削鋼は、強度よりも製品の加工精度が求められる OA 機器や油圧部品に使われ、高い被削性が求められるため鉛や硫黄を 0.3% 程度添加することが許される、と説明している[4]。同じ論文は、強度と被削性の両立が求められる機械構造用鋼では、快削元素の鉛や硫黄は鋼中に介在物として存在し、量や大きさによっては破壊の起点となるため多量には添加できない、とも書いている[4]。SUM を選ぶ理由は削りやすさで、強度を設計で見込む部品の材料ではない、と読むのが自然である。

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13 種類の中身:硫黄・りん・鉛の組み合わせ

JIS G 4804 の種類は SUM21、SUM22、SUM22L、SUM23、SUM23L、SUM24L、SUM25、SUM31、SUM31L、SUM32、SUM41、SUM42、SUM43 の 13 である[1]。主な種類の化学成分(溶鋼分析値)を並べると次のようになる。

種類の記号 C % Mn % P % S % Pb %
SUM22 0.13 以下 0.70〜1.10 0.07〜0.12 0.24〜0.33 -
SUM22L 0.13 以下 0.70〜1.10 0.07〜0.12 0.24〜0.33 0.10〜0.35
SUM23 0.09 以下 0.75〜1.05 0.04〜0.09 0.26〜0.35 -
SUM24L 0.15 以下 0.85〜1.15 0.04〜0.09 0.26〜0.35 0.10〜0.35
SUM31 0.14〜0.20 1.00〜1.30 0.040 以下 0.08〜0.13 -
SUM43 0.40〜0.48 1.35〜1.65 0.040 以下 0.24〜0.33 -

JIS G 4804 の表 2 による[1]。そのほかの種類は規格の表で確かめる。表に「-」と記載している元素と、表に記載していない合金元素は、受渡当事者間の協定がない限り、溶鋼を仕上げる目的以外に意図的に添加してはならない[1]。注文者の要求で鉛含有鋼の鉛の製品分析を行う場合、鉛の製品分析値は 0.07〜0.35% とされている[1]。

表から読めることは、L の有無で鉛以外の成分が同じ組(SUM22 と SUM22L、SUM31 と SUM31L)がある一方、SUM24L には鉛を含まない同じ成分の記号が無い、ということである。SUM24L の代わりを鉛なしの JIS 材で探すと、炭素とマンガンの範囲が違う SUM23 や SUM25 になり、「鉛を抜いただけの同じ鋼」にはならない。炭素の高い SUM41〜43 は炭素 0.32〜0.48% で、低炭素の SUM2 系とは別物である[1]。

規格は機械的性質を決めていない

JIS G 4804 の検査の項目は、化学成分、形状・寸法とその許容差、外観の三つである[1]。規格末尾の国際規格との対比表によれば、機械的性質を要求事項に入れている ISO 規格に対し、JIS は材料と熱処理を使う側が用途に合わせて選べるように自由度をもたせ、規定していない[1]。鋼材は特に指定のない限り圧延又は鍛造のままとされる[1]。

SUM24L の成績書に引張強さが載っていないのは不備ではない。部品に強さや硬さの要求があるなら、それは材料の規格ではなく図面と熱処理の指定で決める。強さを見込む部品なら、そもそも快削鋼が適するかを設計に確かめる。熱処理の指定の書き方は熱処理を図面で指定するで扱った。

熱間圧延の棒と、みがき棒鋼

JIS G 4804 は熱間圧延棒鋼・線材の寸法の許容差を自分の表で決めている。丸鋼と角鋼の径又は対辺距離の許容差は、16 mm 未満が ±0.4 mm、16 mm 以上 28 mm 未満が ±0.5 mm、28 mm 以上が ±1.8% である[1]。機械構造用炭素鋼の JIS G 4051 が引用する JIS G 3191 の機械構造用棒鋼の許容差 B(例えば 19 mm 以上 32 mm 未満で ±0.8 mm)とは別の値になっている[5]。熱処理を施した熱間圧延棒鋼と線材には、この許容差を適用しない[1]。

外観では、直接切削用丸鋼の残存きず深さの許容限度が決まっており、径 16 mm 以上 50 mm 未満なら呼称寸法の 3%(最大 1.0 mm)である[1]。冷間引抜用棒鋼には寸法許容差の下限からのきず取り深さの許容限度がある[1]。注文時には、直接削るのか、引抜きに回すのかを伝える。

実際に部品加工で使う SUM の丸棒は、冷間引抜きなどで仕上げたみがき棒鋼であることが多い。JIS G 3123(みがき棒鋼)は、炭素鋼みがき棒鋼の材料として JIS G 4804 の鋼材を使うことを認めており、記号は材料・加工方法(冷間引抜き D、研削 G、切削 T)・熱処理方法・公差等級を組み合わせる[2]。炭素鋼みがき棒鋼の機械的性質は受渡当事者間の協定によるとされている[2]。公差等級の選び方は磨き棒鋼(SGD)の指定で扱った。

鉛入りの L 材と RoHS 指令

EU の RoHS 指令(2011/65/EU)は、電気・電子機器の均質材料あたりの鉛の最大許容濃度を 0.1% としている[3]。L 材の鉛は 0.10〜0.35%[1](鉛の製品分析値は 0.07〜0.35%[1])で、この上限を超えうる。

2011 年の制定時の附属書 III には、適用除外 6(a) として「切削加工用の鋼の合金元素としての鉛、及び鉛を重量で 0.35% まで含む亜鉛めっき鋼」が載っている[3]。前述の技術論文も、鉛含有量 0.35% 以下の鉛快削鋼は本来 RoHS 指令の鉛規制の対象に該当するが、論文の時点(2016 年)では適用除外になっていると書いている[4]。ただし適用除外は期限付きで改正されるもので、番号や対象の書き方が制定時から変わりうる。この記事では現行の期限を書かない。EU 向けの電気・電子機器の部品に L 材を使うなら、仕入先に適用除外の番号を書かせ、改正を反映した統合版で現行の期限を確かめる。確かめ方はRoHS への適合を仕入先から確かめるにまとめた。

同じ論文は、国内の自動車メーカーや部品加工メーカーでは各社独自に鉛の使用を規制する動きがある、とも書いている[4]。法令の適用除外があることと、顧客の社内基準が鉛を認めることは別なので、顧客の含有化学物質の基準も確かめる。

鉛を抜くと何が変わるか

技術論文は、鉛が被削性を上げる仕組みとして、切りくずの分断性を高めること、低炭素快削鋼では工具の刃先にできる構成刃先の成長を抑えて仕上げ面の粗さを良くすることを挙げている[4]。低炭素快削鋼が使われる部品では加工品の仕上げ精度が求められ、表面粗さが重視される、とも説明している[4]。

つまり SUM24L から鉛を含まない材料(硫黄快削鋼や、各鉄鋼メーカーの非鉛快削鋼)へ切り替えると、変わりうるのは切りくずの処理と仕上げ面の粗さである。非鉛快削鋼はメーカーごとの開発鋼で、JIS の記号で一律に指定できるものではない。切替えは材料の変更として扱い、次の手順を踏む。

1. 試し削り
量産と同じ機械・工具・条件で削り、表面粗さと工具の摩耗、切りくずの形を見る。

2. 図面の要求との照合
表面粗さの指示(Ra など)を満たすかを確かめる。表面粗さの測り方の合わせ方は表面粗さの指定と測定条件にある。

3. 承認の記録
材料記号・メーカー名・承認日を残し、元の材料に戻すときも承認を通す。

発注書に書くこと

1. 種類の記号と規格番号
「JIS G 4804 SUM24L」のように書く。みがき棒鋼なら JIS G 3123 の記号で、加工方法と公差等級まで書く[2]。

2. 鉛の可否
L 材を使ってよいか、鉛を含まない材料に限るかを書く。顧客の基準で鉛が禁止なら、図面の材質欄だけでなく購買仕様書にも書く。

3. 熱間圧延棒鋼の用途
直接切削用か冷間引抜用か。きずの許容限度が変わる[1]。

4. 検査文書
注文者から要求された場合に提出され、指定がなければ検査証明書 3.1 になる[1]。例えば「材質:JIS G 4804 SUM24L、検査証明書 3.1 を添付し、化学成分(溶鋼分析値、鉛を含む)を記載すること。非鉛材・他の記号への変更は事前承認を要する。」のように書く。

受け入れるときに確かめること

成績書では、記号と、硫黄・りん・鉛の溶鋼分析値を見る。鉛なしで注文したのに鉛の値が出ていないか、L 材なら鉛が 0.10〜0.35% に入っているかを確かめる[1]。JIS G 4804 は、結束ごとに種類の記号、溶鋼番号又はその他の製造(検査)番号、製造業者名、寸法を表示するとしている[1]。現品の表示と成績書の番号を突き合わせる。快削鋼と普通鋼は見た目で区別できないので、異材の混入を防ぐには表示で確かめるしかない。

よくある質問

SUM24L を SUM23 に替えてもよいですか

鉛が無くなるだけでなく、炭素の上限(0.15% と 0.09%)やマンガンの範囲も変わる[1]。被削性と仕上げ面が変わりうるので[4]、試し削りで確かめてから承認する。

SUM の部品をめっきしたり、溶接したりできますか

JIS G 4804 はめっきや溶接の可否を規定していない。硫黄や鉛は鋼中に介在物として存在する[4]ので、溶接やめっきをする部品は、加工先とめっき先に材料を伝えて可否を確かめる。

ステンレスの快削鋼とは何が違いますか

ステンレスの快削鋼は JIS G 4303 の SUS303 などで、別の規格である。選び方はSUS303 と SUS304 の棒材の選び方で扱った。

まとめ

SUM は JIS G 4804 の快削鋼で、13 種類があり、L の付く 4 種類は鉛を 0.10〜0.35% 含む。規格は成分・寸法・外観を決め、機械的性質は決めていない。熱間圧延棒の寸法許容差は JIS G 4804 の自分の表で決まり、部品に使う丸棒の多くは JIS G 3123 のみがき棒鋼として注文する。L 材は RoHS の鉛の上限を超えうるので、EU 向けの電気・電子機器なら適用除外の番号と現行の期限を確かめ、顧客の社内基準も見る。非鉛材への切替えは材料の変更として、試し削りと承認を通す。

同じ束では、炭素鋼の S20C・S25C と、窒化用の SACM645 の指定も扱う。

出典・参考資料

  1. JIS G 4804:2021 硫黄及び硫黄複合快削鋼鋼材(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2021 年 2 月 22 日改正・2025 年 6 月 20 日確認)
  2. JIS G 3123:2004 みがき棒鋼(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2004 年 9 月 20 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
  3. Directive 2011/65/EU on the restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipment (recast)(EU 官報、2011 年 7 月 1 日。附属書 II・附属書 III は制定時の版を確認)
  4. 非鉛快削鋼の開発と切削技術(渡里宏二ほか、新日鉄住金技報 第 406 号、2016 年)
  5. JIS G 3191:2022 熱間圧延棒鋼及びバーインコイルの形状,寸法,質量及びその許容差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2022 年 3 月 22 日改正)

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