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皿ばね JIS B 2706-2 の指定——シリーズA・B・C、静的か動的かで変わる許容差と組合せ方

この記事のポイント(結論先出し)
皿ばねの JIS は 2023 年に JIS B 2706-1(計算)と JIS B 2706-2(製品仕様及び測定・試験方法)の 2 部に分かれ、旧 JIS B 2706:2013 は廃止された[1][2]。注文書の呼び方は「JIS B 2706-2 A 20 1.1」のように規格番号・シリーズの記号・外径・厚さで書く[1]。外径・内径とばね力の許容差は、静的な力を受けるばねか、動的な力(5 000 回を超える繰返し)を受けるばねかで値が違うので、どちらで使うかを必ず書く[1]。自由高さの許容差とばね力の許容差は、片方を指定したらもう片方は指定しない[1]。ボルトに使う皿ばね座金は JIS B 1251 で、皿ばねとは別の規格である[3]。
目次
皿ばねの JIS は 2023 年に 2 部に分かれた
この記事は、機械装置に組み込む工業用の皿ばね(ディスクスプリング)を発注・受け入れる立場で、注文書と図面に何を書き、受け取るときに何を確かめるかをまとめる。
皿ばねの JIS は、2023 年 8 月 21 日に JIS B 2706-1「皿ばね-第 1 部:計算」と JIS B 2706-2「皿ばね-第 2 部:製品仕様及び測定・試験方法」として制定された。第 2 部のまえがきは、これによって JIS B 2706:2013 が廃止され、その一部を分割して制定したこの規格に置き換えられたと書いている[1]。どちらも ISO 19690(第 1 部は 2017 年、第 2 部は 2018 年に第 1 版)を基に、国内の事情に合わせて内容を変えた規格である[1][2]。
古い図面や購買仕様書に「JIS B 2706」とだけ書いてあるなら、改正後は製品の仕様と測り方が第 2 部、ばね力や応力の計算式が第 1 部にあることを前提に読み替える。第 2 部の適用範囲は「鋼製の皿ばね」の製品仕様と測定・試験方法で[1]、第 1 部の適用範囲は単体または複数枚を組み合わせて使う鋼製の皿ばねの計算である[2]。
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皿ばね座金(JIS B 1251)とは別の規格になる
購買の現場でいちばん取り違えやすいのが、ボルトの座面に入れる「皿ばね座金」との混同である。JIS B 1251(ばね座金)は、一般用のボルト・小ねじ・ナットなどに使うばね座金、皿ばね座金、歯付き座金、波形ばね座金の 4 種類を規定している[3]。こちらは締結用部品で、ボルトやナットの強度区分に合わせて軽荷重用・重荷重用を選ぶ[3]。
一方、JIS B 2706 の皿ばねは、外径・内径・厚さ・自由高さ・ばね力を規格の表で決めたばね部品で、機械装置の中で予圧や緩衝を受け持つ部品として使われる。品目マスタで「皿ばね」とだけ登録していると、締結用の座金と機械要素の皿ばねが同じ品名になる。品名の後ろに規格番号を必ず付けるのが、取り違えを防ぐいちばん簡単な方法である。座金側の指定は平座金・ばね座金の記事、座金を組み込んだねじはセムスの記事で扱っている。
呼び方は「シリーズ・外径・厚さ」で決まる
JIS B 2706-2 の製品の呼び方は、規格番号、シリーズの記号、外径、厚さの順である。規格の例は「JIS B 2706-2 A 20 1.1」で、シリーズ A、外径 20 mm、厚さ 1.1 mm を表す[1]。
シリーズは寸法比で 3 つに分かれる。全たわみと厚さの比(h0/t)と外径と厚さの比(D/t)が、シリーズ A はそれぞれ約 0.40 と約 18、シリーズ B は約 0.75 と約 28、シリーズ C は約 1.30 と約 40 である[1]。同じ外径なら A が最も厚く、C が最も薄くてたわみが大きい。厚さによって 3 つのグループにも分かれ、グループ 1 が 0.2 mm 以上 1.25 mm 未満、グループ 2 が 1.25 mm 以上 6.0 mm 以下、グループ 3 が 6.0 mm を超え 14.0 mm 以下で、支持平面(外周と内周の角に設けた平らな面)のある形が使えるのはグループ 3 だけである[1]。
規格の表 11〜表 13 には、シリーズごとに外径・内径・厚さ・全たわみ・自由高さ・角の面取り半径と、試験高さでのばね力・応力が並んでいる[1]。例えばシリーズ A の外径 20 mm は、内径 10.2 mm、厚さ 1.1 mm、全たわみ 0.45 mm、自由高さ 1.55 mm で、試験高さ 1.21 mm でのばね力は 1 569 N と記載されている[1]。表にない寸法の皿ばねを頼む場合は、呼び方では決まらないので、外径・内径・厚さ・自由高さを数値で図面に書く。
注文書に書く 6 つのこと
呼び方だけでは決まらず、規格が「受渡当事者間の協定」に任せている項目がある。発注側が決めて書かないと、仕入先の標準で作られる。
1. 静的か動的か
規格は、使用状態で応力がほとんど変わらない場合または使用期間内の繰返しが 5 000 回以下の場合を「静的」、5 000 回を超える繰返しを受ける場合を「動的」と定義している[1]。外径・内径とばね力の許容差がこの区別で変わるので、どちらで使うかを書く。
2. 材料
規格の表 2 の材料は、みがき特殊帯鋼(JIS G 3311)の S60CM・S65CM・S70CM・SK85M・SUP10M、機械構造用炭素鋼鋼材(JIS G 4051)の S60C〜S75C、ばね鋼鋼材(JIS G 4801)の SUP10、ばね用冷間圧延鋼帯(JIS G 4802)の S60C-CSP・S65C-CSP・S70C-CSP・SK85-CSP・SUP10-CSP で、これ以外の材料は協定による[1]。JIS G 4802 は 2026 年 5 月に改正されたが、改正後も S60C-CSP〜S70C-CSP、SK85-CSP、SUP10-CSP の記号は残っている[4]。ステンレスなど表 2 にない材料で頼むなら、材料記号に加えて硬さと許容応力の考え方も仕入先と決める。
3. 表面処理
規格は、さび止めに防せい油などを塗布し、必要な場合はりん酸塩処理、黒色仕上げ、亜鉛・ニッケルなどの保護金属コーティングを施すが、一般に電気めっきは施さないとしている。表面処理が要る場合は協定による[1]。電気めっきが図面に書かれていたら、その指定で本当によいかを設計に確かめる。
4. ショットピーニング
規格は、耐久限度を上げるために JIS B 2711 に従ってショットピーニングを施すことを推奨し、施工条件は協定によるとしている[1]。JIS B 2711 のショットピーニングは、ばねの表面に主として圧縮残留応力を与え、疲労・応力腐食割れ・遅れ破壊に対する抵抗力を高めるための処理である[5]。動的に使う皿ばねでは、施すかどうかと条件を発注時に決める。
5. 許容差をどちらで決めるか
自由高さの許容差はばね力の許容差を指定する場合は指定せず、ばね力の許容差は自由高さの許容差を指定する場合は指定しない[1]。力で効かせる用途ならばね力、組み込み高さで決まる用途なら自由高さを選び、片方だけを書く。
6. 使用温度と角の面取り
100 ℃を超える環境で使う場合は協定によることが望ましいとされ[1]、角の面取り半径を指定する場合も協定による[1]。高温で使う、または角の形が機能に効く場合は数値で書く。
静的と動的で許容差がどれだけ違うか
呼び方の例と同じシリーズ A・外径 20 mm・厚さ 1.1 mm(グループ 1)で、規格の表 6〜表 9 の許容差を並べると次のとおりである[1]。厚さと自由高さの許容差は静的・動的で同じだが、外径・内径とばね力は動的のほうが狭い。
| 項目(A 20 1.1 の場合) | 静的な力を受けるばね | 動的な力を受けるばね |
|---|---|---|
| 外径 20 mm(18 以上 30 未満) | 0 〜 −0.33 mm | 0 〜 −0.21 mm |
| 内径 10.2 mm(10 以上 18 未満) | +0.27 〜 0 mm | +0.18 〜 0 mm |
| 厚さ 1.1 mm(0.6 を超え 1.25 未満) | +0.06 〜 −0.09 mm | 同じ |
| 自由高さ 1.55 mm(ばね力を指定しない場合) | +0.10 〜 −0.05 mm | 同じ |
| 試験高さでのばね力 1 569 N(自由高さを指定しない場合) | +30 % 〜 −10 %(約 1 412〜2 040 N) | +25 % 〜 −7.5 %(約 1 451〜1 961 N) |
ばね力の範囲は表 9 の割合を 1 569 N に掛けて当記事で計算した値で、規格に載っている数値ではない。外径・内径の許容差は、外径がマイナス側、内径がプラス側にだけ振れる片側の公差になっている[1]。ガイドの軸や穴と干渉しない向きに作られる、と読んでおけばよい。
重ねて使うときは、組合せと枚数を書く
皿ばねは 1 枚で使うより、重ねて使うことが多い。JIS B 2706-1 は、同じ向きに重ねる「並列」、交互に向かい合わせる「直列」、その両方の「複合」の 3 つの組合せを規定している[2]。
並列に n 枚重ねると、ばね力は n 倍になり、たわみは 1 枚と同じで、組立高さは自由高さに(n − 1)枚分の厚さを足した値になる[2]。直列に i 枚重ねると、ばね力は 1 枚と同じで、たわみは i 倍、組立高さは自由高さの i 倍になる[2]。複合ではばね力が n 倍、たわみが i 倍になる[2]。発注で困るのは、図面に「皿ばね ×10」とだけあって、向きと並びが書かれていない場合である。組合せの種類と並び(例:2 枚並列を 5 組直列)を組立図に書かないと、同じ 10 枚でもばね力とたわみがまったく違うものに組まれる。
組み合わせて使うときは、ばねを所定の位置に保持するガイド(案内)が必要で、内径側か外径側に設ける[1]。ガイドの推奨径は規格の表 10 にあり、ガイドの硬さは 55 HRC 以上が望ましいが、静的な力のばねなら硬化していないガイドでもよいとされている[1]。ガイドの軸や穴を別の仕入先に頼むなら、その部品の図面にも硬さと仕上げを書く。
計算式が使える範囲と、試験高さの意味
JIS B 2706-1 のばね力・応力の計算式は、外径と厚さの比が 16 を超え 40 未満、外径と内径の比が 1.8 を超え 2.5 未満の単体のばねに適用し、それ以外の寸法や材料のばねはばね製造業者に相談することを推奨している[2]。また、実際に圧縮試験機で測ったばね力は、たわみが全たわみの 0.75 倍付近を超えると計算値から外れていく[2]。
このため規格は、試験力を「たわみが全たわみの 0.75 倍のとき」の力、つまり試験高さ Ht = H0 − 0.75 h0 での力としている[1][2]。密着近くまで押し込んで使う設計は、計算値と実際の力がずれる範囲に入る。使う高さが試験高さより低い場合は、その高さでの力をどう保証するかを仕入先と決めておく。静的な力を受けるばねの許容応力は、試験高さでの最大圧縮応力の絶対値が 2 500 N/mm2 を超えないことが望ましいとされている[1]。
受け取るときに確かめること
規格の検査は、寸法・硬さ・外観・ばね力について測定・試験を行い、許容差・硬さ・外観の規定に適合しているかを確認するもので、抜取検査の数量は協定による[1]。測り方も規格に書かれているので、受入の測り方を仕入先と合わせられる。
厚さは外側マイクロメータで内径側と外径側の中央の位置を円周方向に等間隔で 3 か所以上測って平均し、外径と内径はノギスでそれぞれ 3 点以上測って外径は最大値、内径は最小値をとる[1]。自由高さは精密定盤に置いてハイトゲージで 3 か所以上測った平均で、中心測定や全周測定の方法でもよい[1]。ばね力は圧縮試験機で試験高さのときの力を測り、ばねに適切な潤滑剤を使ってもよい[1]。
硬さは 42〜50 HRC(415〜510 HV)で、熱処理を施したばねの表面に著しい脱炭があってはならない[1]。硬さ試験はロックウェル硬さで行い、グループ 1 の小さく薄いばねはビッカース硬さで行う[1]。測った値を換算して比べる場合の注意は硬さの指定と試験方法の記事で扱っている。外観は割れ・有害なきず・ばり・さびが無く、内外周に鋭い角があってはならない[1]。
包装には名称と規格番号、シリーズの記号、外径、厚さ、数量、製造番号、製造業者名を表示することになっている[1]。製造番号は不具合が出たときの遡りに使うので、受入記録に残す。
よくある質問
旧 JIS B 2706:2013 の図面で発注してよいですか
旧規格は廃止され、第 2 部に置き換えられている[1]。図面を直すまでは、注文書の側で「JIS B 2706-2 による」と書き、シリーズ・外径・厚さと静的・動的の別を明記して発注するのが確実である。
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皿ばねに亜鉛めっきを付けたいのですが
規格は一般に電気めっきを施さないとし、保護金属コーティングを含む表面処理は協定によるとしている[1]。電気めっきが必要な理由があるなら、方法と水素ぜい化への処置を含めて仕入先と決める。
コイルばねと同じ書き方でよいですか
コイルばねの仕様書の考え方(力で決めるか寸法で決めるか)はばねの発注の記事と共通するが、皿ばねは規格の表から寸法と力が一緒に決まり、組合せの並びで特性が変わる点が違う。
まとめ
皿ばねの JIS は 2023 年に、計算の JIS B 2706-1 と製品仕様・測定の JIS B 2706-2 に分かれた。注文書は「JIS B 2706-2 A 20 1.1」のようにシリーズ・外径・厚さで書き、静的か動的かを必ず添える。材料は表 2 以外なら協定、表面処理は協定で一般に電気めっきは施さない。許容差は自由高さかばね力のどちらか一方で決め、重ねて使う場合は組合せと並びを組立図に書く。受入では寸法・硬さ・外観・ばね力を、規格の測り方に合わせて確かめる。締結用の皿ばね座金(JIS B 1251)とは品名で混ざらないよう、規格番号まで書いて管理する。
同じ束では、割りピン、シム・シムリング、カラー・スペーサー、リニアブッシュの指定も扱う。
出典・参考資料
- JIS B 2706-2:2023 皿ばね-第2部:製品仕様及び測定・試験方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 8 月 21 日制定)
- JIS B 2706-1:2023 皿ばね-第1部:計算(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2023 年 8 月 21 日制定)
- JIS B 1251:2018 ばね座金(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
- JIS G 4802:2026 ばね用冷間圧延鋼帯(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2026 年 5 月 20 日改正)
- JIS B 2711 ばねのショットピーニング(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
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