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投稿日:2026年10月26日

リニアブッシュの選定と発注——JISの製品規格は無くISO 10285、軸を軌道として指定する

この記事のポイント(結論先出し)

リニアブッシュ(筒形の玉循環式の直動軸受)には、JIS の製品規格が無い。JIS B 0104 が「リニア軸受」「玉循環リニア軸受」という用語を定義しているだけで[4]、寸法・精度・寿命計算の JIS は回転する軸受を対象にしている[5][6]。国際規格では、主要寸法と公差が ISO 10285[1]、動定格荷重と定格寿命の計算が ISO 14728-1[2]、ハウジングや軸などの附属品が ISO 13012-1[3]にある。実務の発注はメーカーの型番で行うので、同等品に替えるときは、寸法の系列、精度の等級、定格荷重の計算の根拠を突き合わせる。もう一つの要点は軸で、玉は軸の表面を直接転がるため、軸が軌道の役目をする。軸の材料・硬さ・表面・径の公差は、ブッシュとは別に必ず図面に書く[2]。

リニアブッシュに JIS の製品規格は無い

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この記事は、搬送装置や治具、試験機などの直線案内に使う工業用のリニアブッシュを選び、発注し、受け入れる立場で、何を確かめ、何を書くかをまとめる。

JIS の転がり軸受用語(JIS B 0104)は、用語の分類の中に「リニア軸受」を置き、転がり方向に両軌道間で相対直線運動をする軸受を「リニア軸受」、玉が循環する方式のものを「玉循環リニア軸受」と定義している[4]。リニアブッシュはこの玉循環リニア軸受の一つの形である。

ところが、寸法や精度を決める JIS は回転する軸受の規格である。転がり軸受総則(JIS B 1511)は、軸受の形式を負荷できる荷重の方向と転動体の種類でラジアル玉軸受・ラジアルころ軸受・スラスト玉軸受・スラストころ軸受の 4 つに分け、主要寸法・精度・内部すきま・呼び番号をそれぞれの JIS に委ねている[5]。動定格荷重と定格寿命の JIS(JIS B 1518)も、JIS B 1511 に規定する軸受関連の規格によって設計した転がり軸受を対象にし、寿命を回転数で定義している[6]。日本産業標準調査会の JIS 検索で規格名に「リニア」「直動」を含む規格を引いても該当は無い。リニアブッシュの寸法・精度・寿命は、国際規格とメーカーのカタログで確かめることになる。

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国際規格は 3 つに分かれている

ISO 10285(Rolling bearings-Sleeve type linear ball bearings-Boundary dimensions and tolerances)は、筒形のリニアボールベアリングの主要寸法、公差、用語を規定する[1]。現行は 2007 年の第 2 版で、2012 年に追補(Amd 1)が出ており、見直しを経て有効とされている[1]。目次には、公差の等級、その適用、軸の公差の箇条がある[1]。

ISO 13012-1(2018 年・第 2 版)は、ISO 10285 で規定されるリニアボールベアリングのための附属品、つまりハウジング、軸の支持レール、軸の支持ブロック、中実と中空の軸の主要寸法と公差を規定し、系列 1 と系列 3 のベアリングに使う附属品を対象にしている[3]。ISO 14728-1(2017 年・第 2 版)は直動転がり軸受の基本動定格荷重と基本定格寿命の計算方法を[2]、ISO 14728-2(2017 年・第 2 版)は基本静定格荷重、静等価荷重と静的安全係数の計算方法を規定する[9]。

回転する軸受と比べると、規格がどこにあるかの違いは次のとおりである。

確かめる項目 回転する転がり軸受 リニアブッシュ
用語 JIS B 0104 JIS B 0104(リニア軸受・玉循環リニア軸受)
主要寸法・公差 JIS B 1512・JIS B 1514 ISO 10285(JIS は無い)
動定格荷重・定格寿命 JIS B 1518(寿命は回転数) ISO 14728-1
静定格荷重 JIS B 1519 ISO 14728-2
ハウジング・軸などの附属品 JIS B 1551(プランマブロック)など ISO 13012-1(系列 1・3)
呼び番号 JIS B 1513 メーカーの型番

回転する軸受の発注で確かめることは軸受を型番で買うときの記事で扱っている。あちらの「精度等級を書かなければ 0 級」「内部すきまは記号が無ければ CN」のような読み方は、JIS の呼び番号に基づくもので、リニアブッシュの型番には当てはまらない。

軸が軌道になる——軸の仕様を別に書く

リニアブッシュの玉は、軸の表面を直接転がる。ISO 14728-1 は、転動体が機械の摺動面の上を直接転がる設計には、その面が置き換わる直動軸受の軌道とあらゆる点で同等でない限り適用できないとしている[2]。回転する軸受の JIS B 1518 にも、転動体が直接軸の外周面を転がる構造には、その軌道が軸受の軌道と同等でなければ適用できないという同じ趣旨の注意がある[6]。カタログの定格荷重と寿命は、軸が軌道として十分な状態であることを前提にした値だと読める。

したがって、軸はブッシュの付属品ではなく、軌道として仕様を決める部品になる。図面に書くのは次の 4 つである。

1. 材料
回転する軸受の軌道輪と転動体の材料について、JIS B 1511 は JIS G 4805(高炭素クロム軸受鋼鋼材)またはこれと同等以上の品質の合金鋼としている[5]。JIS G 4805 は転がり軸受に使う鋼材の規格で、種類は SUJ2〜SUJ5 の 4 種類である[7]。リニアブッシュの軸に何を使うかはメーカーの指定に従い、材料記号で図面に書く。SUJ2 を発注するときの注意はSUJ2 の記事にまとめている。

2. 硬さ
JIS B 1511 は回転する軸受の軌道輪の硬さを 57〜65 HRC(寸法安定化処理をしたものは下限 55 HRC)としている[5]。これは回転軸受の軌道輪の規定であって、リニアブッシュの軸の規定ではないが、軌道として求められる水準の目安になる。実際の値はブッシュのメーカーが示す軸の硬さを確かめ、その値と測る位置を図面に書く。

3. 径の公差
ISO 10285 には軸の公差の箇条があり[1]、ISO 13012-1 も系列 1・3 用の中実・中空の軸の寸法と公差を規定している[3]。どの公差クラスにするかはブッシュの種類と使い方で変わるので、メーカーの指定どおりに公差クラスで書く。公差クラスの幅は JIS B 0401-2 の基本サイズ公差で決まり、例えば軸径 20 mm(18 mm を超え 30 mm 以下)では IT6 が 13 µm、IT7 が 21 µm である[8]。h6 なら 20 mm の軸は 0〜−0.013 mm になる。はめあいの指定の考え方ははめあいの記事を見てほしい。

4. 真直度と表面
長い軸は、曲がりがあるとブッシュの動きが重くなる。真直度の指定の仕方はシャフトの真直度の記事で扱っている。表面粗さもメーカーの推奨値を図面に書く。

発注書に書くこと

リニアブッシュはメーカーの型番で買うのが普通である。型番の記号は、寸法の系列や形の違い、シールの有無などをメーカーごとの決まりで表している。発注書には型番を省略せずに書き、次の項目もあわせて残す。

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一つ目は数量の数え方である。1 本の軸に何個のブッシュを使うか、軸は何本で一組かを書く。ブッシュの寿命と剛性は、1 本の軸に入れる個数と間隔で変わる。二つ目は軸の手配である。軸をブッシュと同じメーカーから買うのか、別の仕入先で作るのかで、上の軸の仕様を誰が保証するかが変わる。三つ目は潤滑である。出荷時の潤滑剤の種類と、使う側で給脂するかどうかを確かめる。

ISO 13012-1 は系列 1 と系列 3 のベアリング用の附属品を扱い[3]、系列によって寸法の体系が違う。同じ内径でも、系列が違えば外径や長さが違うので、ハウジングと組み合わせて使う場合は系列まで合わせる。

同等品に替えるときに突き合わせること

メーカーを替えるとき、内径・外径・長さが同じでも同等とは限らない。突き合わせるのは次の 4 点である。

第一に、寸法の系列と公差の等級。ISO 10285 は公差の等級を設けており[1]、どの等級で作られているかで内接円の径のばらつきが違う。第二に、定格荷重の根拠。カタログの基本動定格荷重が ISO 14728-1 の計算方法によるのか[2]、メーカー独自の条件によるのかで、数値をそのまま比べられないことがある。寿命の定義も ISO 14728-1 が定めているので[2]、寿命の距離の基準が同じかを確かめる。第三に、シールと潤滑。第四に、推奨する軸の公差と硬さ。新しいメーカーの推奨が今の軸の仕様と違えば、ブッシュだけ替えても前と同じ動きにはならない。

受け取るときに確かめること

ブッシュは型番、数量、シールの記号を現品と包装で確かめる。軸は、図面に書いた径の公差、硬さ、真直度、表面粗さの成績を仕入先に出してもらう。とくに軸を別の仕入先で作った場合は、熱処理の記録と硬さの測定位置を確認する。組み付けたあと、軸にブッシュを通して全長で引っ掛かりがないかを見るのが、最後の確かめになる。

よくある質問

JIS に無いなら、図面に規格番号を書かなくてよいですか

型番で買う部品なので、ブッシュ自体には規格番号を書かないことが多い。ただし同等品を許すなら、ISO 10285 の寸法系列と公差等級、定格荷重の根拠(ISO 14728-1)を条件として書いておくと、比べる軸がそろう[1][2]。

位置決めの精度が要るときもリニアブッシュでよいですか

用途の選定は設計の判断で、この記事の範囲を超える。送りの精度を決めるボールねじの等級の読み方はボールねじの精度等級の記事で扱っている。

まとめ

リニアブッシュには JIS の製品規格が無く、JIS B 0104 が用語を定義しているだけである。主要寸法と公差は ISO 10285、動定格荷重と寿命の計算は ISO 14728-1、附属品は ISO 13012-1 にある。発注はメーカーの型番で行い、同等品に替えるときは寸法系列、公差の等級、定格荷重の根拠、推奨する軸の仕様を突き合わせる。玉が軸の表面を転がるので、軸は軌道として材料・硬さ・径の公差・真直度・表面を図面に書き、受入で成績を確かめる。

同じ束では、皿ばね、割りピン、シム・シムリング、カラー・スペーサーの指定も扱う。

出典・参考資料

  1. ISO 10285:2007 Rolling bearings-Sleeve type linear ball bearings-Boundary dimensions and tolerances(国際標準化機構/規格の概要と目次で確認)
  2. ISO 14728-1:2017 Rolling bearings-Linear motion rolling bearings-Part 1: Dynamic load ratings and rating life(国際標準化機構/規格の概要で確認)
  3. ISO 13012-1:2018 Rolling bearings-Accessories for sleeve type linear ball bearings-Part 1: Boundary dimensions, geometrical product specifications (GPS) and tolerances for series 1 and 3(国際標準化機構/規格の概要で確認)
  4. JIS B 0104:1991 転がり軸受用語(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
  5. JIS B 1511:1993 転がり軸受総則(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
  6. JIS B 1518:2013 転がり軸受-動定格荷重及び定格寿命(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
  7. JIS G 4805:2025 高炭素クロム軸受鋼鋼材(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
  8. JIS B 0401-2:2016 製品の幾何特性仕様(GPS)-長さに関わるサイズ公差のISOコード方式-第2部:穴及び軸の許容差並びに基本サイズ公差クラスの表(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
  9. ISO 14728-2:2017 Rolling bearings-Linear motion rolling bearings-Part 2: Static load ratings(国際標準化機構/規格の概要で確認)

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