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ボールねじの精度等級(JIS B 1192-3)——位置決め用 C0〜C5・Cp と搬送用 Ct7・Ct10、図面に書く許容値

この記事のポイント(結論先出し)
ボールねじの精度は JIS B 1192-3 で、位置決め用の C 系列・Cp 系列(等級 0・1・3・5)と、搬送用の Ct 系列(等級 0・1・3・5・7・10)に分かれる[3]。C 系列は国際規格に無く JIS が独自に残した系列で[3]、「C5」と書けば JIS の C 系列の 5 級、「Ct7」と書けば搬送用の 7 級を指す。等級で決まるのは、ねじ部有効長さに対する代表移動量誤差(ep)と変動(vu・v300・v2π)の許容値で、たとえばねじ部有効長さ 315 mm 以下なら C5 の ep は 23 μm、C3 は 12 μm である[3]。測定は 20 ℃を標準状態として行う[3]。ボールねじは軸方向の荷重でねじ軸かナットが回る(逆作動)部品として定義されているので[1]、上下に動く軸では落下を止める手段を別に持つ。
目次
この記事が扱う範囲
ボールねじは、ねじ軸とナットの間でボールを転がし、回転を直線の動きに変える機械部品である[1]。工作機械や搬送装置、検査装置の送り軸に使われ、型番で買うことが多い。型番の中には、呼び径とリードのほかに精度の等級が入っている。この記事では、その等級が JIS で何を意味し、図面と発注書にどう書き、受け取るときに何を確かめるかをまとめる。軸の曲がり(真直度)そのものの指定はシャフトの真直度の指定で扱う。
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JIS B 1192 の 5 部構成と、精度を決めている部
ボールねじの JIS は 2018 年に JIS B 1192:2013 を分割する形で制定し直され、次の 5 部で構成されている[1]。
第 1 部(JIS B 1192-1):用語及び記号。逆作動、危険速度、代表移動量などの定義と、製品の呼び方を定める[1]。
第 2 部(JIS B 1192-2):呼び径、呼びリード、ナット寸法及び取付ボルト。2025 年に改正され、呼び径と呼びリードの一般的な組合せを表にしている[2]。
第 3 部(JIS B 1192-3):精度測定方法。種類と等級、許容値、測り方を定める[3]。
第 4 部(JIS B 1192-4):軸方向静剛性。
第 5 部(JIS B 1192-5):静定格荷重、動定格荷重及び寿命[4]。
精度の等級を決めているのは第 3 部である。第 3 部は 2006 年の ISO 3408-3 を基にしているが、序文で「国際規格には規定されておらず,日本産業規格で規定していた精度等級(C 系列)を追加した」と書き、対応の程度を MOD(修正している)としている[3]。海外の仕入先に「C5」と書いても、ISO の体系にはその系列が無いことは知っておきたい。ISO の系列に合わせるなら Cp 系列・Ct 系列で書く、という選び方がある。
系列と等級:位置決め用と搬送用
第 3 部は、ボールねじの種類を位置決め用と搬送用に分け、位置決め用に C 系列と Cp 系列、搬送用に Ct 系列を置いている。等級は、C 系列と Cp 系列が 0・1・3・5、Ct 系列が 0・1・3・5・7・10 である[3]。
第 1 部は、位置決め用ボールねじ(タイプ P)を、回転角とリードから軸方向の移動量を間接的に測ることができ、バックラッシのない(予圧状態の)精密位置決めに用いるもの、搬送用ボールねじ(タイプ T)を、回転角とリードに無関係な測定系で移動量を測るもの、と定義している[1]。つまり位置決め用は「モーターの回転角から位置を決める」使い方、搬送用は「位置は別のセンサーなどで見る」使い方である。第 1 部の注記は、通常は等級 0〜5 は予圧あり、等級 7 と 10 は予圧なしとしている[1]。
等級ごとの許容値
次の表は、第 3 部の表 2〜表 4 から、ねじ部有効長さ(lu)が 315 mm 以下の場合の代表移動量誤差と変動の許容値を抜き出したものである[3]。lu が長くなると ep と vu の許容値は大きくなるので、ほかの長さは規格の表 2 で確かめる。
| 等級 | 用途 | 代表移動量誤差 ep(lu 315 mm 以下) | 変動 vu(同) | 任意の 300 mm の変動 v300 | 1 回転内の変動 v2π |
|---|---|---|---|---|---|
| C0 | 位置決め用 | 4 μm | 3.5 μm | 3.5 μm | 3 μm |
| C1 | 位置決め用 | 6 μm | 5 μm | 5 μm | 4 μm |
| C3 | 位置決め用 | 12 μm | 8 μm | 8 μm | 6 μm |
| C5 | 位置決め用 | 23 μm | 18 μm | 18 μm | 8 μm |
| Cp5 | 位置決め用 | 23 μm | 23 μm | 23 μm | 8 μm |
| Ct5 | 搬送用 | lu と v300 から計算(表 4 の式) | 規定しない | 23 μm | 規定しない |
| Ct7 | 搬送用 | 同上 | 規定しない | 52 μm | 規定しない |
| Ct10 | 搬送用 | 同上 | 規定しない | 210 μm | 規定しない |
表から読み取れることが三つある。一つめは、C5 と Cp5 は ep が同じ 23 μm でも、vu と v300 の許容値が違うことである。C5 の vu は 18 μm、Cp5 は 23 μm で、「5 級」という数字だけでは同じものにならない[3]。二つめは、搬送用の Ct 系列は vu と v2π を規定せず、v300 で管理することである[3]。三つめは、Ct7 から Ct10 で v300 の許容値が 52 μm から 210 μm へと一段大きく広がることである[3]。搬送用の 7 級と 10 級は、位置を別に測る前提の等級と読むのがよい。
許容値の言葉の意味
第 1 部の定義では、実移動量(la)はねじ軸の任意の回転角に対するナットの実際の移動量、代表移動量(lm)はその実移動量の傾向を代表する直線、代表移動量誤差の許容値(ep)は、ねじ部有効長さに対応する代表移動量と基準移動量との差の許容値である[1]。変動(v)は、代表移動量線に平行な 2 本の直線で挟んだ実移動量曲線の最大幅で、全長での vu、任意の 300 mm での v300、1 回転内の v2π がある[1][3]。
位置決めの誤差として効くのは、長い距離の累積(ep)と、途中のうねり(v)の両方である。ep が小さくても v が大きければ途中の位置がずれ、v が小さくても ep が大きければ端の位置がずれる。図面に等級だけ書くと、この両方が一度に決まる。片方だけを厳しくしたい場合は、等級ではなく許容値を個別に書くことになる。
代表移動量目標値(c)は、持たせるなら図面に数値で書く
第 1 部は、代表移動量目標値(c)を、有効移動量内の基準移動量と呼び移動量との差と定義している[1]。第 3 部の測定方法では、ねじ部有効長さ全域での代表移動量目標値(c)と代表移動量(lm)との差を代表移動量誤差とし、c が呼び移動量と等しい場合を eoa、そうでない場合を esa で表す[3]。
つまり、設計の都合で呼びリードどおりではない目標の移動量を持たせたいときは、その差を c として指定し、ep はその目標に対して評価される。c を図面に書かなければ、目標は呼び移動量で、誤差は呼び移動量からの差(eoa)として測られる。運転中の温度上昇などを見込んで目標を持たせるかどうかは設計が決める事柄で、決めたなら c を数値と符号で図面に書く。
測り方:20 ℃・測定間隔・支え方
第 3 部は、測定場所の状態を JIS Z 8703 の標準状態の温度 20 ℃とし、その許容差を、リードの測定については 1 級、その他の測定については 15 級としている[3]。μm の単位で許容値を決めている部品なので、測った温度が違えば値も違う。受入で仕入先の成績書と自社の測定値を比べるときは、両方の測定温度を確かめる。
移動量の測定は、連続して測るか、ねじ軸を固定して同じ回転角の位置ごとに測る。後者の場合の測定間隔は表 12 で、300 mm 当たりの最少測定箇所数が等級と呼びリードで決まっている[3]。たとえば呼びリード 5 mm を超え 10 mm 以下で、0 級は 15 箇所、5 級は 3 箇所、7 級と 10 級は 1 箇所である[3]。代表移動量と変動は、最小二乗法などで求める[3]。ねじ軸は、支点間の自重によるたわみの影響による測定誤差が極力含まれないように支える[3]。
第 3 部はこのほか、ねじ軸各部の円周振れ、ナット取付部の振れ、ねじ部外径の全振れ、予圧をかけたボールねじのトルクの変動などについても、系列ごとに表 5〜表 11 で許容値を定めている[3]。等級を書けばこれらも決まるが、取付けの都合で特に効く項目(支持部の振れなど)がある場合は、どの項目の成績を出させるかを発注時に決めておく。
寿命の計算と、等級の関係
第 5 部は、基本静定格荷重と基本動定格荷重から寿命を計算する方法を定めている[4]。精度との関係では、精度に対する補正係数(fac)の参考データとして、等級 0・1・3・5 で 1、等級 7 で 0.9、等級 10 で 0.7 を示し、精度係数の適用はボールねじ供給者に委ねる、としている[4]。搬送用の低い等級で定格荷重が小さく見積もられることがあるのは、この補正による。
第 1 部は、基本動定格荷重を 100 万回転の定格寿命に対して理論的に耐えうる一定の軸方向荷重と定義し、定格寿命(L10)を 90 % の確率に対する寿命として定義している[1]。寿命の計算は、この信頼度 90 % を基準にしている。表 3 の信頼度係数(far)は、信頼度 90 % で 1、95 % で 0.62、99 % で 0.21 である[4]。同じ注記は、衝撃荷重、振動、温度、潤滑、取付け誤差など、寿命を縮めるほかの要素を考慮したほうがよいものもある、と書いている[4]。また、ねじ溝面の硬さが HRC 58(654 HV10)を下回る場合は、定格荷重を硬さで補正する式がある[4]。カタログの定格荷重を比べるときは、その値が補正前か補正後か、信頼度をいくつで計算しているかを確かめる。
ねじ軸を支える軸受の型番の読み方は軸受を型番で買うとき確かめること、ナットに入れる潤滑剤の指定は潤滑油・グリースの指定で扱った。
危ないところ:逆作動と危険速度
第 1 部は、逆作動(back driving)を、ボールねじのねじ軸又はナットのどちらか一方に軸方向荷重が作用する場合に、もう一方の部品が回転する能力、と定義している[1]。ボールねじは転がりで動くので、すべりねじのように摩擦で止まっていることを当てにできない。上下に動く軸で、重さがナットに掛かったままモーターの保持力が失われると、ねじ軸が回って荷が落ちうる。
上下軸では、モーターのブレーキ、落下防止の機構など、ボールねじ以外で荷を止める手段を設計で持たせる。これは JIS の要求ではなく発注側の確認の提案だが、装置を外注するなら、上下軸の落下防止を仕様書の項目として書いておく。重さを打ち消す補助としてガススプリングを使う考え方もあるが、ガススプリングは時間とともにガスが抜けて力が落ちることがあるので、落下防止の代わりにはならない。その扱いはガススプリングの発注で扱う。
第 1 部は危険速度(ncr)も、ボールねじが共振を生じるようなナット又はねじ軸の回転速度と定義している[1]。ねじ軸が長く細いほど、また支え方によって、この速度は下がる。速い送りを求める仕様では、使う回転速度が危険速度に対して余裕があるかを、ボールねじの供給者に確かめる。
図面と発注書に書くこと
第 1 部の製品の呼び方は、規格番号(または規格の名称、ボールねじの略号 BS)、ねじ軸呼び径、呼びリード、ねじ軸のねじ部長さ、ねじの種類、ねじの等級、ねじ溝の条数、ねじ溝のねじれ方向の順で構成する。条数は多条ねじの場合だけ、ねじれ方向は左ねじの場合だけ書いてよい[1]。製造業者の型番で買う場合も、図面には次の項目を JIS の言葉で残しておくと、型番を替えたときに条件が抜けない。
1. 系列と等級
C5、Cp3、Ct7 のように、系列記号まで書く。「5 級」だけでは C 系列か Cp 系列か決まらない。
2. 呼び径・呼びリード・ねじ部長さ・ねじ部有効長さ
許容値は有効長さで決まる。呼び径と呼びリードの一般的な組合せは第 2 部の表 1 にある[2]。
3. 代表移動量目標値(c)
持たせる場合だけ、数値と符号で書く。
4. 予圧の有無とその大きさ、またはバックラッシの許容値
位置決め用で予圧ありにするか。予圧トルクの変動の許容値は等級で決まる。
5. 軸端の形状と加工
支持部・部品取付部の寸法とはめあい、キー溝の有無。
6. 求める成績書
代表移動量誤差と変動の測定結果、測定温度、どの振れの項目を出させるか。
モーターとの組合せと、カップリングでつなぐときの考え方は軸継手の種類と選び方、減速機を介す場合は減速機の選定と発注を参照してほしい。
受け取るときに確かめること
1. 系列と等級の表示
型番・成績書の等級が注文どおりか。C と Cp の取り違えは許容値が変わる。
2. 移動量の成績
ep・vu・v300・v2π(系列で規定のあるもの)が許容値に入っているか。c を指定した場合は esa として評価されているか。
3. 測定条件
測定温度と、どの方法で測ったか(連続測定か、間隔をおいた測定か)。
4. 軸端とナット
軸端の寸法、ナットのフランジ寸法と取付穴。ナットの取付寸法は第 2 部に規定がある[2]。
よくある質問
C5 と Ct5 は同じ精度ですか
同じではない。C5 は位置決め用で、ep・vu・v300・v2π のすべてに許容値がある。Ct5 は搬送用で、v300 は 23 μm だが vu と v2π は規定せず、ep は有効長さと v300 から計算する[3]。
海外の仕入先に C5 と書いて通じますか
C 系列は国際規格に無く、JIS が独自に追加した系列である[3]。JIS B 1192-3 の C 系列であることを明記し、許容値の表を添えるか、ISO にもある Cp・Ct の系列で書くことを検討する。
等級を上げれば寿命も延びますか
等級は移動量の精度の区分で、寿命を直接決めるものではない。ただし第 5 部の参考データでは、等級 7 と 10 は精度係数で定格荷重が小さく補正される[4]。寿命は荷重・回転速度・潤滑・取付けの条件で計算し、供給者に確かめる。
まとめ
ボールねじの精度は JIS B 1192-3 で、位置決め用の C・Cp 系列(0・1・3・5 級)と搬送用の Ct 系列(0・1・3・5・7・10 級)に分かれる。C 系列は JIS 独自の系列である。等級で決まるのは代表移動量誤差と変動の許容値で、C5 と Cp5 のように数字が同じでも許容値が違うことがある。代表移動量目標値 c は持たせる場合だけ数値で書く。測定は 20 ℃が標準で、測定間隔は等級とリードで決まる。寿命は信頼度 90 % 基準で計算され、低い等級では精度係数で定格荷重が補正される。ボールねじは逆作動する部品として定義されているので、上下軸では荷を止める手段を別に持たせ、危険速度に対する余裕も確かめる。
同じ束では、軸継手、減速機、ガススプリング、防振ゴムの発注も扱う。
出典・参考資料
- JIS B 1192-1:2018 ボールねじ-第 1 部:用語及び記号(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2018 年 8 月 20 日制定・2023 年 10 月 20 日確認)
- JIS B 1192-2:2025 ボールねじ-第 2 部:呼び径,呼びリード,ナット寸法及び取付ボルト(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2025 年 2 月 20 日改正)
- JIS B 1192-3:2018 ボールねじ-第 3 部:精度測定方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2018 年 8 月 20 日制定・2023 年 10 月 20 日確認)
- JIS B 1192-5:2018 ボールねじ-第 5 部:静定格荷重,動定格荷重及び寿命(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2018 年 8 月 20 日制定・2023 年 10 月 20 日確認)
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