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投稿日:2026年10月17日

ガススプリングの発注で決めること——反力・温度・許容差と輸入時の高圧ガス保安法

この記事のポイント(結論先出し)

ガススプリング(ガスダンパー)には、寸法や反力を定める JIS の製品規格が無い。反力・ストローク・寿命はすべて製造業者の値で、発注側が決めて書くのは、どの温度で、どの位置で測った反力を、どの許容差で求めるかである。反力は温度で変わり、ある製造業者の資料では 20 ℃を基準に 10 ℃上がると約 3.4 % 増える[4]。同じ資料は、反力のばらつきを ±10 % 程度、時間とともにガスが徐々に漏れる性質があるとしている[4]。海外から輸入する場合、内部の高圧ガスは高圧ガス保安法の輸入検査の対象になりうる。不活性ガスか空気を封入し、作動時に設計圧力を超えず、再充塡できない構造の緩衝装置であれば輸入検査を要しないが[1][2]、要件に合うかは輸入者が自ら確かめ、税関で確認証明書を求められることがある[3]。ガススプリングだけで荷を保持し、抜けたら人がけがをする使い方はしない。

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ガススプリングは、シリンダーに窒素ガスなどを封入し、ピストンロッドを押し出す力をばねとして使う部品である。装置のカバーや点検扉の開閉を軽くする、重い蓋を開くのを補助する、といった使い方をする。ある製造業者のカタログは、ガススプリングを扉や蓋の保持用として使用しないよう注意書きしている[4]。家具や車の部品としても身近だが、この記事は、工業用の装置・設備の部品としてガススプリングを選び、発注・受入・輸入をするときの話に絞る。

ガススプリングは、型番で買えば済む部品に見える。しかし型番の中にある「反力」の数字が何℃のどの位置での値なのか、どれだけばらついてよいのかは、使う側が決めないと決まらない。また、海外の仕入先から直接買うと、中の高圧ガスについて輸入の手続きが問題になる。

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JIS の製品規格は無い。値はすべて製造業者のもの

日本産業標準調査会の JIS 検索で、規格名称に「ガススプリング」を含むものを引くと該当が無い。「ばね」で引くとコイルばね・皿ばね・重ね板ばねなどの規格が並ぶが、気体を封入したばね装置の製品規格は見当たらない。したがって、自由長・ストローク・反力・作動速度・耐久回数の定義と測り方は、製造業者ごとの資料に従うことになる。

この記事では、ある製造業者(不二ラテックス)の FGS-22 シリーズのカタログを例として、製造業者がどんな値を示し、何を注意書きにしているかを見る[4]。値はこのシリーズのもので、ほかの製造業者の製品にそのまま当てはまるわけではない。

反力:何℃・どの位置・どの許容差で書くか

反力は製造業者が使用条件に合わせて設定する

このカタログでは、ガス反力は各型式の範囲内で 10 N 単位で設定でき、客の使用条件に合わせて設定するとしている[4]。つまり型番の最後に入る反力の数字は、在庫品の固定値ではなく、発注時に決める値である。選定例として、質量 50 kg のカバーを回転半径 0.5 m、ガススプリングの取付距離 0.16 m、開放角度 90°、2 本で支える場合に、必要反発力を「質量×重力加速度×回転半径÷(取付距離×本数)×安全率」で計算し、安全率を 1.05(目安)として 842 N、安全側に切り上げて 850 N と設定する手順を載せている[4]。ただし、載っている数値をこの式にそのまま入れると 50×9.8×0.5÷(0.16×2)×1.05≒804 N で、842 N は安全率を 1.10 とした値に近い。カタログの例の計算を手順として写すときは、数値を自分で検算する。

計算の式と安全率の考え方は製造業者によって違いうるが、発注側として押さえたいのは、反力の計算に要る数字(動かす物の質量と重心、回転の支点、取付位置、開く角度、本数)は使う側にしか分からない、ということである。製造業者に選定を頼むなら、これらを図で渡す。

縮めると反力は増える

ガススプリングはロッドを押し込むほど内部の体積が減り、反力が上がる。このカタログでは、FGS-22 の「ガス反力変化率」を 39〜50 % とし、取付金具を選ぶときの最大反力を、設定反力 780 N の例で「780×1.5=1,170 N」と計算している[4]。伸びきった位置の反力で計算した部品が、縮めた位置では 1.5 倍近い力を受けることがある。取付金具や、ガススプリングを受ける装置側の板・ブラケットは、縮めた位置の最大反力で強度を確かめる。

反力は温度で変わる

同じカタログは、ガス反力は温度の影響を受けて変化し、設定温度(測定温度)20 ℃を基準として、10 ℃上昇するとガス反力は約 3.4 % 増加する、と書いている[4]。この値は、封入した気体の圧力が絶対温度にほぼ比例するという気体の性質と整合する(20 ℃は約 293 K で、10 K 上がると約 3.4 %)。同じ比で考えると、20 ℃で設定したものを −20 ℃(約 253 K)で使えば、反力はおよそ 14 % 下がる見込みになる。これは目安の計算で、製品の保証値ではない。

冬の屋外や冷凍倉庫の中の装置で、夏の工場で合わせた反力のまま使うと、蓋を開く補助の力が足りなくなることがある。このシリーズの使用温度範囲は −20 ℃〜+80 ℃とされている[4]。使う場所の温度の幅を書き、その範囲で必要な反力が出るかを製造業者に確かめる。

ばらつきと、時間とともに落ちること

このカタログは選定例の注記で、ガス反力には ±10 % 程度のばらつきがあるとしている[4]。また注意事項として、時間とともに徐々にガスが漏れる性質があるので、それを考慮して反力を設定すること、反力が低下した場合に交換できるよう作業スペースを確保すること、振動の多い環境では早期にガスが漏れる可能性があること、ピストンロッドに傷が付くとシールを損傷してガス漏れ・オイル漏れの原因になること、錆が出る環境で使わないことを挙げている[4]。

ここから、発注書には「反力 ○○ N」だけでなく、「測定温度 20 ℃、伸び位置から ○○ mm 押し込んだ位置で測定、許容差 ±○ %」のように、測る条件と許容差を書いておくのがよい。これは規格の要求ではなく発注側の提案だが、書かなければ製造業者の社内基準で測られ、受入で測った値と比べられない。交換を前提にした部品であることも、保守の計画に入れておく。

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取付け:向き・曲げ・剛結

同じカタログは、取付けは基本的に上下どちらでもよいが、ロッドは下向きを推奨する、としている[4]。また、ガススプリング 1 本で重量物を支える場合にロッドへ曲げ荷重が掛からないようにすること、リジット(剛結)での取付けは行わないこと(ガス漏れの原因になる)を挙げている[4]。取付金具はねじ込み式で、使える最大反力が金具ごとに決まっている[4]。

装置の設計では、ガススプリングの両端が回転できる金具で取り付けられているか、開閉の途中でロッドに横向きの力が掛からないかを確かめる。図面に取付金具の型式と、両端の取付点の位置を書いておくと、交換のときに同じ条件で付け直せる。

危ないところ:保持の代わりにしない、分解・加熱しない

同じカタログは、ガス漏れが発生した状態のまま使用しないこと、ガス反力の低下によりカバーや蓋が落下し危険であること、ガススプリングを扉や蓋の保持用として使用しないことを挙げ、窓などで使う場合は突風などで過大な外力が加わると動いてしまう可能性があるのでストッパーを別に設けること、最大長以上に伸びるような力を掛けないことを求めている[4]。また、標準仕様以外の環境・屋外・直射日光が当たる場所での使用や、プレス機器・緊急遮断回路・飲料や食料に触れる機器など、人や財産に大きな影響を及ぼすことが予想され特に安全が要求される機器や用途で使う場合は、安全対策を行い、あらかじめ製造業者に相談して使用可否の判断を受けるよう求めている。装置への適合性は、装置の設計者または仕様を決める人が、必要に応じて性能検証とライフテストを行ってから決めること、としている[4]。

装置の発注側として書いておきたいのは、ガススプリングだけで重い蓋や扉を保持し、ガスが抜けたら挟まれる・落ちてくる、という設計を避けることである。開いた位置で機械的に止めるロック(ステー)を別に付ける、点検時に蓋の下へ入るなら落下防止の支えを置く、といった手段を仕様書に入れる。上下に動く軸の重さをガススプリングで打ち消す場合も、落下を止めるのはブレーキなど別の手段にする。送り軸の落下の話はボールねじの精度等級で扱った。

カタログはさらに、ガススプリングを絶対に分解しないこと(圧縮された窒素ガスが封入されている)、火中に投じないこと(加熱による膨張で本体が破裂したり内部のオイルが噴出する可能性がある)を挙げている[4]。廃棄の際は、ボール盤に水平に固定し、ガス充填バルブ端面から 30〜40 mm の位置に 2〜3 mm のドリルで穴をあけてガス抜きを完全に行ってから廃棄する手順を示し、作業時には保護眼鏡をかけるよう求めている[4]。廃棄の手順は製造業者ごとに違うので、交換用を発注するときに、その製品の廃棄方法の資料も一緒にもらう。

輸入する場合:高圧ガス保安法の輸入検査

高圧ガス保安法第 2 条は、圧縮ガスについて、常用の温度で圧力が 1 MPa 以上となるもので現にその圧力が 1 MPa 以上であるもの、または温度 35 ℃で圧力が 1 MPa 以上となるものを「高圧ガス」としている[1]。常用の温度か 35 ℃で封入圧力が 1 MPa 以上になるガススプリングの中のガスは、同法の「高圧ガス」に当たりうる。封入圧力は製品ごとに違うので、仕入先に確かめる。国内の販売店から買う場合は輸入者が手続きを済ませているが、海外の仕入先から直接買い、自社が輸入者になる場合は、輸入検査の扱いを自分で確かめることになる。

法第 22 条と一般高圧ガス保安規則第 46 条

高圧ガス保安法第 22 条第 1 項は、高圧ガスの輸入をした者は、都道府県知事が行う輸入検査を受け、技術上の基準に適合していると認められた後でなければ、これを移動してはならないとしたうえで、ただし書で、経済産業省令で定める緩衝装置内における高圧ガスの輸入をする場合(第 3 号)などを除いている[1]。

その省令にあたる一般高圧ガス保安規則第 46 条第 1 項は、この緩衝装置を、不活性ガス又は空気を封入したものであって、その作動時における内部のガスの圧力が設計圧力(当該装置を使用することができる最高の圧力として設計された圧力)を超えない構造であり、かつ、再充塡できない構造であるもの、と定めている[2]。

一般高圧ガス保安規則第 46 条第 1 項の条件 発注・輸入の前に仕入先へ確かめること
不活性ガス又は空気を封入したもの 封入ガスの名称(窒素など)。カタログの「封入流体」欄
作動時の内部のガスの圧力が設計圧力を超えない構造 設計圧力と、縮めた位置での最大圧力。設計圧力での安全性をどう確かめたか
再充塡できない構造 充塡用のバルブがあるか、使用者が再充塡できる構造か

表の左列は規則の文言で[2]、右列は発注側として確かめる事項の提案である。とくに三つめの「再充塡できない構造」は、反力を後から調整できる充塡バルブ付きの製品で当てはまるかどうかが問題になりうる。製品の構造がこの条件に当たるかは輸入者が判断する事柄で、迷う場合は都道府県の高圧ガスの担当部署に確かめる。

税関で求められる確認証明書

税関の通達「高圧ガスを封入した緩衝装置等に係る輸入の通関の際における取扱いについて」(平成 30 年 2 月 27 日)の別紙は、緩衝装置の例として椅子用リフター、自動車用ショックアブソーバ、エア・サスペンション、ドアクローザー等を挙げ、輸入者が自ら一般則第 46 条第 1 項の要件に合致していることを確認したものであることを求めている。そして税関は、輸入者に説明又は書類の提出を求め、輸入者が確認したことを説明する資料として「緩衝装置輸入規制適用除外確認証明書」(参考様式第 1)を提出させる、としている[3]。

参考様式第 1 は、品名・型式、用途(圧力、荷重等の変動の吸収・緩和、荷重の支持又は蓄圧用)、ガス名、圧力制御方法、設計圧力での安全性確認、再充塡構造の各欄に、輸入する装置の概要と適合・不適合の判定を書き、輸入者が記名する形になっている[3]。同じ別紙は、型式によって要件を満たしていることが証明されている場合、同一型式のものは確認証明書等の提示を適宜省略してよいとし、販売の用に供しない商品見本や試験品、個人用貨物は書類の提出を不要として差し支えないとしている[3]。

実務では、海外の仕入先に、封入ガス名・設計圧力・最大作動圧力・再充塡できない構造であることを書面で出してもらい、それをもとに確認証明書を作って通関に備える。仕入先がこれらを出せない製品は、通関で止まるおそれがある。海外から直接買うと法令上の手続きが輸入者に移る構図は、電気用品の場合も同じで、そちらは電気用品安全法(PSE)の対象品を調達するときで扱った。

注文書・仕様書に書く項目

1. 寸法
自由長(伸びきった長さ)、ストローク、シリンダーとロッドの外径、両端の取付金具の型式とねじ。

2. 反力
設定反力、測定温度、測る位置、許容差。縮めた位置の最大反力(取付部の強度確認に使う)。

3. 使用条件
使用温度の範囲、取付けの向き(ロッドを下向きにできるか)、開閉の頻度、振動、屋外・水・薬品。

4. 寿命と交換
想定する開閉回数または期間と、反力がどこまで落ちたら交換するか。

5. 安全
ガススプリング以外の保持手段(ロック・ステー・落下防止)を装置側に設けること。

6. 書類
製品の仕様書、廃棄方法の資料。輸入する場合は、封入ガス・設計圧力・再充塡構造を示す書面。

油圧で押す・止める用途のシリンダーの指定は油圧シリンダの発注、油圧の配管に使うホースの指定は油圧ホースの発注で扱う。

受け取るときに確かめること

1. 型式と反力の表示
注文した反力が型式・表示と一致しているか。

2. 反力の測定
抜き取りで測るなら、注文で決めた温度・位置で測る。測定室の温度が違う場合は、20 ℃基準からの温度差を考えて比べる。

3. 外観
ロッドの傷、油のにじみ。ロッドの傷はガス漏れの原因になる[4]。

4. 輸入書類
自社で輸入した場合は、確認証明書の控えと、根拠にした仕入先の書面を保管する。

よくある質問

ガススプリングに JIS 規格品はありますか

JIS 検索で規格名称に「ガススプリング」を含む規格は無い。反力・寸法・寿命は製造業者の値で、測り方も製造業者の資料による。

冬に蓋が開かなくなりました。故障ですか

温度で反力が下がった可能性がある。ある製造業者の資料では 20 ℃基準で 10 ℃につき約 3.4 % 反力が変わる[4]。ガスが抜けて反力が落ちている可能性もあるので、20 ℃前後で測り直して比べる。

海外から直接買うと、何か手続きが要りますか

内部の高圧ガスは、高圧ガス保安法の輸入検査の対象になりうる。不活性ガスか空気を封入し、作動時に設計圧力を超えず、再充塡できない構造の緩衝装置なら輸入検査を要しないが[1][2]、要件に合うことは輸入者が自ら確かめ、税関で確認証明書の提出を求められることがある[3]。

まとめ

ガススプリングには JIS の製品規格が無く、反力・寸法・寿命は製造業者の値で決まる。反力は発注時に設定する値で、温度(ある製造業者の資料では 20 ℃基準で 10 ℃につき約 3.4 %)、押し込み位置、ばらつき(±10 % 程度)で変わり、時間とともにガスが抜けて落ちていく。発注書には測定温度・位置・許容差を書き、縮めた位置の最大反力で取付部を確かめる。ガススプリングだけで荷を保持する設計は避け、ロックや落下防止を別に設ける。分解・加熱はせず、廃棄はガス抜きをしてから行う。海外から直接輸入する場合は、一般高圧ガス保安規則第 46 条第 1 項の要件に合うかを輸入者が確かめ、確認証明書を用意する。

同じ束では、軸継手、ボールねじの精度等級、減速機、防振ゴムの発注も扱う。

出典・参考資料

  1. 高圧ガス保安法(昭和二十六年法律第二百四号)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  2. 一般高圧ガス保安規則(昭和四十一年通商産業省令第五十三号)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  3. 高圧ガスを封入した緩衝装置等に係る輸入の通関の際における取扱いについて(別添)(財務省関税局・税関/平成 30 年 2 月 27 日 財関第 257 号)
  4. 不二ラテックス ガススプリング FGS-22 シリーズ カタログ(不二ラテックス/製造業者の資料・2026 年 10 月 17 日に PDF を確認)

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