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投稿日:2026年10月17日

防振ゴムの選び方と発注——JIS K 6386 の材料記号、ばね定数の許容差と固有振動数

この記事のポイント(結論先出し)

防振ゴムが振動を減らすのは、機械の振動数が防振ゴムで支えた系の固有振動数の √2 倍を超えたところからで、それより下では逆に振動を大きくする[4]。通常の防振設計では振動数の比が 3 を超えるように固有振動数を決めるとされ[4]、耐久性の面から固有振動数を 5 Hz 以下にするのは難しいので、防振の効果が得られるのは 7〜10 Hz 以上の振動とする解説がある[5]。固有振動数は静的ではなく動的ばね定数で計算する。ゴム材料は JIS K 6386 の記号で、A(一般)・B(耐油)・C(耐候)・D(高減衰)・E(耐熱)の種類と静的せん断弾性率を組み合わせて指定でき、動倍率や損失係数も記号で付け足せる[2]。ばね定数は JIS K 6385 の試験方法と算出範囲まで決めて許容差を書く[1]。重さを吊る使い方では、ゴムが切れても落ちない金具を別に設ける。

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防振ゴムは、ゴムと金具を接着した部品で、機械の脚やモーター台の下に入れて振動が床や建物に伝わるのを減らす。検索すると洗濯機や家電の振動対策も出てくるが、この記事は、工業用の機械・設備を支える防振ゴム(防振マウント)を選び、図面と発注書に何を書き、受け取るときに何を確かめるかに絞る。振動そのものを測って原因を探す話は機械・設備の振動解析を頼むときで扱った。

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防振が効くのは、固有振動数の √2 倍より上

防振ゴムで支えた機械は、ばね(ゴム)と質量(機械)でできた振動系になる。井上勝夫「防振設計のための基礎事項」(騒音制御、2005 年)は、この系の伝達率を振動数の比(対象の振動数 f と防振系の固有周波数 f0 の比)で図示し、比が 1、すなわち固有周波数の域では共振により伝達率が増え、比が √2 の振動数で伝達率は 1 に戻り、それ以上の振動数域で 1 以下、すなわち防振効果が得られる、と説明している。そして、通常の防振設計では f/f0 が 3 を超えるように防振系の固有周波数を設定する、としている[4]。

自動車用の防振ゴムの設計者による解説(団琢也・煙山英夫、日本ゴム協会誌、1994 年)も、防振の機能を得るために振動数の比を 2〜3 にとるのが一般的だとし、防振ゴムは耐久性の面から固有振動数を 5 Hz 以下にすることが困難なので、防振効果は 7〜10 Hz 以上の振動に対して得られる、と書いている。固有振動数を下げるにはばね定数を下げることになり、静的なたわみが増えて耐久性が悪くなるからである[5]。

発注側として押さえたいのは二つである。一つは、防振ゴムを入れれば必ず振動が減るわけではなく、機械の振動数が固有振動数に近いと、入れる前より揺れることがあること。もう一つは、ゆっくりした振動(数 Hz 程度)を防振ゴムだけで止めるのは難しいこと。低い振動数を絶縁したいなら、ばねの種類から検討し直すことになる。

固有振動数は動的ばね定数で計算する

同じ解説は、固有振動数を動的ばね定数と質量から求めている[5]。1 自由度で考えると、固有振動数は「1/(2π)×√(動的ばね定数÷質量)」である。たとえば 1 個あたり 100 kg を支える防振ゴムの動的ばね定数が 400 N/mm(4.0×10⁵ N/m)なら、√(4.0×10⁵÷100)=約 63.2 で、固有振動数は約 10.1 Hz になる。この場合、√2 倍の約 14 Hz を超えれば防振の効果が出はじめ、3 倍の約 30 Hz を超えるところまで離したい、という目安になる。1,500 min⁻¹ で回る機械なら回転の振動数は 25 Hz で、比は約 2.5 である。√2 は超えるので防振の効果は出はじめるが、比 3 という目安には届かない。この場合は、ばね定数のより小さい防振ゴムにする、支える質量の配分を変えるなどして固有振動数を下げられないかを見直す。

ここで静的ばね定数を使うと固有振動数を低く見積もる。JIS K 6386 は動倍率を「防振ゴムの動的状態におけるばね定数と静的状態におけるばね定数との比」と定義しており[2]、ゴムでは動的ばね定数のほうが大きいのが普通だからである。カタログに静的ばね定数しか載っていない場合は、動倍率または動的ばね定数を製造業者に確かめる。なお実際の機械は上下・左右・前後と回転の 6 方向に揺れるので、1 方向の計算は目安であり、方向ごとのばね定数の確かめ方は設計の側で決める。

ゴム材料は JIS K 6386 の記号で指定できる

JIS K 6386(防振ゴム-ゴム材料の区分)は、振動・衝撃の伝達防止、吸振、緩衝のために使う防振ゴム製品のゴム材料を、使用目的で 5 種類に分け、ゴム材料の種類を表す記号と静的せん断弾性率を表す数字を並べて分類記号とする[2]。数字は静的せん断弾性率(MPa)を 10 倍した整数で、たとえば A10 は種類 A で静的せん断弾性率 1.00 MPa±0.10 MPa の材料を表す[2]。

記号 種類(JIS K 6386 表 1) 一般規定に入っている試験の例
A 一般の加硫ゴム(B〜E に含まれないもの) 熱老化 70 ℃・72 h、圧縮永久ひずみ 70 ℃・24 h
B 特に耐油性を要求される加硫ゴム 耐油試験(IRM903 油・100 ℃・72 h)の体積変化率 +40 % 以下
C 特に耐候性(及び軽度の耐油性)を要求される加硫ゴム 耐油試験の体積変化率 +120 % 以下、オゾン劣化試験(40 ℃・72 h)で亀裂がないこと
D 特に大きな振動減衰性を要求される加硫ゴム 反発弾性率の上限、損失係数(D05〜D11 で 0.2 以上、D12〜D20 で 0.25 以上)は特別規定
E 特に耐熱性を要求される加硫ゴム 熱老化 125 ℃・72 h、圧縮永久ひずみ 100 ℃・24 h

表の種類は JIS K 6386 の表 1、試験の例は表 2〜表 6 の一般規定と特別規定から抜き出した[2]。どの種類も、切断時伸びや熱老化後の変化率など、分類記号ごとの規定値は規格の表で確かめる。たとえば種類 A の動倍率の上限(特別規定)は、A05〜A07 で 1.5、A08〜A10 で 1.7、A11〜A14 で 2.0、A16〜A20 で 3.0 で、柔らかい材料ほど小さい[2]。

記号の書き方

規格は表示の方法を例で示している[2]。

1. 分類記号だけ
「B16」:特に耐油性を要求される加硫ゴムで、表 3 の B16 の一般規定を満たす。

2. 特別規定を付ける
「A10-b1r1」:A10 の一般規定に加え、圧縮永久ひずみ率(b1)と反発弾性率の最小値(r1)の特別規定を満たす。

3. 弾性率を測らず硬さで指定する
「A(10)-J1a1[HA=55]」:括弧の数字は静的せん断弾性率を測らないことを表し、硬さ HA 55±5、熱老化試験(70 ℃・72 h)で硬さの変化量(0〜+7)を満たす。

4. 動倍率や損失係数を付ける
「A(10)-J2a3d[HA=55]」は硬さ ±3 と動倍率 1.7 以下、「D12-a2cL」は損失係数 0.25 以上などを満たす。

5. 製品のばね定数で指定する
静的せん断弾性率を測らず、製品のばね定数などを指定するときは、その規定の要点を具体的に表示し、試験方法は受渡当事者間の協定による。例として「C(16)-Z[圧縮たわみ量:δ1(20 kN)-δ2(10 kN)=2.40 mm±0.36 mm]」がある。

JIS K 6386 は、受渡当事者間の協定によって静的せん断弾性率を省略して硬さを測ることができる、ともしている[2]。硬さで指定すると、同じ硬さでも配合によってばね特性が違う余地が残る。防振の性能で効くのはばね定数と動倍率なので、製品で決めたい場合は 5. の書き方か、次の節のばね定数の許容差で指定する。硬さそのものの測り方はゴム部品の材質と硬さの指定で扱った。

この記号は、軸継手の規格でも使われている。JIS B 1452 のフランジ形たわみ軸継手は、ブシュの材料を耐油性の B(12)-J1a1 としている。詳しくは軸継手の種類と選び方で扱う。

ばね定数は、試験方法と算出範囲まで書く

防振ゴム製品のばね定数の測り方は JIS K 6385(防振ゴム-試験方法)にある。静的ばね特性試験は、測る前に試料に力ゼロから上限まで負荷・除荷を同じ条件で 2 回繰り返し、その後ただちに力とたわみの関係を測る、という手順で、往路方式・往復路方式・両方向負荷方式の 3 種類がある[1]。静的ばね定数は、力-たわみの記録上の 2 点から「力の差÷たわみの差」で求め、その算出範囲は、変曲域を含まないように決める[1]。

つまり同じ防振ゴムでも、どの方式で、どの力の範囲で算出したかによって静的ばね定数の値は変わる。規格は記録する事項に、試験方法の種類、試験装置、試験温度、変位速度、力を加える方向、力とたわみの関係と上下限、静的ばね定数の算出範囲を挙げている[1]。発注書には、ばね定数の値と許容差だけでなく、方向・方式・算出範囲を書く。試験室の標準温度は 23±2 ℃で、試料は試験の前に少なくとも 3 時間以上その温度に置き、加硫後 16 時間以上経過したものを使う[1]。

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動的特性の試験条件は、受渡当事者間で指定が無い場合、平均の力(平均荷重)は実際に使われる力、たわみ振幅は ±0.5 mm(周波数 15 Hz)と ±0.05 mm(周波数 100 Hz)、温度は標準温度である。実際に掛かる力やたわみが分からない場合に限り、平均たわみゼロまたは 2 mm で行う[1]。動的ばね定数は振幅と周波数で変わるので、比べるときは同じ条件の値で比べる。

許容差の書き方の参考:JIS K 6422

ばね定数の許容差をどう区分するかは、JIS K 6422(防振ゴム-性能区分)が参考になる。この規格の対象は自動車と産業用車両に用いる防振ゴムで、鉄道車両用は除き、規格の特性の規定は設計などの目標値を示すもので、この規格によって適合性評価を行うことは意図していない、と明記している[3]。そのうえで、静的ばね定数の許容範囲を区分 A ±10 %、B ±12.5 %、C ±15 %、D ±20 %、動的ばね定数の許容範囲を A ±10 %、B ±15 %、C ±20 %、D ±25 % に区分し、静的ばね特性の試験は、特に協定が無い場合は JIS K 6385 の往路方式による、としている[3]。

産業機械の防振ゴムにこの規格がそのまま適用されるわけではない。しかし、許容差を ±何 % で書くか、どの試験方法を既定にするかの書き方の型として使える。同じ規格は、接着性(破壊試験でゴム部の破損面積の比率)、熱老化後のばね定数の変化率とクリープ量、耐久試験の回数、耐オゾン性の区分も示している[3]。

危ないところ:吊る・油・熱・ストッパー

吊り下げ・横向きの取付け
防振ゴムはゴムと金具の接着で荷を支える部品である。天井から機器を吊る、壁から横向きに支える、といった使い方で、ゴムや接着部が切れたら物が落ちる場合は、脱落を止める金具(フェイルセーフ)を別に設ける。これは JIS の要求ではなく、装置の発注側として仕様に書いておきたい安全の提案である。接着の強さは JIS K 6385 の破壊試験で確かめられ、JIS K 6422 は破壊後にゴム部が破れて接着界面ではがれていないことを区分にしている[1][3]。

油・熱・屋外
種類 A の一般の加硫ゴムに油がかかる場所で使うと、膨潤して特性が変わる。油がかかるなら B、屋外でオゾンや日光にさらされるなら C、高温の機器の近くなら E と、使用環境から種類を選ぶ[2]。

ストッパー
JIS K 6385 は緩衝ゴムを、衝撃を緩和し、大きな力が加わったときの過大な変位を抑制し、部材の接触や破損、異常音の発生などを防止する防振ゴムと定義している[1]。柔らかい防振ゴムほど、起動・停止や地震で大きく動く。配管や配線がつながった機械では、動きすぎを止めるストッパーを設けるかを設計で決める。

へたりとクリープ
JIS K 6385 はへたりを、力を加えて変形した後、力を除去しても元の形状に戻らなくなる現象と定義している[1]。長く荷を受けると、ゴムは沈み込み、機械の高さや芯がずれる。モーターと機械を軸継手でつなぐ構成では、防振ゴムの沈み込みが芯ずれになる。

注文書・仕様書に書く項目

1. 支える物と振動
支える質量と重心の位置、防振ゴムの個数と配置、機械の運転振動数(回転速度)。製造業者に選定を頼むなら、これを図で渡す。

2. ばね定数
方向(圧縮・せん断)、静的ばね定数と許容差、試験方式(往路方式など)と算出範囲。必要なら動的ばね定数と動倍率、その試験条件。

3. ゴム材料
JIS K 6386 の分類記号と特別規定、または硬さで指定する場合の記号。

4. 使用環境
温度、油・水・薬品、屋外かどうか。

5. 金具と取付け
金具の材料と表面処理、取付けねじ、脱落防止金具とストッパーの要否。

6. 寸法の許容差
ゴム部の寸法の許容差は、JIS K 6422 が ISO 3302-1 のクラス M2〜M4 に準じた表を示している[3]。必要な寸法にだけ公差を書く。

7. 試験成績
静的ばね定数の測定記録(JIS K 6385 の記録事項を含む)を求めるか。

受け取るときに確かめること

1. 型式と材料の記号
注文した分類記号・型式と一致しているか。

2. ばね定数の成績
注文の方式・算出範囲・温度で測った値か。算出範囲が違うと比べられない。

3. 外観と接着部
ゴムと金具の境目に、はがれや亀裂がないか。

4. 製造時期
ゴムは保管中にも劣化する。予備品として長く置く場合は、製造時期と保管条件を記録する。

よくある質問

柔らかい防振ゴムほど効きますか

柔らかいほど固有振動数は下がり、高い振動数での防振には有利になる。ただし固有振動数を下げるほど静的なたわみが増えて耐久性が悪くなり、5 Hz 以下にするのは難しいとされる[5]。機械の振動数が固有振動数に近いと逆に揺れるので、振動数の比で確かめる[4]。

カタログの静的ばね定数で固有振動数を計算してよいですか

固有振動数は動的ばね定数で計算する[5]。静的ばね定数で計算すると、動倍率の分だけ固有振動数を低く見積もる。JIS K 6386 の種類 A では動倍率の上限が 1.5〜3.0 の範囲で示されており[2]、差は小さくない。

硬さで指定すれば十分ですか

硬さは測りやすいが、同じ硬さでもばね特性は配合で変わりうる。JIS K 6386 は協定により弾性率の代わりに硬さで指定する書き方を認めている[2]。防振の性能が要る部品では、製品のばね定数を試験方法と許容差つきで指定する。

まとめ

防振ゴムが振動を減らすのは、機械の振動数が固有振動数の √2 倍を超えたところからで、設計では比を 3 程度以上とるとされる。防振ゴムは固有振動数を 5 Hz 以下にしにくく、低い振動数の絶縁には向かない。固有振動数は動的ばね定数で計算する。ゴム材料は JIS K 6386 の A・B・C・D・E の種類と静的せん断弾性率の記号で指定でき、動倍率や損失係数を記号で足せる。ばね定数は JIS K 6385 の方式と算出範囲まで書き、許容差の書き方は JIS K 6422 が参考になる。吊る使い方では脱落防止を別に設け、油・熱・屋外は種類で選び、ストッパーとへたりを設計で見込む。

同じ束では、軸継手、ボールねじの精度等級、減速機、ガススプリングの発注も扱う。製品を振動させて耐久性を確かめる試験の指定は振動・衝撃試験を仕様に入れるときを参照してほしい。

出典・参考資料

  1. JIS K 6385:2012 防振ゴム-試験方法(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2012 年 12 月 20 日改正・2022 年 10 月 20 日確認)
  2. JIS K 6386:2019 防振ゴム-ゴム材料の区分(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2019 年 5 月 20 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
  3. JIS K 6422:2016 防振ゴム-性能区分(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2016 年 12 月 20 日改正・2026 年 6 月 22 日確認)
  4. 井上勝夫「防振設計のための基礎事項」騒音制御 29 巻 3 号(日本騒音制御工学会/2005 年 6 月)
  5. 団琢也・煙山英夫「製品設計入門講座 防振ゴム(その 2)」日本ゴム協会誌 67 巻 2 号(日本ゴム協会/1994 年)

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