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ボールバルブと仕切弁の選び方——呼び圧力と最高許容圧力、JIS B 2003 の弁座漏れ

この記事のポイント(結論先出し)
この記事は工業用の配管・設備に使うバルブの話である。ボールバルブ(ボール弁)は球状の弁体を弁棒を軸に回して開閉し、ゲートバルブ(仕切弁)は弁体が流路を垂直に仕切って開閉する[1]。JIS の一般機械部門の製品規格(青銅弁・ねずみ鋳鉄弁・鋼製弁など)が種類として定めているのは玉形弁・アングル弁・仕切弁・逆止め弁で、ボール弁の製品規格はこの中に無い[2][3][4]。そこで仕様書には、呼び圧力と、その材料・温度で使える最高許容圧力(圧力-温度基準)、呼び径とポートの形、接続端、弁箱と弁座の材料を書き、検査は JIS B 2003 の弁箱耐圧(最高許容圧力の 1.5 倍)と弁座漏れ(1.1 倍、許容量はレート A〜D)で条件をそろえる[5]。「10K」の数字は使える圧力ではなく、10K の青銅弁でも 185 ℃では 1.0 MPa まで下がる[2]。
目次
「10K のボールバルブ 50A」で決まらないこと
設備の改造や保全で、バルブは「10K 50A のボールバルブ」「5K の仕切弁 100A」のように、呼び圧力と呼び径と弁の種類だけで手配されることが多い。これで配管には付くが、何の材料でできていて、何度の流体でどこまでの圧力に使えるか、閉じたときにどこまで漏れを許すか、は決まっていない。仕入先はカタログの標準品を出すので、前回と違う材料や弁座のものが届くことがある。
この記事は、家庭の水回りの水栓ではなく、工場の配管・設備の部材としてボールバルブと仕切弁を選び、仕様書で指定し、受け入れるときの話を扱う。フランジの規格と圧力-温度基準はJIS フランジ(JIS B 2220)の指定、ねじ込みの継手はねじ込み式管継手の指定で扱ったので、ここではバルブ本体に絞る。
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ボール弁と仕切弁は何が違うか
バルブの用語の規格 JIS B 0100 は、仕切弁を「弁体が流体の流路を垂直に仕切って開閉を行い,流体の流れが一直線上になるバルブの総称」とし、慣用語としてゲート弁・スルース弁を挙げている[1]。弁体がくさび状のものはウェッジ仕切弁で、単に仕切弁とも呼ぶ[1]。ボール弁は「弁箱内で弁棒を軸として球状の弁体が回転するバルブの総称」で、弁体には全面球と半面球がある[1]。
ボール弁には支え方の違いがある。弁体を流れ方向に置いた弁座で支え、閉じたときの差圧で弁体を二次側の弁座に押し付けて締め切るのがフローティング形、ボールを上下のステム(トラニオン)で支えるのがトラニオン形で、後者は主に大口径や高圧に使うとされている[1]。出入口が三つあって流れの向きを変えたり分けたりするものは三方形である[1]。
| 項目 | ボール弁 | 仕切弁 |
|---|---|---|
| 開閉のしかた(JIS B 0100) | 弁棒を軸に球状の弁体を回す | 弁体が流路を垂直に仕切る。流れは一直線 |
| 主な形式 | フローティング形・トラニオン形・三方形 | ウェッジ・パラレルスライド・ダブルディスクなど |
| JIS の一般機械部門の製品規格 | 種類の表に無い | 青銅弁・ねずみ鋳鉄弁・可鍛鋳鉄弁及びダクタイル鋳鉄弁・鋼製弁にある |
| 弁座漏れ試験での圧力の掛け方(JIS B 2003) | どちらも、満水にして弁箱と蓋の内側に試験圧力が加わるように閉じ、一方の側を開放して試験し、反対側の弁座も同様に試験する | |
| 構造検査で見ること(JIS B 2003) | 開閉が円滑に作動すること(共通) | 全閉で弁体の弁座面中心が弁箱の弁座面中心より上方、全開で弁体が弁座口径部に残らないこと |
表は用語の規格と検査通則の記述をまとめたものである[1][5]。どちらを選ぶかは流体・圧力・操作の頻度・流量調整の要否など設計の条件で決まるので、購買が決めることではない。購買の役目は、設計が決めた弁の種類を、形式まで含めて仕様書に落とすことである。そのために、設計に次の問いを確かめておくとよい。
1. 開閉だけか、流量の調整にも使うか
使い方で選ぶ弁の種類が変わる。調整に使うなら、その旨を仕様書に書いてメーカーに確かめる。
2. 流路を呼び径のまま通す必要があるか
清掃具を通す、圧力損失の余裕が小さい、といった事情があるなら、下で述べるフルポート形を指定する。
3. 流体の温度は弁座とパッキンの材料に合うか
樹脂やゴムの弁座(ソフトシート)では、材料が使える温度を先に決めることがある。ねずみ鋳鉄弁の規格では、その場合の圧力-温度の制限を銘板に表示するとしている[3]。
形式の言葉で特に書き落としやすいのがポートの形である。JIS B 0100 は、弁箱の呼び径から決まる容量をもつ形式をフルポート形、その容量よりも縮小した形式をレデュースポート形と定めている[1]。同じ「50A のボール弁」でも、流路が呼び径より細いものがある。配管の清掃具を通す、流量の余裕が小さい、といった事情があるなら、フルポート形と書く。弁座については、接触部に軟質性材料を使うソフトシート形と、金属材料を使うメタルシート形の区別がある[1]。
JIS の製品規格が決めているのは仕切弁・玉形弁・逆止め弁
一般機械部門のバルブの製品規格を並べると、種類の範囲が見える。
青銅弁(JIS B 2011)
呼び圧力 5K と 10K の、ねじ込み形とソルダ形(銅配管だけに適用)の玉形弁・仕切弁・逆止め弁、10K のフランジ形の玉形弁・アングル弁・仕切弁を、呼び径 8A〜100A の範囲で定めている[2]。
ねずみ鋳鉄弁(JIS B 2031)
一般の機械装置などに用いるもので、5K のフランジ形外ねじ仕切弁、10K の玉形弁・アングル弁・内ねじ仕切弁・外ねじ仕切弁・スイング逆止め弁を、呼び径 40〜300 の範囲で定めている[3]。弁箱と蓋の材料は JIS G 5501 の FC200 である[3]。
鋼製弁(JIS B 2071)
一般分野に用いる鋼製の仕切弁・玉形弁・逆止め弁を、呼び圧力(PN)、弁種、呼び径の組合せで定めている[4]。接続端は、フランジ形・突合せ溶接形・差込み溶接形・ねじ込み形である[4]。
どの規格の種類の表にも、ボール弁は入っていない[2][3][4]。つまり「JIS のボールバルブ」として種類・肉厚・材料をまとめて呼べる製品規格は、この部門には無い。ボール弁を JIS の言葉で縛れるのは、用語(JIS B 0100)、検査(JIS B 2003)、接続端のフランジ(JIS B 2220 など)と管用ねじ、という周辺の規格である。ボール弁を調達するときは、メーカーの型番と仕様書(材料、弁座、圧力-温度の範囲)を発注書に紐付け、検査の条件を JIS B 2003 でそろえる、という組み立てになる。
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仕切弁を JIS の製品規格品で買うなら、呼び方をそのまま書ける。ねずみ鋳鉄弁の呼び方は、規格番号、材料、呼び圧力、弁種、呼び径、トリム材料の順で、例として「JIS B 2031 FC 10K フランジ形外ねじ仕切弁 100 304」が挙げられている(トリム材料が青銅系 BC か 13Cr 鋼系 CR13 の場合は省いてよい)[3]。トリムは、弁体・弁座の弁座面と、弁棒・ヒンジピンを指し、規格の表に材料の種類が並んでいる[3]。
呼び圧力は「使える圧力」ではない
JIS B 0100 は、呼び圧力を「バルブの圧力区分を呼称するための表示」、最高許容圧力を「指定温度において,耐圧部分の許容できる最高の圧力」、圧力-温度基準を「弁箱,蓋などの耐圧部品材料によって決まる,温度に対する許容圧力の基準」と定めている[1]。使える圧力は、呼び圧力の数字ではなく、材料と温度で決まる。
| 規格 | 呼び圧力 | 低い温度域の最高許容圧力 | 上限の温度での最高許容圧力 |
|---|---|---|---|
| 青銅弁(JIS B 2011) | 5K | 0.7 MPa(−29〜120 ℃) | 0.5 MPa(159 ℃。仕切弁の最高使用温度は 134 ℃) |
| 青銅弁(JIS B 2011) | 10K | 1.4 MPa(−29〜120 ℃) | 1.0 MPa(185 ℃。仕切弁の最高使用温度は 171 ℃) |
| ねずみ鋳鉄弁(JIS B 2031) | 5K | 0.7 MPa(−10〜120 ℃) | 0.5 MPa(220 ℃) |
| ねずみ鋳鉄弁(JIS B 2031) | 10K | 1.4 MPa(−10〜120 ℃) | 1.0 MPa(220 ℃) |
表は各規格の圧力-温度基準の表から引いた[2][3]。青銅弁には注があり、ソルダ形は下限の温度が −18 ℃で、高温側(159 ℃・185 ℃)の値は適用せず、10K の呼び径 32 以上のソルダ形は 1.2 MPa とされている[2]。中間の温度は比例補間で求める[2][3]。ねずみ鋳鉄弁では、圧入弁座をもつものは 220 ℃以下で 0.2 MPa を標準とするとされ[3]、同じ 10K でも弁座の付け方で使える圧力が大きく違う。さらにどちらの規格も、高圧ガス保安法その他によって使用禁止または使用制限が加えられている場合があり、使用者は法令の範囲内で使うよう注意している[2][3]。
樹脂やゴムの弁座(ソフトシート)やパッキンを使うバルブでは、材料のほうが先に使える温度を決めることがある。ねずみ鋳鉄弁の規格は、パッキン材料やコーティング材料などで使用圧力・使用温度が制限される場合に、その圧力-温度基準を銘板に表示するよう定め、「120 ℃/1.4 MPa,飽和蒸気 0.7 MPa」のような表示例を挙げている[3]。ボール弁は弁座に樹脂を使う品種が多いので、カタログの圧力-温度の線図を仕様書に紐付け、銘板の表示と突き合わせる。
検査は JIS B 2003 で条件をそろえる
JIS B 2003(バルブの検査通則)は、一般機械部門に規定するバルブの受渡検査について定め、その他一般のバルブに適用してもよいとしている。ただし個別の製品規格に検査の規定があれば、そちらが優先する[5]。検査項目は構造・寸法・外観・材料・圧力(弁箱耐圧・弁座漏れ・逆座漏れ)・その他で、個々のバルブはこの中から必要な項目を選んで個別規格による[5]。
弁箱耐圧検査
水圧で行い、バルブを開いた状態で弁箱内に水を満たして空気が残らないようにし、最高許容圧力の 1.5 倍の試験圧力を加える。試験時間は呼び径 50 以下で 15 秒、65〜200 で 60 秒、250 以上で 180 秒である[5]。水圧による形式検査を済ませていれば、空気圧試験に代えてもよい[5]。判定は、表面その他から目視で確認できる量の漏れ・にじみが無いことで、グランドパッキン部からの漏れは受渡当事者間の協定で判定する[5]。弁箱耐圧検査が終わるまでは、塗装や漏れを止めてしまうコーティングをしてはならない[5]。
弁座漏れ検査
水圧で行う場合は最高許容圧力の 1.1 倍、空気圧で行う場合は 0.6 MPa(ゴムシートのバタフライ弁は最高許容圧力の 1.1 倍)を加える[5]。許容される漏れの量は、次のレートで区分されている。
| 試験方法 | レート A | レート B | レート C | レート D |
|---|---|---|---|---|
| 水圧試験 | 漏れのないこと | 0.01 mm3/s×呼び径 | 0.03 mm3/s×呼び径 | 0.1 mm3/s×呼び径 |
| 空気圧試験 | 漏れのないこと | 0.3 mm3/s×呼び径 | 3 mm3/s×呼び径 | 30 mm3/s×呼び径 |
呼び径は A 呼びの数字を使い、漏れの量は大気圧への放出量、レート A の「漏れ」は目視で確認できる量の漏れを指す[5]。試験時間は呼び径 50 以下で 15 秒、65〜200 で 30 秒、250〜450 で 60 秒、500 以上で 120 秒である[5]。どのレートを適用するかは製品規格が弁種と弁座ごとに決めていて、たとえばねずみ鋳鉄弁の仕切弁(メタルシート)はレート A、使用上差し支えない場合はレート D である[3]。
ボール弁には適用されるレートを決める製品規格が無いので、発注側がレートを書く必要がある。「漏れのないこと」を求めるならレート A と書き、試験方法(水圧か空気圧か)も書く。書かなければ、仕入先は自社の基準で検査した結果を出すことになる。
非破壊検査と蒸気検査は、求めたときだけ
JIS B 2003 は、蒸気検査や非破壊検査(放射線透過・磁粉探傷・液体浸透探傷・超音波探傷)を、使用者から特に指定がある場合に行うとし、方法と判定は受渡当事者間の協定によるとしている[5]。鋳造品の内部欠陥が問題になる用途では、発注書に検査の種類と判定基準を書く。非破壊検査の指定のしかたは非破壊検査を発注で指定するときで扱っている。
仕様書・発注書に書く項目
| 区分 | 書くこと(提案) |
|---|---|
| 弁の種類と形式 | ボール弁か仕切弁か。ボール弁ならフローティング形かトラニオン形か、フルポート形かレデュースポート形か。仕切弁なら内ねじか外ねじか |
| 規格または型番 | JIS の製品規格品なら規格の呼び方。そうでなければメーカーと型番、仕様書の版 |
| 圧力と温度 | 呼び圧力に加えて、使う流体・最高使用温度・最高使用圧力。それを満たす圧力-温度基準であることの確認 |
| 呼び径と接続端 | 呼び径(A 呼びか B 呼びか)、フランジ形(JIS B 2220 などの規格と呼び圧力)・ねじ込み形(管用ねじの種類)・溶接形 |
| 材料 | 弁箱・蓋、トリム(弁座面・弁棒)、ソフトシートやパッキンの材料 |
| 検査 | JIS B 2003 による弁箱耐圧・弁座漏れの試験方法とレート。非破壊検査が要るなら種類と判定 |
| 表示と記録 | 弁箱・銘板の表示(呼び圧力・呼び径・流れ方向・制限された圧力-温度基準)、検査成績書の提出 |
受入では、銘板と弁箱の表示を発注の内容と突き合わせる。ねずみ鋳鉄弁の規格は、弁箱の表面に呼び圧力と呼び径、ねじ込み弁座なら S、圧入弁座なら P の記号(5K・10K の内ねじ仕切弁を除く)、流れ方向の矢印(仕切弁は除く)、製造業者名を表示するよう定めている[3]。圧入弁座の P を見落とすと、上で見たとおり使える圧力が 0.2 MPa の品を 10K として扱うことになりかねない。
よくある質問
Q. 「JIS 10K のボールバルブ」と書けば足りますか。
10K はフランジや圧力の区分の呼び方で、ボール弁そのものの JIS の製品規格は一般機械部門には無い[2][3][4]。フランジの規格(JIS B 2220 など)と呼び圧力、メーカーの型番、使う流体と温度で使える圧力、JIS B 2003 による検査とレートを書く[5]。
Q. 同じ 10K なら青銅弁を鋳鉄弁に置き換えてよいですか。
低い温度域の最高許容圧力は青銅弁・ねずみ鋳鉄弁とも 1.4 MPa(青銅弁のソルダ形で呼び径 32 以上は 1.2 MPa)だが、上限の温度と、そこまでの下がり方が違う[2][3]。青銅弁には飲用の給水・給湯設備に使うときの浸出性能の規定もある[2]。流体と温度、用途を設計に確かめてから置き換える。
Q. 弁座漏れはゼロでなければいけませんか。
JIS B 2003 はレート A(漏れのないこと)から D までの許容量を定め、どれを適用するかは製品規格や受渡当事者間で決める[5]。遮断が安全にかかわる箇所ならレート A を求め、通常の運用で差し支えない箇所では製品規格のレートに従う、のように用途で分ける。
まとめ
ボール弁と仕切弁は、JIS B 0100 の定義と形式(ポート、弁座、支え方)で区別し、設計が決めた形式を仕様書に書く。仕切弁は JIS の製品規格の呼び方で書けるが、ボール弁は一般機械部門の製品規格が無いので、メーカーの型番・材料・圧力-温度の範囲を紐付け、検査を JIS B 2003(弁箱耐圧 1.5 倍、弁座漏れ 1.1 倍とレート A〜D)でそろえる。呼び圧力の数字は使える圧力ではないので、流体の温度と弁座の材料から使える圧力を確かめる。
同じ束では、回転軸のオイルシール JIS B 2402 の指定、配管の温度を測る測温抵抗体 Pt100 の指定、熱収縮チューブの選び方、絶縁抵抗試験と耐電圧試験の指定を扱っている。配管のねじは管用ねじ R・Rc・G の指定、管そのものはSGP の指定を参照してほしい。
出典・参考資料
- JIS B 0100:2013 バルブ用語(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2013 年 5 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
- JIS B 2011 青銅弁(JIS 検索の閲覧資料・本体 2010 年版と追補 1・追補 2)(日本産業標準調査会/最新改正 2013 年 6 月 20 日・2023 年 10 月 20 日確認)
- JIS B 2031:2024 ねずみ鋳鉄弁(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2024 年 8 月 20 日改正)
- JIS B 2071:2000 鋼製弁(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2000 年 3 月 20 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
- JIS B 2003:2024 バルブの検査通則(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2024 年 1 月 22 日改正)
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