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測温抵抗体 Pt100(JIS C 1604)の指定——許容差クラスと3線式・4線式、熱電対との使い分け

この記事のポイント(結論先出し)
測温抵抗体 Pt100 の JIS は JIS C 1604 で、許容差をクラス AA・A・B・Cの 4 つに分け、それぞれ許容差が適用される温度範囲とセットで決めている。0 ℃での許容差は AA が ±0.10 ℃、A が ±0.15 ℃、B が ±0.30 ℃、C が ±0.60 ℃で、温度が上がるほど広がる[1]。表と違う温度範囲で使うならその範囲を明記すれば規格を適用でき、表に無いクラスを設ける場合も温度範囲の指定のないものは有効としない、とされている[1]。発注書には「クラス A」だけでなく、求める温度範囲まで書く。クラス AA と A は 2 導線式には適用されず、3 導線式か 4 導線式でなければならない[1]。発注書は規格の呼び方「測温抵抗体 Pt100 クラス A 1 mA H 3 導線式 6×500 mm」のように、許容差クラス・測定電流・使用温度区分・導線形式・外径×長さを並べる[1]。熱電対(JIS C 1602)の K のクラス 1 は −40〜375 ℃で ±1.5 ℃なので[2]、Pt100 のクラス A(AA)なら数百 ℃以下でこれより狭い。ただしクラス B は約 240 ℃を超えると K のクラス 1 より広くなり、クラス C は 90 ℃前後で並ぶ[1]。精度を求めるなら Pt100 のクラス A 以上、600 ℃を超える高温なら熱電対、と温度域とクラスで使い分ける。
目次
「Pt100 のセンサー」で何が決まらないか
装置の温度センサーは、「Pt100、3 線式、φ6×300」のように、素子の種類と線の数と外形だけで手配されることが多い。これで温度計の入力端子には接続できるが、何 ℃のときにどこまでの誤差を許すのか、何 mA の電流で測ったときの話なのか、どの温度まで使ってよいのかは決まっていない。受入で校正したら規格外だった、という揉め方は、たいていここから来る。
JIS C 1604 は、温度測定に使う白金測温抵抗体と、それに組み込む白金抵抗素子について定めた規格で、2008 年の IEC 60751(第 2 版)を基に作られている。2013 年 12 月 20 日に改正され、2023 年 6 月 20 日に確認されている[1]。規格では分離できる保護管とサーモウエルは測温抵抗体に含まない[1]。この記事は、この規格を手がかりに、仕様書と発注書に何を書き、受入で何を確かめるかに絞る。
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Pt100・Pt500・Pt1000 は「0 ℃での抵抗値」の違い
JIS C 1604 は抵抗素子の種類を、0 ℃での公称抵抗値で Pt100(100 Ω)、Pt500(500 Ω)、Pt1000(1000 Ω)とし、いずれも 100 ℃と 0 ℃の抵抗値の比 R100/R0 を 1.385 1 としている[1]。温度と抵抗値の関係は、−200〜0 ℃と 0〜850 ℃の二つの式で規準抵抗値として決められていて、Pt500 と Pt1000 の規準抵抗値は Pt100 の値に R0/100 Ω を掛けて求める[1]。
ここで押さえておきたいのは、許容差のクラスが ℃で決められていて、公称抵抗値の違いで変わらないことである。Pt1000 だから Pt100 より許容差が狭い、ということにはならない。温度測定の方法の規格が 2 線式では導線抵抗を測温体の抵抗に比べて十分に小さくするよう求めているとおり[3]、抵抗値の大きい Pt1000 は導線抵抗の影響が相対的に小さくなるが、精度を決めるのは許容差クラスと、測り方の条件である。また式が 850 ℃まであることは、測温抵抗体を 850 ℃まで使えることを意味しない。使ってよい温度は、下で見る使用温度区分と許容差の温度範囲で決まる[1]。
許容差クラスは「温度範囲」と一緒に指定する
測温抵抗体の許容差は、使う抵抗素子が巻線か薄膜かで、許容差の式は同じでも適用される温度範囲が違う[1]。
| 許容差クラス | 許容差(|t| は温度の絶対値) | 適用温度範囲(巻線) | 適用温度範囲(薄膜) | 0 ℃ | 100 ℃ |
|---|---|---|---|---|---|
| AA | ±(0.1 ℃+0.001 7|t|) | −50〜250 ℃ | 0〜150 ℃ | ±0.10 ℃ | ±0.27 ℃ |
| A | ±(0.15 ℃+0.002|t|) | −100〜450 ℃ | −30〜300 ℃ | ±0.15 ℃ | ±0.35 ℃ |
| B | ±(0.3 ℃+0.005|t|) | −196〜600 ℃ | −50〜500 ℃ | ±0.30 ℃ | ±0.80 ℃ |
| C | ±(0.6 ℃+0.01|t|) | −196〜600 ℃ | −50〜600 ℃ | ±0.60 ℃ | ±1.60 ℃ |
表は JIS C 1604 の表 3 と表 4 から引いた[1]。100 ℃の値は巻線の抵抗素子を使った測温抵抗体の表の値である。表の範囲と異なる温度範囲で使う場合は、その温度範囲を常に明記することで規格を適用できる。表に無いクラスや温度範囲を設ける場合は受渡当事者間で協定し、決定するとされ、その扱いの中で温度範囲の指定のない許容差クラスは有効としないとも書かれている[1]。
ここから、発注書の書き方が決まる。「クラス A」と書いたら、どの温度範囲で A を求めるのかを書く。装置の使う温度が 50〜200 ℃なら、その範囲を書く。巻線か薄膜かでクラス A が保証される範囲が違うので(薄膜は −30〜300 ℃)、300 ℃を超える範囲でクラス A を求めるなら、巻線の素子であることも求めることになる。
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3 導線式・4 導線式:クラス AA と A は 2 導線式にできない
測温抵抗体の内部導線の結線方式は、2 導線式・3 導線式・4 導線式の三つである[1]。3 導線式は抵抗素子の一端に 2 本、他端に 1 本の導線をつないで導線抵抗の影響を除けるようにしたもので、導線は材質・線径・長さ・電気抵抗が等しく、全長にわたって同じ温度分布になるように並べなければならない[1]。4 導線式は両端に 2 本ずつつないだものである[1]。そして、許容差クラスが AA と A の測温抵抗体は、すべて 3 導線式か 4 導線式とする[1]。
温度測定の方法の規格 JIS Z 8704 は、計測器との結線の使い分けを次のように書いている。4 線式結線は導線抵抗による誤差を補償できるので、標準抵抗温度計の校正など極めて精度の良い測定に使う。3 線式結線は、計測器に記載された外部抵抗の値以内であれば導線抵抗による誤差の補償が実用的に十分な精度で行えるので、一般の温度測定に使う。2 線式結線は導線抵抗による誤差を除き得ないので、測温抵抗体を用いる 2 線式結線は良い精度の温度測定には適さない[3]。さらに、3 導線式でも導線間に抵抗のばらつきがあると誤差の原因になり、1 導線当たりの抵抗値は受信器が規定する値を超えないこと、とも注意している[3]。
購買の立場で効いてくるのは、センサーと温度計(または温度伝送器)を別々の仕入先から買う場合である。センサー側を 3 導線式にしても、温度計側の入力が対応していなければ意味がない。延長の配線を現場で継ぎ足すなら、3 本の導線を同じ電線でそろえる。仕様書には導線形式と、つなぐ計測器の型番、延長配線の長さを書いておく。端子の識別は、規格の図に示す A・B の記号か色で行う[1]。
測定電流と自己加熱:測る条件をそろえる
測温抵抗体は電流を流して抵抗値を測るので、その電流で素子自身が温まる(自己加熱)。JIS C 1604 は測定電流を直流または 100 Hz 以下の交流とし、一般には 0.5 mA・1 mA・2 mA を用いるとしている。最大測定電流は、自己加熱の大きさが許容差クラスの許容差の 25 % を超えない値とする[1]。精密工学会誌の解説は、自己加熱は測定電流の二乗に比例し、0.1 K 程度の信頼性でよければほとんど気にする必要はないが、それより高い信頼性が要る場合は測定結果に最も大きな影響を及ぼす要因になりうる、と説明している[4]。
規格は、許容差の合否の判定でも測る条件を重く見ている。製造業者が判定するときは、測定結果に拡張不確かさを付け、その温度差全体が許容差の内側にある場合だけ合格とする。使用者が判定するときは、その温度差全体が許容差の外側にある場合だけ不合格とする[1]。測温抵抗体を浸す媒体や電流値が違えば自己加熱の影響が、周囲環境や挿入長さが違えば熱の流入の影響が出て、結果に差が出るので、受渡当事者間で判定結果を比べるときは測定条件を統一するか自己加熱量の差を補正し、必要なら協定する、としている[1]。
つまり「受入で測ったらクラス外だった」と仕入先に返す前に、測定電流・媒体・挿入長さが製造業者の試験と同じかを確かめる必要がある。受入で校正をするなら、その条件を発注の時点で合わせておく。測定のばらつきの評価のしかたは測定システム解析を仕入先に求めるときで扱っている。
挿入長さ:差し込みが浅いと「どこの温度か」分からない
JIS C 1604 は、最小挿入長さの試験として、85 ℃以上の恒温液槽に外径の 20 倍以上挿入した状態から挿入長さを徐々に減らし、0.1 ℃変化したときの挿入長さを測る方法を定めている[1]。製造業者は検出部の長さと抵抗素子の位置を情報として提供する[1]。精密工学会誌の解説は、測りたい領域に十分深く挿入することを大前提とし、熱伝導の悪いガラスやセラミックスが最外層のものでも外径の 20 倍くらい、金属シースの場合は直径の 40 倍は欲しい、と書いている[4]。
装置の設計で取付けの深さが決まっているなら、その深さで足りる外径と検出部の長さを選ぶ。カタログの最小挿入長さと、製造業者が提供する検出部の長さを、取付けの図面と突き合わせておく。
使用温度区分・絶縁抵抗・寸法
使用温度区分
JIS C 1604 は、使用温度範囲を記号で L(低温用 −196〜100 ℃)、N(常温用 −30〜200 ℃)、M(中温用 0〜350 ℃)、H(高温用 0〜600 ℃。シース測温抵抗体は 500 ℃)に区分し、範囲が表と異なる場合は明記しなければならないとしている[1]。
絶縁抵抗
外径が規格の表の値で長さ 1 000 mm 以下のものについて、常温では直流 100 V か 125 V で 100 MΩ 以上、温度が上がるにつれて下限の値が下がり、たとえば 251〜450 ℃では 2 MΩ 以上(試験電圧は直流 10 V か 25 V)とされている[1]。耐電圧(端子と保護管の間に交流 500 V を 1 分間)は、厳しい環境条件で使うものに適用する項目で、適用は受渡当事者間の協定による[1]。
寸法と曲げ
外径は 3〜15 mm の系列、長さは 250・300・500・750・1 000 mm が通常の寸法で、1 000 mm を超える長さは協定による[1]。シース測温抵抗体の保護管部分の最小曲げ半径は保護管外径の 5 倍で、先端の 100 mm は抵抗素子が入っているので曲げられない[1]。取付けで曲げて使うなら、この条件を組立の作業指示に入れる。
熱電対との使い分け
熱電対の JIS C 1602 は、IEC 60584-1:2013 を基にした規格で、熱電対の種類ごとにクラス 1〜3 の許容差を決めている[2]。よく使われる K の例を Pt100 と並べると、次のようになる。
| センサー | 区分 | 温度範囲 | 許容差 |
|---|---|---|---|
| 熱電対 K(JIS C 1602) | クラス 1 | −40〜375 ℃ / 375〜1 000 ℃ | ±1.5 ℃ / ±0.004|t| |
| 熱電対 K(JIS C 1602) | クラス 2 | −40〜333 ℃ / 333〜1 200 ℃ | ±2.5 ℃ / ±0.007 5|t| |
| 測温抵抗体 Pt100(JIS C 1604) | クラス A(巻線) | −100〜450 ℃ | ±(0.15 ℃+0.002|t|)。100 ℃で ±0.35 ℃ |
| 測温抵抗体 Pt100(JIS C 1604) | クラス B(巻線) | −196〜600 ℃ | ±(0.3 ℃+0.005|t|)。100 ℃で ±0.80 ℃ |
表は両規格の許容差の表から引いた[1][2]。Pt100 の許容差が K のクラス 1 より狭いかどうかはクラスで変わる。クラス A(AA)なら数百 ℃以下で K のクラス 1 より狭いが、クラス B は約 240 ℃で ±1.5 ℃に達してそれを超えると広くなり、クラス C は 90 ℃前後で同じ幅になる。熱電対より精度を求めて Pt100 を選ぶなら、クラス A 以上を指定する。600 ℃を超える高温は測温抵抗体の使用温度区分(高温用 H でも 600 ℃まで)の外で、熱電対の領域になる[1]。
熱電対では、センサーと計測器の間を補償導線でつなぐのが普通で、その補償導線にも許容差がある。JIS C 1610 は K 用のエクステンション形 KX のクラス 1 を ±60 μV(測温接点 900 ℃で約 ±1.5 ℃相当)、クラス 2 を ±100 μV(約 ±2.5 ℃相当)としている[5]。熱電対で精度を詰めるなら、センサーのクラスだけでなく補償導線のクラスと種類も指定しないと、配線の部分で誤差が足される。測温抵抗体は銅の導線で延長し、導線抵抗の影響を 3 導線式・4 導線式で除く、という別の考え方になる[3]。
受入と表示
JIS C 1604 の受渡検査の項目は、外観、寸法、温度に対する抵抗値の特性、常温での絶縁抵抗である[1]。温度特性の受渡試験は、クラス AA と A では −5〜30 ℃の 1 点(0 ℃が望ましい)で行う[1]。つまり規格の受渡検査は、使う温度の上限付近までは見ていない。上限付近の精度が重要なら、その温度での試験成績を追加で求めるか、校正証明書を求める。形式検査(上限温度での安定性、温度サイクル、ヒステリシス、応答時間など)の項目は受渡当事者間の協定による[1]。
表示は、種類の記号、素子の数、許容差のクラス、測定電流、使用温度区分の記号または使用温度範囲、製造業者名、製造年月を見やすいところに消えない方法で表示する[1]。受入では、この表示を発注の内容と突き合わせる。
仕様書・発注書に書く項目
JIS C 1604 の呼び方は、名称、種類の記号、許容差クラス、測定電流、使用温度区分の記号または使用温度範囲、導線形式、寸法(外径×長さ)で構成され、例として「測温抵抗体 Pt100 クラス A 1 mA H 3 導線式 6×500 mm」「シース測温抵抗体 Pt100 クラス B 1 mA M 3 導線式 6×500 mm」が挙げられている[1]。これに次を足すと、仕入先と食い違いにくい。
1. 許容差クラスを求める温度範囲(呼び方の使用温度区分とは別に)、巻線か薄膜か
2. つなぐ計測器の型番と入力の形式、延長配線の長さと電線
3. 取付けの深さと、検出部の長さ・最小挿入長さの確認
4. 保護管やサーモウエルの材料(規格の測温抵抗体には分離できる保護管とサーモウエルは含まれないので、別の部品として指定する[1])
5. 試験成績・校正証明書の要否と、測定の条件(電流・媒体)
端子箱やケーブルの防水が要る設置場所なら、外郭の保護等級も指定する。指定のしかたはIP 等級の指定を参照してほしい。
よくある質問
Q. Pt1000 にすれば Pt100 より精度が上がりますか。
JIS C 1604 の許容差クラスは ℃で決められていて、Pt100・Pt500・Pt1000 で同じ式である[1]。精度を上げたいなら、許容差クラスと導線形式、測定電流を指定する。
Q. 2 線式の安いものでも、クラス A と書いてあれば使えますか。
JIS C 1604 では、クラス AA と A は 2 導線式には適用しない[1]。2 導線式で「クラス A」と表示されているなら、どの規格のどの条件の値かを確かめる。
Q. 受入で測ったら許容差を外れていました。返品できますか。
規格は、使用者が判定する場合、拡張不確かさを付けた温度差全体が許容差の外側にある場合だけ不合格としている[1]。測定電流・媒体・挿入長さが製造業者の試験と違えば結果に差が出るので[1]、まず条件をそろえて測り直し、判定の方法を仕入先と合わせる。
まとめ
Pt100 は JIS C 1604 の呼び方(許容差クラス・測定電流・使用温度区分・導線形式・外径×長さ)で指定し、許容差クラスは必ず温度範囲と一緒に書く。クラス AA と A は 3 導線式か 4 導線式で、3 線式は導線をそろえ、計測器の外部抵抗の範囲で使う。受入の判定は測定電流・媒体・挿入長さをそろえてから行い、上限温度付近の精度が要るなら試験成績を追加で求める。精度を求めるなら Pt100 のクラス A 以上を指定する(クラス B は約 240 ℃を超えると K のクラス 1 より許容差が広い)。600 ℃を超えるなら熱電対と補償導線のクラスまで指定する。
同じ束では、絶縁抵抗試験と耐電圧試験の指定、配線の保護に使う熱収縮チューブの選び方、ボールバルブと仕切弁の選び方、オイルシール JIS B 2402 の指定も扱っている。センサーにつなぐコネクタはコネクタを調達するとき確かめることを参照してほしい。
出典・参考資料
- JIS C 1604:2013 測温抵抗体(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2013 年 12 月 20 日改正・2023 年 6 月 20 日確認)
- JIS C 1602:2015 熱電対(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2015 年 3 月 20 日改正・2024 年 10 月 21 日確認)
- JIS Z 8704:1993 温度測定方法-電気的方法(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/1993 年 2 月 1 日改正・2024 年 6 月 20 日確認)
- 浜田登喜夫「白金抵抗温度計を用いた精密温度測定」精密工学会誌 76 巻 8 号(精密工学会/2010 年)
- JIS C 1610 熱電対用補償導線(JIS 検索の閲覧資料・本体 2012 年版と追補 1)(日本産業標準調査会/最新改正 2024 年 2 月 20 日)
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