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絶縁抵抗試験と耐電圧試験の指定——試験電圧・時間・判定値は製品規格から決める

この記事のポイント(結論先出し)
絶縁抵抗試験と耐電圧試験の条件は、一つの数字で決まらない。試験電圧・時間・判定値は、その製品に当てはまる安全規格や製品規格が、絶縁の種類(基礎絶縁・付加絶縁・強化絶縁)と定格電圧ごとに決める[1][4]。たとえば家庭用電気機器の安全規格 JIS C 9335-1 は、形式の試験では定格電圧 150 V を超え 250 V 以下の機器の基礎絶縁に交流 1 250 V を 1 分間、製造ラインで全数に行うルーチン試験では 1 000 V を 1 秒間と、同じ機器でも試験の目的で電圧と時間を変えている[1]。絶縁抵抗の 0.1・0.2・0.4 MΩ は電気設備の電路の値で、部品や製品の受入の判定値ではない[3]。仕様書には、どの規格のどの試験か、どこからどこへ掛けるか、試験電圧と時間、判定(漏れ電流の上限や抵抗値の下限)、全数か抜取りか、記録を書く。携帯用の絶縁抵抗計(JIS C 1302)の定格測定電圧は直流 25〜1 000 V の 7 段階なので、どれで測るかも書く[2]。
目次
「耐電圧試験済みのこと」で何が決まらないか
電気部品やユニットの発注書には、「絶縁抵抗 100 MΩ 以上」「耐電圧 AC 1 500 V 1 分」のように数字だけが書かれていることが多い。数字があるのは一歩前進だが、それでも決まっていないことがある。どの端子とどこの間に掛けるのか、試験の直前に何をしておくのか、絶縁が壊れたとみなす漏れ電流はいくつか、全数に掛けるのか一部だけか、である。逆に「耐電圧試験済みのこと」とだけ書けば、仕入先は自社の標準の条件で試験する。
この記事は、部品やユニット、製品を外部に発注するときに、絶縁抵抗試験と耐電圧試験の条件を仕様書にどう入れるかを扱う。電線や端子を束ねたワイヤーハーネスの電気検査(導通・耐電圧・絶縁抵抗の順番)はワイヤーハーネスの発注で指定することで扱ったので、ここでは製品全般に共通する決め方に絞る。電気用品安全法の対象になる品物の扱いは電気用品安全法(PSE)の対象部品を調達するときを参照してほしい。
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二つの試験は何を見ているか
絶縁抵抗試験は、絶縁された部分の間に直流の電圧を掛けて、その抵抗値を測る。絶縁物の吸湿、汚れ、劣化で値が下がるので、状態の確認に向く。測る道具は絶縁抵抗計で、JIS C 1302 が規格である[2]。
耐電圧試験は、通常より高い電圧を決まった時間掛けて、絶縁が破壊しないかを見る。JIS C 9335-1 は、試験中に絶縁破壊が生じてはならず、電圧降下を伴わないグロー放電は無視する、としている[1]。製造ラインで行うルーチン試験では、試験回路の電流が 5 mA を超えたら絶縁破壊が生じたとみなす(漏えい電流の大きい機器は 30 mA まで上げてよい)[1]。
どちらの試験も、「どこからどこへ」を決めないと意味がない。絶縁の協調の規格 JIS C 60664-1 は、装置の適切な機能だけに必要な導電部間の絶縁を機能絶縁、危険な充電部の基本的な保護を提供する絶縁を基礎絶縁、絶縁故障の保護のために基礎絶縁に付加する絶縁を付加絶縁、その二つからなるものを二重絶縁、二重絶縁と同等の感電防止の保護レベルをもつものを強化絶縁と定義している[4]。試験の電圧は、この絶縁の種類ごとに違う値が決められる。
試験条件は「製品規格」が決める
JIS C 60664-1 は、安全を扱う製品規格が空間距離・沿面距離・固体絶縁の基準を決めるための要求事項を提供する基本安全規格で、その中に絶縁協調にかかわる電気的試験の方法も含まれている[4]。つまり、個々の製品にどの電圧を掛けるかは、その製品の規格が、この基本規格の考え方に沿って決める、という作りである。
家庭用とそれに類する電気機器の安全規格 JIS C 9335-1(IEC 60335-1:2020 を基にした規格)を例に見ると、決め方がよく分かる[1]。この規格の耐電圧の試験は、絶縁部分に 50 Hz か 60 Hz の電圧を 1 分間印加し、電圧の値を絶縁の種類と定格電圧で分けている[1]。
| JIS C 9335-1 の試験 | 基礎絶縁 | 付加絶縁 | 強化絶縁 | 時間 |
|---|---|---|---|---|
| 16.3(漏えい電流の試験に続く耐電圧。定格電圧 150 V を超え 250 V 以下) | 1 250 V | 1 750 V | 3 000 V | 1 分間 |
| 13.3(動作温度での耐電圧。同上) | 1 000 V | 1 750 V | 3 000 V | 1 分間 |
| 附属書 A ルーチン試験(定格電圧 150 V を超える) | 1 000 V | 二重絶縁または強化絶縁で 2 500 V | 1 秒間 | |
| 附属書 A ルーチン試験(定格電圧 150 V 以下) | 800 V | 二重絶縁または強化絶縁で 2 000 V | 1 秒間 | |
表は JIS C 9335-1 の表 4・表 7・表 A.1 から引いた[1]。動作電圧が 250 V を超える部分は動作電圧 U から計算し、基礎絶縁なら 16.3(表 7)では「1.2U+950」、13.3(表 4)では「1.2U+700」である[1]。ルーチン試験では、交流の代わりに表の値の 1.5 倍の直流電圧を加えてもよい[1]。
この表から言えることが三つある。一つ目は、同じ機器でも試験の目的で条件が違うことである。設計を確かめる試験は 1 分間、製造のばらつきを見つけるために全数に行うルーチン試験は 1 秒間と、時間も電圧も別に決めている。附属書 A は、ルーチン試験を、安全を損なうおそれがある製造上のばらつきを見つけるために製造業者が各機器について行うもので、通常は組立後の完成品で行う、としている[1]。二つ目は、絶縁の種類で電圧が 2 倍以上違うことで、どこに強化絶縁があるかを知らずに電圧を決めることはできない。三つ目は、試験には電圧を掛ける前の手順が含まれていることで、16.3 の耐電圧は 16.2 の漏えい電流の試験の直後に行い、絶縁物の可触部分は金属はくで覆って試験する[1]。
ただし JIS C 9335-1 は、工業目的専用の機器には適用しない[1]。工場の設備や産業機器の部品にこの表の値をそのまま当てはめてよいわけではない。示したいのは、試験条件は製品の規格が絶縁の種類と定格電圧から決めるもので、発注側が一つの数字を思いつきで書くものではないという決め方の型である。自社の製品に当てはまる安全規格(顧客の仕様書が指定する規格、輸出先の規格など)を設計に確かめ、その規格の条項番号で試験を指定する。
部品の規格にも、それぞれの条件がある
部品の製品規格は、その部品に合った条件をもっている。たとえば測温抵抗体の JIS C 1604 は、外径が規格の系列で長さ 1 000 mm 以下のものについて、常温での絶縁抵抗を直流 100 V か 125 V で測り 100 MΩ 以上、耐電圧を端子と保護管の間に交流 500 V を 1 分間とし、しかも耐電圧は厳しい環境条件で使うものに適用する項目で、適用は受渡当事者間の協定による、としている[5]。保護管の外径が 4.5 mm 以下のものや回路が複数あるものは、試験電圧を半分にする[5]。
細い部品や電子部品を含むユニットに、完成品と同じ高い電圧を掛けると、試験そのもので部品を傷めることがある。JIS C 9335-1 も、試験中に電子回路の部品に過大な電圧が加わらないよう注意するとしている[1]。部品を買うときは部品の規格の条件で、完成品を買うときは完成品の規格の条件で試験を求め、両者を混ぜない。センサーの指定のしかたは同じ束の測温抵抗体 Pt100 の指定で扱っている。
絶縁抵抗の「0.1 MΩ」は電路の値
絶縁抵抗の判定値としてよく引かれるのが、電気設備に関する技術基準を定める省令の第 58 条である。電気使用場所の低圧の電路について、電線相互間と電路と大地との間の絶縁抵抗を、開閉器や過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに、使用電圧 300 V 以下で対地電圧 150 V 以下なら 0.1 MΩ、その他の 300 V 以下なら 0.2 MΩ、300 V を超えるものは 0.4 MΩ 以上としている[3]。
これは建物や工場に施設された電路の値で、部品や製品の受入検査の合否の基準ではない。上で見たとおり、測温抵抗体の規格は常温で 100 MΩ 以上を求めている[5]。製品の絶縁抵抗の判定値は製品の規格で決め、電路の値を流用しない。
測る道具:絶縁抵抗計の定格測定電圧
JIS C 1302 は、電池を内蔵する定格測定電圧 1 000 V 以下の携帯用の絶縁抵抗計の規格で、電源が切断された電路と機器の絶縁測定、機器・器具・部品などの絶縁測定などを対象にしている[2]。定格測定電圧は直流で 25 V・50 V・100 V・125 V・250 V・500 V・1 000 V のいずれかとし[2]、許容差は第 1 有効測定範囲で表示値の ±5 %、第 2 有効測定範囲で ±10 % である[2]。開放回路電圧は定格測定電圧の 1.25 倍を超えてはならない[2]。
絶縁抵抗の値は掛ける電圧で変わるので、判定値は「何 V で測って何 MΩ 以上」とセットで書く。測温抵抗体の規格が常温は 100 V か 125 V、高温では 10 V か 25 V と分けているように[5]、測る電圧も規格の側が決めている。仕入先の検査設備がその定格測定電圧の計器を持っているかは、見積の段階で確かめておく。
仕様書・発注書に書く項目
| 項目 | 書くこと(提案) |
|---|---|
| 根拠の規格 | 適用する安全規格・製品規格と版、条項番号(形式の試験かルーチン試験か) |
| 掛ける箇所 | 充電部と可触金属部、一次と二次、端子と外郭など。絶縁の種類(基礎・付加・強化) |
| 耐電圧の条件 | 交流か直流か、周波数、試験電圧、時間、昇圧の方法 |
| 耐電圧の判定 | 絶縁破壊とみなす電流(例 5 mA)、グロー放電の扱い |
| 絶縁抵抗の条件と判定 | 測定電圧(絶縁抵抗計の定格測定電圧)、判定値(何 MΩ 以上)、試験の順番(耐電圧の前か後か) |
| 試験の前処理 | 試験時の温度・湿度の状態、電源から切り離すか、金属はくで覆う箇所、切り離す部品(保護インピーダンスなど) |
| 数量と記録 | 全数か抜取りか、試験記録の項目(製造番号・電圧・時間・結果)、試験機の校正 |
前処理の欄は書き落としやすい。JIS C 9335-1 では、耐電圧の試験の前に保護インピーダンスを充電部から切り離しておく、機器は電源に接続せずに室温で試験する、といった条件が決められている[1]。同じ電圧を掛けても、前処理が違えば別の試験になる。
試験の条件と判定は、発注の時点で書いて渡しておく。「念のため耐電圧も全数で」のような追加を量産の途中で持ち出すと、見積の前提が崩れ、合格の基準を後から動かしたことにもなりかねない。不合格品を返すときの線引きは受領拒否・返品・やり直しのルールにまとめている。
受入で確かめること
試験記録と製造番号の対応
全数のルーチン試験を求めたなら、製造番号ごとに試験の結果が追えるかを確かめる。
試験機と校正
耐電圧試験機と絶縁抵抗計の校正の記録を求める。絶縁抵抗計なら定格測定電圧と許容差が JIS C 1302 のどの範囲かも見る[2]。
自社で再試験するとき
受入で耐電圧試験をやり直すと、同じ製品に何度も高い電圧を掛けることになる。JIS C 9335-1 のルーチン試験が 1 秒間と短く設定されているのは、全数に掛ける試験だからである[1]。受入で行うなら、電圧と時間を製造側の試験と合わせ、繰り返しの印加で絶縁を傷めないかを設計に確かめる。高い電圧を扱う作業になるので、試験機の置き場所と作業の手順、作業者の安全の措置を先に整える。
よくある質問
Q. 「AC 1 500 V 1 分」と書いておけば安全側ですか。
電圧が高ければよいわけではない。製品規格は絶縁の種類と定格電圧で電圧を決め、ルーチン試験は短い時間で行う[1]。必要以上の電圧や時間は部品を傷めることがあり、電子回路の部品に過大な電圧が加わらないよう注意するよう規格も書いている[1]。適用する規格の条項で指定する。
Q. 絶縁抵抗は 0.1 MΩ あれば合格ですか。
0.1 MΩ は電気使用場所の低圧の電路(対地電圧 150 V 以下)の値である[3]。部品や製品の判定値は製品の規格で決まり、たとえば測温抵抗体(外径が規格の系列で長さ 1 000 mm 以下のもの)は常温で 100 MΩ 以上である[5]。
Q. 交流の耐電圧試験機がない仕入先に、直流で代えてよいと言ってよいですか。
JIS C 9335-1 のルーチン試験は、交流の代わりに表の値の 1.5 倍の直流電圧を加えてもよいとしている[1]。代えてよいかと換算の倍率は、適用する規格の条項で決まるので、規格を確かめてから認める。
まとめ
絶縁抵抗試験と耐電圧試験の条件は、製品に当てはまる安全規格・製品規格が、絶縁の種類と定格電圧から決める[1][4]。同じ機器でも形式の試験(1 分間)とルーチン試験(1 秒間)で条件が違い、部品には部品の規格の条件がある[1][5]。絶縁抵抗の 0.1・0.2・0.4 MΩ は電路の値で、受入の判定値に流用しない[3]。仕様書には規格と条項、掛ける箇所、電圧と時間、判定、前処理、全数か抜取りか、記録を書き、測定電圧を携帯用の絶縁抵抗計(JIS C 1302)の定格測定電圧で指定する[2]。
同じ束では、熱収縮チューブの選び方、オイルシール JIS B 2402 の指定、ボールバルブと仕切弁の選び方も扱っている。外郭に水がかかる製品はIP 等級の指定も合わせて読んでほしい。
出典・参考資料
- JIS C 9335-1:2023 家庭用及びこれに類する電気機器の安全性-第 1 部:通則(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2023 年 3 月 20 日改正)
- JIS C 1302:2025 絶縁抵抗計(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2025 年 11 月 20 日改正)
- 電気設備に関する技術基準を定める省令(平成九年通商産業省令第五十二号)第 58 条(e-Gov 法令検索(デジタル庁)/令和 5 年 3 月 20 日施行の版)
- JIS C 60664-1:2023 低電圧電力システム内装置用絶縁協調-第 1 部:基本原則,要求事項及び試験(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2023 年 2 月 20 日改正)
- JIS C 1604:2013 測温抵抗体(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2013 年 12 月 20 日改正・2023 年 6 月 20 日確認)
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