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投稿日:2026年10月8日

機械・設備の振動解析を頼むとき——測る前に決めること、測定点と条件、対策の確かめ方

この記事のポイント(結論先出し)

機械や設備の振動を測って解析してもらうときは、何のために測るかを先に決める。機械の状態を見る測定は機械の軸受まわりで行い[1]、近隣への振動は敷地の境界で振動レベル計を使って鉛直方向に測る[4][5]。目的が違えば、測る場所も量も比べる基準も違う。測る前には、運転状態・測定点と方向・単位・暗振動(測りたい振動以外の振動)の扱いを決めておく[1][3]。振動の大きさだけを並べても原因は分からないことがあり、振動数ごとの分析が要る場合がある[1]。対策の効果は、同じ位置・同じ方向・同じ運転状態で測った値と比べて確かめる[1]。

何のために測るかで、測り方も基準も変わる

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「設備の振動が気になるので測ってほしい」という依頼は、測定会社や解析会社から見ると情報が足りない。振動の測定には目的がいくつかあり、目的ごとに拠り所にする規格や法令が違うからである。発注側が最初に決めるのは、測った結果を何の判断に使うかである。

目的 どこで測るか 何を測り、何と比べるか
機械の状態を見る(運転監視・受入試験) 軸受・軸受箱など、機械の振動全体を表す構造部材 広帯域の振動速度の rms 値など。JIS B 0906 の評価ゾーンや、自社で決めた警報値・停止値と比べる[1]
近隣への振動(振動規制法の対象施設) 特定工場等の敷地の境界線 振動レベル(デシベル)を鉛直方向に。都道府県等が定めた規制基準と比べる[4][5]
共振や騒音の原因を探す 原因と疑う部材や、その周辺の複数の点 振動数ごとの成分や、固有振動数・固有モード。運転中の振動数と重なっていないかを見る[2]
買う部品・製品が振動に耐えるか 振動試験機に取り付けた供試品 試験の条件は仕様で決める(別の記事で扱う)

最後の行は、測定ではなく試験の話である。買う部品の仕様に振動試験の条件を書く方法は、振動・衝撃試験を仕様に入れるときの記事で扱った。この記事は、すでにある機械・設備の振動を測って解析してもらう場合に絞る。

機械の状態を見る測定

JIS B 0906(ISO 10816-1 を翻訳した規格)は、完成した機械の軸受箱のような回転しない部分で測った振動の測定と評価の一般的な指針で、運転監視と受入試験に適用するとしている[1]。同じ規格は、振動測定は診断や解析的研究にも使えるが、この規格が指針を与えるのは運転監視と受入試験だけだ、と範囲を区切っている[1]。原因を突き止める診断は、この規格の物差しだけでは足りないということである。また、評価基準は機械自身が出す振動についてのもので、外から伝わってくる振動は対象外とされている[1]。

近隣への振動

振動規制法は、工場・事業場に設置される施設のうち著しい振動を発生する施設で政令で定めるものを「特定施設」とし、規制基準を「特定工場等の敷地の境界線における大きさの許容限度」と定義している[4]。規制基準は、指定地域ごとに都道府県知事が時間と区域の区分ごとに定め、特定工場等を設置している者は規制基準を守らなければならない(第 4 条・第 5 条)[4]。

環境省の告示は、測定は計量法の条件に合格した振動レベル計を用い、鉛直方向について行い、振動感覚補正回路は鉛直振動特性を用いる、と定めている[5]。工場の中で機械を測るのとは、測る場所も、使う計器も、出てくる数字の単位も違う。近隣から苦情が来ているときに機械の軸受の振動速度だけを測っても、規制基準と比べることはできない。

測る前に決めること

目的が決まったら、測定の条件を依頼書に書く。後で対策の前後を比べることまで考えると、ここで決めたことを記録に残しておくことが大事になる。

運転状態

JIS B 0906 は、振動計測は同意された通常の運転状態になった後に行わなければならず、その他の状態で行った追加の計測は評価に適用できない、としている[1]。どの負荷・回転速度・温度になってから測るのかを、依頼する側と測る側で決める。機械によっては、ある運転条件では満足な振動状態なのに別の運転条件では不満足になる「振動感度」をもつことがあり、その疑いがあるときは追加の試験について当事者間で合意することが望ましい、とも書かれている[1]。運転条件を変えると振動が変わる設備なら、複数の運転点で測る計画にする。

測る量と単位

振動の量には変位・速度・加速度があり、さらにピーク値・ピークピーク値・rms 値などの表し方がある。JIS B 0906 は、広帯域の加速度・速度・変位の間にも、ピーク値・ピークピーク値・rms 値・平均値の間にも単純な関係はないとし、混乱を避けるにはいつも同じ測定単位を使うことが重要だ、としている[1]。回転機械の広帯域振動の評価は、振動エネルギーと関係付けられることから振動速度の rms 値で行うのが一般的だとも書かれている[1]。前回の測定と比べる予定があるなら、前回と同じ量・同じ単位を指定する。

暗振動の扱い

工場では、測りたい機械以外の機械や車両も振動を出している。JIS B 0906 は、計測値が推奨された制限値を超えたときは、機械を止めて環境の振動を計測し、暗振動が計測値に影響していないことを確かめる必要がある場合があるとし、暗振動が制限値の 3 分の 1 より大きいときはできれば減らす処置をとることが望ましい、としている[1]。

振動レベルの測定方法を定めた JIS Z 8735 は、対象の振動があるときとないときの指示値の差が 10 dB 以上あることが望ましいとし、差が 10 dB 未満でも暗振動が定常的なら補正して振動レベルを推定できる、としている[3]。規格の例では、暗振動が 65 dB の場所で機械を運転して 70 dB を得たとき、差が 5 dB なので補正値 −2 dB を加え、機械だけの振動レベルを 68 dB とする[3]。差が 3 dB 未満なら、測定条件の変更などを考える[3]。

対象の振動があるときとないときの指示値の差 補正(JIS Z 8735・環境省告示)
3 dB 3 dB 差し引く
4〜5 dB 2 dB 差し引く
6〜9 dB 1 dB 差し引く
10 dB 以上 補正しない(差が 10 dB 以上あることが望ましい)
3 dB 未満 測定条件の変更などを考える(JIS Z 8735)

規制基準との比較に使う測定では、告示が同じ刻みの補正を定めている[5]。依頼書には、測定の時間帯(他の設備が止まっている時間に測れるか)と、暗振動をどう測って記録するかを書いておく。

測定点と方向をどう決めるか

機械の状態を見る測定では、JIS B 0906 は、測定は軸受、軸受箱、又は動荷重に十分応答し機械の振動の全体を特徴付ける構造部材で行うべきだとし、各測定位置での振動の挙動を明らかにするには直交 3 方向で測る必要がある、としている[1]。全点の測定は一般に受入試験だけに必要で、運転監視では軸に直交する水平又は垂直の一つ又は二つの方向で測るのが普通であり、軸方向の振動を見るならスラスト軸受の位置が機械の振動状態を最もよく表す、とも書かれている[1]。

試験用の架台で受入試験をする場合は、支持の仕方が計測結果に大きく影響するので、試験装置全体の固有振動数が機械の回転速度やその主な高調波と一致していないことを確かめるべきだとされている[1]。現地と違う架台で測った値を、そのまま現地の判断に使わないということである。異なる基礎の上にある同じ種類の機械の振動は、基礎の動特性がほぼ等しい場合にだけ正しく比べられる、という注意もある[1]。

敷地の境界で測る場合は、告示が振動ピックアップの置き場所を、緩衝物がなく十分踏み固められた堅い場所、傾斜と凹凸のない水平面を確保できる場所、温度・電気・磁気などの影響を受けない場所と定めている[5]。JIS Z 8735 は、測定結果に付記する事項として、測定日時と気象状況、測定場所と見取図、振動源の種類と形式、測定器の種類と形式と製造業者名、振動ピックアップの設置方法と地面の状態、測定値の整理方法などを挙げている[3]。報告書にこれらが入るように、依頼の段階で頼んでおく。

解析の種類を選ぶ

大きさの評価だけで足りるか

JIS B 0906 が想定する評価は広帯域振動の大きさだけで、振動数や位相までは参照しないのが基本である[1]。ほとんどの機械の受入試験や運転監視にはこれで足りるが、同じ規格は、振動数成分に注目しなければ検出できない振動の変化があることに留意する必要がある、とも書いている[1]。

規格の附属書には、ある振動数成分の大きさが 3 mm/s(rms 値・位相角 40°)から 2.5 mm/s(位相角 180°)に変わった例が載っている[1]。大きさだけを見ると 0.5 mm/s 減っただけだが、成分をベクトルとして差を取ると変化量は 5.2 mm/s になり、大きさだけを比べた場合の 10 倍以上になる[1]。

見方(JIS B 0906 附属書 D の例) 変化前 変化後 変化の量
大きさだけ 3 mm/s 2.5 mm/s 0.5 mm/s 減少
大きさと位相(ベクトル) 3 mm/s・40° 2.5 mm/s・180° 5.2 mm/s

「数字が下がったから良くなった」とは言い切れない、ということである。原因を探す依頼なら、振動数ごとの分析(周波数分析)と、必要に応じて位相の計測を頼む。転がり軸受の損傷の検出についても、単純な広帯域の測定では、軸受や軸受箱の強い共振、歯車のかみ合いなど他からの強い振動がある場合に間違った評価をすることがある、と附属書は注意している[1]。

共振を疑うときはモード解析

部材が特定の回転速度で大きく揺れる、特定の音が出る、といった症状では、構造の固有振動数と固有モードを調べることがある。JIS B 0153(機械振動・衝撃用語)は、モード解析を、多自由度の機械系又は連続体の応答を複数の固有振動モードの応答の重ね合わせとみなし、実験的に計測した振動の振幅分布から各固有振動モードを求めること、又は固有振動モードを解析すること、と定義している[2]。また、固有振動数・固有モード・モード質量・モード減衰・モード剛性をまとめてモードパラメータと呼ぶ[2]。

実験で求めるか、有限要素法などの計算で求めるか、両方で照らし合わせるかは、解析会社と相談して決める。モード解析の考え方そのものは振動モード解析の基礎の記事にあるので、ここでは依頼の際に、加振の方法(ハンマーか加振器か)、測定点の数と配置、運転中の振動数との照合まで成果に含めるかを決めておく、という点だけを挙げておく。計算で求める場合の確かめ方は、流れの解析と同じ考え方で、CFD解析を外部に頼むときの記事で扱った。

評価の基準と、対策の確かめ方

評価ゾーンと、警報値・停止値

JIS B 0906 は、振動の大きさを四つの評価ゾーンで判定する考え方を示している。ゾーン A は新しく設置された機械の振動値が通常入る範囲、ゾーン B は一般に制限なく長期運転が可能と考えられる範囲、ゾーン C は長期間の連続運転は期待できないと考えられる範囲、ゾーン D は損傷を起こすのに十分なほど厳しいと通常考えられる範囲である[1]。ただし、ゾーンの境界値は受渡当事者間で同意する受入仕様として使うことを意図したものではない、と明記されている[1]。受入の合否に使う値は、機種ごとの規格や当事者間の取り決めで決める。

運転監視では、長期間の運転で得られる安定した振動値を「基準値(ベースライン)」とし、処置が必要なことを知らせる「警報値」と、それを超えて運転を続けると損傷のおそれがある「停止値」を決めておく考え方が示されている[1]。警報値は測定位置と方向ごとに経験的に得た基準値をもとに決めるのが通例で、オーバホールなどで基準値が変わったら見直すべきだ、とされている[1]。外部に測定を頼むときも、測ったその日の値だけでなく、基準値として社内で使い続ける値を報告書に整理してもらうと、次からの監視に使える。

対策の前後を比べる

対策の効果を確かめる測定では、条件をそろえることがいちばん大事である。JIS B 0906 は、振動の大きさの変化を評価する場合、比べるための基準の振動は同じ位置と方向で、かつ同じ運転状態で測定されなければならない、としている[1]。対策前の測定を誰がどこで測ったか分からないと、対策後の数字が下がっても効果だったのか条件の違いだったのか判断できない。

対策前の測定を外部に頼むときに、対策後の測定も同じ条件で行う前提で、測定点に印を付ける、ピックアップの取付け方を記録する、といった準備を頼んでおく。敷地の境界での測定なら、指示値の読み方も告示が決めている。変動が少なければその指示値、周期的・間欠的に変動するならその変動ごとの最大値の平均値、不規則かつ大幅に変動するなら 5 秒間隔 100 個などの測定値の 80%レンジの上端の数値とする[5]。前後で読み方を変えてしまうと比べられない。

よくある質問

振動計を買って自分たちで測れば足りるか

運転監視のように、同じ位置を同じ条件で定期的に測って変化を見る用途なら、自社で測る意味は大きい。比べる相手が自社の過去の値だからである[1]。一方、近隣への振動を規制基準と比べる測定では、計量法の条件に合格した振動レベル計を使い、告示の方法で測る必要がある[5]。原因を探す周波数分析やモード解析は、計測と解析の経験が結果を左右するので、外部に頼むことが多い。

振動と一緒に騒音も下がるか

構造の振動が音を出している場合は、振動の対策で音が下がることがある。ただし、空気の流れや別の部品から出ている音には効かない。音の測定と対策は別に計画したほうがよい。

画像の検査を AI で自動化する相談もできるか

技術は違うが、目的と確かめ方を先に決める点は同じである。外観検査を AI で自動化するときの記事で、始める前に決めることをまとめた。

まとめ

振動の測定と解析を頼むときは、機械の状態を見るのか、近隣への振動を規制基準と比べるのか、原因を探すのかを先に決める。目的によって、測る場所(軸受か敷地の境界か)、量(振動速度か振動レベルか)、比べる基準が変わる。測る前に運転状態・単位・暗振動の扱い・測定点と方向を決めて記録し、大きさだけで判断できないときは振動数ごとの分析を頼む。対策の効果は、同じ位置・同じ方向・同じ運転状態で比べて確かめる。

出典・参考資料

  1. JIS B 0906:1998 機械振動-非回転部分における機械振動の測定と評価-一般的指針(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/1998 年 1 月 20 日改正・2023 年 10 月 20 日確認)
  2. JIS B 0153:2001 機械振動・衝撃用語(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/2001 年 1 月 20 日改正・2025 年 10 月 20 日確認)
  3. JIS Z 8735:1981 振動レベル測定方法(JIS 検索の閲覧資料)(日本産業標準調査会/1981 年 8 月 1 日制定・2021 年 10 月 20 日確認)
  4. 振動規制法(昭和五十一年法律第六十四号)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  5. 特定工場等において発生する振動の規制に関する基準(昭和 51 年環境庁告示第 90 号)(環境省)

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