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投稿日:2026年10月26日

シム・シムリングの発注——JISの製品規格は無く、厚さの許容差は材料の規格で決まる

この記事のポイント(結論先出し)

隙間の調整に使うシム(シムプレート)とシムリングには、JIS の製品規格が無い。厚さの許容差は、何も書かなければ材料の板・帯の規格の許容差になり、厚さ 0.3 mm のステンレス鋼帯なら ±0.05 mm(JIS G 4305 の表 21)まで許される[1]。これは 0.3 mm の材料が 0.25〜0.35 mm で届いてもよいという意味で、調整用としては粗い。狭い許容差の材料(JIS G 4305 の ET、JIS G 4313 の ET・ST など)を指定するか、製品としての厚さの許容差を図面に数値で書く[1][3]。比べる物差しとして、すきまゲージ(JIS B 7524)のリーフは厚さ 0.10 mm を超え 0.30 mm 以下で ±0.005 mm と決まっている[4]。

シムに JIS の製品規格は無い

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この記事は、機械の組立で軸方向の隙間や高さを合わせるために使う、工業用のシム(シムプレート)とシムリング(輪の形のシム)を発注する立場で、何を図面と注文書に書き、受け取るときに何を確かめるかをまとめる。

シムやシムリングという名称の JIS の製品規格は無い。日本産業標準調査会の JIS 検索で「シム」を引くと、いくつかの規格の本文に語として出てくるが、規格名にシムを含み、シムそのものの寸法や許容差を決めた規格は見当たらない。カタログ品には、メーカーごとに決めた厚さの段階と許容差がある。

規格が無いということは、図面に書いたことと、材料の規格に書いてあることだけが約束になるということである。とくに厚さは、シムの機能そのものなのに、何も書かなければ材料の板や帯の許容差がそのまま当てはまる。

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何も書かないと、厚さの許容差は材料の規格になる

シムの材料として多いのは、冷間圧延ステンレス鋼板・鋼帯(JIS G 4305)、冷間圧延鋼板・鋼帯(JIS G 3141)、ばね用ステンレス鋼帯(JIS G 4313)である。それぞれの規格が厚さの許容差を表で決めている。

JIS G 4305 は、板の厚さの許容差を表 20、帯の厚さの許容差を表 21 で定め、注文者は表 22 の許容差(記号 ET)または表 23 の許容差(記号 ST)を指定してもよいとしている[1]。JIS G 3141 も、通常は幅 600 mm 以上で冷間圧延する場合に表 15、幅 600 mm 未満で冷間圧延する場合に表 16 の許容差が適用されるとし、表 16 のほうが狭い[2]。JIS G 4313 は表 9 に通常の許容差と、記号 ET・ST の狭い許容差を並べている[3]。

同じ「厚さ 0.3 mm」でも、どの規格のどの表が当てはまるかで、許される厚さの幅はこれだけ違う。

規格と表(厚さ 0.3 mm の場合) 条件 厚さの許容差
JIS G 4305 表 21(ステンレス鋼帯・通常) 厚さ 0.30 以上 0.60 未満・幅 1 250 未満 ±0.05 mm
JIS G 4305 表 22(記号 ET) 厚さ 0.25 以上 0.40 未満・幅 160 未満 ±0.025 mm
JIS G 3141 表 15(冷延鋼板・許容差 A) 厚さ 0.25 以上 0.40 未満・幅 30 以上 600 未満 ±0.04 mm
JIS G 3141 表 16(冷延鋼板・許容差 B) 厚さ 0.25 以上 0.40 未満・幅 30 以上 160 未満 ±0.025 mm
JIS G 4313 表 9(ばね用ステンレス鋼帯・記号 ST) 厚さ 0.25 以上 0.40 未満・幅 80 未満 ±0.010 mm
(比較)JIS B 7524 すきまゲージのリーフ 呼び寸法 0.10 を超え 0.30 以下 ±0.005 mm

すきまゲージは隙間を測る道具で、シムの材料ではない。並べたのは、隙間を測る側と隙間を埋める側の精度の差を見るためである。すきまゲージで 0.30 mm と測った隙間に、通常の許容差の 0.3 mm 材を入れると、ゲージの許容差の 10 倍の幅でずれうる[1][4]。

薄いシムにも注意がいる。JIS G 4313 は厚さ 0.10 mm 未満の許容差を受渡当事者間の協定としている[3]。JIS G 4305 の通常の表は厚さ 0.16 mm 以上から始まり、ET の表は 0.10 mm 未満の欄まであるが、幅 250 mm 未満に限られる[1]。0.05 mm のような薄いシムは、規格の表で決まらない場合があるので、許容差を数値で決める。

材料の規格の許容差が当てはまらない部分もある

材料の規格の許容差には、当てはまる場所と当てはまらない場所がある。JIS G 4305 は、帯の厚さの許容差を、先頭部と末端部の正常でない部分には適用しないとしている[1]。JIS G 3141 も、厚さの許容差は縁から 15 mm 以上内側に適用し、鋼帯の表面きずや折れなどの欠点部分には適用しないとしている[2]。コイルの端や縁の近くから切り出したシムは、材料としては規格どおりでも、シムとしては厚さが外れていることがありうる。

どちらの表で作られた材料かも、買う側からは見分けにくい。JIS G 3141 は、幅 600 mm 以上で冷間圧延する場合に表 15、幅 600 mm 未満で冷間圧延する場合に表 16 が「通常」適用されると注記しているが[2]、届いた材料の幅だけでは、どちらの幅で圧延されたかは分からない。狭い許容差が要るなら、記号の指定(ET・ST)が使える規格では記号で、使えない規格では許容差の数値で、注文書に書く。JIS G 4305 と JIS G 4313 は、記号 ET・ST を注文者が指定できる形で規格に入れている[1][3]。指定しない限り通常の表になるので、指定は注文の時点で行う。

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シムを加工する仕入先に材料の手配まで任せる場合は、図面の厚さの許容差を満たす材料を仕入先が選ぶことになる。このときも、どの規格のどの許容差の材料を使ったかを、材料の証明書とあわせて記録に残してもらうと、後で厚さの不具合が出たときに原因を追える。

図面と注文書に書くこと

1. 厚さと、その許容差
「t0.3」だけで終わらせず、「t0.30 ±0.01」のように許容差まで書く。材料の規格の狭い許容差で足りるなら「JIS G 4305 厚さの許容差 ET」のように記号で指定してもよい[1]。

2. 材料と、その状態
ステンレスの板・帯(JIS G 4305 の SUS304 など)、ばね用ステンレス鋼帯(JIS G 4313 の SUS301-CSP など)、冷延鋼板(JIS G 3141 の SPCC など)、黄銅・アルミなどから選ぶ。ばね用ステンレス鋼帯は調質区分によって硬さが変わる材料で、詳しくはばね用ステンレスの記事で扱っている。冷延鋼板の調質と表面の指定はSPCC・SPHC の記事を見てほしい。

3. 表面仕上げ
JIS G 4305 の表面仕上げは No.2D、No.2B、BA、HL などの記号で決まっている[1]。シムは重ねて使うことがあるので、表面の状態も記号で指定しておく。

4. 外形と穴の寸法
シムリングなら外径と内径、ボルトを抜かずに差し込む U 字形のシムなら切り欠きの幅と深さを書く。打ち抜きや板金加工で作る部品の寸法には、図面に JIS B 0405 を引用すれば普通公差が当てはまる[5]。JIS B 0405 は金属の除去加工または板金成形によって製作した部品の寸法に適用する規格で、表題欄の付近に規格番号と公差等級(例:JIS B 0405-m)を指示したときに適用される[5]。普通公差の考え方は普通公差の記事にまとめている。

5. ばりと平らさ
打ち抜いたシムの縁には、ばり(かえり)が出る。ばりはシムの厚さに上乗せされ、重ねたときの高さを狂わせる。ばりの許される高さ、ばり取りの要否、平らさを図面に書く。材料の規格は板や帯としての外観を決めているが、打ち抜いたあとのシムのばりまでは決めていない。

6. 証明書
材料の証明が要るなら、注文時に求める。JIS G 4313 は、注文者の要求があれば製造業者が JIS G 0415 による報告書を提出しなければならないとしている[3]。

何枚も重ねるときの考え方

シムは 1 枚で使うより、厚さの違うものを組み合わせて合わせることが多い。重ねた枚数だけ厚さの誤差が積み上がるので、例えば ±0.025 mm のシムを 4 枚重ねると、最悪の場合は ±0.1 mm の幅になる。必要な調整の精度から、1 枚あたりの許容差と使う枚数の上限を逆算して決める。最悪値で足すか統計的に見積もるかの考え方は公差の積み上げの記事で扱っている。

厚さの段階(0.05、0.1、0.2、0.3 mm など)をそろえて揃えておくと、組立の現場で組み合わせを作りやすい。すきまゲージの規格も、0.01 mm 刻み、0.05 mm 刻み、0.10 mm 刻みの段階で呼び寸法を決めている[4]。自社で使う厚さの段階を決め、品番を厚さごとに分けて管理すると、発注の都度に許容差を書き忘れることがなくなる。

受け取るときに確かめること

厚さはマイクロメータで、縁から離れた所を数か所測る。材料の規格も測る場所を決めていて、JIS G 4305 は板の縁から 15 mm 以上内側の任意の点で、帯は幅とエッジの状態によって縁から 15〜25 mm 以上内側か幅の中央で測るとしている[1]。製品のシムは縁に近い所しか測れないことが多いので、どこを何点測るかを仕入先と合わせておく。

すきまゲージの規格は、リーフの厚さをブロックゲージと測微器で測り、リーフを裏返して同じ箇所を測った 2 つの値の小さいほうを厚さとし、長さ 100 mm 以下なら 5 か所以上を測ると決めている[4]。シムの規格ではないが、薄い板の厚さを両面から測って小さいほうをとる考え方は、反りやばりの影響を避ける方法として参考になる。

ばりは、指でなぞるだけでなく、重ねた状態の高さを測ると影響が分かりやすい。材料の証明書を求めた場合は、記載の材料記号と厚さの許容差の記号が注文と合っているかを確かめる。

よくある質問

カタログのシムを型番で買えば、厚さは保証されますか

JIS の製品規格が無いので、保証されるのはそのメーカーがカタログに書いた許容差だけである。機能に効く厚さなら、カタログの許容差を確かめ、足りなければ別に指定する。

板材から自社で切り出すなら、何を指定して買えばよいですか

材料の規格の狭い許容差を記号で指定する。ステンレス鋼帯なら JIS G 4305 の ET[1]、ばね用ステンレス鋼帯なら ET または ST[3]、冷延鋼板なら幅 600 mm 未満で冷間圧延した帯の許容差(表 16)が当てはまるか[2]を、仕入先に確かめて注文する。

シムリングの外径・内径はどう決めますか

軸や穴に通して使うシムリングは、内径が軸に、外径が相手の穴や当たり面に合っている必要がある。打ち抜きで作る寸法には JIS B 0405 の普通公差を引用でき、中級(m)なら基準寸法 6 mm を超え 30 mm 以下で ±0.2 mm、30 mm を超え 120 mm 以下で ±0.3 mm である[5]。軸とのすきまをこれより小さくしたい場合は、内径に個別の許容差を書く。

まとめ

シムとシムリングには JIS の製品規格が無く、厚さの許容差を書かなければ材料の板・帯の規格の許容差が当てはまる。ステンレス鋼帯の 0.3 mm なら通常は ±0.05 mm で、調整用には粗い。製品としての許容差を図面に数値で書くか、ET・ST などの狭い許容差を記号で指定する。外形と穴は JIS B 0405 の普通公差を引用でき、ばりと平らさは別に書く。重ねて使うなら枚数分の誤差の積み上がりから 1 枚の許容差を決め、受入では測る場所と点数を仕入先と合わせて厚さを確かめる。

同じ束では、皿ばね、割りピン、カラー・スペーサー、リニアブッシュの指定も扱う。

出典・参考資料

  1. JIS G 4305:2021 冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
  2. JIS G 3141:2021 冷間圧延鋼板及び鋼帯(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
  3. JIS G 4313:2011 ばね用ステンレス鋼帯(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
  4. JIS B 7524:2008 すきまゲージ(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
  5. JIS B 0405:1991 普通公差-第1部:個々に公差の指示がない長さ寸法及び角度寸法に対する公差(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)

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