投稿日:2024年10月1日

油脂工場での酸化安定性試験とその管理方法

はじめに

油脂工場において、酸化安定性は製品の品質や安全性を左右する重要な要素です。
酸化が進行すると、製品の風味が損なわれるだけでなく、健康に悪影響を与える可能性もあります。
そのため、酸化安定性の試験とその管理が求められます。
本記事では、油脂工場での酸化安定性試験の重要性と実施方法、さらに管理方法について詳しく解説します。

酸化とは何か

酸化は、油脂が酸素と反応して化学変化を起こす現象です。
これは主に自動酸化と酵素酸化によって進行し、酸化生成物(例えば、過酸化物やアルデヒドなど)が生成されます。
これらの生成物が風味や品質の劣化を引き起こし、さらには酸敗と呼ばれる状態に至ることがあります。

自動酸化

自動酸化は、油脂分子が酸素と反応する一連の化学反応です。
この反応は、一次反応(初期生成物の生成)、二次反応(一次生成物の分解)、三次反応(生成物のさらなる分解)に分けられます。
反応が進むと、過酸化物、アルデヒド、ケトンなどの化合物が生成され、これが品質劣化の原因となります。

酵素酸化

酵素酸化は、リポキシゲナーゼやリポペルオキシダーゼなどの酵素が関与する酸化プロセスです。
これらの酵素が油脂と反応することで、特定の過酸化生成物が生成されます。
酵素酸化は通常、自動酸化に比べて速度が速く、油脂の劣化を急速に進めることがあります。

酸化安定性試験の重要性

酸化安定性試験は、油脂製品の品質を長期間安定させるために不可欠です。
この試験により、製品の保存期間や安全性を評価し、品質劣化を未然に防ぐことができます。
また、試験結果を用いて製品の改良や生産プロセスの最適化にも役立ちます。

法規制と品質基準

多くの国では、油脂製品の安全性と品質を確保するために、酸化安定性に関する法規制や品質基準が設けられています。
例えば、日本では食品衛生法に基づき、酸価や過酸化物価などの基準値が設定されています。
これらの基準値をクリアすることで、安全な製品供給が保障されます。

酸化安定性試験の方法

酸化安定性試験には、さまざまな方法が存在します。
以下に代表的な試験方法をいくつか紹介します。

過酸化物価の測定

過酸化物価(Peroxide Value, PV)は、油脂が酸化した際に生成される過酸化物の量を示します。
この値が高いほど、酸化が進行していることを示します。
測定方法としては、ヨウ素滴定法や電気分析法が一般的です。

酸価の測定

酸価(Acid Value, AV)は、油脂中の遊離脂肪酸の量を示します。
遊離脂肪酸は油脂が分解された結果生成されるため、この値も酸化の進行状況を示す指標となります。
酸価の測定には、アルカリ滴定法が用いられます。

誘導期間法(Rancimat法)

誘導期間法(Rancimat method)は、油脂の酸化安定性を評価するための迅速な方法です。
油脂サンプルを加熱し、酸素を通した状態で酸化反応を進行させ、その生成物の揮発性酸の量を測定します。
この方法により、油脂の酸化に要する時間(誘導期間)を測定します。

ガスクロマトグラフィー

ガスクロマトグラフィー(GC)は、油脂中の揮発性酸化生成物を分離・検出するための高精度な方法です。
この方法では、油脂サンプルを蒸気にして分離し、各生成物の濃度を詳しく解析できます。

酸化安定性管理の重要性とその方法

酸化安定性の試験だけでなく、実際の製造工程での管理も重要です。
これにより、製品の品質を高水準で維持し、市場での信頼を確保できます。

原料管理

油脂の酸化安定性は原料の品質にも依存します。
新鮮で高品質な原料を使用することで、酸化リスクを低減できます。
また、原料の受入時には厳格な検査を行い、品質基準を満たすことが確認されたもののみを使用します。

温度と湿度の管理

酸化反応は温度や湿度の影響を受けやすいため、保管場所や製造環境の温度と湿度を適切に管理することが重要です。
特に高温多湿の環境では、酸化が急速に進行するため、温度は低めに、湿度は乾燥した状態を維持します。

パッケージングの工夫

パッケージングも酸化安定性に大きな影響を与えます。
酸化を防ぐために、酸素バリア性の高い材料を使用し、真空包装やガス充填包装を活用します。
さらに、光に対して安定なパッケージング方法を選ぶことで、光酸化も防止できます。

製造プロセスの管理

製造プロセスにおいても、酸化を防ぐための様々な対策を取り入れます。
例えば、酸化を促進しやすい高温での処理を避ける、必要以上に油脂を攪拌しないなどの工夫が考えられます。
製造ライン全体での衛生管理も徹底し、酸化を引き起こす微生物の混入を防ぎます。

最新の業界動向

油脂産業では、酸化安定性を向上させるための新しい技術や研究が常に進められています。

ナノカプセル化技術

最近の研究では、油脂製品をナノカプセル化することで、酸化安定性を大幅に向上させる試みが行われています。
ナノカプセル化により、油脂分子が外部からの酸素に接触しにくくなるため、酸化が抑制されます。

抗酸化剤の利用

抗酸化剤の利用も広がっています。
自然由来の抗酸化剤(例えば、ビタミンEやポリフェノールなど)が注目されており、これらを製品に添加することで、酸化安定性を強化する方法が開発されています。

デジタル技術の導入

デジタル技術を活用した酸化安定性管理も進んでいます。
IoTセンサーを用いて温度や湿度、酸素濃度などをリアルタイムで監視し、異常が検出された場合に即座に対策を講じることが可能です。
また、データ分析を用いて、最適な管理方法を導き出すこともできます。

まとめ

酸化安定性は油脂工場における品質管理の重要な要素であり、その試験と管理は欠かせません。
過酸化物価、酸価、誘導期間法、ガスクロマトグラフィーなどの試験方法を適切に活用しながら、原料管理、製造プロセス、パッケージング、温度と湿度の管理を徹底することが必要です。
さらに、最新の技術を積極的に導入することで、油脂製品の酸化安定性を高めることが可能です。
これにより、高品質で安全な製品を市場に提供し続けることが求められます。

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